健康情報のメモ

がんに関わる要因

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. がんの原因の寄与割合
  2. 喫煙
  3. 塩と塩蔵食品
  4. 貯蔵肉、赤身肉
  5. 熱い飲食物、カビ毒
  6. 野菜と果物の摂取不足
  7. 飲酒
  8. 肥満
  9. 運動不足
  10. ウイルス、細菌などの持続感染
  11. 職業要因
  12. 環境汚染
  13. 生殖要因、ホルモン
  14. 遺伝
  15. 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
  16. ネットニュースによる関連情報

がんの原因の寄与割合

●米国人のがんの原因 確立したがんの要因のがん死亡への推定寄与割合(%)
ハーバード大学(アメリカ)のがん予防センターの推計、1996年
 
・膨大な数の疫学研究(人を対象とした研究を根拠)
・肺、大腸、乳房、前立腺等の部位のがんが主要な死因であるアメリカでの推計値であって、日本人とは事情が異なることに注意が必要。
 
(要因)          (寄与割合)
喫煙              30
成人期の食事・肥満       30
座業の生活様式         5
職業要因            5
がんの家族歴          5
ウイルス・他の生物因子     5
周産期要因・成長        5
生殖要因            3
飲酒              3
社会経済的状況         3
環境汚染            2
電離放射線・紫外線       2
医薬品・医療行為        1
塩蔵品・他の食品添加物・汚染物 1
 
※参考サイト
人のがんにかかわる要因:[がん情報サービス]

 

●日本におけるがんの原因
 
・2005年に日本で発生した部位別のがんのPAF (population attributable fraction, 人口寄与割合)を推計。
 
(要因)          (寄与割合)
喫煙              20
感染性要因           21
飲酒              6
塩分摂取            1.6
過体重・肥満          1.1
果物摂取不足          0.7
野菜摂取不足          0.6
運動不足            0.4
外因性ホルモン使用       0.2
 
○予防可能なリスク要因
・日本では男性のがんのおよそ55%(がん発生については53%、がん死については57%)は予防可能なリスク要因によるものだった。一方、女性では予防可能な要因はがんの30%近く(がん発生とがん死でそれぞれ28%と30%)を占めた。
 
○食事要因
・欧米の推定よりもはるかに小さいことが示された。
これについては、日本人の食事がもともと健康的であることのほかに、この研究では塩分、果物不足、野菜不足に限って推計していることが挙げられる。日本人の食習慣を調査で正確に把握することは難しく、誤分類などによって、本来のリスクが過小評価される可能性がある。
 
○過体重や肥満
・過体重や肥満の影響が小さいのは、日本人の極端な肥満(BMI≧30)の割合が男女とも3%前後と少ないため。
・日本とアジアの集団での多くの研究が、むしろ低BMIとがんリスクの関連を報告していることを考えると、低BMIのPAFについてはさらなる調査が必要。
 
○注意点
・職業的リスク、大気汚染、紫外線や放射線曝露などの要因については、日本における信頼性の高いデータが無いことから含まれていない。
・日本人のがんの半分以上は原因がわからないまま。この問題の解決には、がんの原因について的をしぼったさらなる研究が必要。
 
※参考サイト
日本におけるがんの原因 | 国際共同プロジェクトへの参加 | 国立がん研究センター 社会と健康研究センター

喫煙

●喫煙期間とがんのリスク
 
・喫煙本数、喫煙期間、喫煙開始年齢等との関連では、トータルの喫煙量が多くなればなるほど、リスクが高くなる。
・逆に、禁煙期間が長ければ長くなるほどリスクが低下する。
 
●たばこの煙の発がん物質
 
・たばこの煙には約4千種類の化学物質が含まれていて、その中にはニトロソ化合物、多環芳香族炭化水素、芳香族アミン、アセトアルデヒド、砒素等、約60種類の発がん性化学物質が含まれている。
・たばこの煙の経路となる喉、気管支、肺等、呼吸器系の臓器だけではなく、発がん物質のいくつかは血流に乗って運ばれ、あらゆる臓器に影響が及ぶ。
 
●たばこ関連のがん、受動喫煙
 
・喫煙は、口腔、咽頭、喉頭、肺、食道(扁平上皮がん)、膵臓、腎盂、膀胱、鼻腔・副鼻腔、食道(腺がん)、胃、肝臓、腎細胞、子宮頸部のがんと、骨髄性白血病などで発がん性があると評価されている。
・自分ではたばこを吸わなくても、家庭や職場で他人の煙を吸い込んでしまう受動喫煙では、肺に対して発がん性があることも確実とされた。
 
●男性のがんの3割はたばこが原因
 
・40~69歳の一般住民約9万人を8~11年追跡した結果、喫煙者が何らかのがんになるリスクは、非喫煙者に比べ男性で1.6倍、女性で1.5倍高くなっていた。
 たばこを吸っていたけれどもやめた人では、男性で1.4倍、女性で1.5倍だった。
 
・上記の相対リスクを日本の喫煙者や禁煙者の割合に当てはめて推計すると、男性のがんの29%に当たる年間約8万人、女性のがんの4%にあたる年間約8千人、合計で年間約9万人に、喫煙が原因のがんが発生したという結果になった。

塩と塩蔵食品

・高濃度の塩分は、胃粘膜を保護する粘液を破壊し、胃酸による胃粘膜の炎症やヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染を引き起こすことで、胃がんリスクを高めると推測される。
 塩蔵食品の保存過程では、ニトロソ化合物などの発がん物質が多く産生される。
 
・塩や塩蔵食品と胃がんとの関連は、おそらく確実とされている。
 
・胃がんの多い日本の疫学研究でも、塩や塩蔵食品の摂取量が多い人や地域で胃がんのリスクが高いことが示されている。
・食塩摂取とがん、特に胃がんの関係について多くの報告がある。
 世界がん研究基金・アメリカがん研究財団は、食事とがんに関する研究報告を詳細に評価した。その結果、塩漬けの食品、食塩は胃がんのリスクを増加させる可能性が高いとした。
 日本人を対象としたコホート研究では、食塩摂取量が胃がん罹患率及び死亡率と正の関連を示すことが明らかにされ、塩蔵食品摂取頻度と胃がんのリスクとの強い関連も示された。
 日本人を対象とした研究も含むメタ・アナリシスでは、高食塩摂取は胃がんのリスクを高めると報告されており、別のメタ・アナリシスでも食塩摂取量が増えるに従い、胃がんのリスクが高くなると報告されている。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

貯蔵肉、赤身肉

・肉類については、貯蔵や加熱等の調理によって生じるニトロソ化合物、ヘテロサイクリックアミン、多環芳香族炭化水素などの発がん物質や、肉や脂肪による腸内細菌叢の変化等のメカニズムが考えられる。
 
・ハム、サラミ、ベーコン等、貯蔵肉と大腸がんとの関連は、おそらく確実とされている。
 
・牛、羊、豚等の赤身肉と大腸がんとの関連が複数報告されているが、評価はまだ定まっていない。
 
・肉については種類だけでなく、調理法による違いがあるのではないかと考えられ、研究されている段階。
 
※以下の記事も参照。
飽和脂肪酸、肉の摂取と健康への影響の”肉の摂取とがんのリスク”

熱い飲食物、カビ毒

・熱い飲食物で口腔、咽頭、食道のがんのリスクが高くなる。
・アフラトキシンというカビ毒で肝がんのリスクが高くなることが”確実”と判定されている。

野菜と果物の摂取不足

・野菜と果物については、カロテン、葉酸、ビタミン、イソチオシアネート等さまざまな成分が、体内で発がん物質を解毒する酵素の活性を高める、あるいは生体内で発生した活性酸素などを消去するなどのメカニズムが考えられる。
・食道、胃、大腸など消化管のがんのリスクが低くなることは、”おそらく関連が確実”とされている。
しかし、たくさん食べれば食べるほどがんの予防効果があるというデータはない。
 
※野菜・果物のがんに対する効果については以下の記事参照。
・果物の効用
野菜、果物全般の健康効果の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
カロテノイド、リコペンの概要、効果、健康影響

飲酒

・”米国人のがんの原因 確立したがんの要因のがん死亡への推定寄与割合”では、がんの原因の3%を占めている。
 
・発がん物質が体内に取り込まれやすくする作用や、アセトアルデヒドによる影響、薬物代謝酵素への影響、エストロゲン代謝への影響、免疫抑制、栄養不足等によるメカニズムが考えられる。
 
・飲酒頻度や飲料の種類よりも、エタノール摂取量との関連が強いと考えられている。
 
・アルコールの通過経路である口腔、咽頭、食道等の上部消化管のがん、体内に吸収されたアルコールの分解を担う肝臓のがん、ホルモンと密接な関連を持つ乳房のがんのリスクをあげることが、”確実”とされている。
 
・飲酒と全部位および主要5部位(胃、大腸、肺、肝臓、乳房)のがんとの関連について、飲酒は、全部位および肝臓のがんは”確実”、大腸がんは”おそらく関連が確実”にリスクをあげると判定されている。
 
・日本人を対象とした疫学研究では、喫煙者に限って、飲酒量が増すほどがん全体のリスクが高くなるという相互作用が観察されている。
 
※以下の記事も参照。
アルコールの効能、リスクの”アルコールとがんとの関連”、”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”

肥満

・肥満については、脂肪組織から放出される女性ホルモンのエストロゲン(子宮体がん、閉経後乳がん)や、インスリン抵抗性(インスリンの働きが弱まること)による高インスリン血症(減少したインスリンを補うために、インスリンが大量に放出されること)や遊離型インスリン様増殖因子の持続的増加(結腸がん)、胃酸の胃-食道逆流(食道腺がん)等、さまざまなメカニズムによるリスク上昇が考えられる。
 
・過体重と肥満によって、食道がん、大腸がん、腎がん、子宮体がん、閉経後乳がんのリスクが確実に高くなるとされている。
 
・日本人などアジアのコホート研究では、過体重でのがん発生リスクの増加は一部のがんでは認められるものの、がん全体に対してははっきりとはみられない。むしろ、やせすぎによるリスクの増加が観察されている。
 これは、栄養不足に伴う免疫機能の低下や抗酸化物質の不足等によるものと推察されている。

運動不足

●運動の予防効果
 
・肥満の解消、インスリン抵抗性(インスリンの働きが弱まること)の改善、免疫機能の増強、腸内通過時間の短縮、胆汁酸代謝への影響等のメカニズムが考えられる。
 
・大腸がんのうち、結腸がんの予防効果は確実であり、乳がんの予防効果もおそらく確実とされている。

ウイルス、細菌などの持続感染

・米国人のがんの原因”確立したがんの要因のがん死亡への推定寄与割合(%)”では、ウイルス・他の生物因子は、5%と推計されている。
 
・日本については胃がんや肝がんが多いため、感染に起因するがんは20%と、先進国の中では高いほう。
 
・持続感染によるがんは、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型の肝炎ウイルス(HCV)による肝がん、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がん、ヘリコバクター・ピロリ菌(Hp)による胃がんがその大半を占めている。
 
・そのほかに、EBウイルスによる悪性リンパ腫や鼻咽頭がん、ビルハルツ住血吸虫による膀胱がん、タイ肝吸虫による肝がん、ヒトT細胞性白血病ウイルスによる白血病、悪性リンパ腫等がある。
 
・予防策としては、ワクチン投与による感染予防(HBV)、感染者への投薬による感染体の駆除(HCV、Hp、住血吸虫)、抗炎症薬による対症療法等があげられる。

職業要因

・ある種の職業や、職業的に多く接触することになる化学物質によって、発がんリスクが高くなることが知られている。
例)
(物質)		(がんの部位)(主な産業・使用)
煤煙			皮膚、肺	顔料
コールタール		皮膚、肺	燃料
2-ナフチルアミン	膀胱		染料・顔料製造
ベンジジン		膀胱		染料・顔料製造
塩化ビニル		肝臓		プラスチックモノマー
砒素および化合物	肺、皮膚	ガラス、金属、農薬
カドミウムおよび化合物	肺		染料・色素製造
クロム(VI) 化合物	鼻腔、肺	鍍金、染料・顔料製造
ニッケル化合物		鼻腔、肺	治金、合金、触媒
アスベスト		肺、胸膜中皮腫	断熱材、フィルター材、繊維
ダイオキシン 		複数の臓器	非意図的産生

・職業がんには、肺がんをはじめ化学物質が直接接触する皮膚、吸入の経路である鼻腔、喉頭、肺、胸膜、そして排泄される尿路等のがんが多いのが特徴。
 
・日本では、”石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫”、”ベンジジンや2-ナフチルアミンにさらされる業務による尿路系腫瘍”、”コークス又は発生炉ガスを製造する工程における業務による肺がん”、”クロム酸塩又は重クロム酸塩を製造する工程における業務による肺がん又は上気道のがん”等がある。
 
・がんの発生には一定の潜伏期間があり、過去に接触していた発がん物質が現在、未来のがんを生み出すことになる。
 アスベストについては、20~40年の潜伏期間があるので、日本では2030年ごろに、胸膜中皮腫発生のピークを迎えることが予想される。

環境汚染

・大気や室内空気、水、土壌等に含まれる発がん物質でも、ヒトの発がんリスクが高くなることが知られている。その多くは特定の地区に限られ、可能な限り予防のための対策がとられている。
 
・アスベスト鉱山や製造工場の周辺住民、またはそれらの労働者と同居する家族に、悪性中皮腫などアスベスト特有のがんが発生している。
 
・工場排気や自動車排ガス等に含まれるベンツピレン、ベンゼン、クロム等による大気汚染は、先進国では肺がんの原因の5%未満程度になっているものと推計されている。
 
・フロンガスによるオゾン層の破壊の影響で地上に届く有害な紫外線が増加しつつあり、北米やオーストラリア等で皮膚がんのリスクの上昇が問題になっている。

遺伝

●遺伝素因と環境要因
 
・血縁者に同じがんの発生率が高いという場合、遺伝子の類似性(遺伝素因)も考えられるが、生活習慣の類似性(環境要因)についても考慮する必要がある。
 
・飲酒行動は、アルコールを代謝する酵素の働きを決める遺伝素因が考えられるが、その遺伝要因によって飲む、飲まないの生活習慣が決まることがある。
 
●遺伝素因の占める割合に関する研究報告
(スウェーデン、デンマーク、フィンランドの同性の双子4万5千組についてがんの発生を追跡調査した結果)
 
・大腸がん、乳がん、前立腺がんの3部位で、遺伝素因の寄与が統計的に有意に検出。
その割合は、大腸がん35%、乳がん27%、前立腺がん42%。あとの残りが環境要因。
 ただし、遺伝素因の中にも環境要因の影響を強めたり弱めたりする部分があるので、大部分は環境要因を変えることで予防できると考えらる。
 
・双子の1人がその3部位のうちいずれかのがんにかかった場合に、もう1人が75歳までに同じがんにかかるリスクは、一卵性と二卵性のそれぞれの場合、大腸がんが11%と5%、乳がんが13%と9%、前立腺がんが18%と3%になっている。
 遺伝素因の影響の強いこれらのがんでも、たとえ遺伝子が100%一致していても、同じがんになる確率は1~2割に過ぎないことが示されている。
 
●遺伝するがんと遺伝しないがん
 
・全部のがんの5%以下が”遺伝するがん”といわれている。
 
●体質を決める遺伝子多型という遺伝素因
 
・遺伝子多型とは、遺伝子を構成しているDNAの配列の個体差。
・体内で発がん物質を活性化させたり、解毒したり、あるいは付加体となったDNAを修復するために、さまざまな酵素がかかわっている。そうした酵素の働きは、体質を決める遺伝子多型によって変わることが知られている。

多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス

※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
 
●長期的な粒子状物質への曝露と循環器疾患の発生および死亡との関連について
 
・粒子状物質への長期曝露と循環器疾患の発生および死亡との関連を検討した。
日本で測定されている粒子状物質は、SPMと呼ばれる大きさ10μm以下の浮遊粒子で、大気汚染防止法第22条に基づいて、環境大気の汚染状況を常時監視(24時間測定)している一般環境大気測定局が測定したデータを利用して粒子状物質の濃度を求めている。
 
○虚血性心疾患(心筋梗塞など)と脳卒中の死亡リスク
・粒子状物質の濃度が10μg/m3上昇した場合、粒子状物質の濃度上昇に伴い、虚血性心疾患(心筋梗塞など)の死亡リスクが高くなる傾向を認めたが、統計学的に有意ではなかった。
・粒子状物質の濃度上昇によって、脳卒中による死亡リスクは減少していた。
 
○肺がんの死亡リスク
・粒子状物質と肺がん死亡との関連について調べたが、関連を認めなかった。

 

●食塩・塩蔵食品摂取と胃がんとの関連について
 
○食塩摂取量との関連
・男性では、食塩摂取量が高いグループで胃がんリスクも明らかに高く、約2倍になった。
・女性では明らかな関連が見られなかった。
 これは、実際に食塩摂取量とは関連がないという解釈に加え、女性の中で胃がんになった人が少なく正確なデータが出なかったこと、また、男性と比べて、女性ではアンケート調査という方法から食塩摂取量を正確に把握しにくいことなどの解釈が考えられる。
 
○塩分濃度の高い食品との関連
・日本人に特有の、塩分濃度の高い食品には、味噌汁、つけもの、塩蔵魚卵(たらこ、いくらなど)、塩蔵魚(目ざし、塩鮭など)、その他の塩蔵魚介類(塩辛、練りうになど)などがある。
・それぞれの食品について、摂取頻度別にグループ分けして胃がんリスクを比べてみると、男性ではいずれの食品でも摂取回数が増えるほど胃がんリスクも高くなった。
・塩分濃度が10%程度と非常に高い塩蔵魚卵と塩辛、練りうになどでは、男女ともに、よく食べる人で胃がんリスクが明らかに高くなった。
・総合的な食塩摂取量による胃がんリスクを反映しているのかもしれないが、塩分濃度が高い食品が、特にリスクになるものと解釈出来る。
 あるいは、食塩だけでなく、塩蔵加工で生成される化学物質が胃がんリスクに関わっているのかもしれない。
 
○食塩による胃がん発生のメカニズム
・動物実験などから、胃の中で食塩の濃度が高まると粘膜がダメージを受け、胃炎が発生し、発がん物質の影響を受けやすくなることが示されている。
 そのような環境では、ヘリコバクター・ピロリという細菌の感染も起こりやすくなることが知られている。

 

●塩分・塩蔵食品と、がん・循環器疾患の関連について
 
・追跡開始時におこなった食習慣についての詳しいアンケート調査の結果を用いて、ナ トリウムと個々の塩蔵食品(塩蔵魚類または干魚、たらこ等の魚卵)の1日当たりの摂取量を少ない順に5グループに分け、その後に生じた何らかのがん・循環器疾患の発生率を比べた。
 
○ナトリウム(食塩)摂取量とがんとの関連
・ナトリウム摂取によるリスク上昇は見られなかった。
 
○ナトリウム(食塩)摂取量と循環器疾患との関連
・ナトリウムの高摂取によって循環器疾患発症リスクが高くなった。
・塩分そのものは血圧を上げることから脳卒中など循環器疾患のリスクになることが良く知られている。
 
○塩蔵食品の摂取量とがんとの関連
・塩蔵魚類または干魚、たらこ等の魚卵といった塩蔵食品の高摂取によって何らかのがんのリスクが高くなった。
・塩分濃度の比較的高い食品であるというだけでなく、塩蔵の過程で生成されるニトロソ化合物が日本人に最も多い胃がんのリスクを上げたことによるものと示唆される。
 
○塩蔵食品の摂取量と循環器疾患との関連
・塩蔵食品摂取によるリスク上昇は見られなかった。
・塩蔵食品は、魚介類にはn-3系脂肪酸(EPA、DHAなど)、野菜類にはカリウム・抗酸化物質など、循環器疾患に予防的な栄養素も含んでいる。

ネットニュースによる関連情報

●喫煙男性、女性は軽度の飲酒でもがんのリスク増大?
 
・全体的にみて、軽度から中程度の飲酒は、全てがんのリスクはほとんど高めないようだが、女性の場合、軽度から中程度の飲酒は、アルコールに関連するがん、主として乳がんのリスクを高めた。
・アルコール関連のがんについては、男性の場合は喫煙経験者のみにリスクの上昇が認められた。

 

●肥満と関連するがんの種類
 
・従来は、過剰な体重と結腸がん、食道がん、腎臓がん、乳がん、子宮がんの高リスクが関連する十分なエビデンスを見出されていた。
・今回、研究者らは、過剰な体重・肥満に関連する更なる8種類のがん(胃、肝臓、胆嚢、膵臓、卵巣、髄膜腫(脳腫瘍の一種)、甲状腺がん、血液がんである多発性骨髄腫)を特定した。

 

●変更可能ながんのリスク因子の寄与率
 
・解析の結果、2014年の米国における全がん症例の42%と全がん死亡例の45.1%は、喫煙、飲酒、肥満、果物・野菜の摂取不足などの変更可能ながんのリスク因子に帰すことができることが明らかになった。
・これら既知の変更可能なリスク因子の寄与率が最も高いがんは、肺がんであり、大腸がんがこれに続いた。いくつかの主要ながんの発症にはこれらリスク因子が高い割合で寄与していた(肺がんは85.8%、肝臓がんは71%、大腸がんは54.6%、乳がんは28.7%)。
・肥満、飲酒、貧しい食生活、身体不活動の組み合わせの寄与率を計算した結果、これら4つの因子のトータルの寄与は、男性の発症の13.9%、女性の発症の22.4%、男性のがん死の14.9%、女性のがん死の16.9%であった。

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