健康情報のメモ

アルツハイマー病に効果のある食事

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. ホモシステイン、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12と認知症との関連
  2. n-3系脂肪酸と認知症との関連
  3. ビタミンDと認知症との関連
  4. ビタミンE、ビタミンC、セレンと認知症との関連
  5. 効果が期待されている食品
  6. アルツハイマー病と中鎖脂肪酸、ココナッツオイル
  7. ネットニュースによる関連情報

ホモシステイン、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12と認知症との関連

●ホモシステインと葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12との関連
 
・ホモシステインは必須アミノ酸メチオニンの代謝過程で生成され、その代謝には、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12が関与している。
・いずれのビタミンが欠乏しても血中のホモシステイン濃度は上昇する。
 
●ホモシステインと認知症との関連
 
・ホモシステインは、血管さらには神経毒性が指摘されており、長らく脳血管性認知症さらにはアルツハイマー病との関連が指摘されてきた。
 
・複数の横断調査で認知症患者の高いホモシステイン血中濃度が指摘されている。
 
・最近のメタ・アナリシスでは脳血管性認知症並びにアルツハイマー病患者では認知症ではない対照者に比較し、有意にホモシステイン濃度が高値であることが報告されている。
 
・アルツハイマー病と脳血管性認知症患者との比較も報告されており、脳血管性認知症でよりホモシステイン値が高かった。
 
・しかしながら、上記横断調査の結果は必ずしもホモシステイン自体が認知症発症または認知機能低下の要因であるとは限らない。
 
・前向きコホート研究のメタ・アナリシスの報告は二つあり、一つは認知機能の低下と登録時のホモシステイン濃度とは有意な関係を見いだせていない。
 しかし、もう一つの前向き研究メタ・アナリシスは、8研究を解析し、延べ8,669人(年齢47~81歳)を対象としており(観察期間の中間値は5年)、ホモシステイン血中濃度が高いと認知症発症のリスクが統計上有意に増加すると報告している。
 
●葉酸投与と認知症との関連
 
・葉酸介入の八つのランダム化比較試験(RCT)のメタ・アナリシスが報告されているが、健康な高齢者への葉酸投与(ビタミンB12の同時添加の有無にかかわらず)は認知機能への影響はなかった。
 しかし、一つのRCTでホモシステインが高値の高齢者へ800μg/日の葉酸を3年間投与したところ、投与しなかった対照に比較し有意に良好な認知機能であったとの報告がある。
 また、アルツハイマー病へのコリンエステラーゼ阻害薬投与中に葉酸(1mg/日)投与により手段的ADLが著しく改善したとの報告が一つ存在する。
 しかし、認知機能自体はプラセボと差を認めていない。それ以外では葉酸投与の(ビタミンB12の同時添加の有無にかかわらず)認知機能改善を証明できた報告はない。
 
したがって、今の段階では健康な高齢者においても認知機能障害を持つ高齢者においても、葉酸投与の認知機能改善への効果は否定的である。
 
●ビタミンB12投与と認知症との関連
 
・ビタミンB12投与による認知機能への効果を検証したRCTも複数存在し、メタ・アナリシスも報告されている。
 これによると、ビタミンB12欠乏を認める認知症または認知機能障害に対してのビタミンB12投与の三つの報告が解析されたが、その認知機能に対する効果は有意なものではなかったと結論づけている。
 
●ビタミンB6投与と認知症との関連
 
・ビタミンB6に関する介入研究でも、認知機能への関与を認める報告は乏しい。
 
●軽度認知機能障害(MCI)と葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6
 
・軽度認知機能障害(MCI)を対象とし、ビタミン(葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6)投与による2年間の観察による大脳萎縮への効果を見たRCT研究が一つ存在し、これらのビタミン投与により投与されていないコントロール群と比較し大脳萎縮(特に灰白質)の進行を有意に抑制するとの報告が存在する。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

 

●葉酸、ホモシステイン濃度と認知症との関連
 
・多くの観察研究により、ホモシステイン濃度の上昇とアルツハイマー病および認知症の発生率との間に正の相関が示されている。
 すべてではないが、多数の観察研究により、血清中葉酸塩濃度の低下と、認知機能の低下や認知症およびアルツハイマー病のリスクの上昇との相関関係も認められた。
 
・上記のようなエビデンスがあるにもかかわらず、多くの研究では、葉酸補充が認知機能あるいは認知症やアルツハイマー病の発症に影響を与えることは示されていない。
 
・今後も追加試験が必要ではあるが、現在までのエビデンスから、葉酸を単独、またはビタミンB12やビタミンB6と一緒に補充しても、既存の認知障害の有無にかかわらず、認知機能を改善する効果はないと考えられる。
 
○オランダで行われたランダム化二重盲検プラセボ対照試験
・認知機能障害が認められないか軽度である70歳以上の参加者195人が、葉酸(400μg)+ビタミンB12(1mg)、ビタミンB12(1mg)、またはプラセボの3種類のうちいずれかを24週間摂取した。
・葉酸+ビタミンB12摂取群では、ホモシステイン濃度が36%低下したが、認知機能は改善しなかった。
 
○"女性における抗酸化物質および葉酸と心疾患に関する研究"の一部として実施
・心血管疾患のリスクが高い65歳以上の米国人女性2,009人を、葉酸(2500μg)+ビタミンB12(1mg)+ビタミンB6(50mg)を含むサプリメントあるいはプラセボを毎日摂取する群に無作為に割り付けた。
・平均1.2年後にプラセボと比較評価した結果では、ベースラインと比較した認知機能変化の平均値に対するビタミンB補充の影響はみられなかった。
・ベースライン時に食物由来のビタミンB摂取量が低かった女性の小集団では、ビタミンB補充により認知機能低下速度が有意に抑えられた。
 
○米国のアルツハイマー病患者を対象とした試験
・軽度から中等度のアルツハイマー病患者340人を対象。
・葉酸(5,000μg)+ビタミンB12(1mg)+ビタミンB6(25mg)を含有するサプリメントを18カ月間連日摂取した場合、認知機能低下速度にプラセボとの違いは認められなかった。
 
○オーストラリアで行われた試験の2次分析
・抑うつ症状を呈する60歳~74歳の成人900人に葉酸(400μg)+ビタミンB12(100μg)を2年間毎日補充した場合、認知機能の測定値の一部、特に記憶について改善が認められた。
 
※参考情報
葉酸塩 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業

 

●ビタミンB6と認知機能
 
・ビタミンB6の不足した状態は、高齢者にしばしば起こる認知機能低下に関与しているという仮説が立てられている。
 
・いくつかの研究で、高齢者におけるビタミンB6と脳機能との関連が示されている。
 たとえば、Boston Normative Aging研究のデータを解析し、54-81歳の男性70人において、血清ビタミンB6濃度の高値と記憶テスト高スコアとの間の関連が示された。
 
・しかし、14のランダム化対照試験のシステマティックレビューでは、正常な認知機能、認知症、または虚血性の血管疾患を有する人において、ビタミンB6補充のみ、あるいはビタミンB12または葉酸あるいはその両方との併用が認知機能に及ぼす影響についてのエビデンスは十分ではなかった。
 
・ビタミンB6補充が高齢者における認知機能低下の予防または治療に役立つかどうかを判断するには、さらに多くのエビデンスが必要である。
 
※参考情報
ビタミン6 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業

 

●ビタミンB12と認知機能
 
・ビタミンB12が欠乏すると血中のホモシステインが蓄積し、神経伝達物質の代謝に必要とされる物質の値が低下する可能性がある。
 
・観察研究では、ホモシステイン値の上昇と、アルツハイマー病および認知症の双方との間に明白な因果関係が示されている。
 また、低ビタミンB12も認知機能低下と明らかに関連性がみられる。
 
・ビタミンB12によりホモシステイン値が低下し、低ビタミンB12と認知機能低下に相関性がみられるというエビデンスがあったとしても、研究では認知機能に対するビタミンB12の単独効果は示されていない。
 
・二つのコクラン・レビュー、および、ビタミンB群の認知機能に対する効果に関するランダム化試験の系統的レビューの執筆者らは、ビタミンB12単独投与、あるいはビタミンB6か葉酸との併用投与が認知機能または認知症へ効果があるかどうかを示すエビデンスは不十分と結論づけた。
 ビタミンB12が認知機能や認知症に対し直接的な効果があるかどうかを評価するためには、ビタミンB12補充療法についてのさらなる大規模臨床試験が必要である。
 
○あるランダム化二重盲検プラセボ対照試験
・認知障害がない、または中等度の認知障害がみられる70歳以上の高齢者195人を対象。
・ビタミンB12 1,000μg、ビタミンB12 1,000μg+葉酸400μg、あるいはプラセボが24週間投与された。
・ビタミンB12+葉酸投与群ではホモシステイン濃度が36%低下したが、ビタミンB12投与群とビタミンB12+葉酸治療群のいずれにおいても認知機能の改善はみられなかった。
 
○Women's Antioxidant and Folic Acid Cardiovascular試験
・心血管疾患リスクの高い女性参加者を、ビタミンB12 1mg+葉酸 2.5mg+ビタミンB6 50mgを含有するサプリメントの連日投与群、とプラセボ群のいずれかに無作為に割り付けた。
・平均1.2年後、ビタミンB類補給群では、プラセボ群に比べ、開始時点からの認知機能の平均的変化に影響はみられなかった。
・しかし、開始時点でビタミンB群摂取量の低かった女性の小集団では、補給群で認知機能低下率の有意な緩徐化がみられた。
 
○Alzheimer's Disease Cooperative 研究団体により行われた試験
・軽度~中等度のアルツハイマー病患者を対象。
・ビタミンB12 1mg、葉酸 5mg、ビタミンB6 25mgが18カ月間連日投与されたが、プラセボ群に比べ、認知機能低下の緩徐化はみられなかった。
・認知症リスクのある142人を対象とした別の試験でも、葉酸 2mg、ビタミンB12 1mgが12週間投与され、同様の結果であった。
 
※参考情報
ビタミンB12 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業

n-3系脂肪酸と認知症との関連

・オリーブオイルやアマニ油、クルミ油などオメガ3脂肪酸を豊富に含む油を日常的に食べている人、魚を食べている人は認知症にかかりにくかった。
 
※参考資料『デイビッド・パールマター(2015)「いつものパン」があなたを殺す  三笠書房』

 

●アルツハイマー病によい食事
 
・青魚を週に2回食べる事によってアルツハイマー病になる確率が41%下がったという報告がある。
・n-3系脂肪酸には、血栓ができることを防ぎ、炎症を抑え、神経細胞を大きくして、神経細胞間のつながりを良くする働きがある。
・βアミロイドの沈着を防ぎ、神経にからみつく神経原線維を除去する効果がある。
 
※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』

 

●前向き観察研究
 
・n-3系脂肪酸の高齢者の認知機能に対する影響に関しては、前向き観察研究ではn-3系脂肪酸摂取量が少ないと認知機能の低下や認知症発症に関与するとの報告が複数存在している。
 一方で関連を認めないとする報告も複数存在し、n-3系脂肪酸摂取量が認知機能低下や認知症、特にアルツハイマー病発症に関連するかどうかは一定の結論には至っていない。
 
●介入研究
 
・認知症ではない60歳以上を対象として最低半年以上の介入期間があるn-3系脂肪酸のランダム化比較試験(RCT)は二つしか存在しておらず、いずれの介入試験も(24か月と48か月)認知機能への影響を認めていない。
 
・既にアルツハイマー病の診断を受けている対象者へのn-3系脂肪酸を用いたRCTも幾つか存在するが、いずれの介入も認知機能の悪化を予防することに成功していない。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

ビタミンDと認知症との関連

●観察研究
 
・ビタミンDと認知機能との関連に関しては複数の横断調査が存在し、これらのメタ・アナリシスによると、八つの横断調査からは血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が50nmol/L未満と50nmol/L以上との2群間の認知機能の比較で、ビタミンD血中濃度の高い対象者で認知機能が有意によい結果であった。
 
・アルツハイマー病を対象とした七つの症例対照研究のメタ・アナリシスでは、認知機能が正常な対照と比較しアルツハイマー病患者では、血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が有意に低値であった。
 
・前向き観察研究では、一つは男性だけのコホートで、登録時のビタミンD濃度の低値と平均4.6年間の認知機能低下とに傾向はあるものの、統計的有意な関係は認めていない。
 
・一般住民を対象とした前向き調査で登録時の25-ヒドロキシビタミンD血中濃度が低値(25nmol/L未満)では、75nmol/L以上に比較し6年間観察期間中の認知機能低下を起こすリスクが上昇(調整後相対リスク1.60、95% 信頼区間1.19~2.00)していたと報告され、また最近のコホート調査でも、65歳以上の1,639人を5年間観察したところ、ビタミンDの低値と認知機能の低下との関連を認め、特に女性において強い関連を認めている。
 
●介入研究
 
・介入研究は少なくビタミンD単独によるものは1980年代の一つの報告しかなく、この研究では血中25-ヒドロキシビタミンDが40nmol/L未満の対象者に9,000IUのビタミンDを投与したが、認知機能への効果は認められなかった。
 
上記のように、ビタミンDと認知機能に関してはなお、十分な研究がされているとは言えず、ビタミンDの認知機能への影響は明確でない。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

ビタミンE、ビタミンC、セレンと認知症との関連

●観察研究
 
・これらのビタミン単独または複合摂取は、アルツハイマー病を始めとする認知症発症に対して予防的に作用するとの報告もあるが、無効とする報告も存在しており、一定の見解には至っていない。
 効果があるという研究の中には十分量のビタミンEとビタミンCの併用により、より強い予防効果があり、単独では無効又は効果が減弱するという報告がある。
 
●ランダム化比較試験(RCT)
 
・ランダム化比較試験(RCT)はまだ少ないが、ビタミンEをサプリメントとして軽度認知機能障害(MCI)に投与してアルツハイマー病への移行を検討しているが、無効とされている。
 
・ビタミンE、ビタミンC、β-カロテンの投与により、5.7年後の評価ではいずれも認知機能低下予防に関しては無効であった。
 
・ビタミンEを健康な女性にサプリメントとして投与し9年観察した研究では、認知機能に対しては無効であった。
 
・ビタミンEのアルツハイマー病又はMCIへのRCT研究のシステマティックレビューも試みられているが、基準を満たす研究は二つしかいまだ存在せず、結論に至っていな
い。
 
このように抗酸化と関連するビタミンの少なくともサプリメントとしての認知機能に対する介入効果は今のところ否定的である。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

 

●ビタミンEと認知機能
 
・脳の酸素消費速度は速く、また、その神経細胞膜内には多価不飽和脂肪酸が大量に存在する。
 長年にわたってニューロンが受けるフリーラジカルからの蓄積的なダメージが、認知低下やアルツハイマー病などの神経変性疾患の一因であり、したがって、抗酸化剤(例えばビタミンE)の十分あるいは追加的摂取には、ある種の保護効果があるのではないか、という仮説が立てられている。
 
・ほとんどの研究が、健康な人または軽度認知障害者がビタミンEサプリメントを使用することによって認知能力が維持されたり、あるいは、正常な老化現象に伴う認知能力の低下速度が緩徐化されたりすることを裏づけない。
 認知低下治療におけるビタミンEの役割(あるとすれば)を特定するためには更なる研究が必要である。
 
○中等度のアルツハイマー病患者を対象にした臨床試験
・中等度のアルツハイマー病患者341人を対象。
・被験者をプラセボ群、ビタミンE(2,000 IU/日、dl-α-トコフェロール)群、モノアミン酸化酵素阻害薬(セレギリン)群、ビタミンE+セレギリン群に無作為に割付けた。
・2年間で、ビタミンEとセレギリンのそれぞれ単独あるいは併用投与は、いずれも機能低下と施設収容の必要性をプラセボに比べて有意に遅延させた。しかし、ビタミンE摂取被験者の転倒件数は有意に増加した。
 
○高齢者を対象とした前向き・コホート試験
・自由な生活を営んでいる65~102歳の高齢者対象。
・3年間にわたり食品あるいはサプリメントからのビタミンE摂取と、認知低下の低減に関連性がみられた。
 
○健康な高齢女性を対象とした臨床試験
・おおむね健康な高齢女性を最長4年にわたり、1日おきに600 IUのd-α-トコフェロールを摂取する群かプラセボ群に無作為に割付けた。
・ビタミンEサプリメントは明白な認知上のベネフィットを示さなかった。
 
○軽度の認知障害のある男女を対象とした臨床試験
・軽度の認知障害がある769人の男女を無作為にビタミンE 2,000 IU/日群、コリンエステラーゼ阻害剤(ドネパジル)群、もしくはプラセボ群に割付けた。
・アルツハイマー病の進行速度において、ビタミンE群とプラセボ群間に有意な差は認められなかった。
 
※参考情報
ビタミンE | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業

 

●セレンと認知機能
 
・血清セレン濃度は加齢に伴って低下する。
・セレン濃度が必要最低限まで低下したり不足したりすることは、加齢に伴う脳機能の低下に関連する可能性があり、おそらく、セレンによる抗酸化活性が低下するためだと考えられている。
 
○矛盾する観察研究の結果
・2つの大規模試験では、ベースラインの血漿セレン値が低い被験者は、時間とともに認知機能が低下しやすい傾向にあったが、これらの被験者でセレンが不足していたかどうかについては不明である。
・米国高齢者4,809人に関するNHANESのデータを分析したところ、血清セレン値(11.3μg/dL未満から13.5/μg/dL以上)と記憶力テストのスコアに関連は見られなかった。
 
○臨床試験
・9つのプラセボ対照試験に関する総説では、セレンの補給がアルツハイマー病を予防するかについて判断するには、これまでの臨床データでは不十分であると結論づけている。
・セレンの補給が高齢者の認知低下の予防や治療に役立つかを判断するには、さらなるデータが必要。
 
※参考情報
セレン | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業

効果が期待されている食品

○クルクミン、ターメリック、ウコン
 
・アルツハイマー病にかかる確率が世界一低い国の一つがインド。
・クルクミンを摂取することで、βアミロイドの凝集を抑制し、離散を促進する作用がある。さらにその抗酸化作用により、アルツハイマー病の症状を改善することがわかってきた。
・クルクミンをどのように脳内に送り込むかが問題。血液脳関門にさえぎられてしまう。多くの量も必要(ウコンを含む健康飲料60本分)
※クルクミンの詳細については以下の記事参照。
ポリフェノールの概要、効果、健康影響の"クルクミン"
 
○ナッツやゴマなどに含まれるビタミンE
 
・アルツハイマー病の患者に大量のビタミンEを投与するとその発症頻度が下がったり、進行が改善したという報告がある。
・クルミは、脳細胞の酸化を食い止めて神経細胞の死を食い止めるほか、炎症の改善、新しい神経細胞の新生や情報伝達能力も高めてくれる働きがある。
・クルミは、βアミロイドの凝集を阻害し、すでに凝集してしまったβアミロイドの分解も促進させる働きがある。
・糖尿病患者にとってクルミは、コレステロールや血糖値を下げ、血流もよくする働きがある。
 
○青魚、DHA、EPA
 
・青魚を週に2回食べる事によってアルツハイマー病になる確率が41%下がったという報告がある。
・オメガ3には、血栓ができることを防ぎ、炎症を抑え、神経細胞を大きくして、神経細胞間のつながりを良くする働きがある。
・βアミロイドの沈着を防ぎ、神経にからみつく神経原線維を除去する効果がある。
 
○緑黄色野菜
 
・強力な抗酸化作用を持つβカロテンを多く含む。
・アルツハイマー病になった患者は、緑黄色野菜の摂取量が不足していたという報告がある。
 
○葉酸
 
・アルツハイマー病になった患者は、葉野菜や枝豆、モロヘイヤなどに含まれる葉酸が不足していたという研究がある。
・葉酸は、レバーや魚介類に多く含まれるビタミンB12と共同して働くので一緒に食べるようにするとよい。
 
○オリーブオイル
 
・エキストラバージン・オイルに含まれているオレオカンタールという成分は、βアミロイドが凝集する最初の段階で発生するオリゴマーという塊が神経細胞のシナプスに付着するのを防いでくれる。
 
○コーヒー
 
・カフェインはβアミロイドの蓄積を少なくし、老人斑の除去や記憶機能と認知機能の改善に役立つ。
・アルツハイマー病の予防には、1日4~5杯のコーヒーを飲む必要があるといわれている。
 
○緑茶
 
・カテキンなどのポリフェノールには、抗酸化作用があり、アルツハイマー病の神経原線維変化を抑制する働きが報告されている。また、βアミロイドの毒性を防ぎ、脳に悪影響を及ぼす鉄を排出してくれる。
・カテキンなどの成分は、多くの物質を遮る血液脳関門を通過することができるのも特徴。
 
○カロリー・リストリクション
 
・カロリスとは、カロリーだけを70~80%ぐらいに制限する食事療法。
・カロリスを実践すると、認知症やアルツハイマー病の予防に効果的であることが実証されており、記憶力も向上することが分かってきた。
 
※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』

 

●血液中の微量栄養素との関係
 
・ビタミンE、βカロテンなどは関連が認められなかった。
・リコペンが低いと介助の必要性が上がる、という関連。
リコペンは、心臓病、乳がん、肺がん、膀胱がん、前立腺がんの予防に役立つ?
・イチョウ葉エキスは効果があるという報告も?
・葉酸濃度が高い人ほど脳の萎縮が起こっていなかった。
・ホモシステインはアミノ酸の一種で、アテローム性動脈硬化のプラーク形成にも関わっている。血中のホモシステイン濃度が高くなると心臓病や脳卒中のリスク要因。
 葉酸とビタミンB12は、ホモシステインを分解して身体に役に立つ形に変える。
 
※参考資料『デヴィッド・スノウドン(2004)100歳の美しい脳 DHC』

アルツハイマー病と中鎖脂肪酸、ココナッツオイル

●アメリカのメアリー・T・ニューポート医師
 
・中鎖脂肪酸によって病気の進行を食い止めることができ、症状も劇的に改善した事例を観察。
・中鎖脂肪酸はココナッツオイルに多く含まれているので、ココナッツオイルを使って治療を行っている。
 
●ケトン体、ココナッツオイル
 
・アルツハイマー病の特徴の1つとして、脳内のインスリン欠乏、インスリン抵抗性、がある。
 インスリンが使えないと、神経細胞はブドウ糖を使えなくなるので、神経変性を起こし、記憶障害などの神経症状が出てくるようになる。
→脳はケトン体もエネルギー源にできるので、ケトン体を供給すると神経細胞を維持できる。ココナッツオイルを食べてケトン体を供給する。
 
※参考資料『宗田哲男(2015)ケトン体が人類を救う 光文社新書』

 

●中鎖脂肪酸、ケトン体
 
・通常、脳はエネルギー源としてブドウ糖を利用しているが、アルツハイマー病になると脳が糖を正常に利用できなくなり、エネルギー不足になり、機能不全に陥ってしまうことが分かっている。
 
・これまで糖が脳の唯一のエネルギー源だと考えられてきたが、糖が不足するとケトン体を利用することも明らかになってきた。
→アルツハイマー病でブドウ糖を利用できなくなってもケトン体の活用によって機能回復する可能性がある。
 
・腸から取り込んだ中鎖脂肪酸は直接肝臓に運ばれていくため、脂肪組織などにいったん蓄積されてから利用される長鎖脂肪酸よりもスムースにケトン体を作り出せる利点がある。
 
※参考資料『近藤和雄(2015)人のアブラはなぜ嫌われるのか 技術評論社』

 

●ケトン体とココナッツオイル
 
・ココナッツオイルは中鎖脂肪酸を含む。
 長鎖脂肪酸は一旦リンパに入って全身で薄まった状態になり、その一部だけが肝臓に入る。そして、カルニチンという物質がないとケトン体を作るミトコンドリアの中に入ることが出来ない。
 一方、中鎖脂肪酸は直接肝臓に入ることができ、カルニチンを使わなくてもミトコンドリアに入れるので、非常に効率よくケトン体に変わることが出来る。
 このケトン体が脳のエネルギーとして働き、アルツハイマー病が改善する、という報告もある。
 しかし、糖質制限をせずにココナッツオイルを食べても、ケトン体は作られない。血糖が上がってインスリンが出ている間は、体がケトン体を利用しないため。
 
○ケトン体の悪影響
・ケトン体が増えすぎる事で、血管内皮細胞の機能が落ちてくるというデータがいくつもある。
 
※参考資料『山田悟(2015)糖質制限の真実 幻冬舎』

ネットニュースによる関連情報

●魚介類摂取量と脳内水銀濃度、アルツハイマー病との関係
 
・脳内水銀濃度は、週当たりに摂取した魚介類の食事の数と正に相関していた。
・魚介類摂取量(食事一回以上/週)は、アルツハイマー病の病変がより少ないことと有意に相関していた。

 

●クルミの摂取でアルツハイマー病のリスク低下?
 
・ヒトにおいては1日28-42g分のクルミに相当する6-9%のクルミをマウスに与え、その栄養補給効果を検討した結果、クルミを含んだ食事を与えられたマウスの学習能力・記憶力・不安感の減少・運動発達に有意な改善が見られた。

 

●レスベラトロールが記憶力の低下を防ぐ
 
・レスベラトロール治療群のラットは、空間学習と記憶能力と記憶の両方が改善されていた。
・レスベラトロール治療群のラットの神経新生(神経細胞の成長と発展)は対照ラットに比べ、倍増していた。レスベラトロール治療群のラットはまた、微小血管系が有意に改善されていたため、血流が改善され海馬における慢性炎症レベルが低かった。

 

●ウコンで糖尿病予備軍の高齢者の記憶力が向上?
 
・糖尿病前症と診断されたが、まだ治療を施していない60才以上の台湾の男女のワーキングメモリをテストしたところ、朝食にほんの少しターメリックを添加しただけで、前糖尿病高齢者のワーキングメモリの向上が6時間以上持続していた。

 

●ビタミンB12と葉酸の摂取、血中ホモシステイン濃度と記憶力の関係
 
・オランダの研究で、平均年齢74歳の2,919名を対象に、2年間にわたって葉酸、ビタミンB12サプリあるいはプラセボ(偽薬)を摂取してもらい、終了後に記憶力と思考力のテストを実施した結果、ホモシステインの濃度はビタミン摂取群のほうがプラセボ摂取群より低下していたが、思考力と記憶力の成績は差がなかった。

 

●魚油サプリメントで認知機能低下を抑制?
 
・魚油サプリメントを使用するとアルツハイマー病評価尺度(ADAS-COG)と小精神状態検査(MMSE)で測定した認知機能低下が、有意に抑えられることが示された。
しかしこの効果が観察されたのは、登録時に認知症のない参加者グループのみであった。
また、アルツハイマー病の遺伝的危険因子であるアポE-4が無い人でのみ、認知テストおよび脳MRIの結果が良かった。

 

●クルクミンの健康効果の科学的根拠
 
・クルクミンに関する膨大な科学文献のレビューをしたところ、クルクミンは生理的条件下では不安定であり、体に吸収されにくいという性質があるため、クルクミンは治療の候補としては不十分とされていた。
 さらに、クルクミンに対する二重盲検プラセボ対照臨床試験のエビデンスから、潜在的治療法となり得ないことが判明した。
・しかし、研究者はウコン抽出物や製剤は、現在推奨されているほど多くの疾患には効果がないかもしれないが、ウコンの潜在的効果に相乗的に効果をもたらす可能性のあるスパイスについては包括的な研究が必要と考えている。

モバイルバージョンを終了