健康情報のメモ

細胞周期、チェックポイントとがんとの関連

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. 細胞周期の概要
  2. 細胞周期の監視、チェックポイント
  3. p53遺伝子の概要
  4. 細胞周期とがん

細胞周期の概要

●細胞周期とは?
 
・ひとつの細胞が二つの娘細胞を生み出す過程で起こる一連の事象、およびその周期のこと。
・細胞周期の代表的な事象として、ゲノムDNAの複製と分配、それに引き続く細胞質分裂がある。
 
●細胞周期の概要
 
○G0(静止状態)
・細胞が周期から去った、または分裂を止めている休止期。
 
○間期
①G1
・細胞は大きくなる。
・G1/Sチェックポイントで次のDNA合成の準備ができているかが確認される。
 
②S
・DNAの合成。
 
③G2
・DNA合成から有糸分裂が起こるまでの間、細胞は成長し続ける。
G2/Mチェックポイントで次のM期(有糸分裂と細胞質分裂)への準備ができているかが確認される。
 
○M(細胞分裂)
・細胞の成長は停止し、活動エネルギーは分裂に集中される。
有糸分裂の途中M期チェックポイントで完全な分裂への準備ができているかが確認される。

細胞周期の監視、チェックポイント

●チェックポイント
 
・細胞が酸化ストレスやDNA傷害などのストレスを受けた場合など細胞周期の進行になんらかの異常を検出すると、ストレスにより受けた傷害を修復するために、細胞は細胞周期をいったん停止する。
 そして停止期間中に修復を完了し、再び細胞周期を再開する。
・チェックポイントのない細胞では、細胞内傷害は無視され、傷害を抱えたまま細胞周期は進行し、細胞分裂の際に異常な細胞が出来上がるか、もとの細胞自体が死んでしまう。
・チェックポイントのない細胞が細胞増殖すると、異常な細胞がどんどん蓄積。
 
○紡鐘体チェックポイント
・紡鐘体は、細胞が分裂するときに染色体を2つの細胞に均等に分配する糸のような構造。
・紡鐘体チェックポイントが異常だと、染色体の一部が欠けたり、余分な領域が追加されたりして、均等に分配されない。
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

p53遺伝子の概要

●p53遺伝子の概要
 
・一つ一つの細胞内でDNA修復や細胞増殖停止、アポトーシスなどの細胞増殖サイクルの抑制を制御する機能を持ち、細胞ががん化したときアポトーシスを起こさせるとされる。
・がん抑制遺伝子の一つ。
 
●p53遺伝子とがんとの関連
 
・がん抑制遺伝子p53は、DNAが傷ついたときなどにはたらき始め、まずは細胞分裂にブレーキをかけると同時に、傷の修復機構のスイッチを入れる。修復不可能な場合は、アポトーシスによって細胞を死に導く。
 このような遺伝子が変異し、細胞死が起こりにくくなると、がん化が促される。
 
・p53遺伝子、チェックポイントの異常で、傷や複製ミスによるDNAの修復が行われずに複製されて、遺伝子の変異が定着したまま増殖してしまう。
 遺伝子の変異が起きた細胞では、突然変異が加速されて起こり、薬剤耐性などがん特有の性質が獲得されてしまう。
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

細胞周期とがん

●細胞周期、CKIとがん
 
○細胞周期を前進させる役割は2種類のタンパク質
・サイクリン
・サイクリン依存性キナーゼ(CDK)
サイクリンと合体したときのみ、タンパク質中のアミノ酸にリン酸をつける。
 
※キナーゼとは、タンパク質にリン酸基を加える事により、タンパク質の性質を変化させる酵素。
 
○細胞周期の前進をじゃまするタンパク質
・CDK阻害タンパク質(CKI)
 
○細胞周期とがん
・がん細胞の中には、CKIが失われたためにCDKとサイクリンが暴走して細胞の増殖が起きているものが見つかっている。
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

 

●p16遺伝子、細胞周期、がん
 
・p16は、細胞周期のG1期で周期が回るのを止める分子。
・ガン細胞はこの細胞周期が歯止め無く回り続ける病気。
・p16はがん抑制遺伝子の一つ。
・p16が働かなくなっていることが食道がんや胃がんで確かめられている。
 
※参考資料『伊藤裕(2011)腸!いい話 朝日新聞出版』

 

●チェックポイントとp53遺伝子
 
○チェックポイントとp53遺伝子
・細胞が酸化ストレスやDNA傷害などのストレスを受けた場合、ストレスにより受けた傷害を修復するために、細胞は細胞周期をいったん停止する。
 そして停止期間中に修復を完了し、再び細胞周期を再開する。
 
・p53遺伝子が作るタンパク質(p53タンパク質)は、転写因子。
※転写因子とは、染色体上で他の遺伝子の発現を制御するタンパク質。
 
・p53タンパク質が転写因子として活性化されると、標的となる遺伝子のmRNAの合成が開始される。
※mRNAは、DNAから特定の遺伝情報だけをコピーして、タンパク質の合成工場であるリボソームへと運ぶRNA。
 
・p53タンパク質の標的となる遺伝子は、p21、Bax、Mdm2、Noxa、Pumaなど100個以上。
 細胞周期に関与するもの(p21)とアポトーシスに関与するもの(Bax、Noxa、Puma)などがある。
 
・p53遺伝子は、細胞内傷害のセンサーとして働き、傷害が小さくて修復可能であれば、細胞周期停止を誘導して傷害修復を助け、傷害が大きすぎて修復不可能と判断された場合は、アポトーシスを誘導して細胞死を引き起こし、異常な細胞の蓄積を防止させるのでは? ゲノムの守護神
 
○チェックポイントとがん
・チェックポイントのない細胞では、細胞内傷害は無視され、傷害を抱えたまま細胞周期は進行し、細胞分裂の際に異常な細胞が出来上がるか、もとの細胞自体が死んでしまう。
・チェックポイントのない細胞が細胞増殖すると、異常な細胞がどんどん蓄積。ガン細胞。
・チェックポイント遺伝子の代表が、ガン抑制遺伝子であるp53遺伝子。
 
※参考資料『近藤祥司(2009)老化はなぜ進むのか 講談社』

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