健康情報のメモ

がんと老化の関わり

DNAの損傷の蓄積によってがんや老化が起きたり、細胞周期の異常によってがんと老化が起きたりと異常の起こり方の違いで、がんが発生したり老化が促進したりするという側面もあるようです。
 
○活性酸素などの酸化ストレス
・酸化ストレス→DNA損傷→老化、がん
ミトコンドリア、活性酸素と老化の関わり 参照
 
○細胞周期、チェックポイントの異常
・細胞周期におけるp53遺伝子によるDNA損傷修復の異常→細胞異常増殖→がん
細胞周期、チェックポイントとがんとの関連 参照。
・細胞周期の異常→細胞の分裂停止→老化
 
○p53遺伝子による影響
・p53遺伝子の異常でDNA損傷修復がNG→細胞異常増殖→がん
細胞周期、チェックポイントとがんとの関連 参照。
・p53遺伝子が亢進→酸化増大→老化?
・p53遺伝子が不活性化→酸素消費減少→老化抑制?
 
○テロメアと老化、がん
・細胞の分裂→テロメア長が短くなる→分裂回数がMaxに到達→分裂不能→細胞老化
・細胞分裂時のテロメア短縮の異常→テロメアが短くならない→細胞が異常分裂→がん
細胞老化、酸化老化、ストレス老化、テロメアとの関わりを参照。

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. がんと老化の関わり
  2. 細胞周期の異常と老化
  3. p53遺伝子と老化
  4. ガン遺伝子とストレス老化
がんと老化の関わり

・細胞の老化もがんも遺伝子の損傷の蓄積が原因。
 運よく、がん遺伝子やがん抑制遺伝子に傷がつかなかった人は老化し、そうでない場合はがんになる。
→がんになるかならないかは確率の問題だが、活性酸素が放出されないミトコンドリアを増やせば、遺伝子損傷が起こる総回数を減らすことができる。
 
※参考資料『太田成男(2010)体が若くなる技術 サンマーク出版』

細胞周期の異常と老化

●p16遺伝子、細胞周期、老化
 
・p16は、細胞周期のG1期で周期が回るのを止める分子。
・p16が強く発現するということは細胞が増えにくくなっているということで、細胞が老化していると考えられている。
・マウスの実験によると、年をとっていくなかで、p16がまず発現してきた臓器は、腸と腎臓だった。腸と腎臓が最も早く老いると考えられる。これは、腸と腎臓が血液を最も使う臓器であることに関係している。
 
※参考資料『伊藤裕(2011)腸!いい話 朝日新聞出版』

 

●細胞周期と老化
 
・細胞周期は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)が制御。
※キナーゼとは、タンパク質にリン酸基を加える事により、タンパク質の性質を変化させる酵素。
・細胞老化とは、細胞周期の永久停止。老化細胞では、CDKの活性が非常に低下している。
 
●p21、p16Ink4遺伝子とそれらが作るタンパク質
 
・老化した細胞でp21、p16Ink4遺伝子が作るタンパク質が蓄積されていた。
・上記2つのタンパク質は、CDKに直接結合し、キナーゼ活性を阻害する。
 老化細胞では、上記タンパク質の蓄積によってCDK活性が低下し、細胞周期が永久停止する。
・ストレスで細胞周期停止因子が誘導されると、細胞老化が促進される。
 
※参考資料『近藤祥司(2009)老化はなぜ進むのか 講談社』

p53遺伝子と老化

●p53遺伝子、ミトコンドリアと老化
 
・p53遺伝子を不活性化した細胞では、ミトコンドリアの酸素消費(エネルギー産生)が30%低下する。
 p53遺伝子の活性を奪っても、細胞全体のATP産生は低下していない。
 これらの細胞は老化も抑制されていた。
→これら老化しない細胞では、解糖系(酸素を使わず、グルコースを分解してエネルギーを得る、細胞質基質で行われる)代謝が亢進している。
 
●個体老化とp53遺伝子
 
・p53部分活性型マウスは、個体老化が促進される。
・p53遺伝子を余分に持たせたマウス(スーパーp53マウス)は、約16%長生きし、ガンの発生も減った。
 p53遺伝子は、細胞周期遺伝子やアポトーシス関連遺伝子を活性化させるだけでなく、酸化ストレス関連遺伝子も活性化する?
 スーパーp53マウスは、酸化ストレス耐性を持っていた。
 
●炎症性ストレス、p53遺伝子と老化
 
・細胞間での情報のやり取りに、サイトカイン・ケモカインという分泌物質が関わっている。
・2つの炎症関連分泌物質(PAI-1、CXCR2ケモカイン)が細胞老化を促進している。
 炎症は、感染除去、傷害修復に必要なプロセスだが、炎症が長引くと局所的な臓器傷害や血管傷害が引き起こされるほか、酸化ストレスが励起される。
 
・PAI-1は、p53遺伝子が活性化されると産生される。
・実際のガン細胞のサンプルでCXCR2ケモカインを作る遺伝子の突然変異が確認された。
 CXCR2遺伝子が突然変異によりCXCR2ケモカインを作ることができなくなり、その老化促進効果も消失し、ガン形成を助けている原因となる。
 
○毛細血管拡張性運動失調症(アタクシア・テランジエクターシア)、早老病
 
・ATM遺伝子(原因遺伝子)が作るタンパク質は、シグナル伝達物質として異常をp53タンパク質に伝え、p53タンパク質を活性化させてチェックポイントを機能させる。
 
・ATM遺伝子の機能が異常だとチェックポイント機能が異常となって、異常な細胞が蓄積。酸化ストレスが蓄積しやすくなる。
 
※参考資料『近藤祥司(2009)老化はなぜ進むのか 講談社』

 

●p53遺伝子とミトコンドリア
 
・p53が変異を起こしてしまうとシトクロムc酸化酵素の合成もうまくいかなくなり、呼吸鎖や電子伝達系のシステムは異常をきたし、ミトコンドリアでの好気的なエネルギー生産はできなくなる。
 
※参考資料『瀬名秀明,太田成男(2007)ミトコンドリアのちから 新潮社』

ガン遺伝子とストレス老化

●ガン遺伝子Ras-val12に誘導されるストレス老化
 
・Ras-val12はがん遺伝子だが、多段階発ガン説からも類推されるように、この遺伝子だけではガンは発生しない。
 発ガン変異が起こってしまった細胞が、がん細胞にならないように老化を誘導するなんらかの防御メカニズムが働いたのでは?
 
・正常細胞では老化のメカニズムが働き良性腫瘍で留まるが、さらになんらかの遺伝子変異が追加で起こると、老化せずに悪性腫瘍へと進展してしまう。
 
※参考資料『近藤祥司(2009)老化はなぜ進むのか 講談社』

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