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- 果物・野菜と抗酸化サプリメント
- フリーラジカル、酸化ストレスに対する抗酸化物質の作用
- 抗酸化サプリメントの期待される効果
- 抗酸化サプリメントの臨床試験結果
- マルチビタミン・ミネラル
- オメガ3サプリメント
- その他のサプリメント
- 臨床試験でサプリメントの結果がよくない理由
- 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
- ネットニュースによる関連情報
果物・野菜と抗酸化サプリメント
●野菜・果物に抗酸化物質が含まれているが、抗酸化物質のみ抽出した場合の効果は? ・野菜や果物の多い食事は抗酸化物質の宝庫であり、健康に良いということがわかっているが、研究によって抗酸化サプリメントによる病気の予防効果が示されているわけではない。 ・野菜や果物をより多く摂る人たちは、いくつかの病気にかかるリスクが低くなることが研究結果から分かっているが、野菜や果物に含まれる抗酸化物質の量が関係するのか、それともその他の成分が関係するのか、またはその人たちの食事にその他の要因かあるのか、その人たちの生活様式に関係があるのかは分かっていない。 ・10万人以上を対象に、抗酸化物質が心血管系疾患やがん、および白内障などの慢性疾患の予防に効果があるのかを厳密な科学的調査が行われたが、抗酸化物質がこれらの病気発症のリスクを減らすことはほとんどなかった。 ●抗酸化サプリメントの安全性は? ・"食品中の抗酸化物質"の安全性については問題ないが、高用量の"抗酸化サプリメント" は健康に害をおよぼす可能性がある。 ・高用量のβ-カロテンサプリメントを喫煙者が服用すると、肺がんのリスクが高くなる可能性があったり、高用量のビタミンEサプリメントを服用すると前立腺がんや脳卒中の一種のリスクが高くなる可能性がある。 ※参考情報 抗酸化物質と健康 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
●野菜・果物の栄養と抗酸化サプリメントの違い ・標準的なマルチビタミンに含まれる栄養素は10~25種だが、果物や野菜には、数百もの体に良い成分が入っている。 ・マルチビタミンに含まれるビタミンCは、かんきつ類のビタミンCほど有効ではないと考えられている。 かんきつ類のビタミンCは、食物繊維、フラボノイド、カロテノイドなどに囲まれていて、これらが一体となって作用する場合との違いがあるようだ。 ※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』
フリーラジカル、酸化ストレスに対する抗酸化物質の作用
●フリーラジカルと酸化ストレス ・フリーラジカルとは、運動したり、食べた物をエネルギーに変えたりする時に自然に体内に作られる非常に不安定な分子。 たばこの煙や大気汚染、日光などの様々な環境要因から体内にフリーラジカルが生じる場合もある。 ・フリーラジカルは、細胞の損傷を引き起こす"酸化ストレス"の原因となる。 ・酸化ストレスは、がん、心血管系疾患、糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、白内障などのような様々な病気の一因であると考えられている。 ●抗酸化物質の作用 ・抗酸化分子は、実験室での実験(培養細胞や動物を使った実験)において、酸化ストレスの作用を弱めることが示されている。 しかし、高用量の抗酸化物質をサプリメントで取ることは、実際に体に良いのかどうか議論があるところ。また抗酸化サプリメントを過剰に取ることは有害となる可能性があるという懸念もある。 ※参考情報 抗酸化物質と健康 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
●ビタミンと抗酸化作用 ○脳内のフリーラジカルとビタミン ・ビタミンCは抗酸化物質で、フリーラジカルをどんどん無力化してくれる。フリーラジカルは、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中などに関与している。 ○フリーラジカルの良い効果 ・免疫システム(白血球とマクロファージ)がバクテリアを殺す際に用いられ、細胞がシグナルを送るプロセスでも利用される。 ○過剰な酸化作用の悪影響 ・過剰な酸化作用が、しわ、代謝の低下、肥満、心臓病、がん、認知症、その他の病気や老化を引き起こすと推測している。 ○体の抗酸化機能 ・グルタチオン還元酵素、グルタチオン・ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、スーパーオキシド・ジスムターゼなどの酵素や、ビリルビン、尿酸などの化学物質によって、フリーラジカルを中和する。 ・食品から容易に得られるビタミンA、C、Eなどは、フリーラジカルに電子を与え、酸化の悪循環を断つ。 ○体が望んでいないときにビタミンサプリメントで過剰なフリーラジカルを抑制したらどうなるのか? ・フリーラジカルの量を調整している体の働きを阻害してしまうかもしれない。 ※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』
抗酸化サプリメントの期待される効果
●ビタミンの薬理作用 ・必要な量の数倍くらいのビタミンの摂取によって、健康効果が期待できるとする説がある。薬理作用。 ・薬理作用を発揮する量のビタミン摂取によってビタミンの生理作用がより活発になり、体の機能を変化させるため、疾病予防になるという考え。 ・効果的と報告されているものとして、ビタミンAががんや皮膚疾患、ビタミンDが高齢者や女性の骨粗しょう症、ビタミンEが動脈硬化やアルツハイマー病、ビタミンB群が糖尿病や動脈硬化、ビタミンCはがんや動脈硬化等多くの疾病。 ※参考資料『阿部尚樹,上原万里子,中沢彰吾(2015)食をめぐるほんとうの話 講談社』
・実験室の研究では、抗酸化物質はフリーラジカルと相互に作用し、そのフリーラジカルを安定させることによって細胞の損傷を予防することがわかっている。 ※参考情報 抗酸化物質と健康 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
抗酸化サプリメントの臨床試験結果
※β-カロテンについては以下の記事参照。
カロテノイド、リコペンの概要、効果、健康影響の”サプリメントによる摂取”
※セレンについては以下の記事参照。
ミネラル セレンの概要の”セレンと循環器病との関連”、”セレンとがんとの関連”、”セレンとフレイル、認知機能との関連”
※ビタミンEについては以下の記事参照。
ビタミンEの概要、効果、病気予防効果の”ビタミンEと循環器病との関連”、”ビタミンEとがんとの関連”、”ビタミンEとフレイル、認知機能との関連”
※ビタミンCとの関連
ビタミンCの概要、効果、病気予防効果の”ビタミンCと循環器病との関連”
カロテノイド、リコペンの概要、効果、健康影響の”サプリメントによる摂取”
※セレンについては以下の記事参照。
ミネラル セレンの概要の”セレンと循環器病との関連”、”セレンとがんとの関連”、”セレンとフレイル、認知機能との関連”
※ビタミンEについては以下の記事参照。
ビタミンEの概要、効果、病気予防効果の”ビタミンEと循環器病との関連”、”ビタミンEとがんとの関連”、”ビタミンEとフレイル、認知機能との関連”
※ビタミンCとの関連
ビタミンCの概要、効果、病気予防効果の”ビタミンCと循環器病との関連”
○米国国立衛生研究所(NIH)の大規模で長期の二重盲検 ・健常ボランティアが無作為に、抗酸化物質の投与群またはプラセボ投与群に割付けられて実施。 ・3件の大規模な臨床試験であり、高用量のβ-カロテンサプリメントを単独で摂るか、または他の栄養素と併用するかを検討した。 ・全ての研究ではがんや心血管系疾患を予防しないことが証明されたが、ある臨床試験では、β-カロテンサプリメントは喫煙者の肺がんリスクを高め、また別の臨床試験ではβ-カロテンとビタミンAを含むサプリメントが同じ作用を引き起こすことがわかった。 ○ビタミンC、Eおよびβ-カロテンのサプリメント、女性の抗酸化物質に関する心臓血管調査(Women’s Antioxidant Cardiovascular Study) ・心血管系イベント(心臓まひや心臓発作、または心血管系疾患による死亡)に対して有効ではないとわかった。 ・40歳以上で心血管系疾患のリスクの高い女性医療スタッフ8,000名以上を対象にした研究では、糖尿病やがんの発病を抑える効果もないとわかった。 ・抗酸化サプリメントはこの調査において、65歳以上の女性の認知機能低下を遅らせることもないことがわかった。 ※参考情報 抗酸化物質と健康 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
●抗酸化サプリメントのがんに対する効果 ○ランダム化二重盲検プラセボ対照試験、SU.VI.MAX試験 ・フランスの健康成人13,017人に、アスコルビン酸120mg、ビタミンE 30mg、β-カロテン6mg、セレン100μg、亜鉛20mgの抗酸化物質を補給するか、またはプラセボを投与した。 ・追跡期間中央値7.5年の時点では、抗酸化物質の補給によってがんの全発生率は男性で低下したものの、女性では低下しなかった。 ・ベースラインの抗酸化状態は、男性ではがんリスクと関連していたが、女性では関連がみとめられなかった。 ・追跡期間の中央値7.5年の時点で、男性および女性のいずれにも、混合サプリメントの虚血性心血管疾患に対する効果はみられなかった。 ○Physicians’ Health Study IIに参加した男性の臨床試験 ・中年および高齢の男性では、ビタミンC 500 mg/日+ビタミンE 400IUのサプリメントを1日おきに投与し、平均8年間の追跡調査を行ったところ、プラセボと比較して前立腺がんおよび全がん発症リスクを減少させることはできなかった。 ○Women’s Antioxidant Cardiovascular Studyに参加した女性の臨床試験 ・ビタミンC(500 mg/日)を平均9.4年間補給したところ、プラセボと比較して全がん発症率およびがん死亡率に有意な効果はみられなかった。 ○中国のLinxianで実施された大規模介入試験 ・ビタミンC(120mg)+ モリブデン(30μg)のサプリメントを5~6年間にわたり毎日摂取したところ、食道がんまたは胃がんの発症リスクに有意な影響はなかった。 ・10年間の追跡期間中、この補給レジメンによる食道がん、胃がん、その他のがんの総罹患率および総死亡率への有意な影響はみられなかった。 ○2008年に実施された消化器がんの予防に関するビタミンCやその他の抗酸化サプリメントのレビュー ・ビタミンC(あるいはβ-カロテン、ビタミンAまたはビタミンE)が消化器がんを予防するという確実なエビデンスは得られなかった。 ○Coulterらによるレビュー ・ビタミンEと組み合わせたビタミンC補給は、健康人のがんによる死亡リスクに有意な効果を及ぼさないことが判明している。 ●抗酸化サプリメントの心血管疾患に対する効果 ○ランダム化二重盲検プラセボ対照試験、SU.VI.MAX試験 ・フランスの健康成人13,017人に、アスコルビン酸120mg、ビタミンE 30 mg、β-カロテン6mg、セレン100μg、亜鉛20mgの抗酸化物質を補給するか、またはプラセボを投与した。 ・追跡期間の中央値7.5年の時点で、男性および女性のいずれにも、混合サプリメントの虚血性心血管疾患に対する効果はみられなかった。 ○Women’s Angiographic Vitamin and Estrogen(WAVE)試験 ・15%~75%の冠動脈狭窄を少なくとも1箇所持つ閉経後女性423人を対象。 ・500mgのビタミンCと400 IUのビタミンEのサプリメントを1日2回補給したところ、心血管疾患に対する有益な効果が得られなかっただけでなく、プラセボと比較して全死因死亡率が有意に増加した。 ○2006年、ランダム化対照試験のメタアナリシス ・抗酸化サプリメント(ビタミンC、ビタミンEおよびβ-カロテンまたはセレン)はアテローム動脈硬化症の進行に影響を及ぼさないという結論に達した。 ○ビタミンCが心血管疾患の予防および治療に及ぼす効果のシステマティック・レビュー ・ビタミンCによって心血管疾患の予防に好ましい効果が得られないことが判明。 ○一般集団栄養介入試験、Linxian試験の追跡データの検討 ・この試験では、1日120mgのビタミンCと30μgのモリブデンを5~6年間補給したところ、積極的介入終了後10年間の追跡期間中に脳血管疾患による死亡リスクが有意に(8%)低下した。 ○多くの研究の傾向、注意点 ・Linxian試験のデータは効果の可能性を示唆しているものの、全体としてほとんどの介入試験の結果は、ビタミンCサプリメントが心血管疾患を予防したり、その罹患率や死亡率を減少させたりするという確実なエビデンスを示してはいない。 ・ビタミンCの臨床試験データは、ヒトの体内でビタミンCの血漿中および組織中濃度が厳密にコントロールされているという事実によって制限されている。 被験者のビタミンC濃度が試験への登録時にすでに飽和状態に近かった場合、ビタミンCを補給しても測定結果に違いはほとんどないか、または全くみられないと考えられる。 ※参考情報 ビタミンC | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
●抗酸化ビタミン全般 ○合計23万人対象の67のランダム化試験のメタ分析 ・抗酸化作用のあるビタミン剤が死亡率を減らすことはなく、β-カロテンやビタミンA、Eは、むしろ死亡率を高めていた。 ・サプリメントを服用するグループの肺がんの発生率が高くなった。 ※参考資料『ティム・スペクター(2014)双子の遺伝子 ダイヤモンド社』
マルチビタミン・ミネラル
●過剰摂取に対する注意 ・マルチビタミン・ミネラルサプリメント(MVM)はさまざまな栄養摂取を適正化することもあるが、一方でそれ以外の栄養では許容上限量を超えて摂ってしまいかねない。 個々には栄養の保険として働くこともあるが、それ以外では過剰摂取の懸念がある。 ・ビタミンA、鉄、ナイアシン、亜鉛などで過剰摂取の恐れがあるとする研究もある。 ・いくつかの研究によると、MVM使用者は使用していない人に比べて、食事から摂る微量栄養素が多い傾向にあることがわかった。 ●各機関のMVMに対するマルチビタミン・ミネラルサプリメント(MVM)に対する評価 ・専門委員会は2006年の米国国立衛生研究所の(NIH)慢性疾患予防に対するMVMのカンファランスに出席し、"現在のところアメリカにおける慢性疾患予防のためのMVMの使用に関しては賛否とも推奨するにはエビデンスが不十分である"と結論付けた。 ・米国予防特別委員会による過去の評価でも、がんや心血管系疾患の予防のためにMVMを使用することの賛否についてはエビデンスが不十分である、というほぼ同様の結論に達した。 ・世界がん研究基金と米国がん研究協会による研究の包括的評価では、一般の人ががんを予防する目的でサプリメントを使用することは望ましくないと述べ、理由として効果とリスクが予測できないこと、予測不能な有害事象が発現する可能性があることがあげられている。 ●健康効果に対する研究結果 ○女性の健康イニシアティブ(Women's Health Initiative)の観察研究 ・50-79歳の閉経後女性161,808人を対象としたがん、心臓病、骨粗鬆症に関する健康とリスク研究。 ・およそ41.5%の女性がMVMを摂っており、観察期間は中央値8年以上であったがこれら製品の使用と、一般的ながんおよびすべてのがん、心疾患のリスク、全死亡率のいずれについても関連性が認められなかった。 ○ハワイとカリフォルニア住人の観察研究 ・45-75歳の男女182,099人を対象とした、平均観察期間11年以上の研究。 ・ほとんどがアフリカ系米国人、ハワイ原住民、日系アメリカ人、ラテン系、ノンヒスパニック系白人で、およそ男性の48%、女性の52%がミネラルを含む、含まないに関わらず何らかのマルチビタミンを摂っていたが、健康効果に対して関連性が認められなかった。 ○プロスペクティブ研究(前向き研究) ・スウェーデン人女性によるプロスペクティブ研究ではMVMの使用と乳がんリスクの増加に関連性が認められた。 一方、米国の別の研究ではそのような関連性は認められなかったが、MVMの使用がアルコール摂取女性におけるエストロゲン・プロゲステロン レセプターネガティブ乳癌とすべての乳癌のリスクを減少させるかもしれないという結果が示された。 ・ある大規模プロスペクティブ研究では進行性かつ致死性の前立腺がんのリスクはMVMを1週間に7回以上摂取している男性の方が全く摂取していない男性よりも高いという結果が報告された。 ・男性医師におけるプロスペクティブ研究ではMVMの使用と心血管障害の間に何ら関連性は認められなかった。 しかしながら、スウェーデン人成人女性において、特にMVMを少なくとも5年間使用した場合には、心筋梗塞のリスク減少と関連性が認められた。 ・アイオワ州での閉経後女性の研究では18年間追跡調査を行い、MVM(または鉄など特定の栄養素)を摂取した群では使用していない群に比べてわずかながらしかし有意な全死亡率の増加を示した。 ○Physicians Health Study II ランダム化コントロール試験 ・米国の50歳以上の男性医師14,641人がランダムに割り付けられMVMかプラセボを連日摂取し11.2 年間(中央値)追跡調査を行った。 ・MVMを摂取した群では少なくとも重大な心血管イベント、心筋梗塞、脳卒中、心血管関連死は認められなかった。 ・MVMの摂取はがん発生リスクを8%有意に減少させたが、前立腺がんとすべてのがん死亡率は減少させなかった。 ○French Supplementation en Vitamines et Mineraux Antioxydants (SU.VI.MAX) study ランダム化コントロール試験 ・13,017人の成人をランダムにプラセボ群とビタミンC(120 mg), ビタミンE(30 mg), βカロテン(6mg),セレン(100μg), 亜鉛(20mg)を適量含むサプリメントを連日使用群に割り付けた。 ・7.5年間使用した後、サプリメントの使用により男性における全がん発生率と全死因死亡率は低下したが、女性では低下しなかった。 ・このサプリメントの心血管障害に対する予防効果は認められなかった。 ●特定の集団に対する特別な見解 ○閉経後の女性 ・カルシウムとビタミンDの補充は閉経後女性の骨塩密度の増加、骨折率の減少をもたらすと思われる。 ○50歳以上の人 ・推奨量のビタミンB12を主に栄養強化食品かサプリメントから摂取すべきである。 なぜなら、ビタミンB12は通常、食物中でタンパク質と結合しており、その吸収能が若年層よりも低下しているためである。 ※参考情報 マルチビタミン・ミネラル | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
●マルチビタミン ○米国医療研究・品質調査機構(2010年) ・マルチビタミンに関する63件のランダム化対照試験を分析。 ・大半の人にとってマルチビタミンの摂取は、がんや心臓病の予防にならないことを発見。 ・唯一の例外は、栄養が不足している発展途上国の人々だった。 ○シアトルのフレッド・ハッチンソン・がん研究センター(2009年) ・閉経後の女性16万人を約10年間追跡調査。 ・マルチビタミンは、がん、心臓病、その他の病気を防ぐことはできなかった。 ○スウェーデンで行われた研究(2010年) ・マルチビタミンを飲んでいた女性が乳がんになる割合は、飲まなかった女性より10年間で19%高かった(2010年スウェーデン) ※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』
オメガ3サプリメント
・カナダ、オンタリオ州のマクマスター大学の研究者らが主体となって行った。過去に心臓発作、脳卒中、その他の心臓疾患を患ったことのある高血糖か糖尿病の患者1万2536人を追跡。 オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)を含む魚油を摂取したグループとプラセボ摂取グループで、心疾患、脳卒中などで効果が認められなかった。 ※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』
その他のサプリメント
※カルシウムについては以下の記事参照。
ミネラル カルシウムの概要の”サプリメントによるカルシウム摂取”
※ビタミンDについては以下の記事参照。
ビタミンDの概要、効果、病気予防効果の”ビタミンDとフレイル、骨粗鬆症との関連”
ミネラル カルシウムの概要の”サプリメントによるカルシウム摂取”
※ビタミンDについては以下の記事参照。
ビタミンDの概要、効果、病気予防効果の”ビタミンDとフレイル、骨粗鬆症との関連”
臨床試験でサプリメントの結果がよくない理由
●サプリメントを飲む人の特徴 ・サプリメントを飲む人が、比較的健康なことはよく知られている。一方、大半のサプリメントに効果がないらしいという研究結果が出ている。 サプリメントを飲む人が健康なのは、体に気をつけ、教育レベルが高く、経済的に豊かで、運動を習慣にして、全粒粉のものを食べることが多いからで、サプリメントとは必ずしも関係しない。 ※参考資料『マイケル・ポーラン(2010)フード・ルール 東洋経済新報社』
●サプリメントと食品との違い ・ビタミンEやビタミンCを食品から摂取すると、アルツハイマー病の予防に効果があるという報告があるが、それらのサプリメントでは効果がないことが分かっている。 ・サプリメントを摂取した場合、その成分だけが高濃度であるため、人の体内代謝(成分間の相互作用など)や栄養バランスを乱してガンの発症は促進したのではないかと推測されている。 ●抗酸化サプリメントが効かない理由 ○米国ノースウェスタン大学とコールドスプリングハーバー研究所の研究チームの研究 ・細胞内における活性酸素等の酸化成分と抗酸化成分に関する最新の研究から、両者は、酸化還元反応に関与しており、自然界ではそのバランスが重要であることが明らかになった。 ・抗酸化サプリメントなどを摂取すると、細胞に必要な微量の活性酸素などの効果も打ち消してしまうだけでなく、ガンの増殖に関与するミトコンドリアに作用しないため、がん細胞の増殖を抑制することができず、がん予防に対する有効性を示さないと論証している。 ※参考資料『田中敬一,原田都夫,間苧谷徹(2016)科学的データでわかる果物の新常識 誠文堂新光社』
●臨床試験で抗酸化サプリメントの効果が証明できなかった理由は? ・野菜・果物などの抗酸化物質が豊富な食事の健康効果は、実際のところ、抗酸化物質よりもむしろ同じ食品に含まれる他の物質や他の食事、または他の生活様式によって引き起こされる可能性がある。 ・サプリメントの研究において高用量の抗酸化物質を取ることと、食品に含まれる少量の抗酸化物質を取ることとは異なる可能性がある。 ・食品に含まれる抗酸化物質の化学成分とサプリメントの化学成分との違いが、その効果に影響する可能性がある。 たとえば、食品中にはビタミンEの8種類の化学形態が存在する。その一方で、ビタミンEサプリメントには普通、アルファトコフェロールという1種類しか含まれておらず、このアルファトコフェロールがほぼ全てのビタミンEの研究に使用されている。 ・フリーラジカルと健康の関係は、以前考えられていたよりもっと複雑かもしれない。 ある環境の下では、フリーラジカルは実際、有害というよりむしろ有益な作用が期待できる。フリーラジカルを除去することは、好ましくないことかもしれない。 ・何十年もかけて進行する循環器病やがんのような慢性疾患を予防できるほど十分に長い時間をかけて、抗酸化サプリメントを摂取することはおそらくないだろう。 ・これら研究の被験者は、一般住民かもしくはある特定の病気のリスクが高い人たちだった。必ずしも酸化的ストレスが増加した状態ではなかった。 抗酸化物質は病気の予防はしないが、酸化的ストレスの増加した人々の病気の予防には役立つかもしれない。 ※参考情報 抗酸化物質と健康 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
●抗酸化ビタミンの病気予防効果に対する一致しない研究結果 ・過去数十年間の、被験者が1000人以上の規模のビタミン研究のほぼすべてが、がんのリスクの上昇を示している。 大量のビタミンや、その他の抗酸化物質を摂取して、体のフリーラジカル生成のメカニズムを止めると、自らをコントロールしようとする体の力を奪う事になる。 ・体は複雑なシステムであり、変数を一つ変えただけで様々な影響が及ぶので、抗酸化物質を必要以上に摂取すると、そのシステムを間違った方法に向かわせる恐れがある。 ・治験で抗酸化剤がマイナスの影響を及ぼしたのは、被験者がすでに(抗酸化作用のある)ビタミンやミネラルを十分に摂取していたからだ、と説明することもできる。 ・抗酸化剤が有益かどうかは、酸化ストレスが慢性病や老化の原因なのか、あるいは単にその結果なのかということを考える必要がある。 細胞の酸化と抗酸化の微妙なバランスを、人為的に調整するのは有益なのかそれとも有害なのか。 ※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』
●サプリメント、健康食品と医薬品 ・医薬品は5~10年かけた追跡調査が行われているが、サプリメントや健康食品は莫大な費用がかかるため行うことは出来ない。 ※参考資料『岡田正彦(2015)医者が絶対にすすめない「健康法」 PHP研究所』
●ビタミン、サプリメント ・あるビタミンや微量栄養素が足りないからといって、その分をサプリメントで補充すればすむわけではないことが明らかになった。 ・体がある栄養素をどのくらい吸収できるかは、ほかの栄養素の有無に大きく左右される。 ※参考資料『ジョン・J.レイティ(2014)GO WILD野生の体を取り戻せ! NHK出版』
多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
●ビタミンサプリメント摂取とがん・循環器疾患 ・5年間のビタミンサプリメント摂取の変化と全がんおよび循環器疾患発生率との関連を調べた。 ○結果 ・女性では、非摂取者に比較して、過去摂取者で17%、摂取開始者で24%、全がんリスクが上昇していた。 循環器疾患に関しては、女性では、非摂取者に比較して、継続摂取者で40%リスクが減少していた。病型別に見ると脳梗塞に対して統計学的に有意なリスクの減少がみられた。 ・男性では、ビタミンサプリメント摂取は全がんリスクにも循環器疾患リスクにも関連していなかった。 ○推察 ・女性のビタミンサプリメント過去摂取者でも全がんリスクが上昇したが、これはこのグループの生活習慣・健康意識などが影響しているのではないかと考えられる。 今回の研究で、女性のビタミンサプリメント過去摂取者のグループは、他のグループと比較して、肥満者や喫煙者、高血圧や糖尿病治療の割合が高く、一方身体活動量が低いなど、不健康な特徴を有していた。 ・女性のビタミンサプリメント継続摂取者は、他のグループと比べて、肥満者の割合が少ない、検診受診率が高い、果物や食事からの葉酸・ビタミンCの摂取が多いなどの特徴があり、このような健康的な生活習慣や健康意識が高いことも影響して、循環器疾患のリスクを下げたのかもしれない。 ・今回の対象者で最も摂取されていたビタミンB群サプリメントは、ホモシステインの代謝に関連していることが知られており、脳卒中のリスクを下げる可能性があると報告している海外の研究もあるので、もしかしたらビタミンB群サプリメントが女性の循環器疾患リスクを低くすることに、一部影響したのかもしれない。 ○ビタミンサプリメントを摂取した方がよいのか ・今回、女性において、ビタミンサプリメントの継続的な摂取で、循環器疾患発症リスクの低下がみられたことに関しては、ビタミンB群サプリメントの効果も考えられるが、ビタミンB群サプリメントの摂取割合も、摂取しているビタミンサプリメントの商品名回答者の中で30-40%(5年後調査時)なので、ビタミンB群サプリメントのみの結果とは言えない。 また最近海外の研究で、虚血性心疾患患者において葉酸・ビタミンB12の併用療法が、がん罹患・全死亡リスクの上昇に関連したという結果が報告されるなど、ビタミンB群サプリメントの効果・安全性ともに確立していないので、今回の研究だけでは摂取を推奨することはできない。 ・がんに関しては、体調が悪いからと摂取を始めたり、不健康な生活の代替手段として摂取したりすることは、予防につながらない結果とななった。 ・男性では、どのビタミンサプリメント摂取パターンも、全がんおよび循環器疾患リスクとの間に、とくに関連は認められなかった。 ○他の疫学研究の注意点 ・疫学研究では、ビタミンサプリメントとがんや循環器疾患との関連については、予防するという研究もあれば、関連がないという研究や、リスクを上げると報告している研究もあり、結果が一貫していない。 この理由として、ビタミンサプリメントの摂取は長期間で変わりうる行動であり、一時点の調査ではその摂取の変化を捉えられないことが考えられる。
ネットニュースによる関連情報
●カルシウム、ビタミンDサプリで心血管疾患のリスク増加? ・カルシウムとビタミンDのサプリメントの摂取で骨粗鬆症と骨折の予防効果が期待できるが、一方で、カルシウムサプリの摂取は心臓発作や脳卒中のリスクを高める可能性がある。
●抗酸化サプリメントの弊害 ・無作為臨床試験において、少しでも効果が見られた抗酸化物質は皆無だった。そればかりか、一部には有害性を持つ場合がある。 ・活性酸素は病気を誘発するという負の側面があるだけでなく、体内で多くの重要な機能を果たしている。たとえば、免疫システムやホルモンの合成といったものがそれにあたる。 明らかな欠乏症であると診断されない限り、サプリメントは服用しないほうがよいと警告している。
●カルシウムサプリメント摂取で心臓病のリスク増加? ・2700人以上を対象に食事アンケートと、CTスキャンを2回(各回の間隔は10年とした)受けてもらった。 ・被験者の46%はカルシウムサプリメントを利用していたが、解析の結果、彼らは冠動脈石灰化の度合いが10年間で22%高まったことがわかった。