健康情報のメモ

ミネラル ヨウ素の概要

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. ヨウ素の概要
  2. ヨウ素の吸収
  3. ヨウ素を多く含む食品
  4. ヨウ素不足の問題
  5. ヨウ素過剰摂取のリスク
  6. ヨウ素と生活習慣病との関連

ヨウ素の概要

・人体中ヨウ素の70~80%は甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンを構成する。
 甲状腺ホルモンは、生殖、成長、発達等の生理的プロセスを制御し、エネルギー代謝を亢進させる。また、胎児の脳、末梢組織、骨格などの発達と成長を促す。
 
・日本ではヨウ素の摂取量が必要量を大幅に上回っているため、不足が問題となることはないが、過剰摂取により健康障害が引き起こされるため、ヨウ素の摂取を目的としたサプリメント類の利用には注意が必要。
・ヨウ素は甲状腺ホルモンであるサイロキシンとトリヨードサイロニンの産生に欠かせない物質。
 甲状腺ホルモンは、甲状腺を刺激して代謝速度を調節する。
・エネルギー産生、神経機能、毛髪・皮膚の発育に関わる100以上の酵素系にも存在する。
 
○アンチエイジングで期待されている効果
・体脂肪のエネルギーへの変換を促進し、それにより基礎代謝率を調節する。
・放射性物質による中毒効果を防御する。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

ヨウ素の吸収

・摂取されたヨウ素は、化学形態とは無関係に、消化管でほぼ完全に吸収される。
 吸収されたヨウ素のほとんどは甲状腺に取り込まれる。残ったヨウ素の大部分は腎臓から尿中へ、一部は糞便中に排出される。
 
●ヨウ素蓄積を阻害する物質・食品
 
・食品には、甲状腺へのヨウ素蓄積を阻害し、甲状腺腫を起こすことがあるゴイトロゲンといわれる化学物質を含むものがある。
 ゴイトロゲンには、アブラナ科植物などに含まれるチオシアネート、豆類に含まれるイソフラボンなどがある。
 大豆製品にはイソフラボンを高濃度に含むものがあるため、大豆製品の多食はヨウ素の体内利用に影響するかもしれない。

ヨウ素を多く含む食品

・ヨウ素は海水中に多く存在するため、海藻類や魚介類に豊富に含まれている。

ヨウ素不足の問題

・海産物を主とした高ヨウ素摂取の伝統的食習慣を持つ日本では、ヨウ素の摂取量が必要量を大幅に上回り、不足が問題となることない。
 
・ヨウ素の摂取が不足すると、甲状腺ホルモンの生成が出来なくなる。そのため、下垂体からの甲状腺刺激ホルモンの分泌が増加し、甲状腺の発達を促進することで、ヨウ素不足を補おうとするが、この状態が続くと、甲状腺の肥大、甲状腺腫が起こる。
 
・ヨウ素欠乏による甲状腺ホルモンの生成不足により、精神発達の遅滞、甲状腺機能低下症、クレチン症、成長発達異常、舌の巨大化、嗄声、動作の緩慢さなどが起こることが知られている。

ヨウ素過剰摂取のリスク

・ヨウ素は海藻類、特に昆布に高濃度で含まれるため、日本人は世界でもまれな高ヨウ素摂取の集団である。
 
・日常的にヨウ素を過剰摂取すると、甲状腺でのヨウ素の有機化反応が阻害されるが、甲状腺へのヨウ素輸送が低下する”脱出(escape)”現象が起こり、甲状腺ホルモンの生成量は正常範囲に維持される。
 日本人の場合は、ヨウ素摂取の形態が極めて特異的であり、恐らく脱出現象が成立し、ヨウ素過剰摂取の影響を受けにくいと考えられる。しかし、脱出現象が成立していても、大量にヨウ素を摂取すれば、甲状腺ホルモン合成量は低下し、軽度の場合には甲状腺機能低下、重度の場合には甲状腺腫が発生する。
 
・ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺中毒症が起こる。この他、体重減少、頻脈、筋力低下、皮膚熱感などの症状が見られることもある。

ヨウ素と生活習慣病との関連

※甲状腺がんとの関連は以下の記事も参照。
甲状腺がんの概要の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
・連日1.7mg/日のヨウ素を摂取した人に甲状腺機能低下が生じることから、アメリカ・カナダの食事摂取基準は成人のヨウ素の耐容上限量を1.1mg/日としている。
 実際、中国やアフリカでは、飲料水からの1.5mg/日を超えるヨウ素摂取が甲状腺腫のリスクを高めている。
 一方、日本人のヨウ素摂取量は、前述のように、平均1~3mg/日だと推定できるが、甲状腺機能低下や甲状腺腫の発症は極めてまれである。
 
・日本の報告では、主に昆布だし汁からのヨウ素28mg/日の約1年間の摂取事例、昆布チップ1袋を約1か月食べ続けた事例など、明らかに特殊な昆布摂取が行われた場合に甲状腺機能低下や甲状腺腫が認められている。
 日本の健康な人を対象にした実験では、昆布から35~70mg/日のヨウ素(乾燥昆布15~30g)を10人が7~10日間摂取した場合に血清甲状腺刺激ホルモンの可逆的な上昇、27mg/日のヨウ素製剤を28日間摂取した場合に甲状腺機能低下と甲状腺容積の可逆的な増加が生じている。
 これらを最低健康障害発現量と考え、不確実性因子10を用いると、耐容上限量はそれぞれ2.8、3.5、2.7mg/日と試算できる。
 一方、北海道住民を対象にした疫学調査では、尿中濃度から10mg/日を上回るヨウ素摂取があると推定できる集団において、甲状腺機能低下の発生率が上昇している。ただし、この調査は、尿中ヨウ素濃度の測定が1回であるので、この調査結果より耐容上限量を算定するのは困難と考えられる。
 
・日本人を対象にして海藻類摂取状況と甲状腺がん発症との関連を検討した報告では、閉経後の女性で、海藻類をほぼ毎日食べる集団は、週2日以下しか食べない集団に比較して甲状腺がん、特に乳頭がん発症リスクが有意に上昇していた。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

モバイルバージョンを終了