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楽観の特徴
●刺激追求度と楽観 ・楽観を"刺激追求度"という指数を使って計測。 ・感覚的な快楽や興奮を欲する度合いであり、この度合いが高いほど強烈で激しい経験を追い求める傾向がある。 ・刺激追求度が高い人は低い人に比べ、脳内を循環するドーパミン値が高かった。 →刺激を強く追及する人は快楽中枢の活動度が高く、楽観を招きやすい。 ●楽観的なリアリスト ・楽観とはいつもただ上機嫌でいるだけではなく、意義深い生活に積極的に関わり、打たれ強い心を育み、"自分の状況をコントロールできる"という気持ちを持ち続けること。 ・楽観的なリアリストは、ただハッピーな思考をするだけで良い事が起きるなどとは考えておらず、自分の運命は自分でコントロールできると意識の底で信じている。 ・楽観が幸福につながるのは、こうした思考によって、人が人生に積極的に取り組むようになるから。 ・楽観的な思考と、行動を志向する性質とが結びついてこそ、楽観は様々な利益をもたらす。 ・多くの自己啓発本にある"ハッピーな思考はすべての問題を解決する"というアプローチとは似て非なるもの。いつも"こうなって欲しい"と期待するのが真の楽観主義というわけではない。 ポジティブに考えてさえいれば、事態が良くなる、というわけではない。"ポジティブに思考する力"ではなく、"ポジティブな行動を起こす力"が重要。 ●ポジティブな感情の拡張効果 ・ポジティブな感情はアイディアの幅を広げるのに役立ち、逆境を打開しやすくなる。 ・例えば、被験者に愉快なビデオを見せたりしてポジティブな気分にした状態で課題に対するアイデアを問うと恐怖映画などを見てネガティブな気分の被験者よりも多くのアイデアを考え付く。 →恐怖のようなネガティブな感情は、潜在的な脅威に注意を集中させてしまう。 ポジティブな感情は関心の幅や奥行きを広げる作用を持ち、概して創造性の向上につながる。 ・ポジティブな気分には上記のような即時的な効果とは別に、困難に持続的に取り組むための様々な"資産"(良き友人、趣味、気持ちの良い物理的環境など)をつくる働きもある。これらはどれも、困った事態が現実に起きたと時、打開するために重要な役割を果たす。 ※参考資料『エレーヌ・フォックス(2014)脳科学は人格を変えられるか? 文藝春秋』
楽観、プラス思考と脳
●プラス思考とRAS(網様体賦活系) ・何事も意識するとRASを活性化させることができる。 ・RASは脳幹にある細胞の集まりで、たくさんの情報の中から重要なものを選び出し、私たちの注意をそれに向けさせる役割を果たしている。 →前向きな気持ちにさせてくれるものを意識して探すことで、RASが次から次へと"幸福"を見つけてくれるようになる。 ※参考資料『マーシー・シャイモフ(2008)「脳にいいこと」だけをやりなさい! 三笠書房』
楽観、プラス思考と健康
●ポジティブと健康 ・ハーバード大学の卒業生の追跡調査から、悪い出来事をどうとらえるか、後ろ向きにとらえるか、前向きにとらえるかで、数十年後の健康状態が予測できることが分かった。 ・楽天的な人ほど風邪をひきにくく、ひいたとしても治りが早い、という調査結果がある。 ・血液検査では、前向きな人ほど感染症を防ぐT4細胞が多く、免疫力が高いことが分かった。 ○メイヨー・クリニックの研究 ・839人の患者に対する30年以上の研究 ・身のまわりの出来事を前向きにとらえる人は、早死にするリスクが低いことを発見した。 ○カトリックの高齢の修道女180人に対する調査 ・修道女が20代前半に書いた自伝を詳しく分析し、"幸福"や"愛"、"希望"といったポジティブな感情表現が登場する頻度を集計し、それを75歳から95歳までのあいだの死亡状況と比較した。 →前向きな感情表現の多かった修道女のほうが、そうでない修道女よりも平均で10年寿命が長かった。 ※参考資料『トム・ラス(2005)心のなかの幸福のバケツ 日本経済新聞社』
●楽観的と健康 ・多くの研究で、幸福な人、あるいは楽観的な人は、悲観的な人よりもたいてい健康であることが証明されている。 しかし、ほとんどの場合は関連性が認められただけで、因果関係は証明されていない。幸福だから健康なのか、それとも、健康だから幸福なのか? ・カリフォルニア州の児童1000人以上を対象にした長期に渡る研究で、楽観主義は、中年、あるいは老年の早いうちに死亡する傾向をもたらすと結論された。楽観的な人のほうがリスクを冒す機会が多いからだと思われる。 ※参考資料『バーバラ・エーレンライク(2010)ポジティブ病の国、アメリカ 河出書房新社』
●楽観と寿命の関係 ○修道女の研究 ・全米各地の180人のカトリックの修道女が手書きで書いた日記帳を検証。 ・修道女はみな生涯の大半を世間から隔絶された状況で過ごし、食事や生活習慣にも大きな差がない。 ・若い頃、陽気で明るい日記を書いていた修道女たちは暗い日記を書いていた同僚と比べ、平均で10年長生きしていた。 ※参考資料『エレーヌ・フォックス(2014)脳科学は人格を変えられるか? 文藝春秋』
笑顔
●笑顔 ・笑顔をつくる筋肉を動かす神経経路は2種類あり、大頬骨筋では随意的、眼輪筋では非随意的。 ・笑顔を分析する訓練を受けていない人でも、同じ人がつくる本当の笑顔と偽の笑顔を区別できるような、優れた直感を持っていることが明らかになっている。 ・顔の表情をつくってそれを認識できるという能力は、学習行為ではなく、誕生時、あるいはその直後から備わっている。 →生まれつき目が見えず、しかめ面や笑顔を一度も見たことがない子どもでも、自発的に、目の見える人とほぼ同じ様々な顔を表情をつくる。 ※参考資料『レナード・ムロディナウ(2013)しらずしらず ダイヤモンド社』
●笑顔と神経伝達物質 ・多くの研究から、脳で作られる幸せの化学物質は、日々の行動によって増やすことができることがわかっている。 ・ある感情を表現するために顔の筋肉を動かすと、それに応じて脳から特定の神経伝達物質が分泌される。 →たとえば顔をしかめると、コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンといったストレスホルモンが分泌され、高血圧や免疫機能の低下が進み、不安やうつ状態に対する抵抗力が弱まることが分かっている。 うつ状態の患者から眉間のしわを取り除くと、うつ状態がなくなってしまったという実験報告もある。 ・笑顔にもストレスホルモンの分泌を抑え、エンドルフィンなど、幸せをうながす化学物質や免疫力を高めるT細胞を生み出す効果があり、さらには筋肉を弛緩させ、痛みを和らげ、治癒の速度を上げる効果も期待できる。 ※参考資料『マーシー・シャイモフ(2008)「脳にいいこと」だけをやりなさい! 三笠書房』
※迷走神経の概要については以下の記事参照。 胃腸の基礎知識の"迷走神経、腸内の神経系" ●作り笑顔の効果 ・無理やりにでも笑顔を作ると、うつに関連する脳の領域が改善したように見える、ということが知られている。 ・中途半端な作り笑顔では効果はない。 →両目の端の筋肉まで使って大きな笑顔を作れば、幸福感を増やす脳のニューロンが発火する。それは、目の端の筋肉が迷走神経とつながっているため。 ※参考資料『ジョン・J.レイティ(2014)GO WILD野生の体を取り戻せ! NHK出版』
●ジョーク ・すべてのジョークにあてはまる共通点は、予想外の展開によって、与えられた事実をすべて解釈しなおさなくてはならなくなり、予想の方向が転換されること、つまり、落ちがあるということ。 ・笑いが生まれるには、新しい解釈が、どうということのない、ささいなものでなくてはいけない。 ・笑いというリズミカルな断続音は、遺伝子を共有する近縁者に、"このことに貴重な時間や労力を浪費するな。あれは間違い警報だ"という情報を伝えるために進化した、と考えている。 ※参考資料『V.S.ラマチャンドラン(2005)脳のなかの幽霊、ふたたび 角川書店』
楽観、プラス思考へ変える方法
●支援の法則 すべての世界はあなたに優しくできている ・悲しいことやつらいことがあっても"宇宙はいつも私の味方、これにはきっと大きな意図がある"と考える。 ・人生や世の中の出来事に対して受身になろうというのではなく、"すでに起こってしまったこと"を嘆いたり変えようとしたりしない。 ・宇宙はいつも自分を支え、成長させてくれている、と信じることが、自分と脳を成長させるカギとなる。 ※参考資料『マーシー・シャイモフ(2008)「脳にいいこと」だけをやりなさい! 三笠書房』
●バケツとひしゃくの理論 ・心の中にバケツがあり、バケツの中の水がいっぱいのときは気分がよく、少なくなると悪くなる。 ・心のバケツに水がいっぱい入っているとき、人は前向きで意欲にあふれている。バケツの水が増えるにつれて楽観的になる。 ・バケツが空のときは、後ろ向きで元気がなく、意欲を低下している。 ・このバケツは、他人に何かを言われたりされたりするたびに、水が増えたり減ったりする。 ・ひしゃくを使って他人のバケツに水を注げば(相手が明るくなるようなことを言ったりすれば)、自分のバケツにも水がたまる。逆に、ひしゃくで相手のバケツの水をくみ出せば(相手を傷つけるようなことを言ったりしたりすれば)、自分のバケツの水も減る。 ※参考資料『トム・ラス(2005)心のなかの幸福のバケツ 日本経済新聞社』
ネットニュースによる関連情報
●性格と免疫系との関係 ・UCLAと共同で、免疫系の活性を調節することで健康に影響を与える遺伝子発現と性格の関係を検討した。 平均年齢24歳(18-59歳)で女性86名、男性35名の計121名の複数の人種を含む健康な成人を対象に調査が実施された。参加者は性格テストを受け、外向性、神経質、開放性、感じのよさ、誠実さの5つの次元について評価された。 ・その結果、ネガティブな抑うつや不安といった感情が、貧しい健康状態を導く、という一般に言われているようなことはなさそうであり、免疫系の発現に影響するのは、外交性と誠実さであることを発見した。 外向性が炎症誘発性遺伝子の発現を有意に高め、逆に誠実さは低下させる。別の言葉で言うと、外向的な人物はより多くの人間に接触するために感染のリスクが高まるため、免疫系の活性が高い必要があるが、誠実であることは控えめであるために感染のリスクが低く免疫も低くてよいということである。 開放性もまた炎症誘発性遺伝子の発現を抑える傾向にあったが、神経質と感じのよさと遺伝子発現には関連がみられなかった。
●高い目的意識、生きがいのある高齢者は死亡リスクが低い? ・メタ分析という手法を用いて、生活での目的と、死亡リスクまたは心血管疾患リスクとの関係を評価した先行研究のデータを再解析した。 ・その結果、生活において高い目的意識を持つ参加者の死亡リスクが低いことを示した。他の要因を調整した後、死亡率は、強い目的意識、すなわち生きがいを報告した参加者では約5分の1低かった。 生活における高い目的意識は、心血管イベントのリスクがより低いことにも関連していた。
●生活満足度と死亡リスクとの関連 ・50歳以上の約4,500人の対象者とし、9年間毎年、次の質問に回答してもらった"。"全体的に、あなたは人生にどのくらい満足しているか"。回答者は0-10(10が最高)の数値で回答した。 ・解析の結果、期間中に参加者の生活満足度が増加した場合、死亡リスクは18パーセント減少したことがわかった。対照的に、生活満足度のより大きな変動があると、死亡リスクは20%増加した。2つの掛け合わせ(平均と変動)では、経時変化とともに生活満足度がどのように変動したかに関係なく、生活満足度の高いレベルの者は、死亡リスクが減少する傾向があった。 ・本研究の知見は、生活満足度が比較的低い時に限り、生活満足度の変動レベルが死亡リスクにおいて問題となるということを示唆しているという。
●人生の意味、目的を感じている人は死亡リスクが低い? ・いかに幸福感を感じているか(Eudemonic Wellbeing)を質問紙によって調査した。それはつまり人生をコントロールできているという感覚、自分のすることには価値があるという感覚、人生には目的があるという感覚の強さということであり、人々は集計結果に応じて高いほうから低いほうまで4群にランキングされた。 ・8年半の追跡調査期間中に、最上位の人々の9%が死亡したのに対し、最下位の人々の死亡率は29%だった。