健康情報のメモ

糖尿病になるリスクを上げる要因(食事、肥満以外)

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. 日本人の場合の特徴、体質
  2. AGEs(終末糖化産物)
  3. ストレス
  4. 睡眠不足、シフトワーク
  5. 腸内細菌
  6. 歯周病

日本人の場合の特徴、体質

・40歳以上の3分の1の人は糖尿病予備軍。
・50年前の2型糖尿病の患者数は現在よりもずっと少なかった。体質よりも生活習慣、特に食事と運動が影響している。
 
※参考資料『山田悟(2015)糖質制限の真実 幻冬舎』

 
●日本人のインスリンの分泌の特徴
 

・欧米人はインスリン分泌能力が高く、太らない限り、最終的に糖尿病にはならない。太っていなければ、食べても十分な量のインスリンが分泌されるため、血糖は上がりにくい。
・日本人は、インスリンを分泌する力が弱く、肥満になる前に血糖が上がってしまう人が多くいる。日本人の場合、2型糖尿病を発症する人の半分以上が肥満ではない。
 
※参考資料『山田悟(2015)糖質制限の真実 幻冬舎』

 

○インスリンの分泌、働き方
・インスリンの働き方には人種差がある。
 2013年、欧米と日本の国際研究チームが、それまでに世界各地で行われた180の研究結果を総合的に分析したところ、同じ量のブドウ糖を注射した時に分泌されるインスリンの量が人種によって違うこと、そして血糖値の下がり方も異なることが明らかになった。
・日本人を含む東アジア人は、もともとインスリンの分泌量が欧米白人の半分から4分の1しかない。
・日本人はインスリンの分泌が少なくても、効き方はよくきれいに下がっていたが、最近は効き片が悪くなっている人が増えていて、糖尿病の発症率が上がっている。
→脂質の摂取の増加と運動不足によって内臓脂肪が増加したことが要因?
 
○内臓脂肪とインスリン
・内臓脂肪が増えると腫瘍壊死因子(TNF-α)の分泌が増加する。
→細胞へのブドウ糖の取り込みを妨げる。
→インスリンの効き目が低下する。
 
○内臓脂肪のつき方
・欧米白人は肥満になっても皮下脂肪はつくが内臓脂肪はあまりつかない。
 一方、日本人の男性は内臓脂肪がつきやすい。
 日本人女性はつきにくい。エストロゲンに内臓脂肪の分解を促して皮下脂肪に変える作用があるため。
日本人女性の糖尿病の発症率は男性1に対して0.55と少ない。
 
※参考資料『奥田昌子(2016)欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」 講談社』

 
 
●日本の多目的コホート研究(JPHC Study)の結果
・多目的コホート研究(JPHC Study)とは?

アジア人におけるBMIと糖尿病の関連
 
・バングラデシュ、中国、インド、日本、韓国、シンガポールおよび台湾の計18のコホート、90万人以上のアジア人を対象にして、体型の指標であるBMIと糖尿病の関連を調べた。
 
○全体の結果
・BMIが高くなると糖尿病リスクは上昇するが、年齢によって関係の強さに違いが見られる。痩せ型(BMI20.0-22.4)と肥満(BMI35.0以上)の間で糖尿病リスクは2.5~3倍の違いが見られた。
 
○年齢の影響
・年齢の若い階層ほどBMI-糖尿病リスク関係のスロープがきつくなっており、50歳未満の階層における斜度の高さは際立っている。
これについては次のようないくつかの説明が考えられる。
①若年における糖尿病の発病では遺伝的要因がより大きな働きをしていて、高いBMIとそうした遺伝的な要因の複合的効果がBMI-糖尿病リスク関係を強めている。
②急激な体重上昇は比較的若年において起こりやすいが、そうした急激な体重上昇は速やかな糖尿病発病につながりやすい。
③年齢と関係する他の要因(例えば運動や食事習慣)が影響しているのかもしれない。
④高齢の糖尿病患者においては、長い病歴により体重の減少が起きているケースが多く、統計的に観測されるBMI-糖尿病リスク関係を弱めているのかもしれない。

AGEs(終末糖化産物)

●食事から摂るAGEsの影響
 
・AGEsは高血糖によって体の中でつくられるだけではなく、食べ物に含まれるAGEsからも取り込まれる。
 おおよそ食べ物に含まれるAGEsの7%が人間の体内に取り込まれて蓄積すると言われている。
 
・高血糖でなくても食事からたくさんのAGEsを摂取すると老化が早まったり、動脈硬化などの病気になる可能性がある。
 
・高温で加熱調理したもの、つまり"メイラード反応"を起こしている食べ物にAGEsがたくさん含まれる。水を使わずに焼いたり、油で揚げたもの。電子レンジによる加熱もゆでたものよりAGEsの量は増える。
 
●AGEsとRAGE(receptor for AGE)
 
・一つ一つの細胞はAGEsの受容体であるRAGE(receptor for AGE)を持っている。このRAGEにAGEsが取り付くと悪い作用をする。
 
・RAGEは、胎児のころ、神経の細胞が発達、分化する過程で重要な役割を果たしていた受容体。どの細胞にもRAGEがあり、アンフォテリンというタンパク質と結びつきながら、主に神経細胞を増やす作用をしていた。神経細胞のネットワーク完成後、つまり生後は、RAGEの機能は必要ないが、そのまま残ってしまっている。
 
・RAGEはアンフォテリン以外のタンパク質ともくっつく性質があり、AGEsともくっついてしまう。アルツハイマー病の原因物質であるβアミロイドというタンパク質ともくっついてしまう。
 そしてRAGEがアンフォテリン以外のタンパク質とくっつくと自分自身の数を増やす性質があり、さらにAGEsを呼び込んでしまう。
 
・AGEsとRAGEがくっついてAGE-RAGE複合体になる
→"NADPH酸化酵素"が活性化
→強力な酸化酵素で、細胞を酸化させる。
→この酸化作用によって細胞にダメージを与える。
 
●メタボとAGEs
 
・AGEsが脂肪細胞のRAGE(receptor for AGE)にくっつく
→アディポネクチンの産生を抑える。
→脂肪細胞の炎症作用を引き起こしてインスリンの働きを阻害する物質を産生。
 
・AGEsは糖尿病になり高血糖になるとつくられると考えられていたが、メタボの早い時期から体の中でつくられ、悪影響を及ぼしているようだ。
 
※参考資料『山岸昌一(2012)老けたくなければファーストフードを食べるな PHP研究所』

 
 
●他の研究事例
 

〇AGEs(終末糖化産物)とは?
・乾燥加熱調理(ドライヒートクッキング、グリル、フライ、ベーキング)で一般的に生成する副産物。
 
〇先行研究
・体内の高濃度のAGEsと前糖尿病状態であるインスリン抵抗性の上昇やアルツハイマー病のリスク因子の上昇などとの関連が示唆されていた。
 
〇米国マウントサイナイ医科大学からの研究報告
 
・対象者をランダムに2群に分け1年かけて実験を実施した。
この間一方(61名)にはAGEsを大量に含む典型的な高AGEs食、もう一方(70名)には低AGEs食を食べてもらった。
・低AGEs食群は、食品をグリル(焼く)、フライ(揚げる)、ベーキング(焼く)ことを避け、ポーチング(茹でる)、シチューイング(煮る)、スチーミング(蒸す)するように指導された。
 
・その結果、両群とも開始時のインスリン抵抗性はほぼ同じ状態だったが、終了時には、低AGEs食群はインスリン抵抗性が有意に改善されていた。わずかに体重も下がり、体内のAGEs濃度も低下していた。
 
※参考文献
Oral AGE restriction ameliorates insulin resistance in obese individuals with the metabolic syndrome: a randomised controlled trial

ストレス

●慢性的なストレスは糖尿病の発症リスクを高める要素
 
・コルチゾールというホルモンの分泌を刺激し、腰周りの肥満や血糖値の上昇、高血圧、免疫システムの混乱を引き起こしやすい。
・健全なレベルのコルチゾールを維持することは健康にとって必要だが、過不足すると有害になる。
・コルチゾールのバランスを取るには、十分な睡眠、適度な運動、リラックスする時間を持つことなどが重要。
 
※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』

 
 
●日本の多目的コホート研究(JPHC Study)の結果
・多目的コホート研究(JPHC Study)とは?

精神的要因、コーヒーと糖尿病との関連について
 
・精神的要因(ストレスとタイプA行動パターン)やコーヒー摂取と糖尿病発症との関連を調べた。
 
○日常的なストレスとの関連
・日常のストレスが"少ない"グループと比べて、"普通"あるいは"多い"グループでは糖尿病発症のリスクが高くなる傾向があった。
・男性ではストレスが"多い"グループでは"少ない"グループと比べて統計学的に有意に高くなっていた。
・女性でもストレスが多いほどリスクが高くなっていたが統計学的に有意ではなかった。
 女性では、日常ストレスの多い生活をする傾向を表すとされているタイプA行動パターン(せっかち、怒りっぽい、競争心が強い、積極的などの行動パターン)のグループで、対極的なタイプB行動パターンのグループと比べて糖尿病発症のリスクが統計学的に有意に高くなっていた。男性ではこのような傾向は見られなかった。
 
○コーヒーとの関連
・コーヒーには、ストレスに反応して分泌されるコルチゾールの活性化を妨げたり、ストレスによる血圧上昇を鈍らせたりする作用があるとの報告があり、ストレスの影響を緩和する作用があるのかもしれない。そこでコーヒーを1日3杯以上飲むグループとそうでないグループに分けて分析してみた。
・男性では、コーヒーを1日3杯以上飲む場合には、ストレスが多いグループでも少ないグループに比べて糖尿病発症のリスク上昇は見られなかった。統計学的には有意ではなかったが女性でも同様の傾向が見られた。
・ストレスの影響を除いた場合にも、やはりコーヒーをよく飲む人たちでは糖尿病発症のリスクが低くなる傾向が見られたので、コーヒーにはストレス緩和以外にも、糖尿病リスクを下げるような独自の効果があると考えられる。

睡眠不足、シフトワーク

・睡眠の過不足は肥満になりやすく、糖尿病の発症リスクが増大する。
・睡眠時間7~8時間を1としたとき、5時間未満になると糖尿病の発症リスクが2.5倍、6時間で1.7倍、9時間以上で1.8倍。
 
※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』

 

●睡眠不足と糖尿病
 
・2001年に発表された研究によると、毎晩6時間以下の睡眠しかとらない人は体重が増えやすく、結果的に2型糖尿病になるリスクが高い。
 
○マンデールらによる2001年の研究
・健康な男女(23~42歳まで)のうち、8日間連続で毎晩の睡眠が6時間半以下の人と、7~8時間の人を比べた場合、6時間以下のグループはインスリンに対する感受性がはるかに低かった。
・マンデールは、健康な成人でも慢性的睡眠不足が続くと、インスリン機能が損なわれるため、将来、糖尿病になるリスクが生まれると提言する。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

 

・大量のデータを基にした調査で関係性を指摘されているものとして、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、がん、うつ病などがある。
・不眠症になると糖尿病のリスクが1.5倍になると言われている。
 
※参考資料『三島和夫,川端裕人(2014)8時間睡眠のウソ。 日経BPマーケティング』

 

・目覚めのホルモンといわれる副腎皮質ホルモンが増える。
これによって健康な体から分泌されるインスリンの働きを弱めるので、糖尿病になりやすくなる。
 
※参考資料『大塚邦明(2014)眠りと体内時計を科学する 春秋社』

 
 
●他の研究事例
 

〇中国の華中科技大学と江西師範大学によるメタアナリシス研究
 
・科学研究データベースを精査し、関連する12件の国際的観察研究を分析。参加者は、226,500名(うち14,600人が糖尿病患者)。
 
・全結果をプールし分析した結果、以下の傾向が見られた。
・通常の就業時間の作業と比較し、シフト勤務は糖尿病のリスクが9%増加。更に性別、シフトスケジュール、BMI、糖尿病と身体活動レベルの家族歴などの影響を調整すると、このリスクは男性で37%まで上昇した。
 固定パターンではなく定期的に24時間サイクルで異なる時間帯に働くような交代シフトは、最もリスクが高い42%。
 
・交代シフトは通常の睡眠・覚醒サイクルに適応することが難しくなる為、睡眠不足・質の悪い睡眠などのためインスリン抵抗性が促進されたり悪化したりすることが他の研究で示唆されている。
 また、男性ホルモンであるテストステロンの昼間のレベルが、体内時計によって制御されているため、それを繰り返し混乱させると影響が出てくる可能性がある。
 
・他の研究では、シフト作業により体重や食欲が増加するとしている。
 
※参考文献
Shift work and diabetes mellitus: a meta-analysis of observational studies

 

〇オランダ・アムステルダム自由大学医療センターの報告
 
・ヨーロッパ14か国に住む30~60歳の健康な成人788人を対象に、加速度計を用いて睡眠時間と身体活動を測定した。
・糖尿病のリスク評価には、高インスリン正常血糖クランプ法とよばれる検査法を用い、血糖の処理にどのくらいのインスリンを要するかを調べた。
 
・その結果、平均的睡眠時間(7時間)の男性に比べ、最も睡眠時間の短い群または長い群の男性は、血糖処理能力が劣ること、そして血糖値が高いことが明らかになった。
 しかし女性においては、平均より睡眠時間の短い人はインスリンへの感受性が高く、β細胞(膵臓内でインスリンを産生する細胞)の機能も増強していた。
・男性では、寝すぎまたは寝なさすぎることは身体のインスリンへの反応を鈍くすることに関係し、これはグルコースの取り込みを減らし、将来的に糖尿尿リスクを増すことになると考えられる。
 一方、女性では睡眠時間の少なさが糖尿病リスクにはならないことを示唆している。
 
※参考文献
The Association Between Sleep Duration, Insulin Sensitivity, and β-Cell Function: The EGIR-RISC Study

 

〇米国シカゴ大学医療センターからの研究報告
 
・18-30歳の19名の健康な男性を対象。
参加者は、ランダムな順番で二つの睡眠シナリオを実行。
①4日連続で8.5時間の就寝(平均7.8時間睡眠)
②4日間連続で4.5時間の就寝(平均4.3時間睡眠)
血液は15分または30分間隔で4時間採取され、血液中の遊離脂肪酸、成長ホルモン、グルコース、インスリン、ノルアドレナリンとコルチゾールが測定された。
4日間の実験終了後に静脈耐糖能試験が実施された。
 
・データ解析の結果、睡眠制限によって深夜と早朝の遊離脂肪酸濃度が15-30%上昇することを発見した。
・夜間(午前4時-6時ごろ)の脂肪酸の上昇は、続く約5時間のインスリン抵抗性の上昇(前糖尿病状態の指標)と相関していた。
・睡眠制限が夜間の成長ホルモンの分泌を促し、また血中ノルアドレナリン値を高め、それらが遊離脂肪酸の上昇に寄与しているようだという。
・グルコース濃度は変化しなかったが、インスリン感受性は睡眠制限で約23%低下しており、これはインスリン抵抗性が発現している状態であるという。
・血漿中の遊離脂肪酸は大部分の体組織にとって重要なエネルギー源だが、コンスタントに高まった血中の脂肪酸濃度は肥満者や2型糖尿病、心血管疾患患者においてしばしば観察されるものであり、2012年の関連研究においては、睡眠不足とエネルギー制御におけるヒト脂肪細胞機能の障害の関係が指摘されていた。
 
※参考文献
Sleep restriction increases free fatty acids in healthy men

腸内細菌

※腸のバリア、透過性については以下の記事参照。
腸内細菌とアレルギー、免疫、抗生物質との関係の”LPS(リポ多糖類)と腸の透過性、炎症”
 
腸内細菌(の組成比)の乱れ
→腸のバリア機能が低下
→腸の透過性が上がる、腸の漏れ(リーキーガット)
→腸内細菌の細胞壁を構成するLPS(リポ多糖)が腸内から漏れて血液中に侵入
→免疫系が活性化され、からだのあちこちで炎症発生
→血液中に漏れたLPSがインスリンに干渉し、2型糖尿病や心臓病を誘発。
●腸内フローラのバランスの崩れと糖尿病
 
・2014年6月、順天堂大学とヤクルトとの共同研究
 日本人の2型糖尿病の発症には、腸内フローラのバランスの崩れが大きく関係していることが明らかになった。
 
・動物性たんぱく質を慢性的に多く摂取
→特定の悪玉菌が増殖し、腸内フローラのバランスが崩れる。
→増殖した悪玉菌が有毒腐敗物質を大量に作り出す。
→異物の侵入に対する大腸の粘膜のバリア機能も低下
→大腸の粘膜細胞のすきまから血管内に侵入する生きた悪玉菌と特定の有毒腐敗物質が増加
→血管内に侵入した上記異物を免疫細胞が攻撃し、からだのあちこちで小さな炎症発生。
→インスリンの作用によって細胞はブドウ糖を取り込むが、炎症によってこのインスリンによる細胞のブドウ糖取り込みが阻害され(インスリン抵抗性)、高血糖になる。
 
※参考資料『澤田幸男,神矢丈児(2015)腸が寿命を決める 集英社』

 

●糖尿病と炎症、腸内細菌
 
・インスリンの働きが悪くなる原因として、"全身の炎症"が関わっていると考えられるようになってきた。
・糖尿病の患者は、全身の血管が弱い炎症状態になっていることが分かってきた。
・炎症を起こしている周囲の細胞では、インスリンがうまく働かない状態になる。
・脂肪細胞が肥大化すると様々な有害物質を出すが、この有害物質は炎症を助長する。
・全身の炎症状態を招くのは、肥大化した脂肪細胞だけではない。
→外敵である細菌も炎症を引き起こす。
・糖尿病患者は、血液中のLPS(リポ多糖)という物質の濃度が高いことが報告されている。
LPSは腸内細菌が出す毒素の一種。腸のバリア機能が衰えると、こうした毒素が血液中に"漏れ出して"くる。
→この毒素が全身の血管を弱い炎症状態に導く。
 
※参考資料『NHKスペシャル取材班(2015)腸内フローラ10の真実 主婦と生活社』

 

●腸のバリア機能が低下する原因は?
 
・腸壁の細胞は、腸内細菌が出す短鎖脂肪酸をエネルギー源にしている。
腸内フローラのバランスが乱れて、短鎖脂肪酸の生産量が減ると、腸の細胞が活力を失ってバリア機能が低下してしまう。
・腸のバリア機能を回復するには、短鎖脂肪酸を増やす食物繊維が多めの食事をすれば良い。逆に、高脂肪食に偏った食生活をしている人は、血液中のLPS濃度が高いことも分かっている。
 
※参考資料『NHKスペシャル取材班(2015)腸内フローラ10の真実 主婦と生活社』

 

●アッカーマンシア・ムシニフィラと腸のバリア機能
 
〇アッカーマンシア・ムシニフィラと腸のバリア
・アッカーマンシア・ムシニフィラは腸壁を覆う厚い粘液層の表面に棲んでいる。腸壁の粘液層は、腸内微生物が血液中に入り込んで悪さをするのを防ぐ障壁となっている。
・アッカーマンシア・ムシニフィラが少ないと粘液層が薄くなり、LPSが血液中に入りやすくなる。
←この細菌は腸壁細胞に働きかけて、より多くの粘液を分泌させている。
アッカーマンシア・ムシニフィラはヒトの遺伝子に化学信号を送って、粘液の分泌を促し、それによって自分達の棲み処を得て、結果的にLPSが血液中に入り込むのを阻止している。
 
・太ったマウスの一群にアッカーマンシアを加えた食事を与えると、マウスの体内ではLPSの濃度が下がり、新しく健全な脂肪細胞がつくられるようになった。そして、レプチンへの感受性が高くなり、食欲が減少し、体重が減った。(パトリス・カニの研究)
 
・太った人ではなぜアッカーマンシアが減ってしまうのか?
マウスに高脂肪な餌を与えて太らせるとアッカーマンシアは減るが、餌に食物繊維を加えると、アッカーマンシアはまた増えて健全に戻る。
 
※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』

歯周病

・歯周病の炎症部位から放出される腫瘍壊死因子のようなサイトカインに、血液中の糖の取込みを抑制する作用があり、これが血糖値の上昇につながる。
 
※参考資料『杉本正信(2012)ヒトは一二〇歳まで生きられる 筑摩書房』

 

・歯周病になると、慢性の炎症状態になり、腫瘍壊死因子a(TNF-a)というサイトカインの分泌が促進される。TNF-aは、インスリン抵抗性を高めるため、血糖値が上昇する。
 
※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』

 

●歯周病→糖尿病
・歯周病
→サイトカインの分泌が過剰になる
→インスリンの働きを悪くする。
 
・歯周病菌の毒素が、肝臓や脂肪細胞に作用して、インスリンを作りにくくすることもある。
 
※参考資料『蒲谷茂(2013)歯は磨くだけでいいのか 文藝春秋』

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