脂質の摂取と生活習慣病との関連、脂質摂取の目標量、高トリグセライド血症と栄養素との関連などについてメモ書きしています。
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脂質と生活習慣病との関連
※%E(エネルギー比率) 総エネルギー摂取量に占める割合 ○低脂質/高炭水化物食 ・食後血糖値及び空腹時中性脂肪値を増加させ、血中HDLを減少させる。 健康な人において、このような食事をしても動脈硬化症、肥満、糖尿病が増加することを示す報告はないが、長期間にわたってこのような血中脂質パターンが続くと、冠動脈性心疾患のリスクが高くなる。 ・アメリカ・カナダの食事摂取基準では、血中HDL、総コレステロール/HDL、中性脂肪の血中濃度を適正なものにするには、脂肪エネルギー比率20%E以上がよいとしている。 ・極端な低脂質食は脂溶性ビタミン(特にビタミンAやビタミンE)の吸収を悪くし、食品中の脂質含量とたんぱく質含量との正相関のために、十分なたんぱく質の摂取が難しくなる可能性もある。 ・脂質はエネルギー密度が最も高いので、摂取量が少ないとエネルギー摂取不足になりやすく、成人でも10~15%E を摂取するのが適切であると想定されている。 ○高脂質食/低炭水化物食 ・低脂質食/高炭水化物食に比べて、HDLが増加し、空腹時中性脂肪値は減少するが、LDLは増加し、食後遊離脂肪酸値や食後中性脂肪値が増加する。 ・高脂質食/低炭水化物食は穀類に含まれるミネラルが不足し、たんぱく質摂取量が多くなるため、総死亡率、2型糖尿病罹患の増加が懸念される。 ○肥満予防との関連 ・総脂質摂取量を1%E減少させると、0.19kgの体重減少が認められている。 しかし、肥満者で血中インスリン濃度が高くインスリン抵抗性が強い群では、低炭水化物食(脂質30~35%E、炭水化物40%E)の方が低脂質食(脂質20%E、炭水化物55~60%E)よりも体重減少効果は強いことに留意すべきである。 ・日本人のような肥満の少ない集団では、脂肪エネルギー比率が高くなると、肥満、メタボ、糖尿病、さらに冠動脈疾患のリスクの増加が懸念される。 ・更年期以降の女性を対象とした大規模介入研究では、総脂質摂取量が減り体重減少が見られた場合、糖尿病発症の有意な減少が認められている。 高脂質食は飽和脂肪酸摂取量を増加させ、飽和脂肪酸は血漿LDL濃度を上昇させ、冠動脈疾患のリスクを高くする。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
・脂質が不足すると、血管や細胞膜が弱くなり、脳出血の可能性が高まる。 ※参考資料『中村丁(2015)次栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』
脂質摂取の目標量
※%E(エネルギー比率) 総エネルギー摂取量に占める割合
・脂質の目標量の下の値は、必須脂肪酸の目安量を保証することを目的として設定されており、生活習慣病の発症予防を目的としたものではない。
・脂質の目標量の上の値は飽和脂肪酸の目標量を考慮して設定されている。
総脂質摂取量の健康影響を検討した研究の多くは低脂質摂取量として30%E程度を用いている。
以上より、脂質のエネルギー産生栄養素バランスを20~30%Eと設定している。
・飽和脂肪酸は、動脈硬化性疾患、特に心筋梗塞の発症及びに重症化予防の観点から、日本人の摂取実態も踏まえ、7%E以下とし、エネルギー産生栄養素バランスに含めている。
・脂質(総脂質)並びに飽和脂肪酸の量だけでなく、必須脂肪酸(n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸)の目安量を確保することも含め、脂質の質に注意すべきである。
・脂質の目標量の下の値は、必須脂肪酸の目安量を保証することを目的として設定されており、生活習慣病の発症予防を目的としたものではない。
・脂質の目標量の上の値は飽和脂肪酸の目標量を考慮して設定されている。
総脂質摂取量の健康影響を検討した研究の多くは低脂質摂取量として30%E程度を用いている。
以上より、脂質のエネルギー産生栄養素バランスを20~30%Eと設定している。
・飽和脂肪酸は、動脈硬化性疾患、特に心筋梗塞の発症及びに重症化予防の観点から、日本人の摂取実態も踏まえ、7%E以下とし、エネルギー産生栄養素バランスに含めている。
・脂質(総脂質)並びに飽和脂肪酸の量だけでなく、必須脂肪酸(n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸)の目安量を確保することも含め、脂質の質に注意すべきである。
脂質摂取と発症予防
・アメリカで行われた研究(男女共含む)では50歳未満の女性でのみ有意な負の関連を認めており、ヨーロッパで行われた研究(男女とも含む)ではどの群でも有意な関連は観察されなかった。 ・生活習慣病の発症は脂質(総脂質)よりも脂肪酸(特に飽和脂肪酸)の影響を大きく受ける。心筋梗塞で明らかであり、糖尿病でも示唆されている。 ・個々の生活習慣病の発症予防に当たっては、脂質の質(個々の脂肪酸:特に飽和脂肪酸)に注目しなくてはならない。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
●低炭水化物と低脂肪食による減量効果 ○2014年、アメリカ国立衛生研究所の研究 ・150人の成人男女を1年間調査した低炭水化物と低脂肪食による減量の比較研究。 ・低脂肪食では脂肪以上に筋肉が減る一方、低炭水化物では除脂肪筋肉量が増えるとして、従来のカロリー神話や低脂肪神話とは逆の結果を示した。 ※参考資料『ジョン・J.レイティ(2014)GO WILD野生の体を取り戻せ! NHK出版』
脂質摂取と重症化予防
※%E(エネルギー比率) 総エネルギー摂取量に占める割合 ○低脂質食(多くは20~30%E) ・介入試験についてその結果をまとめたメタ・アナリシスによると、血清LDLは有意な低下を認めたが、HDLの有意な低下と中性脂肪は有意な上昇を認めた。血圧や空腹時血糖、空腹時インスリンには有意差は認められていない。 ○糖尿病患者を対象とした高脂質(低炭水化物)食と低脂質(高炭水化物)食の影響 ・19の介入試験をまとめたメタ・アナリシスによると、HbA1c、空腹時血糖、総コレステロール、LDLには有意な差は観察されなかったが、高脂質(低炭水化物)食で空腹時インスリンと中性脂肪が有意に低く、HDLが有意に高かったと報告している。 ○肥満者の体重変化 ・脂質摂取量を低下させた場合の体重の変化を観察した33の介入試験をまとめたメタ・アナリシスによると、低脂質食群で体重が有意に減少したことを報告している。ただし、試験開始前の脂質摂取量が28~43%であったことから、この結果はこの範囲で意味を持つものであると付記されている。 ・体重への低脂質食の影響について、対照群を置いて検討した介入試験を6か月間と12か月間に分けてその結果を検討したメタ・アナリシスによると、体重への影響(低下)は6か月間の研究では有意であったが12か月間の研究ではその影響は有意ではなかったと報告している。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書