健康情報のメモ

脳に関する豆知識

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. 脳の疲労、休止時間の効果
  2. 共感、ミラーニューロン
  3. 悪の遺伝子とMAOA遺伝子
  4. 怒りと脳の活動
  5. 脳トレーニングの効果

脳の疲労、休止時間の効果

疲労の実態と疲労回復成分の”疲労の実態・原因、自律神経との関わり”参照。

共感、ミラーニューロン

・神経レベルでは、共感によって活性化される脳の主な領域は帯状皮質。帯状皮質は大脳皮質の中央に帯状に存在し、感情、学習、記憶を処理する辺縁系の一部とみなされている。
 
・共感に関連する帯状回の領域は、男性よりも女性のほうが大きく、統合失調症患者では概して小さい。
 
・共感にはミラーニューロンも関係している。ミラーニューロンは、新しい技術を学習する際に重要となる。目で見たものをそのまま写し取る。
 ミラーリングには、有害な側面もある。幼児が家庭内暴力などのネガティブな行為を目撃した場合にも、その行動をなぞるような活性を脳内で発動してしまう可能性がある。虐待を受けた子供は、虐待行為を強く刷り込まれているため、多くが大人になってから虐待をする側に回ることも知られている。
 
・オキシトシン、オピオイド、プロラクチンなどの神経化学物質などは、社会的な結びつきを調節し、共感の反応性を調節している。
 
・オキシトシンは、精神的活動を促進し、恋愛感情を抱かせる。また、互いの信頼を高め、他人の表情に敏感になる。
 
※参考資料『ディーパック・チョプラ(2014)スーパーブレイン 保育社』

 

●ミラーニューロン
 
・ミラーニューロンとは、人が何かをするとき、そして誰かほかの人が何かをするのを見るときに活性化される脳の神経細胞。
→例えば、別れに手を振ると前運動野内のミラーニューロンが発火するが、誰か他の人が手を振るのを見たときにも、自分は身体を動かしていないのに、同じニューロンが発火する。言い換えると、ミラーニューロンは行動と知覚をつなげている。
・ミラーニューロンは、人が技能に習熟すればするほどより強力に活性化する。
 ピアニストが別の人のピアノ演奏を聴くと、第一次運動野と前運動野内の指表象領域が活性化する。彼らのミラーニューロン系は、演奏者の打鍵を自動的に再現する。演奏家以外の人では同じことは起こらない。
→自分の技能を知れば知るほど、自分が目にする優れた技能をより深く理解する。
 
※参考資料『スティーヴン・L.マクニック,スサナ・マルティネス=コンデ(2012)脳はすすんでだまされたがる 角川書店』

 

●ミラーニューロン
 
・ふつうは前頭葉にあるニューロンの集団で、以下の二つの基準を満たしている。
①自分自身がある行動をとるときに活性化し
②ほかの誰かが同じ行動をとるのを見るときにも活性化する。
・一部の科学者は、ミラーニューロンが社会的な絆や人間同士の交流において本質的な役割を演じていると主張している。共感の脳システムの一部。
 
※参考資料『ティモシー・ヴァースタイネン(2016)ゾンビでわかる神経科学 太田出版』

 

●ミラーニューロン
 
・自分がある動作をしているときに発火するだけでなく、他のだれかがそれと同じ動作をしているのを見ているときにも発火する。
・ミラーニューロンは、自分が他の人に共感し、その意図を"読み取る"こと、その人が実際に何をしようとしているかを把握することを可能にしている。
 それは、自分の身体イメージを使ってその人の動作を(通常は下意識で)シミュレーションすることによってなされる。
・誰かが何かをしているのを見るたびに、その人の脳で、自分が同じ事をするときに使われるニューロンが(あたかもその人が自身がそれをしているかのように)活性化する。
 人が針で突かれるのを見ると、自分の痛覚ニューロンが、あたかも自分が突かれたかのように発火する。
 ↓
見た行動をいちいちすべて真似してしまうのを防いでいるのは、どういう仕組み?あるいは、他の誰かの痛みを文字通り感じてしまうのを防いでいるのは、どういう仕組み?
 ↓
・運動ミラーニューロンの場合は、一つの答えとして、自動的な模倣が不適切な場合にそれを抑制する回路が前頭葉にあるのではないかと考えられる。
・触覚や痛覚などの感覚ミラーニューロンの場合は、手の皮膚や関節にある受容体から無効信号が出て、ミラーニューロンからの信号が意識にのぼるのを阻止しているのでは?
 
○幻肢患者に対する実験
・ある幻肢患者は、顔に触れられるたびに、失った手の感覚が生じていた。
・彼にAという他の人を見てもらいながら、Aの手をなでたりたたいたりしてみた。すると幻肢患者は、Aの手がされていることを、実際に自分の幻肢に感じた。
→幻肢患者のミラーニューロンが正常に活性化されたのに対し、それを打ち消す手からの無効信号が無かったために生じた?
・腕を切断する代わりに、患者の腕神経叢(腕と脊髄をつなぐ神経)に麻酔をかけると、患者は他の人が触られているのを見ているだけで、麻酔の効いた手に触覚を感じる。
 
※参考資料『V.S.ラマチャンドラン(2012)脳のなかの天使 角川書店』

 

・ミラーニューロンはバーチャルリアリティネットワークの機能を持ち、脳が模倣によって発達するために重要。
 ミラーニューロンは行動を予測し、誰かがその行動をするのを見ると発火する。
 重要な点は、自分がある行動(物をつかむなど)をする時にも、他人がその行動をする時にも発火する。
 そのように他人の行動を見て、自分が行動する時と同じように発火することで、脳はリハーサルをしている。
 
・正常な人が他人のある行動や感情の表出を見ると、特別な脳波(ミュー波)が抑制されるが、自閉症者の脳ではそのような変化は起きなかった。
→ミラーニューロンの欠如は、脳の発達段階の初期に起きる、無秩序な発達が原因であることが推察された。
 
・ほとんどの人の脳にはミラーニューロンがぎっしりと詰まっているという事実は、学習や行動の多くは人をまねる事が中心になっていることを意味する。
 ミラーニューロンがあるからこそ、人の感情や意図を理解することも、自分の感情についてよく考えることができる。
 
・ミラー療法(訓練によってミラーニューロンを増やし、脳内の痛みの信号の配線を変える)によって、手や足を失った患者の幻肢痛を治療した事例もある。
 
・自閉症の患者は、共感力や感情を読み取る能力が欠如。自閉症者のわずかなミラーニューロンを増やし、活性化しようとする取り組みも進められている。
 
・人間のニューロンの20%はこの機能を持ち、下頭頂葉と呼ばれる視覚と触覚と聴覚の中心となっている広い領域に集中して存在すると考えられている。
 
・サヴァン症候群できわめて仔細な記憶をとどめたり、驚くほどの計算能力を発揮したりできるのは、脳の他の領域が犠牲になっているか、あるいは、通常発生するはずの脳波が抑制されているかのどちらかと思われる。
→サヴァン症候群の人々は、自閉症が改善し、脳の他の領域が働き始めるにつれて、その能力を失う傾向がある。
 
※参考資料『ティム・スペクター(2014)双子の遺伝子 ダイヤモンド社』

悪の遺伝子とMAOA遺伝子

・モノアミン酸化酵素A(MAOA)は、攻撃性を高める神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)の過剰分を取り除く働きをするが、MAOA遺伝子の異型を持っていると、MAOAの活動レベルが通常より高くなったり、低くなったりする。
 幼い頃に肉体的、精神的、あるいは性的な虐待を受け、なおかつMAOAのレベルを低くする遺伝子を持つ人は、犯罪行動に走る危険性が9倍も高くなる。
 この変異を持っていても、家庭環境が普通であれば、影響は少ない。
 
※参考資料『ティム・スペクター(2014)双子の遺伝子 ダイヤモンド社』

怒りと脳の活動

・攻撃的な人間は往々にして前頭葉の活動が鈍い。
→前頭葉は衝動的な行為を抑制し、知恵を与えている部位で、この領域が満足に働かなければ、怒りの感情に抑えが利かなくなる。
 すぐかっとなって破壊的な行動に出やすい反社会的人格障害の患者の前頭葉に、活発な動きが認められないという研究結果がある。
・攻撃性をもたらす化学物質についてはあまりよく分かっていないが、脳内のセロトニン濃度の低下や上昇が攻撃性に影響を及ぼすと考えられている。ほかにも、テストステロンレベルが高まると、攻撃的になるという研究報告もある。
 
※参考資料『ジョン・J.レイティ(2002)脳のはたらきのすべてがわかる本 角川書店』

脳トレーニングの効果

・一般的な動物実験の環境はとても退屈。実験動物は、食べ物を探したり、捕食者を避けたりする必要がほとんどない。このゲージ内の極めて退屈な環境に対するトレーニング効果なので、実際の人間に当てはめて考えると恩恵は少ないかもしれない。
 
・こうしたプログラムの効果を納得のいくよう証明する実験を行うのは、いくつか問題があって難しい。
 まず、数週間に渡って何時間も訓練が必要になるため、被験者はそれが無駄な作業ではないと信じたい気持ちが強くなる。この動機付けは、偽薬と似た効果を引き起こす。つまり、訓練を終えた被験者は、訓練前より試験の出来を良くしようと、前より努力したり注意したりする可能性がある。
 
・脳訓練プログラムで報告されている最大の効果は、これまでのところ小さく、"標準偏差の約4分の1"(20人のグループで10位から8位になる)。訓練した作業ではない一般的な効果は、もっと小さいか、ゼロ。
 
※参考資料『サンドラ・アーモット,サム・ワン(2009)最新脳科学で読み解く脳のしくみ 東洋経済新報社』

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