健康情報のメモ

ビタミンB6の概要、効果、病気予防効果

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. ビタミンB6の概要
  2. ビタミンB6の吸収
  3. ビタミンB6の効果
  4. ビタミンB6を多く含む食品
  5. ビタミンB6不足の問題
  6. ビタミンB6過剰摂取のリスク
  7. ビタミンB6と循環器病との関連
  8. ビタミンB6とがんとの関連
  9. ビタミンB6とフレイル、認知機能との関連
  10. 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス

ビタミンB6の概要

・ビタミンB6は水溶性のビタミンで、アルコール型のピリドキシン、アルデヒド型のピリドキサール、アミノ基をもつピリドキサミンと、これらのリン酸エステル型であるピリドキシン-5′-リン酸(PNP)、ピリドキサール-5′-リン酸(PLP)、ピリドキサミン-5′-リン酸(PMP)の総称。
 
・体内ではPLPとPMPの形で多く存在し、主な役割は、たんぱく質、脂質、炭水化物の代謝の補酵素、神経伝達物質である生理活性アミン(セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ヒスタミンなど)の代謝の補酵素、ホルモン調節因子などとして働いており、不足すると皮膚炎などが起こることが知られている。

ビタミンB6の吸収

・摂取したビタミンB6は小腸で吸収される。吸収されたビタミンB6は肝臓に運ばれ、肝臓の細胞中でピリドキサールキナーゼにより、リン酸化される。

ビタミンB6の効果

・多くの補酵素の成分として、分解されたアミノ酸がヒトの体特有のタンパク質に再合成されるのを手助けし、皮膚や髪、歯などの健康維持に役立っている。
たんぱく質を多くとる人ほど必要量が増える。
・脂質の代謝もサポートし、肝臓に脂肪が蓄積するのをセーブするように作用する。
・セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、α-アミノ酪酸(ギャバ)などの神経伝達物質の合成にも必要。
 
※参考資料『中村丁(2015)栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』

 

・たんぱく質、脂質、炭水化物を代謝する。
・アドレナリンやインスリンとしてのホルモンを産生し、健常な神経系の維持に必須。
・赤血球中のヘモグロビン形成、抗体産生に必要。
・RNAおよびDNA合成に使われ、胃酸の産生に必要。
・体液量の調節にも役割がある。
・いくつかの研究では、ビタミンB6がホモシステインの濃度を下げることに関与していることが示されている。ホモシステインの濃度の上昇は、心臓病、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、骨粗鬆症のリスクを増加させる。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

ビタミンB6を多く含む食品

・ビタミンB6は、レバー、まぐろ、かつお等に多く含まれる。

ビタミンB6不足の問題

・ビタミンB6が単独で不足することは少なく、他のビタミンが不足したときに、同時に起こる。
・ビタミンB6が不足すると、湿疹、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎、貧血、麻痺性発作、聴覚過敏、脳波異常、免疫力低下などが起こる。
・ビタミンB6依存症として、貧血、キサンツレン酸尿症、ホモシスチン尿症などが知られている。

ビタミンB6過剰摂取のリスク

・通常の食品を摂取している人で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たらない。
・ビタミンB6は水溶性だが、大量摂取時(数g/日を数か月程度)には、感覚神経障害、末梢感覚神経障害、骨の疼痛、筋肉の脆弱、精巣萎縮、精子数の減少などを起こすことが知られている。

ビタミンB6と循環器病との関連

●ビタミンB6、ホモシステイン濃度と心血管疾患、脳卒中
 
・ビタミンB群の一部(葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6)は、ホモシステイン濃度を低下させることによって心血管疾患リスクを低下させるという仮説が立てられている。
 
・現在までの研究で、ビタミンB6の単独、または葉酸およびビタミンB12と組み合わせた補充量が心血管疾患および脳卒中のリスクと重症度を低下させるというエビデンスはほとんどない。
 
○42歳以上の女性を対象としたランダム化試験
・42歳以上の女性5,442人を対象。
・ビタミンB6(50mg/日)を葉酸2.5 mg、ビタミンB12 1mgと組み合わせて補充した場合の心血管疾患リスクに対する影響はみられなかった。
 
○2つの大規模ランダム化対照試験、Norwegian Vitamin試験とWestern Norway B Vitamin Intervention試験
・ビタミンB6(40mg/日)のみを補充した群が設定された。
・これら2試験のデータの統合解析では、虚血性心疾患患者6,837人で、葉酸(0.8mg/日)とビタミンB12(0.4mg/日)を併用した場合および併用しなかった場合に、主要な心血管イベントに対するビタミンB6補充の利益は示されなかった。
 
○機能障害にまでは至っていない脳卒中に罹患した成人の試験
・ビタミンB6、ビタミンB12および葉酸の高用量または低用量の組み合わせを2年間補充した結果、脳卒中の再発、心血管イベント、死亡リスクに影響を及ぼさなかった。
 
※参考情報
ビタミン6 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業

ビタミンB6とがんとの関連

・1997年に初めて、ビタミンB6が大腸がんの予防因子であることが報告された。
 
・日本においては、ビタミンB6摂取量と大腸がんとの関係の調査から、男性においてビタミンB6摂取量が最も少ないグループ(平均摂取量は1.02mg/日)に比べ、それよりも多いグループ(~1.80mg/日)で30~40%リスクが低かったと報告している。ビタミンB6が大腸がんの予防因子となり得ると考えられる。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

 

・いくつかの研究で、血漿ビタミンB6濃度の低値と、ある種のがんのリスク上昇が関連付けられている。
 たとえば、複数の前向き研究のメタアナリシスで、ビタミンB6摂取量が最高の五分位にある人は、最低の五分位にある人と比べて大腸がんのリスクが20%低いことが示された。
 
・しかし、現在までに完了した数少ない臨床試験で、ビタミンB6の補充ががんの予防に役立つ、あるいはがんによる死亡率を低下させることは示されていない。
 たとえば、ノルウェイの2つの大規模ランダム化二重盲検プラセボ対照試験のデータを解析した結果、ビタミンB6補充とがんの発生率、死亡率、または全死因死亡との間に関連性は認められなかった。
 
※参考情報
ビタミン6 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業

ビタミンB6とフレイル、認知機能との関連

※フレイルとの関連については以下の記事参照。
フレイル、サルコペニア、高齢者の栄養の”高齢者の健康とビタミン、脂肪酸との関係”
※認知機能との関連については以下の記事参照。
アルツハイマー病に効果のある食事の”ホモシステイン、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12と認知症との関連”

多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス

※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
●葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、メチオニン摂取と大腸がん罹患との関連について
 
・食習慣についての詳しいアンケート調査の結果を用いて、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、メチオニンの1日当たりの摂取量を算出してグループ分けを行い、その後の大腸がん発生率を比べた。
 
○全体の結果
・男性において、ビタミンB6の摂取量が最も少ないグループに比べ、それよりも多いグループで30~40%リスクが低くなった。
 葉酸やメチオニンでは関連が見られず、ビタミンB12ではリスクがややあがる傾向が見られた。
・女性では、どの栄養素でも関連が見られなかった。
 
○アルコールとの関連
・飲酒習慣について、週にエタノール換算で150g(日本酒にして約7合)以上と150g未満に分けて調べると、飲酒量の多い人で上記ビタミンB6との関連がはっきりと見られた。
 このことから特に飲酒量の多い人にとって、ビタミンB6を多くとることが大腸がんに予防的に働く可能性が示された。
 
○ビタミンB6の関連が強かった理由
・葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、メチオニンは、生体内でのメチル代謝において、それぞれ異なる役割を担っている。
 アルコールやアセトアルデヒドはそれらの代謝経路を阻害したり、栄養素を破壊したりすることによって、大腸がん発がんの初期段階である遺伝子の低メチル化を引き起こすと考えられる。
・今回、特にビタミンB6と大腸がんの関連が強かった理由として、日本人の一般的な食事からは葉酸やビタミンB12は十分取れるのに対し、ビタミンB6摂取量は不足していることが挙げられる。
・ビタミンB12摂取量の多い男性でリスクがややあがる傾向が見られたのは、喫煙と飲酒の影響が残ったためかもしれない。
 また、女性は男性に比べ飲酒習慣のある人が少なかったために、ビタミンB群と大腸がんリスクとの関連がみられなかったと考えられる。

 

●葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12摂取と虚血性心疾患発症との関連について
 
・食習慣についての詳しいアンケート調査の結果を用いて、葉酸、ビタミンB6、およびビタミンB12などの栄養素摂取と虚血性心疾患発症との関連を調べた。
 
○葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の単独の摂取量で評価
・ビタミンB6の摂取量が最も少ないグループに比べ、その他のグループでは30~50%リスクが下がった。
 葉酸、ビタミンB12では傾向はあっても、統計学的に有意な関連が見られなかった。
 しかし、この分析を心筋梗塞のみに限ると、ビタミンB6との関連はさらに強くなり、葉酸、ビタミンB12でも統計学的に有意な傾向がみられた。
 
○葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の組合せの摂取量で評価
・それぞれ摂取量で2群に分けて、3つの栄養素の高低の組み合わせを見てみると、3つの栄養素とも全てが高い人の群に比べて、全ての栄養素が低い人の群では、心筋梗塞のリスクが約2倍だった。
 さらに、1つの栄養素摂取量が高くても、他の2つが低い人の群ではリスクが上昇する傾向があった。
 このことから、これらの栄養素はひとつだけが高いだけでは、心筋梗塞には予防的に働かない可能性が示された。
・さらに、ビタミンB6が低い人では、葉酸とビタミンB12摂取量は高くても、3つが低い人たちと同じくらい心筋梗塞のリスクが高いということがわかった。
 
○ビタミンB6との関連が強かった理由、推奨の摂取法
・今回、ビタミンB6と心筋梗塞の関連が特に強かった理由として、日本人では葉酸やビタミンB12摂取量が高い人が比較的多いのに対して、ビタミンB6摂取が低いことが挙げられる。
・ビタミンB6の最大の摂取源である白米でも、茶碗1杯(約150g)に約0.03mgしか含まれていない。ビタミンB6を多く含む食品を積極的に摂取していくことが心筋梗塞の予防につながる可能性がある。
・葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12は、生体内でのメチル代謝において、それぞれ異なる役割を担っている。ひとつでも欠乏することによりメチル代謝が滞ると、血中ホモシステインが上昇し、動脈硬化などにより心筋梗塞を引き起こすと考えられている。

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