アルツハイマー病と生活習慣病、糖尿病、コレステロール、高血圧、ストレス、食事との関連についてメモ書きしています。
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- アルツハイマー病のリスク因子
- アルツハイマー病と酸化との関わり
- アルツハイマー病と糖尿病との関わり
- 終末糖化産物(AGEs)とアルツハイマー病
- コレステロールと認知症
- 高血圧とアルツハイマー病
- ストレスとアルツハイマー病
- アルツハイマー病に効果のある食事
- 女性とアルツハイマー病
- 睡眠とアルツハイマー病
- ネットニュースによる関連情報
アルツハイマー病のリスク因子
●カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究 ・アルツハイマー病に関する約320の研究論文の中から約5000例の症例を解析し、そこからリスク因子を選び出し、修正可能な因子を絞り込んだ。 ・以下の9つの因子がアルツハイマー病の約66%に関与していた。 ①肥満 ②現在の喫煙 ③頚動脈狭窄 ④2型糖尿病 ⑤低学歴 ⑥ホモシステイン(血液中に含まれるアミノ酸の一つ)の高値 ⑦うつ病 ⑧高血圧 ⑨フレイル(脆弱) ※参考資料『松井宏夫(2016)長生きできる人とできない人の習慣 日刊スポーツ連載』
●アルツハイマー病をリスクを下げる方法 ○適度な運動 ○睡眠障害を治す ・睡眠はアルツハイマー病の原因となるアミロイドβの蓄積を抑制する。 ○頭部外傷を予防する ・繰り返し頭部外傷を負うプロボクシングの選手が認知症になりやすいことは、昔から知られていた。 ・プロアメリカンフットボールやプロサッカーの選手も認知症のリスクが高いとの報告がある。 ○適度なアルコールの摂取 ・大量にアルコールを摂取する習慣は認知症のリスクを高める。 ・適度な量のアルコール摂取は、リスクを下げるという研究報告がある。よい効果があるとされるアルコールの量は、日本酒に換算して1合程度。 ○動脈硬化を予防する ・脳血管性認知症の原因だが、同時にアルツハイマー病のリスクを上げることが分かっている。 ○糖尿病を予防する ・糖尿病がアルツハイマー病の発症率を約2倍上昇させることが分かっている。 ○中年期メタボリックシンドロームを予防する ○性ホルモンの低下を抑える ・女性は男性よりもアルツハイマー病を発症する確率が2倍ほど高いことが分かっている。 ※参考資料『西道隆臣(2016)アルツハイマー病は治せる、予防できる 集英社』
●生活習慣病とアルツハイマー病 ・80歳以上のアルツハイマー型認知症の多くは生活習慣病の延長線上にある。 メタボリックシンドロームや高脂血症、高血圧などのなれの果てがアルツハイマー型認知症。 ※参考資料『伊藤隼也(2014)ボケない長寿脳の作り方 宝島社』
アルツハイマー病と酸化との関わり
・アルツハイマー病の脳は、健康な人と比べて酸化が進んでいる。 ・プラークの成分であるアミロイドもフリーラジカルを作り出して神経細胞への打撃に拍車をかけている。 →こうして組織が損傷するとそこからさらに多くのフリーラジカルが出来る。 →このドミノ倒しのような悪循環が脳組織の萎縮と壊死を招く? ※参考資料『デヴィッド・スノウドン(2004)100歳の美しい脳 DHC』
アルツハイマー病と糖尿病との関わり
●インスリン、糖尿病との関連 ・インスリンは、アミロイドβを分解する作用持つ。 ・糖尿病などでこの作用が低下すると、アミロイドベータが蓄積し、老人斑の形成や神経原線維変化が進むと考えられる。 ※参考資料『河野和彦(2016)ぜんぶわかる認知症の事典 成美堂出版』
●糖尿病とアルツハイマー病との関連 ・重度のアルツハイマー病患者での脳の前頭葉のインスリン受容体の数は、健康な人と比べ約80%も少ないことが分かってきた。 ・英キングス・カレッジ・ロンドン精神医学心理学神経科学研究所の"世界アルツハイマー病報告書2014年版"によると、糖尿病患者は認知症発症のリスクが50%高まる。さらに、肥満や運動不足などが糖尿病と高血圧の重要な危険因子で、これを防ぐ事がアルツハイマー病の予防にもつながる。 ・米国で、鼻スプレーでインスリンを吸引させる臨床試験が行われた。初期の認知症状患者の8割に記憶力向上と認知機能回復がみられた。 ○米国ペンシルベニア大学のスティーブン・アーノルド教授 ・アルツハイマー病の患者の脳を調べていくと、海馬の部分で、インスリンの効きが悪くなり、糖の代謝もスムーズにできなくなってきていることが分かってきた。糖尿病ではないのに、脳内が糖尿病状態に陥っていた。 ○米国ブラウン大学のスーデン・デ・ラ・モンテ教授 ・アルツハイマー病が進行すると、脳内でインスリンの濃度が低下して、インスリン受容体に情報を伝える力が弱まることを発見。 それが、脳の神経細胞にとって代謝の障害となって、アルツハイマー病といを引き起こすと指摘。 ○福岡県久山町での九州大学医学部の認知症の有病率調査 ・糖尿病の人は、アルツハイマー病の発症率が2倍。さらに認知症患者の死後、脳を解剖してみるとインスリン受容体が壊れており、脳内が糖尿病患者のようになっていた。その原因が高血圧と高血糖状態にあることがわかった。 ※参考資料『桐山秀樹(2015)アルツハイマー病を防げ 日刊スポーツ連載』
●アルツハイマー病と糖尿病の関係 ・糖尿病患者とその予備軍の人は、アルツハイマー病を発症するリスクが4.6倍高い。 ・1999年、ロッテルダム研究によると、高齢の糖尿病患者がアルツハイマー病にかかる割合は1.9倍高く、脳血管性認知症を発症する危険度も2倍高い。 ・インスリン注射を行っている糖尿病患者は、インスリン注射を行っていない糖尿病患者と比べて約2倍、糖尿病でない人と比べて約4倍、アルツハイマー病になりやすいという研究結果がある。 インスリンは老化ホルモンの役を果たし、代謝のシステムをかき乱す作用がある。 ※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』
●炭水化物とアルツハイマー病 ○メイヨー・クリニックで行われた研究 ・自分のお皿に炭水化物をたっぷりと盛る高齢者は、軽度認知障害(MCI)の進行リスクが4倍近く。 ・健康的な脂肪を豊富に摂っている人は、認知機能障害になる割合が42%低い。 ・鶏肉、牛肉や豚肉、魚などの健康的な食材からタンパク質をたくさん摂取する人の割合は、21%ほどリスクが低い。 ●血糖上昇が脳に与える影響 ・血糖上昇 →セロトニン、エピネフリン、GABAが減少 ・神経伝達物質を生成するのに必要となるビタミンB複合体が使い尽くされる。 ・Mgが減少し、神経系と肝臓の機能に支障が出る。 ・高血糖が引き金となって"糖化反応"が起こる。"糖化反応"は生物学的プロセスで、グルコース、タンパク質、特定の脂肪が結合し、脳にあるものを含めて組織や細胞は柔軟性がなくなり、硬くなっていく。 ・糖分子と脳のタンパク質は結びついてまったく新しい構造を作り出す。 ↓ 脳はグルコースの糖化反応による破壊に極めて弱く、グルテンなどの強力な抗原がダメージを促進するとき、ますます悪化する。糖化反応は重要な脳組織の萎縮を招く。 ●糖尿病と認知症 ・インスリン抵抗性があると、体内では脳疾患を伴う脳のプラークを形成するタンパク質を(アミロイド)を分解できないと思われる。 ・高血糖によって、体を傷つける驚異的な生体反応が引き起こされる。 →特定の含酸素分子を生成し、結果として脳内の血管を硬化させ狭窄させる炎症を引き起こす。(アテローム性動脈硬化) ・アテローム性動脈硬化は、動脈内膜での脂質やタンパク質の酸化を特徴とする酸化ストレスが増大した状態を示している。この酸化は炎症に対する反応。 ・糖尿病をわずらう人たちは15年以内にアルツハイマー病を発症する可能性が2倍。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2015)「いつものパン」があなたを殺す 三笠書房』
・血糖の変動が大きければ大きいほど、認知機能が低下する。 ※参考資料『山田悟(2015)糖質制限の真実 幻冬舎』
終末糖化産物(AGEs)とアルツハイマー病
・アルツハイマー病で脳内に付着するアミロイド-βたんぱくには大量のAGEsが含まれる。神経原繊維変化にもAGEsが含まれている。 ・高血糖の記憶 過去の高血糖が記憶として体内に残り、のちに糖尿病の合併症をもたらす。血糖コントロールをしてもその記憶は消える事がない。その記憶をもたらすのがAGE。 ※参考資料『伊藤隼也(2014)ボケない長寿脳の作り方 宝島社』
・高血糖症は、AGEsの形成、炎症、微小血管疾患というメカニズムを通じて認知機能障害の一因となるかもしれない。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2015)「いつものパン」があなたを殺す 三笠書房』
●AGEsによる老化とアルツハイマー病 ○アミロイドとAGE化、認知症 ・アミロイドとは、タンパク質が何らかの作用を受けて本来の構造を保てなくなり、クロスβ構造という特殊な立体構造となってしまい、難溶性の物質として重合、蓄積してしまったものをいう。 アミロイドになると非常に溶けにくい不溶性の性質に変わり組織に沈着しやすくなる。 これが脳にたまると脳の神経細胞が死滅し、認知症を起こす。 このタンパク質がアミロイド化する原因としてAGE化が関わっている。 タンパク質がAGE化すると、本来のタンパク質の機能を失って劣化したり、変質したりするが、その中にはアミロイド化も含まれる。 アルツハイマー病の患者はβアミロイドのAGE化が3倍進んでいるという報告がある。 ・脳の記憶を担う神経細胞にも終末糖化産物受容体(RAGE)があり、AGEがこのRAGEにくっつくと神経細胞が死んでしまう。 ○高血糖と認知症 ・高血糖で体内のタンパク質がAGE化しやすい。その中にはアミロイド化したタンパク質も含まれる。 それが脳で起こると、老人斑と呼ばれるアミロイドの沈着が起き、認知症を引き起こす。 ・インスリン分解酵素という酵素は、インスリンを分解するだけでなく、アミロイドを分解する働きも持っているが、糖尿病だとインスリンの分解、代謝のために使い果たされてしまって、アミロイドの分解量が減ってしまい、アミロイドが沈着してしまう。 ※参考資料『山岸昌一(2012)老けたくなければファーストフードを食べるな PHP研究所』
コレステロールと認知症
●コレステロールと認知症 ・自然と総コレステロール値が下がるとそれに伴って、高度な抽象的推論、注意・集中力や遂行能力が求められる認知測定での成績が悪くなる。(フラミンガム心臓研究) ・アルツハイマー病の患者は脳脊髄液内の脂肪、とくにコレステロールと遊離脂肪酸の量が著しく減っている。 ・LDLの値がとりわけ低い人たちは、パーキンソン病にかかるリスクが約350%も上昇する。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2015)「いつものパン」があなたを殺す 三笠書房』
●脂肪、コレステロールとアルツハイマー病 ・コレステロールの高い人は2倍アルツハイマー病になりやすいという報告がある。 ・コレステロール降下剤のスタチンを飲んでいる人は飲んでない人と比べてアルツハイマー病の発症頻度が低いという報告がある。 ・フランスの研究で、魚を全く食べない人は、毎日食べる人と比べて5.29倍アルツハイマー病にかかりやすかった。 ※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』
●脳とコレステロール ・コレステロールは細胞膜の材料として使用されているので、胃腸の粘膜や皮膚の細胞など新陳代謝が激しく、古い細胞から新しい細胞が頻繁に生まれ変わる場所で多く使用される。 脳の神経細胞は増殖がほとんど行われないので、コレステロールが余りやすい。余ったコレステロールは、血液脳関門を通過できず、たまる一方となる。このコレステロールが脳に悪影響を及ぼす可能性がある。 動脈硬化を治療する目的でコレステロールを下げる治療を行ったところ、認知症も一緒によくなったという報告があった。調べてみるとアルツハイマー病の人の脳内には、そうでない人よりも、コレステロールが多く溜まっているということが分かった。 コレステロールそのものが認知症の原因ではないが、何らかの関与をしていると考えられている。 ※参考資料『林 洋(2010)?をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
高血圧とアルツハイマー病
・高血圧を放置しておくと、アルツハイマー病のリスクは2倍に、脳血管性認知症の危険性は6倍になる。 ・高血圧が続くと脳の微小血管に病変や血栓が生じ、酸素と糖が脳細胞に供給されなくなり、脳細胞が減少してしまう。これが脳血管性認知症。 以前はアルツハイマー病と脳血管性認知症は別の病変と考えられていたが、現在では深く関連していると考えられている。アルツハイマー病の患者の5割に脳血管の損傷が見られ、同時に双方を患うことも少なくない。 ・高血圧は脳卒中の確率を高くする。脳卒中を起こすとアルツハイマー病のリスクが高くなる。脳卒中がきっかけとなってβアミロイドの生成を刺激する特定のタンパク質を分泌したり、脳卒中によって脳に炎症が起き、その結果アルツハイマー病を引き起こす。 ※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』
●高血圧と認知機能 ・高血圧が高齢者の認知機能の低下に重篤な悪影響を及ぼすことについては、数十年かけて行われた3つの大規模な追跡調査によって、説得力のある結果が得られている。 3つの研究で、"拡張期および収縮期の血圧が高い高齢者は、そうでない高齢者と比べ、全般的な認知機能が低く、認知症発症のリスクも高い"という点で一致していた。 ・オランダの研究チームは、高血圧によって、脳の中の白質で血流低下が起こっていることを突き止めた。血流低下は白質を萎縮させ、それによって思考力も低下する。 ※参考資料『ダグラス・パウエル(2014)脳の老化を防ぐ生活習慣 中央法規出版』
ストレスとアルツハイマー病
・慢性ストレスで脳にコレチゾールが分泌され続けると脳細胞が破壊され、新生細胞の誕生が妨げられて脳が萎縮する。 ・脳はショッキングな出来事に見舞われると大きな心理的ストレスを受け、そこから記憶障害を起こして認知症へと進行することもある。 ・強いストレスを受けるとグルココルチコイドと呼ばれる副腎皮質ホルモンが分泌し、免疫系の機能を低下させる。 そして、脳にたまったゴミを処理してくれる貪食細胞の働きが落ち、βアミロイドの蓄積が増加する。 ・笑うだけでナチュラルキラー細胞などの免疫系が活性化され、貪食細胞も活性化されてβアミロイドの除去作用も高まる。 ※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』
女性とアルツハイマー病
・女性のほうが男性より長生き。 ・平均より長生きする男性は頑丈で、アルツハイマー病をはじめ多くの病気になりづらい傾向。 ・女性の場合、妊娠・出産の経歴や更年期障害のエストロゲン補充療法がリスクを左右すると言われている。 ※参考資料『デヴィッド・スノウドン(2004)100歳の美しい脳 DHC』
・男性より女性の方が約2倍なりやすい。 ・エストロゲンが閉経後、急激に減少し、ほぼゼロになることから、内分泌系の急激な変化がアルツの原因の一つになっていると考えられている。 ※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』
○性ホルモンの低下を抑える ・女性は男性よりもアルツハイマー病を発症する確率が2倍ほど高いことが分かっている。 ・更年期障害の治療に性ホルモン補充療法を行った女性はアルツハイマー病発症リスクが低いという報告がある。 ・性ホルモンは加齢とともに低下するするが、女性は男性と違って、閉経後、急激に性ホルモンが低下する。このことがアルツハイマー病のリスクになるのだと考えられる。 ・性ホルモンはアミロイド分解酵素ネプリライシンの発現を上昇させるので、これが関連していると思われる。 ※参考資料『西道隆臣(2016)アルツハイマー病は治せる、予防できる 集英社』
ネットニュースによる関連情報
●2型糖尿病と脳血流量調節機能低下、認知スキル低下の関係 ・学習と記憶のテストで糖尿病患者はスコアが悪く、脳内の血流調節機能が低下していた。
●AGE、高温調理とアルツハイマー病との関連 ・AGEsの多い西洋型の食事を与えられたマウスの脳のAGEs濃度は高くまたアミロイド-βの沈着量も多かった。同時に認知機能や運動機能の低下も観察された。AGEsの低い食事を摂ったマウスではより長く健康な状態が維持された。臨床試験でも、血中のAGEs濃度が高いヒトは認知機能の低下を起こすリスクが高かった。
●30代で肥満だと将来のアルツハイマー病のリスクが増大? ・1999-2011年にかけて英国全体の病院から肥満と診断された451,232人の診療記録を用いて解析を行ったところ、30-39歳で肥満である場合、肥満でない人の3.5倍認知症のリスクが高まった。しかし、40代では1.7倍に留まり、さらに50代では1.5倍、60代では1.4倍だった。70代になると、肥満は認知症のリスクを高めを低めもせず、80代になると、逆に太っているほうが認知症のリスクは低下した。 ・年齢の影響は血管性の認知症とアルツハイマー病では異なっており、血管性の認知症は年齢が上がるごとに上昇したが、アルツハイマー病では低下した。
●コレステロール値とアルツハイマー病との関連 ・空腹時の善玉コレステロール値が低く悪玉コレステロール値が高い人ほど、脳に蓄積するアミロイドが多いことが明らかになった。
●糖尿病歴が長くなると海馬が萎縮? ・糖尿病歴が長いほど脳の容積が小さくなる傾向だった。中でも記憶と関係が深い海馬の容積をみると、糖尿病歴が10~16年だと糖尿病でない人に比べて約3%、17年以上だと約6%小さいという結果が出た。 糖尿病の中でも食後に血糖値が上がり易いタイプが、脳の縮みやすさに関わっているらしい。