※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
神経伝達物質と精神状態
・セロトニンがはじめて脳で発見されたときは、一つの受容体だけに作用すると考えられたが、その後少なくとも15のセロトニン受容体があることが知られている。 それぞれの受容体の働きや精神状態との関連についてはほとんど分かっていない。 ・それぞれの神経伝達物質と受容体が、様々な行動学的・精神医学的現象に関与していることが示唆される。特定の神経伝達物質または受容体とある精神状態の間に、単純で唯一の関係があるとは考えにくい。 ※参考資料『エリオット・S.ヴァレンスタイン(2008)精神疾患は脳の病気か? みすず書房』
・精神医学のほぼすべてに関連する広範な脳の機能を、最低4つのシステムからなる一組の回路が統制している。 ・それぞれのシステムは脳幹内の特定の場所で生成された化学物質を用いて、脳の数多くのシステムを活性化し、調整する。 つまり、それぞれの化学物質をそれに応じた脳の領域に送って、その領域の活動を活性化する細胞間の伝達を調整する。 ・上記の調整物質は、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、アセチルコリンの4種で、どれも睡眠欲や食欲(セロトニン)、または記憶(アセチルコリン)をコントロールする化学物質として注目されている。 ・代表的な精神病症候群は、脳の特定部分(またはそれをつなぐ回路)の機能不全によるものだということが分かってきた。 どのケースも、脳のその部分で神経調整物質の一つ(もしくは複数)の欠乏、または増加が起こっていて、内因性の精神疾患はこの脳内物質のバランスの崩れによって引き起こされる。 ・セロトニンとノルエピネフリンのバランスの崩れはうつ病を引き起こし、ドーパミンのバランスが崩れると注意欠陥障害や精神分裂病を誘発する。 ・アルツハイマー病は、アセチルコリンのシステムの機能不全が関わっていると考えられている。 ・不安障害には、GABAが関与しているが、その仕組みは神経調整物質と精神疾患との関係とは少し異なる。 ※参考資料『アンドルー・アバーバネル(2001)恋愛できない脳 原書房』
薬物の種類と作用
●向精神薬の種類 ○興奮剤 ・覚醒度を高め、一般に精神機能を強化する。 ・コカイン、カート、アンフェタミン(覚醒剤)、カフェインなど ・興奮剤は、基本的に気分に好影響を与えるが、ときに不安や焦燥を引き起こす。 ○鎮静剤 ・気分を落ち着かせ、睡眠を導き、運動協調を阻害し、反応を遅くする。 ・アルコール、エーテル、バルビツール酸、ペンゾジアゼピン系安定薬、γ-ヒドロキシ酪酸(CHB)などがある。 ○幻覚剤 ・知覚の混乱。視覚や聴覚などの感覚を歪める。認知や気分にも複雑な変化をもたらす。 ・LSD、メスカリン、PCP、ケタミン、アヤワスカなど。 ○麻酔剤 ・鎮静剤でもあるが、独特の強力な多幸感(および鎮痛作用)を生み出す。 ・植物由来のアヘン、モルヒネ、ヘロインや、合成麻薬のオキシコンチン、フェンタニルなど ○その他 ・ニコチンは、興奮と鎮静と多幸感が混ざったような作用。 ・エクスタシー(MDMA)は、興奮剤であると同時に弱い幻覚作用もあり、それが他人との親密感を生み出す。 ・大麻は鎮静剤だが、軽い多幸感をもたらす(ニコチンより強いがヘロインには遠く及ばない) ※快感回路、腹側被蓋野(VTA)については以下の記事参照。 快感、報酬、欲求、依存症の"脳内の快楽中枢、快感回路" ●向精神薬の作用 ・薬の化学作用は常に同じでも、その作用はそのときの脳の状態の影響を受け、それが薬の効果を左右する。 ・鎮痛薬としてモルヒネを投与された人は、痛みは大幅に和らいだが多幸感はそれほどでもないというのが普通。しかし同量のモルヒネを娯楽目的で摂取した人は、はるかに大きな多幸感を報告する。 ・二つの被験者グループに平均的な強さの同じ大麻を吸わせ、片方のグループには非常に強い種類の大麻だと告げ、もう片方には非常に弱い大麻だと告げた。すると、とても強い大麻だ言われたグループの方が、主観的な多幸感が有意に高かった。 ○エンドルフィン/オピオイドシステム ・脳内でモルヒネ受容体と結合してそれを活性化する化学物質がいくつが特定された。このような天然のモルヒネは、エンドルフィンと呼ばれる。 ・様々な生化学作用を持つオピオイド(アヘン様物質)の受容体が数多く発見され、それに対して数多くのエンドルフィンが対応付けられた。 ・エンドルフィン/オピオイドシステムの役割は多面的であり、痛みの知覚をはじめ、気分、記憶、食欲、消化器系の神経制御まで、様々な機能に関係している。 ○アンフェタミン(覚醒剤)、コカイン ・ドーパミン・トランスポーターの働きを阻害する。 →軸索端末へのドーパミン再取り込みが阻害され、結果として腹側被蓋野(VTA)標的領域でのドーパミンの作用が長引き、快感回路が刺激される。 ○アルコール、エーテル ・ニューロンの化学的・電気的機能の多くの面に働きかける。 ・エンドルフィンとエンドカンナビノイド(内部の大麻様物質)の両方の分泌を促し、それによりVTAドーパミン・ニューロンの抑制を解除する。 ○カフェイン ・ニューロンに幅広い影響を及ぼす。 ○ペンゾジアゼピン系安定薬 ・抑制性の神経伝達物質GABAの受容体に結合し、その自然な働きを補う。 ○大麻 ・主な有効成分はテトラヒドロカンナビノール(THC)という化合物。 これが脳内のいくつかの特定の受容体を結合し、それを活性化する。 ・THCがCB1受容体を活性化 →VTAドーパミン・ニューロンに向けての抑制性の神経伝達物質GABAの放出が抑えられる。 →VTAニューロンの抑制が解かれてVTAの投射先領域でのドーパミン放出が増加 ○ニコチン ・有効成分はニコチンだが、これは脳がもともと持っている内因性の神経伝達物質アセチルコリンに対応する受容体を活性化する。 ・ニコチンはグルタミン酸を含む軸索端末上の受容体と結びつき、それを活性化する。この端末はVTAドーパミン・ニューロンと接している。ニコチンがこの特殊な受容体を活性化すると、グルタミン酸の放出が増え、VTAニューロンの興奮を高めて、ドーパミンの放出を増加させる。 ○快感回路を活性化しない薬 ・LSDなどの大半の幻覚剤は内側前脳快感回路を活性化しない。 ・バルビツール酸、ベンゾジアゼビンなど鎮静剤の多くは快感回路を活性化しない。 ※参考資料『デイヴィッド・J.リンデン(2012)快感回路 河出書房新社』
●クロルプロマジン ・それまで興奮状態で介護が難しかった患者が、超然となり、周囲に無関心で穏やかな態度に変わった。 ・躁病患者や興奮の強い患者に特に有効であった。 ○副作用 ・患者の中には眠気に悩まされる人もいて、特に治療の初期では顕著だった。 ・血圧が下がり蒼白になることもあり、かなり深刻なものもあった。 ・連続して長く使うと、パーキンソン病と他の錐体外路系運動障害が起こるという報告がある。 ※参考資料『エリオット・S.ヴァレンスタイン(2008)精神疾患は脳の病気か? みすず書房』
統合失調症の症状の分類、原因の仮説、抗精神病薬
●統合失調症の症状の分類 ・種々の型の統合失調症が認めらていて、原因はいくつもあり、様々な治療法が必要であると感じている人が多い。 ・一型と二型、慢性と急性の両方が混じっている場合もあり、すんなり分けられない場合もある。 ○急性期と慢性期 ・急性では、症状がはじめて現れるまではたいてい比較的うまく社会に適応している。 見た目には、病気はかなり急に現れる。 典型的な症状は、妄想と幻覚。陽性症状が目立つ。 ・慢性では、仕事にうまく適応できず、社会との接点が乏しいことが多い。 患者が孤立した生活を送ることが多く、衛生意識が低く、奇異な行動を示し、感情が平板で、会話や筆記に障害が出る徴候があり、存在しない言葉を使い、脈絡のないことをしゃべる。陰性症状が目立つ。 ・慢性統合失調症は、一般に抗精神病薬が効きにくい。 ・慢性と急性でそれぞれ異なるドーパミン受容体が関係しているのではないかという推測もある。 ○一型と二型 ・陽性症状(妄想と幻覚など)は一型で目立つ。 ・陰性症状は二型で際立ち、社会的スキルの欠如、感情鈍麻、意思伝達能力の欠如などが挙げられる。 ●統合失調症と遺伝 ・統合失調症の場合、一卵性双生児の一人が統合失調症と診断されれば、もう一人が統合失調症である確率は、研究によって多少の違いが見られるものの、おおよそ35~50%。同性の二卵性双生児の場合は7~14%。 ●統合失調症のドーパミン仮説 ・販売されていたほとんどの統合失調症薬は、パーキンソン病に似た運動症状を引き起こすという観察が当初からあった。 パーキンソン病患者でドーパミン欠乏があることが分かり、抗精神病薬がドーパミン活性を阻害するという仮説が提出された。 →統合失調症患者はドーパミン活性過剰の状態にあり抗精神病薬はこれを正す。 ○疑問点 ・統合失調症の症状と同じものを、ドーパミン作動性薬だけではなく、他の神経伝達物質に作用する薬でもつくりだすことができる。 ●抗精神病薬 ・抗精神病薬のほとんどはドーパミン受容体に結合するが、ドーパミンがこの受容体に結合して活性化したときに起こる生理的反応は起きない。 →本質的に、抗精神病薬はドーパミン受容体の拮抗薬であり、ドーパミン受容体を遮断し過剰に作用させない効果がある。 ・ドーパミンは、陰性症状より陽性症状に密接な関係があると広く信じられている。 ○統合失調症患者の脳の状態は? ・統合失調症患者でドーパミンが異常な高濃度で存在するということは証明されていない。 ・統合失調症患者の脳のドーパミンの量は正常であるが、受容体の密度が高くなることによって"ドーパミンが高濃度で存在するかのような"状態がつくられる。 ○統合失調症患者の脳でドーパミン受容体が過剰に存在するか? ・死亡した患者の脳を調べると、統合失調症患者の脳でドーパミン受容体が異常に多いという報告があった。 ○疑問点 ・統合失調症患者と正常な人の脳のドーパミン受容体の数の分布に重なりがあった。 →平均値では統合失調症患者のドーパミン受容体は多いが、これに当てはまらない患者も多い。 ・調べた患者のほとんどは、死亡する前のある期間、抗精神病薬で治療を受けていた。 →抗精神病薬によるフィードバック効果の影響では? ○抗精神病薬によるフィードバック ・抗精神病薬によってドーパミン受容体が遮断されると、フィードバックがかかり、この受容体の増殖が引き起こされる。 ○抗精神病薬の有効性 ・ジョン・ケインの研究によると、薬を四週間投与して症状に何らかの改善が見られるのは、統合失調症患者の50%と結論している。 さらに、薬に反応しなかった患者に引き続き同じ量の薬の投与を続けるか、投与量を増やすか、あるいは他の抗精神病薬に切り替えた場合、四週間後に何らかの症状改善が見られたのは9%だった。 ・陰性症状(主に、会話や情動の機能低下)が支配的なときには効果が出にくいと言われている。 ・患者が一年以上寛解状態を維持しているということで投薬を止めてしまうと、四分の三以上が再発する。 ・ドーパミン活性を阻害する抗精神病薬による治療を受けた統合失調症患者は、薬物治療を受けていない患者より慢性化しやすいという報告もいくつかある。 ○副作用 ・薬の治療を続けると、患者の25~40%で遅発性ジスキネジアを発症する可能性が出てくる。 ・自分が"ゾンビ"であるように感じたり、"奇妙な感覚になり"、"だるく"、"ぼんやりして"、"意思や自発性が衰えてしまった"としばしば訴える。 ※参考資料『エリオット・S.ヴァレンスタイン(2008)精神疾患は脳の病気か? みすず書房』
●統合失調症 ○ドーパミンと統合失調症との間の関連の初期の説 ・ドーパミンが多すぎると心理学的障害が誘発され、ドーパミンが少なすぎるとパーキンソン病に似た運動障害が誘発されるので、均衡が保たれる必要がある。 ○統合失調症のドーパミン受容体説の難点 ①ドーパミンに影響を与える薬の効き目は単純な受容体プロセスで説明するには緩慢すぎる。 薬はシナプス前終末から放出されるとすぐ受容体に結合し、生理学的効果がすぐに出てくるが、治療効果は1,2週間経たないと現れない。 ②パーキンソン病でドーパミンの減少を実証するのが比較的容易であったのとは対照的に、統合失調症でドーパミン値が上昇していることを実証しようとしてもうまくいかなかった。 ③統合失調症の標準的な表れ方には陽性症状(プラスされる症状:幻覚、異常な思考パターン、妄想、錯乱、動揺、敵意、場違いな奇行)と陰性症状(マイナスの症状:情動の欠如、注意とワーキングメモリーにおける認知的欠陥、不潔、貧困な言語能力、社会的孤立、無気力)が含まれるが、典型的抗精神薬は主に陽性症状の治療に有効で、陰性症状に対しては効果が劣る。 ・近年の研究により、セロトニンやノルエピネフリンを含む他のシステムを標的にした薬でも統合失調症が改善されることが示されているが、これらは陰性症状によく効くことが分かっている。 ●抗不安薬 ○心配の回路 ・中隔野と海馬は脳の行動抑制システムを構成していると考えられていた。痛みや罰、失敗、報酬の喪失を生み出したり、未知のことや不確実性を誘発するような嫌悪刺激を感知し、反応するネットワーク。 ・行動抑制システムが活性化されると、行われている最中だった行動が抑制され、それから個体は覚醒され、注意深くなり、油断無く警戒する。 ・中隔野と海馬が損傷されると、嫌悪刺激によって覚醒と警戒を誘発される部位が除去されることになり、不安が軽減されるのだろうと考えられていた。 ○心配の回路とセロトニン、ノルエピネフリン ・脅威があるとき、脳幹のセロトニン細胞とノルエピネフリン細胞が活性化される。 →これらの細胞の軸索終末からセロトニンとノルエピネフリンが放出される。 →終末は多くの脳領域に分布しているが、セロトニンとノルエピネフリンは調節物質なので、主な効果は活動を誘発することよりも、すでに活動しているシナプスでの伝達に変化を加える。 中隔野と海馬は脅威情報の処理に関わっているから脅威があるとき、これらの領域は活動しているはず。そこでセロトニンとノルエピネフリはこれらの領域のシナプス過程を増強し、その結果、覚醒と脅威、そして不安をもたらすのであろうと考えられる。 ○抗不安薬の作用(グレイの説) ・抗不安薬はGABA伝達を増強する。 増強作用は主にGABA伝達が起こなわれているシナプスで起こり、活動していないシナプスでは起こらない。 →GABA活動はしばしば、近くの細胞の活性化に反応して起こるので、脅威刺激があるときは、抗不安薬によるGABA増強作用は、脅威を処理しているシナプスに集中する。 中隔野と海馬の細胞だけでなく、脳幹のセロトニン細胞とノルエピネフリン細胞も脅威によって活性化される。 →抗不安薬は脳幹の細胞GABA伝達を増強し、それによって前脳でのセロトニンとノルエピネフリンの分泌を減らす、とグレイは考えている。 ○グレイの説の難点 ・GABA伝達だけに注目している バスピローネとSSRIはどちらも不安軽減効果があり、またどちらも脳幹の細胞体でではなく、セロトニン終末に対するシナプス後受容体のレベルに働きかける。 ・扁桃体は危険と脅威の処理に対する重要な役割を果たしているが、扁桃体の役割が含まれていない。 ○ジョゼフ・ルドゥーの説 ・全般的不安は、情動によって始動され維持される心の覚醒状態。 そうすると不安には少なくとも、覚醒機能のネットワーク(モノアミンシステム)、情動機能のネットワーク(広義の扁桃体)、認知機能のネットワーク(皮質前頭前野、海馬)が必要。 それぞれの脳領域やネットワークは不安を構成するプロセスに独自の貢献をしているが、不安自体は特定の脳領域に依拠するものではなく、脳全体にわたる神経回路の性質に依拠すると考えられる。 ・不安は、ワーキングメモリーが人を心配させ悩ませる考えに占領された認知状態。 ・不安な精神状態では扁桃体のような情動処理に関わるシステムが脅威のある状況を察知しており、ワーキングメモリーが何に注目し、処理するかに影響を与えている。そしてこのことによって、実行機能がほかの皮質ネットワークや記憶システムから情報を選び、とるべき意思決定をするやり方が影響を受ける。 ・グレイの理論はモノアミンシステムが脅威によって活性化される仕組みにふれていないが、その仕組みの重要なものの一つは、扁桃体からモノアミン細胞への直接の接続による。 これによって個体が脅威にさらされているときには、セロトニンとノルエピネフリンが前脳の広い範囲(皮質前頭野、海馬、扁桃体を含む)に分泌される。 扁桃体から前頭前野への直接の接続によって、扁桃体が脅威を感知すると、ワーキングメモリーが直接影響を受ける。しかし前頭前野とそのワーキングメモリー機能は、扁桃体に誘発されるモノアミン分泌や、ホルモン関連その他の身体機能反応のフィードバックなどほかのルートによっても影響を受ける。要するに扁桃体が脅威を感知したことが引き金となって、その結果、最終的にワーキングメモリーが、警戒しながら処理をする状態になる。 ※参考資料『ジョゼフ・ルドゥー(2004)シナプスが人格をつくる みすず書房』
精神障害の薬物療法と非薬物療法
・精神障害の様々な治療法の相対的な有効性を評価したり、新しい向精神薬の臨床試験結果を評価するのは容易ではない。 →患者の精神や行動の状況の変化の評価は難しく、程度の変化の評価は時間が長くかかり、そのため費用がかかりすぎ、実際的ではない。 ・精神科医は薬に頼る方向に圧力を受けている。 →精神障害の進行や悪化に重要な役割を果たすことが多い心理学的要因、環境的要因を見つけ出そうとする試みには時間を割かなくなっている。 ●非薬物療法 ・おしなべて、一番ありふれた精神障害の患者では、非薬物療法は少なくも薬物療法と同じくらい効き目があることが実験データから示唆されている。 ・精神療法は時間も費用もかさむ傾向にある。 ・過去に精神療法が、精神内界の葛藤の根源や症状の隠れた意味を探し出すのに重きを置きすぎていたが、最近は過去との関係をあまり重要視せず、特定の病気の素因のある人に、より健全な精神的態度や生活様式を確立させるための方法を探ろうとしているようだ。 ●精神障害と身体的な病気 ・精神障害の患者と家族は、問題が精神的なものではなく身体的なものと考えたがる傾向がある。 ←・精神障害と診断されるとスチグマ(社会的烙印)を伴うことになるのではないかという危惧。 ・精神的問題は、その人が弱い人間であり、問題を克服する努力が足りない証拠、と思う人が多い。 ・精神障害であると診断されると、患者の家族は自分達が非難されているように感じることがよくあるし、実際、家族が違った接し方をしていたら問題は生じなかったかもしれないと考える人もいる。 ・問題が生化学的なものであれば、薬で治すことができるように思えるし、精神療法家に個人的なことをさらけ出したくない人も多い。 ・患者が"身体的な病気"と言われると、ほっとするかもしれないが、病気の回復において受身の立場になり、病気を治すうえで身体的療法に完全に依存することになる。 ・患者は"身体的な病気"と言われると、薬物療法を素直に受け入れやすくなることが知られている。 ※参考資料『エリオット・S.ヴァレンスタイン(2008)精神疾患は脳の病気か? みすず書房』
ネットニュースによる関連情報
●統合失調症と有酸素運動との関連 ・10件の独立した臨床研究、のべ385人の統合失調症患者を検討したレビュー及びメタアナリシス研究。 ・その結果、12週間の有酸素トレーニングで被験者の脳機能に有益な改善をもたらす可能性があることが分かった。 運動によって最も改善が見られたのは患者の社会的状況についての理解力、注意力スパン、一度にどのくらいの量の記憶を止め置くことができるのかというワーキングメモリであった。