甲状腺がんの概要

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. 甲状腺がんとは?
  2. 症状
  3. 原因、リスク要因
  4. 疫学・統計
  5. 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス

甲状腺がんとは?

・甲状腺は、のどぼとけのすぐ下に位置する器官で、代謝を促す甲状腺ホルモンを分泌している。
・甲状腺がんは、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんに分類される。日本人に最も多く見られるのは乳頭がんで甲状腺がんの85~90%を占めている。
 
①乳頭がん
・乳頭がんは甲状腺がんの中で最も多く、甲状腺がんの約9割がこの種類に分類される。
・40歳から50歳代の比較的若い女性に多く、極めてゆっくり進行する。
・リンパ節への転移が多く見られるが、リンパ節の切除を含めた手術を中心とした治療が行われ、予後がよいがんとされている。生命にかかわることはまれだが、一部の乳頭がんでは、悪性度の高い未分化がんに種類が変わることがある。
・高齢で発症するほど悪性度が高くなりやすいと考えられている。
 
②濾胞がん
・甲状腺がんのうち、約5%がこの種類のがん。
・乳頭がんよりやや高齢者に多い傾向があり、血液の流れに乗って肺、骨などの遠くの臓器に転移しやすい性質がある。
・治療後の経過は比較的よいがんとされているが、血行性転移した場合の予後はあまりよくない。
 
③髄様がん
・髄様がんは、傍濾胞細胞(カルシウムを調節するカルシトニンと呼ばれるホルモンを分泌する細胞)ががん化したもので、甲状腺がんの約1~2%に見られる。
・乳頭がんや濾胞がんよりも症状の進行が速く、リンパ節や、肺や肝臓への転移を起こしやすい性質がある。
・約2~3割は遺伝性(家族性)に起こるため、家族も含めて検査が行われることがある。
 
④未分化がん
・未分化がんは、甲状腺がんの約1~2%に見られるがんだが、進行が速く、甲状腺周囲の臓器(反回神経、気管、食道など)への浸潤や遠くの臓器(肺、骨など)への転移を起こしやすい、悪性度の高いがん。
・特に高齢者に多い種類のがん。

がんとは?

症状

・通常、しこり(結節)以外の症状はほとんどないが、違和感、痛み、飲み込みにくさ、声のかすれなどの症状が出てくることがある。

原因、リスク要因

・甲状腺がんの確立されたリスク要因は、放射線被ばくのみとされている。
・甲状腺組織の発達に関連する甲状腺刺激ホルモンの増加は、甲状腺がんのリスク要因ではないかと指摘されている。
・組織型によってリスク要因がそれぞれ異なっている。
 
①乳頭がん
・成長期である乳幼児期は、放射線曝露の感受性が高く、この時期に頭頸部に放射線治療などを受けたことがある場合には、乳頭がんが発生する確率が上昇することがわかっている。
 また、甲状腺刺激ホルモン制御に不可欠であるヨードは、摂取過剰で乳頭がんのリスク要因になることが指摘されている。
 
②濾胞がん
・ヨードの摂取量不足が濾胞がんのリスク要因となることが報告されている。
 
③髄様がん
・甲状腺がんの遺伝要因は強くはないものの、髄様がんは多発性内分泌腫瘍症として発生することや、家族性が強いことが報告されている。
※多発性内分泌腫瘍症とは?
主に内分泌臓器(ホルモンをつくる臓器)が冒される病気。

疫学・統計

・予測がん罹患数(2014年)では、がん全体に占める割合が、男性は1%、女性が3%となっている。
・甲状腺がんは女性に多く、また若年に比較的多く発生するという特徴がある。
※女性関連要因と甲状腺がんとの関連については以下の記事参照。
月経前症候群(PMS)、更年期障害、ホルモン補充療法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”

予防方法

多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス

※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?

●海藻摂取と甲状腺がん発生との関連について
 
・海藻は、甲状腺ホルモンの構成成分であるヨウ素を多く含んでいる食べ物。ヨウ素は生命維持に欠かせない重要なミネラルだが、それのとりすぎが甲状腺がん発生の原因になるという報告がある。
 そこで海藻摂取をヨウ素摂取の代替指標として、甲状腺がん発生との関連を調べた。
・食事摂取頻度に関する質問への回答から、週2日以下、週3~4日、ほとんど毎日という3つのグループに分けて、その後の甲状腺がんの発生率を比較した。
 
○結果
・海藻食べる頻度が多い人ほど甲状腺がんになりやすい傾向を認めた。
 甲状腺がんの中でも、乳頭がんに絞って解析したところ、週2日以下しか海藻を食べない女性と比べて、ほとんど毎日海藻を食べる女性で、統計学的に有意に甲状腺がんリスクが高くなっていた。
・閉経前の女性では、海藻摂取と甲状腺がんリスクに関連を認めなかったのに対して、閉経後の女性では、海藻の摂取頻度が多い女性ほど甲状腺がんになりやすいという結果を得た。
 
○なぜ閉経後の女性だけリスクが高い?
・はっきりは分からないが、一つは年齢による海藻摂取量の違いが影響しているのかもしれない。
 国民健康栄養調査は、閉経前の女性よりも閉経後の女性の方が、海藻摂取量が多い(すなわちヨウ素摂取量が多い可能性)ことを報告してる。
・海藻がエストロゲン濃度を下げる方向に働いた、という実験報告がある。
 閉経前の甲状腺がんには、甲状腺がんの増殖に関与するエストロゲン受容体αの発現が多い事が知られているので、エストロゲン濃度を下げる海藻は甲状腺がんを予防する方向に働く可能性がある。そうだとすると、閉経前に食べる海藻は、ヨウ素による甲状腺がんリスクの上昇と、エストロゲン濃度を下げる働きによるリスク低下という逆方向の作用が打ち消しあい、関連を認めなかったのかもしれない。
 一方、エストロゲン濃度が低く、エストロゲン受容体αの発現が少ない閉経後では、海藻の女性ホルモンを介した甲状腺がん予防作用が働かないことで、海藻中のヨウ素による甲状腺がんリスクの上昇が観察された可能性がある。

ネットニュースによる関連情報

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