男女の脳、心理の違い

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  1. 男女の脳の違い
  2. 言語
  3. 空間能力、地図
  4. 健康
  5. 恋愛、性欲

男女の脳の違い

●脳梁
 
・脳の両半球をつなぐ神経線維群に前交連と呼ばれる細長い帯があるが、これが女性では10~12%ほど大きい傾向がある。
・両半球の使い方が男女と異なっていて、男は分業的なのに対し、女性は両方を使っている。
 
○マイケル・ガザニガの研究
・脳卒中で脳の一方に損傷を受けた場合、男の方が深刻な被害を被るという。女は無事な半球を速やかに援用できるのではないか、と推測している。
 
○ミネアポリスの児童発達研究所の調査
・男女に一連の作業をしてもらって、脳の電気的な活動について調べた。
・言葉を選択するテストをさせた場合、女性は両半球とも等しい活動を示した。一方、大部分の男性は左半球のみが活発な活動を示した。
 
※参考資料『デボラ・ブラム(2000)脳に組み込まれたセックス 白揚社』

 

○脳梁の違い
・女性の脳梁のほうが太く、この特徴から女性は二つの半球を同時に使いやすい傾向があると言われている。
・1980年以降に発表された50ばかりの論文の詳細な分析によると、男女間のはっきりした違いが入念に証明されたケースは一つもないことがわかるという。
・脳梁が太いからといって、二つの半球をつなぐ神経線維が多く含まれているとは限らない。
 
○先史時代の適応と男女の脳
・男性は野生動物の追跡を含む狩猟に順応し、そのことが優秀な空間把握能力を説明付ける。女性は、母親として子どもの世話にせっせと励むせいで、言語能力をさらに発達させた。
→しかし、上記については科学的根拠は見つかっていない。
・ニューメキシコ大学のルイス・ビンフォードは、初期のヒト科は最初のうち、すでに死んでいる動物を食べるハイエナのような存在だったという見解に達した。狩猟をするにしても、動物は大型獣ではなく小動物であり、網や槍、斧などの道具を使った。女性も男性と同様にこうした仕事に従事したはずだ。
 
・個体間の相違が非常に大きいので、男女間の脳の働きの違いが目で確認できるのは稀。
 
・多くの研究で行われてきた神経心理学のテストによると、総合的に見て女性は言語能力テストで成績がより良く、男性は空間能力テストで優秀。
→詳細に結果を見てみると、男性と女性が違うとする信頼に足るテストは、口頭の流暢さと三次元の回転のみになる。それも、かろうじてといった程度。そして学習するにつれて得点の差もなくなる。
→言葉や空間のテストにおける男女の能力の差は解消できないものではなく、生来のものではないということを示している。
 
※参考資料『カトリーヌ・ヴィダル(2007)脳と性と能力 集英社』

言語

・1995年~2004年にわたる女性442人、男性377人を比較した研究によると、言語を使う際に活性化する脳の領域の分布には、統計上意味のある違いは見られなかった。
→この研究の結論として、言葉を使用するときに女性のほうが男性よりも格段に両半球を使っているという証拠は、脳画像からは見つからなかった。
 
※参考資料『カトリーヌ・ヴィダル(2007)脳と性と能力 集英社』

 

○カナダ、マクマスター大学のサンドラ・ウィテルソン博士の研究
・死後の脳を解剖して神経細胞の数を数えた。
・話の内容や文章の意味を理解することに関わるウェルニッケ野と呼ばれる領域の神経細胞の密度が、女性のほうが12%高かった。
 
※参考資料『NHKスペシャル取材班(2011)女と男 角川書店』

空間能力、地図

●空間能力
 
・ドイツのウルム大学の研究では、仮想の迷路で道を見出していくテストを実施し、脳の活性化を分析した。
 男女とも右半球(海馬、前頭葉、頭頂葉)と左半球(頭頂葉、側頭葉)で同時に多数の箇所が活発に働くことが見てとれた。
 男女間の違いは、以下の二つの領域のみだった。男性は左半球の海馬をより活発に働かせ、女性は右半球の前頭葉を活発に働かせる。これは、しばしば男性は空間の全体像に立脚し、女性は目の前にある目印を頼りにするという面を反映しているようだ。
 女性が空間的能力において優秀でないのは、総合的な位置判断が出来ていないという点で説明がつく、と研究者は述べている。
・社会的、文化的環境の影響もある。西洋社会では、少年は幼いうちからサッカーのような野外での団体競技へ参加させられるが、これが空間での自分の位置を把握し、移動することを学ぶのに有利になる。
 
※参考資料『カトリーヌ・ヴィダル(2007)脳と性と能力 集英社』

 

●男女の地図の読み方の違い
 
・同じ目的地を目指すとき、男性は方角や距離の指示を、女性は目印の指示を得意としている。
 
○地図研究の専門家、デボラ・ソーシャー博士の説
・ヒトの祖先がアフリカの大地で生活していた時代の進化と関係している。
・狩りをしている男は、獲物を遠くまで追っかけて行った後、自分たちの住みかに戻る際、追ってきた道をジグザグに同じ道を引き返すより、方角を頼りに最短距離で帰った方が効率的。
・採集をしている女は、木の実のある場所を"茂み"や"大きな木"などの目印で覚えておくほうが有効。
 
※参考資料『NHKスペシャル取材班(2011)女と男 角川書店』

 

●空間推論と男女差
 
・例えば、道を探すとき、男は頭の中に空間地図を使って動くが、女はその場所その場所の目印を使って動く。
・抽象的な空間推論でも性差が表れる。たとえば、ある角度から写した見知らぬ物体を見てから、別の物体の写真を見て、それらが別の角度から見た同じ物体かどうか判断するとき、男性は女性より速くて正確。
 この違いはおそらくホルモンの影響だと考えられていて、女性にテストステロンを与えると、この作業のできが急にすごく良くなる。
 
※参考資料『サンドラ・アーモット,サム・ワン(2009)最新脳科学で読み解く脳のしくみ 東洋経済新報社』

健康

●脳の老化
 
○ペンシルヴェニア大学、ラケル・グール、ルーベン・グール夫妻の研究
・平均すると男の脳のほうが大きいものの、十代後半から四十代の半ばにかけて男は女の3倍の速さで脳組織を失うという。
 女性は脳組織が失われるにつれて神経の活動を抑えられるのに、男性はニューロンを酷使し続けるようだ。
・加齢による脳組織の損失の男女差は、前頭葉で顕著だという。
男性はもとはより大きな脳を持っているが、中年までには前頭葉が女性と同サイズになってしまう。
 
※参考資料『デボラ・ブラム(2000)脳に組み込まれたセックス 白揚社』

 

●心の病
 
・思春期になると性ホルモンが分泌され、それをきっかけに、神経の構造やつながりが変化し始める。
 実際、精神障害の発病年齢は14歳がピークで、先天的要因による精神障害の男女差も、その年齢で初めて顕著になる。
・不安神経症、うつ病、摂食障害は女性のほうが多く、統合失調症、自閉症スペクトラム障害は男性のほうが多い。
 もっと年齢が高くなると、アルツハイマー病は女性の方が多く、パーキンソン病は男性のほうが多い。
 
※参考資料『オギ・オーガス,サイ・ガダム(2012)性欲の科学 阪急コミュニケーションズ』

恋愛、性欲

○ロンドンのユニヴァーシティ・カレッジの神経学研究所の実験
・女性の手に強弱様々な電気ショックをかけて、そのときの様子をMRIで調べた。次に女性と恋愛関係にあるパートナーにも同じ実験をした。
・女性はパートナーの手に強弱いずれかの電気ショックをかけたことを知らされるが、相手の顔も身体も見ることはできない。それでもパートナーが強いショックを受けたと知ると、女性の脳では自分がショックを受けたときに苦痛を感じるのと同じ領域が活性化した。
→女性達はまさしく相手の脳になって感じていた。
・男性の場合には同様の反応は現れなかった。
 
○辛いとき、そばにいる?他者との接触を避ける?
・女性はだれかが辛い思いをしているときには、自然にそばにいてやろうとする。
→悲しいときや絶望しているとき、そばにいようとしないパートナーの姿勢に当惑することが多い。
・男性は自分が辛い思いをしているときには他者との接触を避けようとする。
→男性はトラブルを独りで処理しようとするので、女性も同じだろうと思う。
 
○感情的なできごとの記憶
・女性はふつう感情的な出来事(最初のデート、休暇、喧嘩など)を男性よりも鮮やかに、しかも長く記憶していることが分かっている。
→女性のほうが感情的な細部まで覚えているのは、ひとつには女性の扁桃が細かな感情に反応して容易に活性化するから?
扁桃の反応が強いほど、海馬はその出来事のたくさんのディテールに記憶用のタグをつける。
 
※参考資料『ローアン・ブリゼンディーン(2008)女は人生で三度、生まれ変わる 草思社』

 

●セクシャル・キュー(手がかり、反応を引き起こすきっかけ)
 
・食べ物の味は、甘み、塩味、酸味、うま味、苦味などの味覚キューに分けることができて、そのキューが"味覚ソフトウェア"を起動させる。
 同じように、性嗜好も限られた数の"セクシャル・キュー"に分けることができて、そのキューが"性的欲望のソフトウェア"を起動させるのでは?
・セクシャル・キューは、味覚のキューと違って男女差がある。
 
●男性の脳
 
・男性の脳は、女性の脳に比べて、目で捉える性的刺激に強く反応するように作られているようだ。
 実際に男性の性的興奮に関与しているのは、扁桃体と視床下部。扁桃体は、感情的に反応する役割を担い、視床下部は性的興奮を引き起こす役割を担っている。
・ある研究者が男女にいくつかのポルノを見せて、男女の脳の活動変化を比較したところ、男性の扁桃体と視床下部は、女性のものより強く活性化したという。
・男性の場合は、性的な意欲と脳の皮質下の報酬系を結ぶ経路の数が、女性よりも多いという。
→男性のほうが性欲が強いのは、それが原因の一つと考えられている。
 
●女性の脳
 
・女性は、男性とのセックスに入る前に、長期的なことに配慮するのでは?
女性の神経系は、有益な情報を見つけ出し、それを入念に吟味し、評価を下すように作られているように思える。
・上記仕組みは、主に前帯状皮質、島皮質、扁桃体、の3つの領域を管理している。
・前帯状皮質と島皮質は、どちらも意識的な思考を司る大脳皮質のなかに位置している。この二つの領域は、自分と他人の感情の評価に関与している。
 女性は、この二つの領域が男性よりもわずかに大きく、人と関わっている最中は、この二つの領域が男性よりも活性化する。
 女性が性的刺激となる情報を処理しているときは、前帯状皮質が反応して感情を抑制することが多い。女性の体が興奮しても感情的に反応しない場合があるのは、一部はこの領域の働きによるものと考えられる。
・前帯状皮質と海馬は、感動的な記憶の保存と回復に関与し、どちらの領域も女性の方が男性よりも大きく、活発に働く。
・女性は、左の扁桃体を使って感情を符号化し、男性は右の扁桃体を使って感情を処理する。
 男性は、右の扁桃体と皮質の右半球を活性化させて、全体像や出来事の要点の記憶力を高める。
 女性は、左の扁桃体と皮質の左半球を活性化させて、些末的な詳細情報の記憶力を高める。
 男性がポルノを見ているときには、右の扁桃体が活性化するが、女性がポルノを見ても、活性化しないという。しかし女性は、エロチックな話を読んだり聞いたりしているときに、左の扁桃体が活性化するという。
 
※参考資料『オギ・オーガス,サイ・ガダム(2012)性欲の科学 阪急コミュニケーションズ』

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