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- 小腸コレステロールトランスポーター阻害剤(エゼチミブ、ゼチーア)
- コレスチラミン(クエストラン)
- スタチンの作用の仕組み
- スタチンとコレスチラミンを併用
- スタチンとエゼチミブを併用
- スタチンの抗炎症作用
- スタチンの副作用
- ネットニュースによる関連情報
小腸コレステロールトランスポーター阻害剤(エゼチミブ、ゼチーア)
・腸粘膜の細胞膜に存在する小腸コレステロールトランスポータータンパクの働きを抑えることによって、腸からのコレステロールの吸収を阻害する。 ただし、小腸コレステロールトランスポータータンパクを作る遺伝子に異常がある人は、このタンパクが正常に作られず、コレステロールが吸収されにくくなる。このようなタイプの人の場合には、この薬が効かず、食事療法も効果が出にくいと言える。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
コレスチラミン(クエストラン)
・胆汁酸はコレステロールから作られるので、胆汁酸の肝臓での再吸収を抑えれば、血液中のコレステロールが原料となって胆汁酸が合成されるので、その分、コレステロールを下げることができる。
・腸管内で胆汁酸と結合し、胆汁性コレステロールの再吸収を抑える。また、胆汁酸の排泄が促進されるので、その原料となるコレステロールが消費され減少する。 ・この薬により血中のコレステロールが低下し、心筋梗塞の発症率が下がることが確認されたが、総死亡率は変わらなかった。 ・投与すると最初は大きく血液中のコレステロールが減少するが、しばらくするとまた上がってきてしまう。 胆汁酸に変換されるコレステロールの増加を補うために、LDL受容体を増やすだけでなく、肝臓でのコレステロール合成を増やしてしまう。(スタチンとの併用が効果がある) ・コレステロールと胆汁酸の処理の流れ ①体中の余ったコレステロールは、肝臓に集められてそのまま胆汁に排泄されるか、肝臓でわずかな加工を受けて胆汁酸に変化して胆汁に排泄。 ②胆汁は肝臓を出た後、胆嚢に一時溜り、食事をすると胆嚢から十二指腸に出てくる。 ③胆汁に含まれるコレステロールと胆汁酸は、十二指腸に入ってきた油の吸収を助ける役割を果たす。 ④油の吸収を助けたコレステロールの大部分は、油と一緒に小腸の粘膜に吸収され、肝臓に戻る。 胆汁酸は油の吸収の手助けをした後、小腸の先の方へ流れていくが、腸内細菌に加工されたりして少しずつ変異し、大腸との境目あたりで再び小腸の粘膜内に入って吸収され、肝臓に戻る。 このとき、コレスチラミンがあると胆汁酸と結合し、小腸に再吸収されずに便として排泄されてしまう。 ⑤肝臓は、肝臓に戻ってくる胆汁酸が減った分、胆汁酸を余計に作らなければならない。胆汁酸の原料はコレステロールなので、コレステロールが消費され、血液中のコレステロールも減少する。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
スタチンの作用の仕組み
・スタチンは、HMG-CoA還元酵素の働きを阻害することによって、血液中のコレステロール値を低下させる薬。 ・コレステロールの合成は、アセチルCoAを出発点として20工程以上の反応を経る。 その初期段階で、コレステロール合成過程の律速段階(反応全体の速度を決める工程)となるHMG-CoAという物質がメバロン酸に変わる反応があり、この反応はHMG-CoA還元酵素を触媒として行われている。 スタチンはHMG-CoA還元酵素と似た構造をしているため、HMG-CoAはスタチンの方にも結合してしまい、コレステロールの合成を阻害することができる。 スタチンは、このHMG-CoAからメバロン酸への経路を5~10%阻害すると言われていて、完全にコレステロールの合成を止めてしまうわけではないので、体に必要なコレステロールが作られなくなってしまうわけではない。 合成されるコレステロールの量が減少すると肝臓でLDL受容体がたくさん作られ、血液中のLDLが取り込まれ、血液中のLDLの量が少なくなる。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
スタチンとコレスチラミンを併用
・スタチンには、スタチンの投与量を2倍にしてもコレステロールは6%しか下がらないという、6%ルール(スタチン6ルール)という特性がある。 スタチンによってコレステロールの合成を抑えると、肝臓はLDL受容体を増やす事によって血液中からコレステロールを取り込もうとするが、同時に胆汁酸の生成量も減らすことによっても肝臓内のコレステロール減少を防ごうとする。 これによってスタチンの効果が抑制される。 そこでコレスチラミンを併用して使用すると、小腸での胆汁酸の再吸収が阻害され、肝臓がコレステロールを原料として胆汁酸を作ろうとするので、血液中のコレステロールを下げる事ができる。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
スタチンとエゼチミブを併用
・スタチンを服用している人では、小腸におけるコレステロールの吸収が亢進していることがわかってきた。肝臓内でコレステロール合成が抑制されたのを補うかのように小腸からコレステロールがたくさん吸収されるようになる。 小腸におけるコレステロールの吸収は、小腸コレステロールトランスポーターによって行われていて、この作用をエゼチミブという薬によって阻害できる。 スタチンの投与量を増やす代わりに、エゼチミブを投与する事によって大きくコレステロールを減少させることができる。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
スタチンの抗炎症作用
・スタチンを服用した人で、コレステロールの値が下がっていないのに、動脈硬化の予防効果があった。 スタチンは、コレステロール合成過程の初期段階のHMG-CoAからメバロン酸への反応を阻害するが、このHMG-CoAからメバロン酸への工程は、ユビキノン(コエンザイムQ10)や炎症を起こしたり、細胞増殖を起こしたりする物質の合成にも共通して使われている。 スタチンを服用すると、コレステロールだけはなく、炎症や細胞増殖を起こす物質の合成も抑えられる。 動脈硬化が発生している状況ではマクロファージの作用が関わっていて炎症という病理現象でもあるので、スタチンによってコレステロール以外にもプラークの炎症や炎症に伴う細胞増殖も抑制する効果がある。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
○スタチンの概要 ・化学的に合成することもできるし、紅麹やヒラタケなどから抽出することもできる。 ・スタチンは、コレステロール生成の中心となっている肝臓の酵素の働きを阻害する。 ○心臓発作、脳卒中に対する効果 ・2008年にハーバードで行われた調査で、健康な50歳以上の男性と60歳以上の女性を対象とし、スタチンの服用が心臓発作や脳卒中など動脈に関わるリスクを劇的に低下させることを実証。 注目すべきは、被験者のコレステロール値が特に高いわけではなかったこと。今日では、心血管疾患の原因はコレステロールだけではないことが分かっている。むしろ炎症のほうが、より正確な指針になるとも言われている。 ○スタチンの抗炎症 ・体中の炎症の指標の一つにC反応性タンパク(CRP)というものがあり、炎症があると血中濃度が高くなる。 JUPITER研究(スタチンの予防効果を証明するための介入試験)では、LDLが正常でCRP濃度が高い人を対象に、心臓発作や脳卒中のリスクを下げるスタチンの効果を調べた。 その結果、たとえコレステロール値が低くてもCRP値が高いと8年以内に心臓発作を起こすリスクが高いことが分かった。 スタチンはコレステロール値を下げる事によってではなく、炎症を弱める事によって、その効果を発揮しているらしい。 ・スタチンを服用していた人は、インフルエンザに感染しても過剰な炎症を起こさずに済んだ。スタチンには抗炎症作用があるため。 ・スタチンは心臓発作のリスクを下げるだけでなく、心臓とは無関係のあらゆる死のリスクを下げる(14%減少)事が分かった。 スタチンを飲み続けると、長期的に良い影響があり、スタチン摂取をやめた後もその効果は長く続く。 ※参考情報『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』
●AGEs-RAGE複合体の活性化を防ぐ薬 ・スタチンを飲んでいると、AGEs-RAGE複合体によって発生する酸化ストレスが抑えられ、血管がぼろぼろになるのを防ぐ。 ※参考情報『山岸昌一(2012)老けたくなければファーストフードを食べるな PHP研究所』
●コレステロール、スタチンとアルツハイマー病 ・コレステロールの高い人は2倍アルツハイマー病になりやすいという報告がある。 ・スタチンを飲んでいる人は飲んでない人と比べて発症頻度が低いという報告がある。 ※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』
・コレステロール低下作用以外に、サイトカイン分泌を抑制し炎症を抑える作用があり、血中の"C反応性タンパク(CRP)"も低下する。この作用を介して粥腫を安定化させ、心筋梗塞の発症を抑えていると思われる。 ※参考資料『金子義保(2012)炎症は万病の元 中央公論新社』
スタチンの副作用
・肝機能障害、記憶障害、筋肉痛、糖尿病、コエンザイムQ10を生合成するのを阻害する、などの副作用がある。これらの問題が起こるのはまれで、もし起きたとしても、スタチンの服用をやめれば回復する。 ・FDAは膨大な量のデータから、スタチンに2型糖尿病のリスクがあるという警告ラベルを添えるよう勧告した。 そのデータは米国国立衛生研究所「女性の健康イニシアチブ」の観察研究によるものだった。観察研究は前向き研究に比べると信用性が落ちるということもあり、疑問の声もある。 ・ランダム化臨床試験をメタ分析した研究のいくつかは、スタチンの服用によって糖尿病の罹患率が少々高くなる事を示している。 しかし、対象となった臨床試験のすべてにおいて心臓病とがんの発症が劇的に減少した。 これらの試験で糖尿病になった人がもともと抱えていた危険因子を見てみると、スタチンを投与してもしなくても、結果は同じだったと思われる。その危険因子とは、高齢であること、空腹時血糖値の高さ、その他のメタボリック症候群の特徴など。スタチンは、いずれにしてもじきに糖尿病になる人の発症を促しただけかもしれない。 ・一方、2型糖尿病患者に対するスタチンの価値を示す臨床試験も数多くある。 アトルバスタチン糖尿病研究(CARDS)では、心血管疾患になっていないもののLDLが高い、40~75歳の2800人超を対象として行われた。2型糖尿病になると心臓発作と脳卒中を起こすリスクが2~4倍高くなることから、LDL値を低くすればそのリスクが下がるかどうかを見るのが目的。 4年後リピトール(アトルバスタチン)を服用したグループはプラセボグループに比べて、脳卒中になる確率が48%、急性冠イベント(心臓突然死、心筋梗塞など)が35%、死亡率が27%下がった。 この研究により、心臓発作をまだ起こしていない2型糖尿病患者にとってスタチンが有効であると考えられる。 ・FDAがスタチンから"定期的に肝臓検査を行う必要がある"という警告ラベルを外した。数10年にわたって追跡した結果、スタチンが肝機能に悪影響を及ぼすという証拠が見つからなかったから。 ※参考情報『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』
○閉経後の女性、糖尿病 ・閉経後の女性のうち、コレステロールを下げるためにスタチンを処方されている人は糖尿病になるリスクが48%高い、という報告がある。「アーカイブス オブ インターナルメディシン」 ○脳への影響、アルツハイマー病 ・記憶の喪失や錯乱のような認知面での副作用を引き起こしうる。(米国食品医薬品局) ・低脂肪とスタチンがアルツハイマー病を引き起こす原因という説がある。 ↓ 肝臓のコレステロールを合成する能力がスタチンによって抑えられてしまう。結果として血中のLDLが著しく低下する。 ※APOE-4: The Clue to Why Low Fat Diet and Statins may Cause Alzheimer's ・肝臓でのコレステロール合成のしくみを攻撃する薬によってコレステロールを下げようとすると、その薬は脳にも作用し、コレステロールと神経伝達物質の放出には直接的なつながりがある、という説がある。 ・スタチンは脂肪酸と抗酸化物質の供給に間接的な影響をもたらす。LDL粒子に含まれるコレステロールの量を減らすだけでなく、LDL粒子の数自体も減らす。 ↓ コレステロールを使い果たすのに加えて、脳にとって利用可能な脂肪酸や抗酸化物質も制限してしまう可能性がある。これらの脂肪酸と抗酸化物質は、LDL粒子に運び込まれるものでもある。 脳が良好に機能するために、これら3つの物質に依存している。 ※APOE-4: The Clue to Why Low Fat Diet and Statins may Cause Alzheimer's ○がん ・スタチンが特定のガンのリスクも増す、という報告がある。 ○うつ ・スタチンを使う人は、さらにうつ状態になる可能性が高くなるという報告がある。 ※Statins cause memory loss, depression - NaturalNews.com ○テストステロン、性生活 ・テストステロンが正常値でない限り性生活が刺激的なものにならない。 ・テストステロンはコレステロールによって作られていて、スタチンを服用するとテストステロンの値が低くなる。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2015)「いつものパン」があなたを殺す 三笠書房』
・筋肉融解などの副作用、がんを増すなどにより総死亡率を高める、といった懸念がある。 ※参考資料『金子義保(2012)炎症は万病の元 中央公論新社』
ネットニュースによる関連情報
●コレステロール低下薬で高齢者の脳卒中リスクが低下? ・平均年齢74歳の7,484名の男女を対象に2年ごとに対面で聞き取り調査を行い、平均9年間の追跡調査を行った結果、スタチンやフィブレートのようなコレステロール低下薬服用者は、非服用者に比べて、脳卒中のリスクが3割低下している事が分かった。
●スタチンと降圧剤の服用で心臓発作と脳卒中のリスクが低下 ・心血管疾患の予防が可能な薬を検討するため、コレステロール降下薬の一種スタチンと、降圧剤をそれぞれ単独で服用した場合と、スタチンと降圧剤を併用した場合の3パターンについてプラセボ群と比較して調べた。 ・結果、スタチンは"リスクが中程度で、未発症の人"に対して有意にかつ安全に心血管疾患イベントを25%減らすことが分かった。降圧剤は、対象者全体を見た時には主要な心血管疾患イベントを減らす傾向はみられなかったが、高血圧患者に限定すると減少させることがわかった。スタチンと降圧剤の併用をした場合、心血管疾患イベントは30%減少し、高血圧患者だけでみると40%減少していた。
●スタチンの認知機能に対する副作用の調査 ・約47,000人からなる25件の臨床試験の系統的レビューを行った結果、正常な脳機能の人だけでなく、アルツハイマー病患者の精神能力に対するスタチン利用による有意な影響は認められなかった。 ・事例研究で報告された精神的な変化などの副作用は、スタチンの過剰投与、他の薬の使用、全身性や神経精神医学的原因など、コレステロール薬以外の影響かもしれない。