成長ホルモン

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. 成長ホルモンの作用、効果
  2. 食欲、肥満と成長ホルモン
  3. 成長ホルモンと睡眠
  4. 成長ホルモン補充療法
  5. 成長ホルモンの分泌


※IGF-1(インスリン様成長因子-1)については以下の記事参照。
ホルモン、神経伝達物質、成長因子の概要の”インスリン様成長因子(IGF)”

成長ホルモンの作用、効果

●成長ホルモンの作用
 
①組織や細胞に対するアナボリック(同化)作用
・主に肝臓、骨、筋肉、性腺その他の臓器に対するタンパク合成の促進や、細胞増殖
 
②抗インスリン作用
・糖質の代謝、脂質の代謝を通して、中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解する作用。
・糖質代謝においても、成長ホルモンは、いろいろな段階でインスリンに対して拮抗的に作用し、糖化という加齢を促進する現象を低下させる方向に作用する。
 
・上記作用によって、体は体脂肪の増加を防ぎ、筋肉をはじめとする多くのタンパク組織の重量や機能を保持して、骨代謝・脂質代謝・糖代謝の正常な状態を維持し、さらに腎機能・心機能・免疫機能の働きを正常に維持している。
 
・健常な人が感じる精神心理的な健康感を保持する上でも、重要な働きを果たすことも明らかになっている。
 
●IGF-1と成長ホルモン
 
・成長ホルモンが活性しているかどうかは、血中のIGF-1(インスリン様成長因子-1)という物質の数値で計測する。
・脳下垂体から分泌される成長ホルモンは、肝臓に達するとIGF-1の産生を促し、全身で成長ホルモン作用を発揮する。
・成長ホルモンの働きの大半はこのIGF-1の働きと言え、上記①の多くはこのIGF-1を介して発揮される。
 
※参考資料『米井嘉一,比嘉一雄(2014)48歳からも成長ホルモンできれいになる。 ブルーロータスパブリッシング』

 

●ヒト成長ホルモン(HGH)の効果の概要
 
・年をとるにつれてHGHは減少し、以下のことが生じる。
太りすぎる、筋肉がたるみ弱くなる、無気力になる、セックスに対する興味が落ちる、不眠になる、集中力・記憶力が落ちる、疲れやすくなる、一般的に人生への興味を失う。
 
○皮膚に対する効果
・HGHは皮膚構造の下になるタンパク質の生合成を増やす。
・動物実験では、HGHによって皮膚の強さとコラーゲン量が増し、若い皮膚に特徴的な張り(弾力性)を取り戻した。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

 

・成長ホルモンは、細胞の成長と修復を促すだけではない。ほぼすべての細胞に影響し、骨と皮膚を回復させ、心臓、肝臓、肺、腎臓を再生し、器官や組織の機能を若返らせる。
 また、免疫システムに活力を与え、心臓発作や脳卒中のリスクを下げ、酸素の摂取を向上させ、骨粗しょう症を予防する。
 さらに、細胞に炭水化物ではなく脂肪をエネルギー源にするよう命じることにより、理想的な体重の維持を助けている。
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

 

・成長ホルモンは、腹部の脂肪を燃焼させ、筋肉繊維の層を作り、脳の容量を増やしている。
 
※参考資料『ジョン J.レイティ(2009)脳を鍛えるには運動しかない 日本放送出版協会』

食欲、肥満と成長ホルモン

※グレリンについては以下の記事参照。
レプチン、アディポネクチン、グレリンの”グレリンの作用”

●空腹と成長ホルモン
 
・空腹を感じると胃からグレリンが分泌され、食欲を高めるだけでなく、成長ホルモンの分泌を促す。
・空腹を感じたからといって、すぐに何かを食べてしまうと、グレリンの分泌が続かず、成長ホルモンも増えないことになる。
 
●肥満、食事と成長ホルモン
 
・肥満は成長ホルモン分泌の妨げになる。
・糖質やデンプン質を多く含む食品は、急激なインスリン分泌を促すばかりでなく、成長ホルモン分泌を抑制してしまう。
・適正量のたんぱく質・アミノ酸摂取は成長ホルモン分泌を促進する。
 
※参考資料『米井嘉一,比嘉一雄(2014)48歳からも成長ホルモンできれいになる。 ブルーロータスパブリッシング』

 

●成長ホルモン、ミトコンドリア、グレリン
 
・グレリンはミトコンドリアを増やして細胞を元気にしてくれることがわかっている。
・グレリンは、脳の下垂体から分泌される成長ホルモンの分泌を促す作用もある。
・成長ホルモンが大人で足りなくなるとメタボの体型になってしまう。
・胃が満腹
→グレリンの分泌減少
 →ミトコンドリア減少→メタボ
 →成長ホルモン減少→メタボ体型
 
※参考資料『伊藤裕(2011)腸!いい話 朝日新聞出版』

成長ホルモンと睡眠

成長ホルモン補充療法

●成長ホルモン補充療法
 
・アメリカを中心として、成長ホルモンの抗加齢効果を期待して、主に美容目的で成長ホルモンを外から補充する動きが生まれた。
・ただ、成人成長ホルモン分泌不全症患者に対して成長ホルモン補充療法を行ったときに得られる効果と、例えば、加齢によって成長ホルモンが低下した高齢者の下垂体前葉機能低下に対する成長ホルモン治療の効果には、かなり差があることが明らかになっている。
 
※参考資料『米井嘉一,比嘉一雄(2014)48歳からも成長ホルモンできれいになる。 ブルーロータスパブリッシング』

 

●ヒト成長ホルモン(HGH)療法
 
・世界中で行われた2万近くの臨床研究がHGH療法の幅広い薬理学的効果について立証しており、次のような幅広い効果がHGHにあると言われている。
 体脂肪減少、筋肉量増加、活動レベルを高く保つ、精力増進、主要臓器を再成長させる、免疫能力を回復、骨を強化、コレステロール・血圧を低下、傷の治療を早める、なめらかで張りのある肌に回復させる、髪を増やす、視力を回復させる、気分を高揚させる、認知能力改善。
 
○1999年、ダニエル・ルードマンの研究
・61~81歳の男性12人に対してHGH注射を6ヶ月間行い、年齢の合致した対照群と比較。
→ホルモン注射により、特にダイエットや運動をしなくても平均8.8%体重が減少し、14%の脂肪が減った。皮膚は厚く固くなり、脊椎の骨量も増えた。
 
○ラッドマンの研究
・高齢者を対象にHGH補充療法を6ヶ月間実施。
・皮膚の厚さが実際に7.1%増加。
 
○1990年、ウィスコンシン医科大学のダニエル・ルードマンの研究
・6ヶ月間のHGH療法は、皮膚のきめ、厚さ、弾力性を改善し、61%の被験者でちりめんじわの減少が認められた。
・小じわが消え、深いちりめんじわが薄くなり、顔面の脂肪が減って眼の下の盛り上がった脂肪が消える一方、皮膚を持ち上げて保持する顔面筋が強まった。
 
●HGH療法のリスク
 
・他のホルモン製剤同様、長期間の効果については知られていない。
・手根管症候群、関節炎、高血圧、声帯の肥厚、下肢の浮腫、男性の女性化乳房、骨粗鬆症、熱不耐症、インポテンツなどの副作用がみられる。
・細胞の成長を刺激するホルモン作用があり、体内にすでにがん細胞が存在するとこの細胞の成長を促進してしまう恐れがある。
・前立腺がんや乳がんをすでに発症している人、もしくは最終的に発症した人の血清IGF-1値が上昇していることが発見されている。
 それに関連して、成長ホルモンがIGF-1値を増加させるので、発がん因子の可能性に関する議論もある。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

 

・サプリメントなどで人為的に成長ホルモンを高めると、糖尿病やがんのリスクが高くなる。急速に成長する若い時期には、高レベルの成長ホルモンが必要だが、その後は、体のシステムは過剰な補給は好まない。また、成長ホルモンを注射しても、自然に分泌されたときのような包括的な効果が出ない。
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

成長ホルモンの分泌

※運動と成長ホルモンとの関連は以下の記事参照。
エクササイズ、運動トレーニングの”トレーニング方法とその効果”

・血中に自然に分泌される成長ホルモンは加齢で減少し、中年では子供の頃の1割。
 
※参考資料『ジョン J.レイティ(2009)脳を鍛えるには運動しかない 日本放送出版協会』

 

●加齢の影響
 
・成長ホルモンの分泌量は30歳前後から低下し始め、10年で13%も低下する。
 
●成長ホルモンの分泌を上げる要因、下げる要因
 
○成長ホルモンの分泌を刺激する要因
・運動
・高たんぱく質、十分なアミノ酸摂取
・質の高い睡眠
・空の胃袋への刺激
・心のときめきといった、気持ちの持ちようでも成長ホルモンの分泌が活性されることがわかってきた。
 
○成長ホルモンの分泌を抑えてしまう要因
・運動不足
・ストレス
・睡眠不足
・糖質摂取過
・合成エストロゲン剤の服用など
 
●成長ホルモンを増やす生活
 
○血中のIGF-1値を上げる因子
・食事療法:高たんぱく質、高アミノ酸食
・運動療法:負荷トレーニング
・精神療法:ストレス回避、質の高い睡眠
 
○血中のIGF-1値を下げる因子
・高炭水化物食
・運動不足
・ストレス
・睡眠不足
・過労
 
※参考資料『米井嘉一,比嘉一雄(2014)48歳からも成長ホルモンできれいになる。 ブルーロータスパブリッシング』

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください