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胃酸の作用
・食物に含まれるバイ菌を殺す。 ・消化酵素ペプシンを活性化する。 ・タンパクを変性させて軟らかくする。 ※参考資料『伊藤裕(2011)腸!いい話 朝日新聞出版』
ピロリ菌の作用
●胃がんとピロリ菌、欧米型と東アジア型 ・ピロリ菌には大きく分けて東アジア型と欧米型があり、東アジア型の方が胃がんを起こす力が強いことが明らかになっている。 ・東アジア型のピロリ菌は胃の中の食道に近い部分に感染し、胃の粘膜に毒性の基になるタンパク質を注入し、これによって遺伝子に変異が起きて発がんにつながると考えられている。 一方、欧米型は、胃の出口周辺の十二指腸に近い部分に感染するが、がんを起こす力が弱く胃がんの原因にはなりにくいが、その代わり十二指腸潰瘍は起こしやすいと言われている。 ・同じ日本人でも胃がんになりやすい人となりにくい人がいる。 ・十二指腸潰瘍の患者は胃がんになりにくい。 ・O型の人はA型の人と比べて十二指腸潰瘍に1.4倍なりやすい。上記より胃がんにはなりにくい。 ※参考資料『奥田昌子(2016)欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」 講談社』
・ピロリ菌の除菌治療を行った患者に食道炎や食道がんの発生が多い。 →ピロリ菌がいなくなって胃酸の酸性が強くなり、その胃酸の逆流で食道がんが起こりやすい? ・小児喘息、アレルギー鼻炎、皮膚アレルギーなどの病気になる危険性がピロリ菌患者の方が低い、という報告がある。 ※参考資料『伊藤裕(2011)腸!いい話 朝日新聞出版』
●ピロリ菌のヒトとの共生 ・遺伝子研究によって、ヒトはヘリコバクター・ピロリを少なくとも10万年以上保有していることが分かっている。 ・最近までピロリ菌は、ほぼすべての子どもの成長早期にその胃に常在し、子ども自身と細菌の双方にとって良好な免疫反応を形成していた。 ・H・ピロリは、一度足場を築くと、そこに驚くほど粘り強く持続感染する。 ●ピロリ菌と胃食道逆流症、食道に対する保護 ○ドイツのヨアヒム・ラベンツらのグループによる研究 ・十二指腸潰瘍患者を抗生物質で治療。 ・治療の3年後に患者の半分は治療が奏功し、ピロリ菌は排除。残りの半分は治療の甲斐なくピロリ菌感染が持続していた。 ・上記2群を比較すると、ピロリ菌が残っている群では12.9%に胃食道逆流症が見られる一方、根治に成功した群ではそれが26%に上ることを発見。 ○パレット食道、食道腺がん ・ピロリ菌と逆相関関係が見られた。 ○ピロリ菌が食道を保護? ・胃潰瘍やがんと関係のある、最も毒性の高いCagA陽性のピロリ菌を持っている人が、食道の疾患に対しては最も抵抗性があるということになった。 ●ピロリ菌と胃酸 ・ピロリ菌が胃酸の調整を助けている? →ピロリ菌が炎症を引き起こし、炎症が胃のホルモンに影響を与え、それが胃酸産生のスイッチをオンにしたり、オフにしたりする。 ・生まれて最初の10年間、胃酸のバランス調整機能は良い。 ・年をとるつれ、慢性の炎症が胃壁を覆い始める。 ピロリ菌を持った人では、それがより早く広範囲に起こる。 ・胃酸を産生する内分泌腺は短く平らになり、胃酸の産生が減少する。萎縮性胃炎 →結果として胃潰瘍になる可能性は低くなる。 ・子ども時代にピロリ菌に感染しなかった人、あるいは抗生物質によってピロリ菌を根絶した人は、胃酸の高産生を40代になっても続ける。 →こうした人々にとって、胃内容物が食道中に逆流することは、酸性度の高い胃酸が食道に障害を与えることを意味する。 ●ピロリ菌と炎症 ・ピロリ菌の存在下に病理学者が見る"胃炎"は、部分的にはピロリ菌に反応しているリンパ球の集積。 →ピロリ菌が常在する胃壁には、存在しない胃に比較して多数のリンパ球が集積する。それによって炎症の微調整が行われる。 ・胃に存在する制御性T細胞が、その抑制的な機能を介して喘息やアレルギー性疾患の発症を抑えているのかもしれない。 ○スイスのアン・ミュラーの研究 ・肺にエアロゾル化したアレルゲンを噴霧し、マウスに喘息を誘導した。 ・そのマウスにピロリ菌を感染させたところ、アレルゲンに対する反応は低下した。 ・さらに、年少期にピロリ菌に感染したマウスでは、成人期に感染したマウスより予防効果が高いことも分かった。 ヒトの場合もピロリ菌による喘息効果は幼少期に強い。 ・ピロリ菌が胃壁の樹状細胞との相互作用を通して免疫システムをプログラムし、制御性T細胞の産生を引き起こすことを示した。 →制御性T細胞はピロリ菌を排除する免疫を抑制し、それが付帯的利益としてアレルギー反応を抑制する。 ※参考資料『マーティン・J.ブレイザー(2015)失われてゆく、我々の内なる細菌 みすず書房』
胆汁の効果
・胆汁は、肝臓で作られいったん胆嚢にためられ、食物が腸に入ってくる刺激で十二指腸に分泌されて、コレステロールなどの脂肪を吸収するのに使われる。 ・腸に分泌された胆汁は、腸内細菌の力を借りて95%以上、腸から再吸収され肝臓に戻ってくる。 ●胆汁がホルモンとして作用 ・胆汁の成分は、コレステロールから作られるウルソデオキシコール酸などの胆汁酸。 胆汁酸は肝臓で作られた後、一部は血液の中に分泌 →骨格筋や脂肪組織などに行き、それらの細胞の表面に存在する胆汁酸の受容体に結合 →ミトコンドリアが活性化される 実際に動物に胆汁酸を投与するとミトコンドリアの機能が高まって、脂肪の燃焼が促進され、エネルギーの消費が多くなり、肥満や糖尿病が抑制される。 ●胆汁酸の血糖を下げる効果 ・十二指腸で腸に入った胆汁酸の一部は、小腸の末端、回腸までたどり着く。そこでL細胞に働きかけて、インクレチン(消化管ホルモン)の総称であるGLP-1の分泌を促す。 ○胆汁酸と腸内細菌 ・胆汁酸は、腸内細菌の力でインクレチンの分泌を刺激する能力が強くなる。 ・コレステロールからできる胆汁が腸から再吸収されるのをブロックするコレステロール薬を糖尿病の人に投与すると、血糖コントロールがよくなる。 →小腸末端の回腸に届く胆汁が増えるためと思われる。 ※参考資料『伊藤裕(2011)腸!いい話 朝日新聞出版』
十二指腸の働き
・十二指腸の粘膜にある内分泌細胞が脂肪分を検知 →コレシストニンというホルモンを分泌し、胆嚢に知らせる。 →胆嚢が蓄えていた胆汁を十二指腸に流し込んで脂肪を分解。 ・十二指腸の粘膜にある内分泌細胞が胃から流れてきた酸性の糜粥(びじゅく)を検知。 →セクレチンというホルモンを分泌して、すい臓に知らせる。 →すい液というアルカリ性の液を十二指腸に流し込んで中和。 ○すい液に含まれる消化酵素の働き ・でんぷんはアミラーゼという消化酵素によって"二糖類"に分解。 ・たんぱく質は、トリプシン、キモトリプシンという消化酵素によってペプチドに分解。 ・胆汁によって脂肪が小さく分解された後、リパーゼなどの消化酵素によって脂肪酸、コレステロールといった、小腸に吸収されやすい物質に変化する。 ※参考資料『澤田幸男,神矢丈児(2015)腸が寿命を決める 集英社』
空腸と回腸の働き
●消化酵素の働き ・"二糖類"が"単糖類"であるブドウ糖に分解。 ・ペプチドがアミノ酸に分解。 ●栄養素を吸収 ①ブドウ糖 小腸に張り巡らされた毛細血管に溶け込む。 →血流に乗って門脈という大きな静脈を経て肝臓へ →非常時のエネルギー源としてブドウ糖の一部が"グリコーゲン"に変わって肝臓に貯蔵される。 ②アミノ酸 小腸に張り巡らされた毛細血管に溶け込む。 →血流に乗って門脈という大きな静脈を経て肝臓へ →新しいタンパク質に再合成 →再び血流に乗り、からだ全体の細胞へ ③脂肪 小腸で小さく分解されてもまだ分子が大きいため、直接毛細血管に入れず、大きな物質を取り込める毛細リンパ管へ →毛細リンパ管は別の場所で血管と合流 →血液に乗ってからだ全体の細胞へ ※参考資料『澤田幸男,神矢丈児(2015)腸が寿命を決める 集英社』
大腸の働き
・小腸から送られてきた食べかすから、残りの栄養素を消化・吸収する。 大腸という器官そのものは栄養素を"吸収"することはできるが、"消化"することはできない。大腸には消化するための酵素を出す機能がない。 →腸内細菌によって消化される。 ●腸内細菌による消化 ・善玉菌(乳酸菌類)は、ヒトが持っていない様々な酵素を持っていて、この酵素が小腸では消化できない残りの栄養素、特に食物繊維やオリゴ糖などの糖質類を分解し、貴重なエネルギー源を作り出してくれる。 ・乳酸菌は、ビタミンB1、B6、B12、Kなど各種ビタミンを作り出してくれる。 ・善玉菌が作り出した様々な栄養素やビタミンは、大腸の粘膜細胞から吸収され、毛細血管や毛細リンパ球に溶け込んだあと、全身の細胞へと送られる ※参考資料『澤田幸男,神矢丈児(2015)腸が寿命を決める 集英社』
腸の血液不足
●どの臓器に血液が優先的に配分されるか ・消化器:30%、腎臓:20%、脳、骨格筋肉:15%ずつ、脳:5% 食事の後、頭がボーっとしたり眠くなったりするのは、消化器への血流が優先されるので、頭に血が回らなくなるから? ●食後のふらつきは要注意 お年寄りで食後に血圧が下がってしまったり、意識がもうろうとする場合がある。 これは、食後たくさんの血液が必要なときに、血液を腸に優先的に供給しようとし、脳に配分される血液が不足し、脳が酸素不足となって、軽い脳震盪状態になってしまう。 →腸が血液不足の状態となっている可能性があり、全身の血管も動脈硬化を起こしている可能性が高いので要注意 ※参考資料『伊藤裕(2011)腸!いい話 朝日新聞出版』
虫垂の役割
●虫垂はヒトの食生活の変化にともなって退化した痕跡器官では?なぜ残っている? ・これまでは、以下の二つの説があった。 ①虫垂炎は環境変化か何かのせいで最近になって出現した病状だとする考え方 ・昔は虫垂炎が起こらなかったから、有益でも有害でもない虫垂は排除されずそのまま残った? →虫垂炎は比較的新しい病気で、19世紀末から急増した。 →虫垂炎の急増の理由については、食事で繊維質をあまりとらなくなったためという説や水道設備や衛生状態の向上といった、虫垂の本来の役割を奪うような環境の変化などが挙げられている。 ②虫垂には虫垂炎のリスクを上回る健康上の利益があるとする考え方 ・虫垂の内側には特殊化した免疫細胞と分子がぎっしり詰まっていて、免疫系の重要な役割を果たしている。微生物共同体を守り、育て、情報を伝達し合っている。 →虫垂の中で微生物はバイオフィルム(互いに支えあい、有害な細菌を侵入させないように守る層)を形成している。人体が微生物のために用意している隠れ家。 →虫垂に隠れている微生物は、食中毒や感染症などの消化管に危機が生じたときにも守られる。 ・現代の先進国でも、少なくとも成人になるまで虫垂は保有しておいたほうがいいことが分かっている。 →再発性の消化管感染症や免疫機能障害、血液のがん、一部の自己免疫疾患、さらには心臓発作まで予防してくれるため。 ※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』
迷走神経、腸内の神経系
※瞑想神経とストレスについては以下の記事参照。
ストレスと脳、神経の関わりの”ストレスと瞑想神経”
●迷走神経の概要
・脳神経の中で唯一腹部にまで到達する神経。
・内臓(胃腸や心臓、血管など)に多く分布し、体内の環境をコントロールしている。
・機能的には心拍数の調整、胃腸の蠕動運動、発汗や発話などに関与する。
ストレスと脳、神経の関わりの”ストレスと瞑想神経”
●迷走神経の概要
・脳神経の中で唯一腹部にまで到達する神経。
・内臓(胃腸や心臓、血管など)に多く分布し、体内の環境をコントロールしている。
・機能的には心拍数の調整、胃腸の蠕動運動、発汗や発話などに関与する。
●迷走神経の概要 ・迷走神経は、12対ある脳神経のうちの1対で、いくつかの神経束からなっている。 ・脳と体が情報をやり取りできるようにしているが、脊柱を通ってはいない。 ・迷走神経は、心拍数の制御や胃腸と脳とのあいだの通信回線の維持といった多くの機能を担っている。 ・迷走神経は、胃腸、特に腸の内側を通る神経から多くのインプットを受けとる。 ※参考資料『ティモシー・ヴァースタイネン(2016)ゾンビでわかる神経科学 太田出版』
●腸内の神経系 ・腸内の神経細胞は無数にあり、"第二の脳"と呼ばれている。 ・"第二の脳"は、筋肉や免疫細胞、ホルモンをコントロールしていて、体内のセロトニンの80~90%は腸内の神経細胞で生成されている。 ・中枢神経系と消化器官の神経系は迷走神経で結ばれている。脳幹から迷走神経を介して指令が送られ、心拍数の維持や消化のコントロールなどの情報が送られている。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2016)「腸の力」であなたは変わる 三笠書房』
腸の免疫系
・腸には、腸管関連リンパ組織(GALT)と呼ばれる独自の免疫系がある。 これは、体の免疫系全体の70~80%を占める。 ・腸壁は外界との境界で、腸内で問題のある物質を見つけると他の免疫系にも注意を呼びかける。 ・腸壁は自らが健康を保ちながら、同時に、腸内細菌と免疫系の細胞の信号を結ぶ役割を担う。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2016)「腸の力」であなたは変わる 三笠書房』
空腹、満腹の伝達の仕組み
・胃と腸にはセンサーを持つ細胞が並んでおり、消化された食物についての化学的(糖やタンパク質など)、物理的性質(胃腸がどのくらい拡張したか)の情報を脳に伝えることができる。 ○視床下部の後室周囲核 ・視床下部内側基底部の中の後室周囲核は、腸から迷走神経、孤束核と伝わってくる迅速な神経信号と、脂肪細胞から分泌されて循環してくるレプチンによる遅い信号の両方の情報を受け取っている。 1)迷走神経→孤束核→後室周囲核→POMCニューロン、室傍核、視床下部外側部 ・胃腸からの信号はタンパク質ホルモンの分泌によって伝えられる。 ・腸内壁の一部の細胞がCCKというホルモンを分泌 →このホルモンは近くにある迷走神経端末と結合し、そのニューロンを活性化 →脳幹の孤束核を活性化 →視床下部の内側基底部(摂食のコントロールに重要な働きをする)を活性化 ・後室周囲核の一部のニューロンはPOMCというホルモンを含んでおり、腸から孤束核経由の信号で活性化し、視床下部外側部ニューロンを抑制する。 視床下部外側部は、活性化するとオレキシンという空腹感を生み出すホルモンが分泌される部分。 ・後室周囲核のPOMCニューロンが活性化すると、同時に室傍核という部分も活性化する。 室傍核の細胞はCRHというホルモンを分泌するが、こちらは満腹感をもたらすホルモン。 2)レプチン→後室周囲核→NPYニューロン、室傍核、視床下部外側部 ・後室周囲核内のNPYニューロンは、体内を循環するレプチンによって抑制される。 ・NPY細胞もPOMCニューロンと同じように、室傍核と視床下部外側部の両方に軸索を伸ばしているが、その働きはPOMCニューロンとは逆で、室傍核を抑制し、視床下部外側部を興奮させる。 ○レプチンと快感回路 ・快感回路は体重信号からも影響を受ける。 ・腹側被蓋野(VTA)のドーパミン・ニューロンにはレプチンの受容体もあり、体内を循環するレプチンがこの受容体と結合すると、生化学的な連鎖反応を起こり、VTAニューロンの発火を抑え、標的領域でのドーパミン放出を抑える。 ※参考資料『デイヴィッド・J.リンデン(2012)快感回路 河出書房新社』
・視床下部が空腹や満腹をいつ感じるかコントロールしている。 ・視床下部と胃は迷走神経を介して情報のやり取りをしている。 ○空腹 ・消化管は十分な食物をしばらく処理していないと、それを脳に知らせる。このとき、ニューロンの活動電位は使わず、ホルモンを使って空腹であることを脳に伝えている。 ①消化管がしばらくの間食物を処理していない ②胃と膵臓から血液中にグレリンが分泌 ③グレリンは脳に捕捉され、視床下部内の弓状核を刺激する ④視床下部で始まり下垂体と大脳皮質で終わる一連の活動のトリガーを引く。 ⑤上記一連の神経の活動が、最終的に空腹であるという身体感覚を生む。 ○満腹 ・胃から分泌されるレプチンというホルモンを働かせる。 ※参考資料『ティモシー・ヴァースタイネン(2016)ゾンビでわかる神経科学 太田出版』
●満腹、空腹の生化学 ・空腹状態が続くとグレリンという化学物質が血液中に放出。 →グレリンの血中濃度が上昇すると、脳の視床下部に到達し、空腹を感じさせて一連の生理反応を引き起こす。 ○摂食開始後、食事の終了をどのように判断するか? ・食事時間の長さを制御することで、食物の摂取量をある程度調整している。 脂肪を摂取すると胃がCCK(コレシストキニン)という化学物質の分泌を促す。CCKは満腹感をもたらす。 胃腸内のタンパク質と炭水化物は、それぞれ独自の満腹感伝達物質を分泌する。 ・食事を取り損ねると、新陳代謝や分解によって脂肪を脂肪酸に変換し、それを燃料として燃やす。 ○脂肪摂取量の増加と脂肪蓄積監視能力 ・新生児に高脂肪食を与えた場合、満腹信号に対する視床下部の感受性が損なわれる可能性がある。 →感受性喪失 →体重増加 →蓄積脂肪の増加 →感受性がさらに低下 →体重増加 ・体脂肪率が上がるにつれ、血液中のレプチン濃度が上昇するが、レプチン濃度が高いままだと、脳は次第にレプチンに対して反応が鈍くなったり、しなくなったりする。 レプチンは胃が発する満腹信号を脳が受け取りやすくするので、高脂肪食はカロリー摂取監視機能を低下させる可能性がある。 ○甘味料の肥満効果 ・ブドウ糖は血液から脳へと容易に移動するのに対し、果糖は血液脳関門を通り抜けられないので、血糖値を感じ取り、それに応じて食欲を変化させる働きを持つ脳は、血液中を循環する果糖の量を感知できない。 →果糖を摂取しすぎても満腹感を感じない。 ・果糖はインスリンを分泌させる働きを持たないため、レプチンも分泌されず、満腹信号を受け取ることができない。 ・ほとんどの糖分は消化器で消化されブドウ糖に変換されるのに対し、果糖は肝臓に達するまで完全には消化されない。 果糖の独特な分子構造(特に炭素原子の配列)が、長鎖脂肪酸を構築するための支柱のような働きをする。(果糖はほかの糖分より脂肪に変換されやすい) ※参考資料『ポール・ロバーツ(2012)食の終焉 ダイヤモンド社』