親・祖父母の環境と子・孫に対する影響

親や祖父母の飢饉の経験や過食をしていたなどの環境要因が子や孫の健康に関係している、という研究結果があるようです。

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  1. 子宮環境の胎児への影響
  2. 飢饉などの環境が子孫に与える影響
  3. ネットニュースによる関連情報

子宮環境の胎児への影響

●子宮環境が胎児(成長過程にある受精卵)に及ぼす影響
 
・妊娠中の母親が太りすぎていると子供の糖尿病のリスクが増す、アルコールをよく飲むと子供の障害が誘発され得る、子供が低体重で心血管疾患になるリスクが高くなる事が分かっている。
 
・妊娠と妊娠の間の期間の子宮内環境さえ、胎児に影響することが明らかになった。
 
・2011年、コロンビア大学の研究者は、第1子の誕生から12ヶ月以内に宿された第2子は、自閉症になるリスクが3倍以上高くなることを発見。さらに、第1子の誕生後、12ヶ月から23ヵ月に宿された第2子さえ、3年後に宿された第2子に比べると、そのリスクは2倍高かった。
 栄養不足のせいなのか、生化学的な違いのせいなのかは分からないが、子宮内で次の妊娠に影響を及ぼす何かか起きている。
 過去の研究でも、妊娠と妊娠の間隔の短さと、統合失調症などの精神疾患との関連が示されている。
 自閉症には遺伝と環境の数多くの要因が絡んでいるはずだが、この発見は、環境が遺伝子とは無関係に影響を及ぼしていることを示唆している。
 WHOは健康な赤ちゃんを産むには、出産から次の妊娠まで24ヶ月空けることを推奨している。
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

 

●妊娠時のストレスの仔へ与える影響
 
・妊娠したネズミは、ストレスによってグルココルチコイドというホルモンの放出が増える。
→このホルモンにさらされると、その仔に後で様々な問題が生じる。
たいていは通常より小さく生まれ、成長してから高血圧や高血糖になりやすい。
出生前にこうしたストレスを受けた動物は、成長すると不安行動が多かったり、実験室試験での学習能力が低かったりする。
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

飢饉などの環境が子孫に与える影響<

●胎児期の飢饉の影響が孫にも影響?
 
・胎児期に飢饉の影響を受けた子らのうち、女性については、孫の世代で出生児の身長が低く、肥満度が高くなる。
 母胎で飢饉を経験した男児が成長して父になった場合、孫にこのような影響はほとんど見られなかった
 
※参考資料『太田邦史(2013)エビゲノムと生命 講談社』

 

●胎児期に飢饉を経験、低体重で出産
 
・オランダ飢饉で胎児期に飢饉を経験した男子は、経験しなかった男子と比べて18歳時の体重が重かった。さらに成長するにつれて、肥満と心臓病、糖尿病、統合失調症の割合も増えていった。
 
・オランダ飢饉の50年後、母親の胎内で飢饉を経験した人の子供のIGF2(インスリン様成長因子)遺伝子には、異常なメチル化が見られた。
 
・オランダ飢饉の時期に生まれた子は、大腸がんのリスクが格段に低いことが示された。
→大腸がんを促進する遺伝子の重要なプロモーター領域が過剰にメチル化されOFFになった?
 
・イギリスのハートフォードシャー州の調査では、低体重で生まれた男子は、60年後に心臓病になるリスクが非常に高かった。
 
●スウェーデンのノルボッテン州の調査
 
・祖父母が過食したグループは、祖父母が飢饉を経験したグループより、平均で6年早く亡くなっていた。
 
・12歳以下で飢饉を経験した男性の息子の息子(孫)の寿命は長く、心臓発作で死亡する確率は低かった。
 
・祖父が過食すると、孫は、心臓病で早死にするリスクが高まるだけでなく、糖尿病のリスクも4倍高くなった。
 女性にも同じような相関は見られたが、その場合も同性同士においてだった。(女性は祖母、男性は祖父の習慣に影響)
 
・父親の早期(11歳以下)の喫煙は、息子の肥満を導いたが、娘には影響しなかった。
 ↓
飢饉の間に祖父母の卵子や精子に何かが起きると、それは同性の孫に影響する。
 
●肥満遺伝子とエピジェネティックな影響
 
・肥満や糖尿病は、遺伝子と自分、両親、祖父母が人生のある時期に何を食べたかに、影響される。
 ある世代で遺伝子につけられたエピジェネティックな印は、続く数世代の遺伝子発現に影響する。環境の大きな変化に対して、短期的な進化上の適応が起こる。
 
・母ラットが妊娠中にカロリーまたはタンパク質を制限されると、その孫娘はたいてい普通より小さく、ある種の糖尿病を持っている。
→母親は、体細胞を経由して、子孫の遺伝子にエピジェネティックな影響を直接及ぼすことができる。
胎児の体の中には、ごく初期の卵細胞がすでに存在している。
 
・父ラットが高脂肪食を食べると、その精子が変化し、その影響で娘ラット細胞がエピジェネティックに変化して成人型糖尿病の発症が促された。
 
※参考資料『ティム・スペクター(2014)双子の遺伝子 ダイヤモンド社』

ネットニュースによる関連情報

●妊娠時の飲酒で生まれてくる子供の2型糖尿病、肥満のリスク上昇?
 
・ラットを用いた動物実験によって、受胎前に5単位相当のアルコールを摂取させると、胎児の発達に変化がみられ、子どもの中年初期の肥満と2型糖尿病のリスクが劇的に高まることを発見した。

 

●母親の妊娠前の食事がエビジェネティックなDNA変化によって子の疾患リスクに影響?
 
・アフリカのガンビアで乾季と雨季各々のピークの時期に受胎した120名の妊婦を対象に調査したところ、VTRNA2-1と呼ばれる遺伝子は、特に変化に対する感受性が高いことが分かった。子どものVTRNA2-1の発現を制御するメチル化の状態は、母親が子どもを受胎した時期が、乾季と雨季という非常に異なる栄養状態のどちらの時期かによって影響を受けてしまう。

 

●父親の食事が精子のRNAに影響を与え、子供にも影響?
 
・高脂肪食を食べさせたマウス群(HFD群)の精子を卵子に受精し、普通食を与えたマウス群(ND群)との比較を行ったところ、HFD群の子どもは、耐糖能異常やインスリン抵抗性が生じ、15週にはさらに悪化した。
・上記2つのグループの精子からRNAを精製し、通常の受精卵に注入した。HFD群の子どもは血中の血糖値やインスリン値が高かったが、インスリン感受性は、ND群と同様であった。
この結果から、HFD群の精子のRNAはインスリン抵抗性ではなく、耐糖能異常を誘発する情報を保持していることを示唆している。
・ND群とHFD群の子どもの全ゲノム比較から、HFD群ではケトン、炭水化物、単糖の代謝に関与する遺伝子発現が有意に弱いことが明らかになった。
・精子のRNAが食事によって影響を受け、さらに子どもの遺伝子調節に影響を与え、代謝障害を引き起こす可能性がある。

 

●妊娠中のオメガ6系・オメガ3系脂肪酸摂取のバランスが子供の脳に影響?
 
・雌マウスにオメガ6系脂肪酸(リノール酸など、一般の植物油に含まれる)が豊富でオメガ3系脂肪酸(DHA、EPAなど、魚油に多く含まれる)が少ない食事を与えた時、子どもの脳が小さく、成人時の異常な情動行動が見られた。

 

●妊娠初期の飲酒は胎児のエピゲノムに影響?
 
・妊娠初期のアルコール曝露は子マウスの海馬におけるいくつもの遺伝子機能の変化と同様にエピゲノムの変化を引き起こした。子マウスが成長後の脳構造にも変化が見られた。

 

●妊娠初期の極度の栄養不良で子供のDNAメチル化に影響
 
・胎児期のいずれかの時期に飢饉を経験した422名の血液試料を、飢饉を経験しなかった463名の試料と比較したところ、受胎後1-10週に飢饉に遭遇した胎児には明らかなDNAメチル化パターンの変化が認められることが明らかになった。

 

●母親のDHA摂取不足と胎児の脳の発達の関係
 
・DHAが欠乏したカエルから生まれたオタマジャクシの脳組織は発育が悪く、乏しい数のシナプスしか形成されなかった。
・DHAが欠乏した母親の食事に適切な脂肪酸を与えることで、子どもの神経シナプスの形成が促進され、正常化されることを発見。

 

●妊婦の肥満と高脂肪食が胎児の幹細胞に影響?
 
・母親マウスの高脂肪食と肥満が有意に胎児の肝臓の造血幹細胞の発達に影響し、免疫系の発達まで阻害することを発見した。

 

●父親の高糖質食がエピジェネティックな変化を起こし、子孫が肥満?
 
・ショウジョウバエを使った実験の結果、父親の食事によって子孫の体組成が影響されることが明らかになった。食事の糖分を増やすことで子孫の肥満が増加した。糖分はエピジェネティックな変化を通じて遺伝子発現に影響を与えていた。

 

●胎児期のDNAメチル化、出生時体重と2型糖尿病との関連
 
・妊娠後期の血糖値が高い妊娠糖尿病(GDM)のある母親の乳児(グループ1)、出産前の成長は遅かったが出生後の成長が早い乳幼児(グループ2)は、成長および糖尿病に関連する遺伝子のいくつかが特異的にメチル化されていた。それは、成人期の2型糖尿病のリスク増加と関連しているという。

 

●妊娠前の母親の食生活が子どものDNAメチル化に影響
 
・ザンビア農村部の雨季に妊娠して生まれた子は、乾季に妊娠して生まれた子に比べて、測定した6つの遺伝子すべてにおいて、DNAのメチル化の度合いが高いことを発見した。

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