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食品の種類と睡眠、生体リズム
・糖質とともに、メラトニンを作るトリプトファンという必須アミノ酸が多く含まれる良質のたんぱく質とビタミンB6の摂取が有効。 ※トリプトファンを多く含む食品 肉類(牛肉レバー、鶏肉、豚肉)、魚介類(まぐろ、かつお、いわし、鮭など)、牛乳などの乳製品、豆乳 ※ビタミンB6を多く含む食品 マグロ、かつお、いわし、大豆、納豆、のり ・ゴマや胡桃などの植物種子や青魚に含まれる不飽和脂肪酸を十分に摂るとメラトニンが大幅に増える。 ・ナッツなどに含まれるポリフェノールは、時計遺伝子の仲間のサーチェインを活性化させ、生体リズムを整える。 ・脂肪分が多い食事は、眠気度が増したり、日中も眠くなる。過剰な脂肪摂取は、時計遺伝子の発現リズムを狂わせ、体内時計の働きを弱める。 ※参考資料『大塚邦明(2014)眠りと体内時計を科学する 春秋社』
食事の時間と睡眠、生体リズム
●朝食と生体リズム ・できるだけ決まった時刻にとることが大切。 ・規則正しく朝食をとる習慣があると、朝食の一時間前頃から、胃腸の動きが活発になってきて、目覚めもよくなる。 ・朝食は、空腹の状態が最も長く続いた後の食事なので、体内時計を合わせる力が強い。 ・食事からくる栄養刺激は、まず体じゅうにある子時計を調整するが、同時に親時計も合わせる。 ・断食や強い空腹感は体内時計の周期を短くするという報告がある。そのため見かけ上は体内時計が進むことになるが、朝食をとることで進みすぎた体内時計を調整できる。 ・食事を摂るとインスリンが分泌されるが、インスリンは時計遺伝子パーの合成を高めるので、たとえ糖尿病があって生体リズムが乱れている人でも、朝食を規則正しくある程度の量をきちんと摂ると、リズムが正しく補正され、維持されることになる。コレステロール値が高い場合も同様の効果がある。 ・夕食を食べ過ぎると、夜食を摂った感じになるため体内時計が遅れてしまい、朝食の効果が弱くなる。 ●三食の食事の量と病気、肝臓の時計機構 ・一日に食べる分量の8割方を夕食にとると、体重は日ごとに増えていき、コレステロールの値も高くなった。 ・食事の摂り方を不規則にすると、コレステロールは高くなり上記よりもさらに体重効果をもたらした。このとき、肝臓にある時計遺伝子のサーカディアンリズムを見てみると、どの時計遺伝子のリズムも消失していた。 →肝臓の時計には、視床下部視交叉上核という親時計ではなく、食事のタイミングが大きな影響を与えている。その間を連絡しているのはインスリン? 肝臓の生体リズムが崩れると、コレステロールの代謝が乱れ、血液中のコレステロールが高くなる状態が引き起こされてしまう。 ●食事の時間と高血圧 ・九州大学川崎晃一博士は、1日12gという多めの食塩摂取でも夕食時に多く摂るようにすれば、血圧は低くなることを報告している。血圧を上げるレニン・アンジオテンシン・アルドステロンというホルモンの値が朝から昼にかけて高く、夕方に低いため。 ※参考資料『大塚邦明(2014)眠りと体内時計を科学する 春秋社』
・就寝前3時間以内にあまり重い食事をとると目が冴えてしまう。 消化活動のせいで苦しいほどお腹がふくれ、胸やけすることさえある。脂っこい食品や辛い食品は特に問題を引き起こしやすい。 ※参考資料『ペネロペ・ルイス(2015)眠っているとき、脳では凄いことが起きている インターシフト』
多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
●朝食の欠食と脳卒中との関連について ・これまでに、朝食を欠食すると脳卒中・虚血性心疾患のリスク因子である肥満、高血圧、脂質異常症、および糖尿病のリスクが上がることが多くの研究で示されている。 朝食欠食と脳卒中および虚血性心疾患との関係を検討した。 ○結果 ・朝食を毎日摂取する群と比較して、朝食を週に0~2回摂取する群の発症リスクは、脳卒中と虚血性心疾患を合わせた循環器疾患で14%、脳卒中全体で18%、脳出血で36%高くなっていた。 ・くも膜下出血、脳梗塞および虚血性心疾患については、朝食の回数との関連は見られなかった。 ○朝食の欠食が悪影響を与える理由 ・脳出血の最も重要なリスク因子は高血圧で、特に、早朝の血圧上昇が重要なリスク因子であると考えられている。 朝食を欠食すると空腹によるストレスなどから血圧が上昇すること、逆に朝食を摂取すると血圧上昇を抑えられることが報告されている。 これらの報告から、朝食を欠食することで朝の血圧が上昇し、毎日朝食を摂取する人に比べて脳出血のリスクが高くなっていた可能性が考えられる。
ネットニュースによる関連情報
●食物繊維、脂肪、糖分などの食事の質が徐波睡眠に影響? ・食物繊維が少なめで飽和脂肪や糖分を多めに摂取すると、睡眠が浅くなり、睡眠による回復力が低下し、途切れがちな睡眠になる傾向。 ・食物繊維を多めに摂取すると深い徐波睡眠の時間が増えたが、飽和脂肪からのエネルギーの割合が高くなると、徐波睡眠が少なくなった。
●血糖値スパイク抑制には、たっぷり朝食、夕食控えめが効果的 ・2型糖尿病の男性8名と女性10名(30-70歳)を対象に、ランダムに2群に分け、1週間ずつ2つのダイエット("Bダイエット(朝食たっぷり、夕食控えめ)"と"Dダイエット(朝食控えめ、夕食たっぷり")を実施したところ、BダイエットはDダイエットに比べて、食後血糖値が20%低下した。
●朝食とドパミン、報酬系、過食との関連 ・ドパミンは、食べることにより放出が始まり、それにより、食品による報酬感が刺激される。報酬応答は、食物摂取を調節する手助けとなる為、摂食に大切な要素である。 ・朝食、特にたんぱく質が豊富な食事を食べると、若い成人の報酬の感情と関連する脳内化学物質のレベルを増加するため、一日の後半の食物に対する欲望や過食を減少させることができることを見出した。 高たんぱく質の朝食は、高脂肪食品への欲望も減退させていた。一方朝食を摂らないと、この欲求は一日中上がりっ放しとなる。 ・ドパミンレベルは過体重・肥満の個人では鈍くなっている。そのため、報酬感情を引き出すために、食事という刺激をより必要とする。これと似たような反応が、朝食欠食者に見られた。