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加齢によるインスリン低下と運動の効果
・加齢でインスリン(細胞内へのグルコースの取り込みを促進)が少なくなるので、燃料となるグルコースが細胞に入りにくくなる。 ↓ 血液中にグルコースが増加すると、その影響で細胞内にフリーラジカルのような老廃物が生まれ、また、血管が傷つき、脳卒中やアルツハイマー病のリスクが高まる。 ・すべてのバランスが整っていると、インスリンはアミロイド班の蓄積を防いでいるが、インスリンが減ると班の蓄積が進み、炎症も促され、周囲のニューロンが傷つけられる。 ・運動は、IGF-1(インスリン様成長因子)の量を増やすので、それにより全身のインスリンが調整され、脳ではシナプスの可塑性が高まる。 ・運動することで余剰の燃料が消費されると、高血糖のせいで減少していたBDNF(脳由来神経栄養因子)が盛んに供給されるようになる。 ※参考資料『ジョン J.レイティ(2009)脳を鍛えるには運動しかない 日本放送出版協会』
運動と長寿
・タバコを吸わず、適正体重を保ち、適度な運動をすれば、生物学的に5歳若返る事ができ、一方、慢性的なストレスを抱えていると老化が早まる。 ※参考資料『ティム・スペクター(2014)双子の遺伝子 ダイヤモンド社』
●活性酸素と運動 ・運動はミトコンドリアを増やす。 ・活性酸素は、Mn-SOD(マンガン依存性スーパーオキシドジスムターゼ)を増やす働きもある。たとえ運動によって活性酸素は増えてもそのリスク対策も備えている。 ただし、Mn-SODが増えるには数時間が必要で、普段あまり運動していない人が急に運動を始めた場合はすぐに効果が出るわけではない。 ※参考資料『瀬名秀明,太田成男(2007)ミトコンドリアのちから 新潮社』
・※AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)については以下の記事も参照。
ミトコンドリアによるエネルギー生成と脂肪の燃焼の”AMPK(AMP-activated protein kinase)を活性化して脂肪を燃焼”
●長寿遺伝子、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK) ○サーチュイン ・サーチュインは、飢餓の時に寿命を延長する役割を担っていることが分かっている。 ・カロリー制限によりサーチュイン遺伝子が活性化される。 ・サーチュインタンパクは、ヒストン脱メチル化により遺伝子発現を変化させ、老廃物を除去し、老化を遅らせる。 ○AMPK ・エネルギー消費を増やし、細胞内廃棄物処理(ハウスキーピング)機能の質を上げるなど、加齢を防ぐために重要な役割を果たしている。 ○運動効果 ・運動により細胞内のAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)が活性化 →サーチュイン遺伝子が活性化 →NF-κBの働きを抑え、加齢炎症を抑える →寿命を延長。 ※参考資料『金子義保(2012)炎症は万病の元 中央公論新社』
ネットニュースによる関連情報
●加齢にともなう筋力低下にAMPKが関係? ・AMP活性化たんぱくキナーゼ(AMPK)を欠損したマウスでは、通常の中年マウスに比べて、予想以上に筋力低下が著しく進行することがわかった。 ・このAMPKの代謝的スイッチが、運動を行う事やメトフォルミンやサリチル酸など一般的に利用されている薬を利用することによってオンになるという研究報告もある。