遺伝の影響か、それとも環境の影響か、様々な事象における遺伝と環境の影響についての情報をまとめました。
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IQテスト
・生後すぐ養子になり、恵まれた環境で育てられている子ども達は、不遇な環境で育てられている子ども達に比べ、IQテストでよい成績を取ることが、多数の研究によって分かっている。 ※参考資料『カトリーヌ・ヴィダル(2007)脳と性と能力 集英社』
脳の老化
●幼少時のストレスの影響 ・幼少時にストレスを受けるとHPA軸の反応が過敏になり、脳の老化が早まる。 ※参考資料『ブルース・マキューアン(2004)ストレスに負けない脳 早川書房』
脳の全体的構造の発達
・遺伝子によって、おおざっぱに言って同じ種類の回路を持つが、偶然による個人的差異も存在する。そして回路の接続がシナプス活動によって選択され、個人の脳が形成されていく。 ・脳の発達の各段階で遺伝的要素と非遺伝的要素が相互に作用する。 選択の対象は、遺伝子が配線したあらかじめ存在する接続だが、その配線には非遺伝的要素(母体からくる化学物質など)も関わっている。 しかし、遺伝子とそういう化学的環境だけで、最初の接続が決まるわけではない。たまたま近くにある軸索終末と樹状突起がシナプスを形成する可能性もあり、偶然の作用もある。 ・一部の回路の構築においては、環境の刺激に誘発された神経活動が新しい接続の形成を指令し、同時に既存のプールの中から使われているものを選び取るといったことも行われている。 ○ニューロトロフィン ・ニューロンの生き残りと成長を促す化学物質。 ・シナプス後ニューロンで活動電位が発生すると、そのニューロンからニューロトロフィンが放出されて拡散してシナプス間隙を逆方向に戻り、そこで軸索終末に捕らえられる。 →ニューロトロフィンの影響下で、軸索は側枝を出し、新たなシナプス接続をつくり始める。 ついさっきまで活動していた軸索だけがニューロトロフィンをつかまえ、その軸索だけが新しい接続を生む。このようにして活動は成長を誘発する。したがって、成長が起こるのは活動的な終末に限られる。 ・ニューロトロフィンは回路の積極的な構築での役割に加えて、シナプス選択にも関わっている。 プログラムされたニューロン死は、最終的な接続パターンを形作るのに寄与する退行現象の一つだが、ニューロトロフィンの量が多いとニューロン死が避けられる。 ※参考資料『ジョゼフ・ルドゥー(2004)シナプスが人格をつくる みすず書房』
共感力
○共感回路 ・扁桃体や前頭葉前部皮質など ○反社会的傾向と共感 ・精神病の初期症状が見られる思春期の双子の脳をスキャンすると、共感に関する領域の灰白質が多ければ多いほど、反社会的傾向や精神病の傾向が強くなる。 過剰な灰白質はいくらか遺伝し、脳の未成熟のサインとみなされている。 双子のうち灰白質が多いほうは、共感力が本質的に未熟だった。 ○双子の違いはどこで生じたか? ・ラットの研究では、生後1週目で親にネグレクトされると、特定の遺伝子にエピジェネティックな変化が起きて、その働きが抑制された。 分かりやすい例としては、ストレス応答をコントロールしているグルココルチコイド受容体遺伝子で、それがメチル化して機能しなくなると、感情やストレスに関わる多くの遺伝子が連鎖的に変化した。その変化は生涯続く可能性がある。生殖により次の世代にも伝えられる。 子供のときに虐待されると、親になったときに、異常なメチル化のせいで共感や絆に関わる遺伝子が正常に働かず、自分の子供と絆を結べなくなる可能性があることを示唆している。 親から子へ、子から孫へと、トラウマになるような過酷な経験が繰り返され、罪を犯しやすい傾向や遺伝子のエピジェネティックな変化が受け継がれていく。 ・虐待を受けると、ストレスをコントロールするグルココルチコイド受容体遺伝子や脳内のドーパミン、セロトニン、オキシトシンの分泌量を調節する遺伝子がエピジェネティックに変化してスイッチがオフになり、その変化は次の世代へと伝えられてしまう。 ※参考資料『ティム・スペクター(2014)双子の遺伝子 ダイヤモンド社』