タンパク質の輸送

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  1. タンパク質の輸送先の指定方法
  2. タンパク質の輸送方法(核、サイトゾル)
  3. タンパク質の輸送方法(細胞内小器官)

タンパク質の輸送先の指定方法

・リボソームで作られたタンパク質は、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、核、葉緑体などの細胞小器官に運ばれる必要がある。一部のタンパク質は細胞膜に運ばれたり、細胞膜から細胞外へ放出されたりもする。
 
・タンパク質のN末端にはシグナルペプチドと呼ばれる15~25個程のペプチドが付いていて、このシグナルペプチドが荷札の役割をしている。このシグナルペプチドは、タンパク質が目的の場所に移動した後は切断される。
 
①"葉書"方式
・一つ一つのタンパク質に宛先が書いてあり、それに従ってタンパク質が輸送される。
 
②"小包"方式
・同じ目的地(ゴルジ体など)のタンパク質は膜小胞と呼ばれる脂質膜からできている小さな丸い袋の中に入れられ、いっしょに目的地に運ばれる。
 
・膜の表面にあるタンパク質が荷札の役割を果たし、このタンパク質には相棒のタンパク質がいて、この相棒が送られる先で待っている。
 
※参考資料『水島徹(2012)HSPと分子シャペロン 講談社』

 

①"葉書"方式
・タンパク質そのものに、宛先がアミノ酸の配列として書き込まれている。
・タンパク質が働くべき場所はすでに遺伝子に書き込まれている。
 
②"小包"方式
・複数のタンパク質が小胞体内で"小包"内に集められ、その"小包"に宛先が取り付けられる。
 
※参考資料『永田和宏(2008)タンパク質の一生 岩波書店』

タンパク質の輸送方法(核、サイトゾル)

・核膜には大きな孔が開いていて、その中をタンパク質はそのままの形(フォールディングされた状態)で自由に通過できる。
 
※参考資料『水島徹(2012)HSPと分子シャペロン 講談社』

 

・DNAからmRNAが転写され、そのmRNAの情報をもとに、リボソームでポリペプチドが合成されるところまでは、どのタンパク質も同じ。
 
●サイトゾル(輸送なし)
 
サイトゾルでポリペプチドとして合成され、そこでフォールディングされ、可溶性のタンパク質としてそのままサイトゾルで働く。
 
●核への輸送
 
・DNAからRNAに遺伝情報を写し取るときに必要な転写因子や、RNAポリメラーゼなど、核の内部で働くべき様々なタンパク質も作られるのはサイトゾルなので、サイトゾルから核の中への輸送が必要。
 
・核膜孔はタンパク質の直径と比べてはるかに大きいので、フォールディング後の輸送が可能。
 
・宛先は"葉書"方式。
 
※参考資料『永田和宏(2008)タンパク質の一生 岩波書店』

タンパク質の輸送方法(細胞内小器官)

●細胞膜と脂質二重層
 
・核膜も細胞内小器官の膜も膜を作っているのはリン脂質と呼ばれる脂質。
・リン脂質は、親水性の"頭"、疎水性の"しっぽ"の構造をしている。
・細胞膜は、疎水性部分を内側に親水性部分を外側に向けて二重の層となる。
 細胞膜の表面は親水性をもち、内部は脂肪酸に満ちて細胞の内外を遮断する障壁の役目をもつ。
 
●タンパク質の膜透過
 
・細胞内小器官は全て膜で包まれた構造をしており、タンパク質が中に入るにはこの膜を通過しなくてはならない。
 脂質からできている膜は疎水的な環境であり、親水的なアミノ酸が外側に出ているタンパク質が通過するのは難しい。
 
・細胞内小器官の膜には膜透過を担う小さなチャネル(孔)が存在する。このチャネルは、膜を貫通する膜貫通タンパク質によって構成され、この膜貫通タンパク質の作用によってタンパク質などが膜を透過することができる。
 孔を作っている膜貫通タンパク質の外側の面(膜を貫通して膜に接している部分)は疎水的なアミノ酸があり膜の中で安定して存在できるが、膜貫通タンパク質の内側は親水的なアミノ酸でできていて、親水的なアミノ酸が通れるようになっている。
 
●小胞体への輸送
 
・小胞体は核の周りにある大きな細胞内小器官で、細胞の外に出て行くタンパク質や膜に埋め込まれるタンパク質はここで様々な修飾を受ける。
 
・紐状のポリペプチドとして合成されたタンパク質が複雑な立体構造をとる前に小胞体の小さな孔を通る。
 
・リボソームでタンパク質が作られ始めたとき、小胞体へのシグナルペプチドが作られると、そこへシグナル認識粒子(SRP)というタンパク質が結合する。
 SRPが結合するとタンパク質合成がいったん停止し、SRPは合成途中のペプチドと一緒に移動し、小胞体の膜にあいている小さな孔に結合する。
 シグナルペプチドが小胞体の孔の中に入るとSRPはタンパク質から離れ、タンパク質合成が再開される。
 
○小胞輸送
 
・小胞内に運ばれたタンパク質は、"小包"方式で小胞として、チューブリンというタンパク質からできている微小管という繊維の上をケネシンというタンパク質の助けを借りて移動していく。
 
・すべての微小管は中心体と呼ばれる核の近くにある場所から出ており、いろいろな方向へ放射状に延びている。
 
●小胞体以外(ミトコンドリアなど)の細胞内小器官への輸送
 
・一度立体構造をとったタンパク質を解いて孔を通る。
 
・タンパク質はミトコンドリアの前で細胞質のHSPによって紐状になる。
→SRPのようなタンパク質によって孔まで導かれる。
→ミトコンドリアの中にもHSP(mHSP70)が存在し、入ってきたペプチドと結合し、ペプチドが元に戻らないようにしている。
→HSPによって入ってきたタンパク質は再び正しい構造にされる。
 
※参考資料『水島徹(2012)HSPと分子シャペロン 講談社』

 

・DNAからmRNAが転写され、そのmRNAの情報をもとに、リボソームでポリペプチドが合成されるところまでは、どのタンパク質も同じ。
 
●オルガネラ(ミトコンドリア、ペルオキシソームなど)への輸送
 
・膜透過。オルガネラの膜にある細い孔(チャネル)を通過する。
・上記孔は小さいので、フォールディングされる前に一本のポリペプチドとして通過する。
・宛先は"葉書"方式。
・ミトコンドリアは自身のDNAを持つがほとんどのタンパク質は宿主細胞のDNAから作られて供給される。
 
●小胞体→ゴルジ体→細胞の外へ分泌
 
・リボソームから小胞体への輸送は、"葉書"方式で、フォールディングされる前に一本のポリペプチドとして小胞体内へ膜通過する。
 
・小胞の中に入った後にフォールディングされる。
 
・小胞体から先は"小包"方式で輸送される。
 
・ゴルジ体が"小包"輸送の中継基地として働く。
 
・ゴルジ体→小胞体への逆方向の輸送もある。
小胞体による"小包"の膜は、小胞輸送のたびに小胞体からちぎりとられて、ゴルジ体へと輸送されるので、そのままだと膜を構成するリン脂質の量の過不足が生じてしまう。
 
○小胞輸送のレール
 
・細胞の中には、レールとして機能する微小管という線維が縦横に走っていて、このレールを通ってタンパク質を積んだ小胞が輸送される。
 
・微小管は、核の近くにある中心体から放射状に伸びている。
 
※参考資料『永田和宏(2008)タンパク質の一生 岩波書店』

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