熱ショックタンパク質(HSP)とがん治療

熱ショックタンパク質(HSP)とがん治療に関する情報についてメモ書きしています。

●NF-κB(エヌエフ・カッパー・ビー)
 
・慢性的な炎症が活性酸素を介してガン化の原因となる事が知られていたが、がん自体が慢性的な炎症を引き起こし、これががんをさらに悪化させるという悪循環を起こしていることが分かってきた。
 炎症が起こると細胞内で増えるNF-κBというタンパク質の影響で、がん細胞の増殖や転移を促進したり、抗がん剤を効きにくくしたりする。
 HSPはNF-κBを抑える事により炎症を抑える。
 
●免疫を活性化
 
・がん細胞に対する免疫として重要なのがT細胞による細胞性免疫。
 この反応を活性化するためには、まずがん細胞で発現している抗原をT細胞が認識する必要がある。
 ガン抗原をT細胞が認識するためには、ガン抗原が分解され短いペプチドになり、これがMHC分子というお皿のようなタンパク質の上に載せられて細胞表面に提示(抗原提示)される必要がある。
 HSP70やHSP90は、このペプチドとMHC分子が結合し、細胞表面まで運ばれるのを助けている。
 
・細胞死を起こしたガン細胞からガン抗原が放出され、これが樹状細胞に食べられ抗原提示されるケースもあるが、抗原がHSPと一緒に食べられると抗原提示の効率が顕著に上がる。
 
※参考資料『水島徹(2012)HSPと分子シャペロン 講談社』

 

●がんの温熱療法とHSP、ストレスタンパク質
 
○がんの温熱療法
・電磁波を使って腫瘍組織を高温に保持する事によって、がん細胞中のタンパク質の変性が引き起こされ、がん細胞を死に追いやる。
・腫瘍組織では、がん細胞自体が血管を誘導する物質を作り、血管を自らの組織内に引き込んではいるが、正常組織と比べると血管の発達は未熟であるので、血流によるクーリング効果が弱く、温度が高くなりやすい。
 
○HSP、ストレスタンパク質との関連
・がん細胞も熱ストレスに反応して、ストレスタンパク質を作る事による自己防衛作用が働いてしまい、治療による効果を弱めてしまう。
 
※参考資料『永田和宏(2008)タンパク質の一生 岩波書店』

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