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※テロメアと老化については以下の記事参照。
細胞老化、酸化老化、ストレス老化、テロメアとの関わり
テロメアとがんとの関わり
・テロメアは細胞が分裂を繰り返し、老化するにしたがい短くなる。 細胞が不死化してがん化すると、テロメラーゼという酵素の活性が上昇してテロメアの短縮が止まる。 →細胞は永遠に増殖可能になる。 ●テロメアクライシスを介する発ガンメカニズム ①細胞分裂を繰り返し、テロメアが短縮し、ヘイフリック限界に近づくとチェックポイント機構によって増殖を停止し、老化細胞へと移行。 →このようにして老化した細胞は、分裂を停止したままでとどまるか、死ぬかして、がん化することはない。 ②休止中あるいは新陳代謝のために分裂中の正常細胞が発ガン物質などの刺激を受けて、その細胞のがん抑制遺伝子あるいはがん遺伝子が変異すると、非常に活発に増殖する細胞へと形質転換する。 ③ヘイフリック限界を超えて分裂し、テロメア長は非常に短くなり、染色体異常(染色体に断裂、融合、架橋という一連の変化)が起こり(テロメアクライシス)、大部分の細胞は死ぬ。 ④一部の細胞は染色体異常によって引き起こされた遺伝子変異を逆用して、テロメラーゼの活性化などを誘導して不死化細胞へと変化する。 ⑤不死化した細胞の一部はさらなる遺伝子変異を受けて腫瘍形成能や転移能を獲得して、より強力ながん細胞に変化する。 このようにテロメアクライシスを介するがんは複数のステップを踏み、長い期間を必要とする。 ※参考資料『杉本正信(2012)ヒトは一二〇歳まで生きられる 筑摩書房』
●テロメア長と老化、がん ・細胞分裂をするたびに、テロメアは一部が脱落して次第に短くなる。そして、テロメアが一定以下の長さになると、その細胞はそれ以上分裂ができなくなる。 ・細胞分裂の回数には上限がある。老化のプログラミング? ・成人すると分裂しない細胞(脳、筋肉、骨)などにはあてはまらない? ○テロメアとがん ・テロメアの短縮ががん細胞の際限ない増殖を防いでいる可能性がある。 →腫瘍が一定の大きさに達した頃にはがん細胞のテロメア長も短縮しているため、腫瘍の成長がストップする。 ・老化とはがん死を防ぐ体内メカニズムが生み出した、逆説的な副産物と言えるかもしれない。 ※参考資料『デイヴィッド・ベインブリッジ(2014)中年の新たなる物語 筑摩書房』
ネットニュースによる関連情報
●テロメア長の短縮度合いとがんとの関係 ・がんを発症した者はそうでない者に比べて、テロメア長の短縮の速度が速いことが明らかになった。がんを発症した者のテロメア長は実年齢よりも15歳上と考えられた。 ・このテロメア長の短縮は、がんと診断される3-4年前には停止することが明らかになった。がんによってテロメア長の短縮の速度が早くなるが、がん診断の3-4年前に急速な短縮が安定化する変曲点(無限の増殖を可能にする仕組みが獲得されて短縮が停止)があることが分かった。この変曲点で起きている仕組みが解明されれば、効果的ながんの治療法につながる可能性がある。
●テロメア長と肥満、喫煙、がんとの関係 ・測定した白血球中のテロメア長の短縮は年齢とBMIや喫煙などの因子に関連し、また、がんを含めた全死因による死亡とも関連していた。対照的にテロメア長の短縮に関する遺伝子スコアが高いとがんの死亡率だけは低下した。 これはがん患者のテロメア長が遺伝子変異のためにわずかに短くなることは、がん細胞の生存率を低下させるという有益な変化をもたらし、そのため死亡リスクが低下したと考えられる。逆に言えば、長いテロメア長は細胞分裂の回数を増やすことができるため、がん細胞の生存に有利に働き、がん死亡率が高くなると考えている。