右脳と左脳

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. 右脳と左脳の違い
  2. 言語
  3. 空間処理
  4. 心理、コミュニケーション
  5. 利き手

右脳と左脳の違い

・多くの研究者が、左右の脳が相対的に心的活動で異なることを確認してきた。
・二つの脳はそれ自体が違うというよりも、課題を取り扱うやり方に違いがある。
・多くの場合に、ある課題を実行するときに一方の脳が働いて他方は働かないということはない。ちょうど二つの脳の一つが、その課題の実行を他方よりも速く上手にできるというレベルのこと。
・健常な脳では、脳梁を介して左右の脳が情報を共有し、連絡を取り合っている。
・二つの脳の違いは限定的で、互いに働きが違うというよりも、むしろ類似性が高く調和的であると考えられる。
・全米科学アカデミーの専門家達は、"左右脳を別個に訓練できるという直接的な証拠はない"と結論付けている。
 
※参考資料『スコット・O.リリエンフェルド(2014)本当は間違っている心理学の話 化学同人』

 

・二つの半球は絶えざる交信状態にあり、一つとして個別に機能する部分がないことが、明らかにされている。
・一つの機能はたった一つの領域によって行われるわけでは決してなく、むしろネットワークで連結された領域のまとまりによって行われる。
 
※参考資料『カトリーヌ・ヴィダル(2007)脳と性と能力 集英社』

 

●新奇性から慣例化
 
・脳の右半球は目新しい状況を扱うのに長け、左半球は決まりきった仕事や手順を取り扱っている。
 情報や知識は右半球から左半球へ継続的に循環し、"新奇性から慣例化"への移行は、人の内的世界では普遍的なサイクルとなっている。
・伝統的な概念では、左半球は"優位"脳、右半球は"劣位"脳。
・実際、左半球の損傷の影響は比較的単純なのに対し、右半球の損傷ははるかに奇妙で、奥が深い。
・自己やアイデンティティにとってなくてはならないのは右半球であり、さらに前頭葉が正常に保たれていること、と著者は述べている。
 
○新奇性と慣例化
・新奇性と慣例化は相対的なもので、今日珍しいことも次第にありきたりのものになる。
→左右の大脳半球の関係は動的なものに違いなく、ある課題を始めてから慣れるまでには右半球から左半球へと認知的制御の場が徐々に移っていくと思われる。
・右半球から左半球への転移といっても、文字通り情報が移動するわけではない。
・心の中で結ばれる外界対象の像、心的表象は左右の大脳半球で相互に影響し合って発展するが、その表象が形成されてくるスピードが異なっている。
・教育、職業、育った環境によって、ある人には珍しいものが他の人にはありふれたものになる。
→認知に果たす左右の大脳半球の役割は動的であり、相対的であり、個別的に取り扱われるべき問題。
・従来の考えでは、言語を左半球に結びつけていたが、言語は慣例化した体系であると考えればこの考え方とも矛盾しない。
・ビーバーとキアレロの実験によると、音楽の正規の訓練を受けていない人は、もっぱら右半球を使って音楽を処理し、訓練を受けた音楽家は主として左半球で処理する。
・知らない人の顔は主として右半球で処理され、なじみの顔は主に左半球で処理される。
 
※参考資料『エルコノン・ゴールドバーグ(2007)脳を支配する前頭葉 講談社』

 

●右脳と左脳のバランスが重要
 
・理知的な思考、抽象化、分析といった左脳の高レベルな機能が衰えると精神障害が疑われがちだが、その逆もありうる。左脳の活動が激しくなりすぎたために、現実の断片だけを過剰に解釈したり、存在しないパターンが見えたり、日常生活の背景とは無関係な声が聞こえたりする場合がある。
 
・右脳、左脳のどちらかに障害が起これば、残った方が役目を肩代わりしようとするが、どちらの脳も相手がいないと充分な仕事が出来ない。
 
・逐次処理の左脳は分析に長けており、言語や推理力を支えていて、並行処理の右脳は総合的に見渡す能力があり、空間や運動の認知に優れている。
 
・右脳・左脳はどちらかが考える専門で、もう一方は感じる専門だとか、外界を認識するのはどちらかが断然優れているとか、そういう話ではない。
 右脳はより大きく基本的な要素を担当していて、左脳は言葉や論理、風景の細部等精密な区別を受け持っている。
・左脳でも、その中に入っている微小な各システムは創造力や洞察力を発揮することができる。
 右脳と左脳の最終的な違いは、言語-非言語とか、知覚-非知覚という区別ではないし、扱われる感覚が左右で異なるということでもない。
 むしろ、起こったことに一つ一つの小さな意味を察知するか、状況全体が持つ意味を把握するかの違い。
 細部の意味なくして全体の意味はとれないし、逆もまた同様。
 
・脳の右側は、手足の大きな動きのほか、怒りや嫌悪といった激しい情緒反応も担当する。
 これに対して脳の左側は、小さくて精密なつながりを扱い、細かい意味や身体の微妙な動きを伝える。
 左脳は責任範囲が局所的で、しかも境界がはっきりしているので、それだけ精度も高くなる。
→このように専門が分かれているために、一方は几帳面な分析を、他方は大きな組み立てや見晴らしを得意とする。
 言語については、一方が文字通りの意味を理解するのに対し、他方は抑揚や間接的な意味を受け止める。
 
・左脳は小さな意味をいくつもあぶり出すが、それを枠にはめ、まとまりをつけるのが右脳。
 
○傷つきやすさ
・左脳で卒中が起こり右半身不随になる患者は左半身不随になる患者の4倍で、脳が受ける損傷も左脳のほうが2.5倍も多い。
・母親のお腹にいるときは、早くから発達を始める右脳に比べると、左脳はスタートが遅く、それだけに後から急速に発達する。動脈経由で供給されるエネルギーも速く使い果たしてしまい、血流はいつも不足気味になる。そのため酸素が足りなくなったとき、いちばんに影響を受けるのは左脳。
 
※参考資料『ロバート・オーンスタイン(2002)右脳は天才?それとも野獣? 朝日新聞社』

言語

・左脳は発語に優れている。文法や単語を産出するうえで右脳よりも優れている。
・右脳は韻律と呼ぶ発話の際のイントネーションや強調では、左脳よりも優れている。
 
※参考資料『スコット・O.リリエンフェルド(2014)本当は間違っている心理学の話 化学同人』

 

・言語機能は左脳のブローカ野だけでなく、左脳と右脳にある他の十ほどの領域も同時に動員する。
 
※参考資料『カトリーヌ・ヴィダル(2007)脳と性と能力 集英社』

 

●コンテキストと右脳
 
○コンテキスト(文脈)とテキスト(言葉)
・どういうコンテキストで語られたかは、そのテキストと少なくとも同じくらいコミュニケーションには欠かせない。
→"そいつはすごい!"と言われても、前後関係を知らなければどういう意味か分からない。場合によっては嫌味の場合もある。
・比喩にしろ文字通りにしろ、一つの単語の解釈が的を得ているかどうかを確かめるには、コンテキストから得られる手がかりが不可欠。
・人の話を聞いたり、文章を読むとき、人は膨大な情報の中から取捨選択して、あちこちにはめ込んでいる。
 意味が了解できてはじめて、言語を構成する単語および文字の隙間を埋めることができるし、文章を読みながら、次にどの単語が来るか簡単に予測できる。
 予測がうまく働いていれば、前の文章で抜け落ちていた内容もちゃんと補って読むこともできる。
 
○ジョークと右脳
・ジョークの理解は、聞く側の期待と、実際の話の展開が微妙にずれたときに感じる、軽い驚きから始まる。
→そのずれを解決するために、新たなコンテキストのなかで手持ちの情報をおさらいするのが次の段階。
→ジョークの楽しみは、ずれを解決できるその人の能力にかかっている。解決すべきずれが複雑になればなるほど、そのジョークは微妙なおかしさを誘い出す。
・言葉の意味は状況によって変わる。張り巡らされた意味のネットワークが、ジョークの理解という複雑な作業を支えているが、それは右脳の領域。
・右脳は一つの単語が持ちうるいくつもの意味を抱えておけるのに対し、左脳はたった一つの意味だけをすばやく選び出す。
→右脳を損傷すると、語句が持つ複数の意味を吟味することが出来ないので、ジョークを理解できなくなる。
・単語が持つ一つの意味に的を絞るときは左脳が、あいまいな単語の意味候補をいくつも保持するときは右脳が関わっていることは、多くの研究者が認めている。
→隠喩をたくさん使う日常的な言葉や、ジョークを理解する作業は、いろいろな意味を同時に把握できる右脳によるところが大きい。
 
●専門的、全体のイメージ
 
・被験者に専門的な文章と民話を読んでもらい、そのときの脳波を比べると、左脳は文章の内容に関係なく活発だったが、右脳の活動が盛んになるのは民話のときだけだった。
→専門的な文章は、イメージというものがあまり浮かばないことが多いが、物語はいろいろなことが一度に起こるので、多彩なイメージが呼び起こされる。その話全体の感じは、文体やイメージ、感情を通じて紡ぎ出されるものだから、右脳と深く関わっている。
 
●右脳と左脳の機能分化の程度を調べた研究(シンガポール)
 
・ジョゼフ・ボーゲンのプログラムをもとに開発された認知左右総合テストを使用。
学生284人を対象に、到達度に応じて3段階に分けられていた。
・その結果、到達度の高い者ほど左脳が活発に働いており、低い者は右脳が活発であることが分かった。
→学力の低い人が右脳優位型というわけではなく、高い学生ほど左脳の言語能力がよく発達していたと考えられる。
 
●瞑想法と右脳
 
・言葉はいっさい用いないものや、音楽をかけるもの、身体の動きに重点を置くものといろいろあるが、狙いは同じ。
→よくある瞑想法は、決まったフレーズを心の中で何度も唱えたり、何らかの対象に神経を集中させることで、身体の力を抜いていく。それによって、自分の内側で話す声を沈黙させ、言語の支配をゆるめていく。
 
※参考資料『ロバート・オーンスタイン(2002)右脳は天才?それとも野獣? 朝日新聞社』

 

●言語と左右の大脳半球
 
・9割の人で左半球が言語をつかさどるが、右半球に言語中枢を置く人が約5%おり、残り5%ほどは機能をきれいに二分している。
・発作で右半球が傷ついた場合、言語機能はめったに損なわれないのに対し、左半球では言語に障害が残るか、機能を失うケースが多い。
・脳梁が両半球をしっかり結びつけていれば、いずれが優勢であろうと言語機能は良好に保たれる。
 女性は男性よりもこの結合が強く、言語性知能指数が高い。脳卒中で左半球が傷ついても、女性のほうが比較的軽い言語障害ですみ、失読症も埋め合わせが利く可能性が大きい。
・情動を中心的に担当している右半球は、話し手の口調からその気持ちを察し、たとえやユーモアを嗅ぎ取っている。
 右半球を損傷した脳卒中患者は、コミュニケーション能力に問題は無いが、味も素っ気もない話しぶりで、言葉を額面どおりに受け取りやすい。比喩、口調、ユーモア、感情表現などにうとく、うまく使いこなせない。
 
※参考資料『ジョン・J.レイティ(2002)脳のはたらきのすべてがわかる本 角川書店』

空間処理

・右脳は複雑な視覚処理や空間処理などの非言語的な働きにおいて優れるが、左脳は必要があればその役割を担えるというレベル。
・右脳は一般的な空間感覚の取り扱いに優れるが、その部位と対応関係にある左脳は、その人が特定の場所にものを置く際に活動する。
 
※参考資料『スコット・O.リリエンフェルド(2014)本当は間違っている心理学の話 化学同人』

 

・空間での自分の位置を把握するときに活性化される領域は、右脳の側頭皮質(海馬領域)だけに限定されるわけではなく、両半球の前頭葉と頭頂葉も含まれる。
 
※参考資料『カトリーヌ・ヴィダル(2007)脳と性と能力 集英社』

 

●右脳と半側無視
 
・右脳に損傷を受けたために、視野の左半分が見えず、認識できなくなる。
・なぜ、右側には半側無視が起こらない?
→脳の右側に損傷を受けると、左側から入ってくる視覚情報がうまく処理できないだけでなく、もっと重要な、あちこちで把握した空間情報をまとめる能力も失われるため?
 
※参考資料『ロバート・オーンスタイン(2002)右脳は天才?それとも野獣? 朝日新聞社』

心理、コミュニケーション

●幸福感、怒り・不安、ポジティブ・ネガティブ
 
・脳波を測定した調査では、幸福な気分のときは左脳、怒りや嫌悪感を覚えているときは右脳が活発になっていた。
・前向きの考え方をするときは左脳、否定的な考えのときは右脳の皮質前部が活発になっていた。
→腕や脚などを動かす大きな筋肉は、右脳が管理していることが影響?
恐怖や怒りといったマイナス感情には、走って逃げ出すとか、敵と戦うなど、大きな変化が後に続くことが多く、それだけ手足を動かす可能性も高い。
 
●右脳損傷患者とコミュニケーション
 
・右脳を損傷すると、日常生活を営むための大きな柱が失われる。それは他人の考えや気持ち、意図を推し量る能力だが、右脳損傷患者は皮肉を込められた場面に遭遇しても、ただの言い間違いで片付けてしまい、相手に嫌われているとは思わない。
 相手の気分を察知できないと、嘘と冗談の区別もつかない。
 
・右脳損傷患者は、右脳がうまく機能しないせいで、左脳が前後と脈絡なく独自のストーリーを作ってしまう。
 
・他人の気持ちや考えを理解するときには、言葉以外の手がかりも解釈しなければならない。
 人が話をするとき、コンテキスト(文脈)の一部は顔の表情や声の調子で表現されており、通常はそんな手がかりを総動員して、言葉の真意を汲み取っている。
→右脳が傷つくと、こうした非言語コミュニケーションがうまくいかない。しゃべり方も一本調子で表情に乏しく、身振り手振りも全くない。他人の顔色を読んで気持ちを推し量ることもできない。空間能力にも障害が起きているために、顔の微妙な動きといった表情の変化も読みとれない。
・外の世界を認識して理解するときは、生活のそこかしこで起こる出来事を一つにまとめる作業が必要で、それは理詰めで片付く問題ではない。
 右脳はたんに視覚にとどまらず、人が聞いたり話したりするすべての語句、人が感じるすべてのことにからんでいる。右脳は世界の全体像を見せてくれる。
 
・右脳損傷の人は、自分の身体のイメージもゆがんでいて、物体や宇宙全体と融合している感覚を抱く。
 出来事がどこで起こっているか、人がどこにいるか正しく認識できなかったり、自分の考えをほかの人やテレビがしゃべると思い込む(老想化声と呼ばれる)ことがある。
 また、ピントのぼやけた写真や不完全な絵から、それが何かを言い当てるのも苦手。
 右脳に損傷を受けると、自分の中はもちろん、自分と外の世界のあいだで何が起こっているのかのみこめない。だいたいのところは分かっているという感覚、周囲の世界がひとわたり視野に入っているという実感は、右脳がもたらしていると思われる。
 
※参考資料『ロバート・オーンスタイン(2002)右脳は天才?それとも野獣? 朝日新聞社』

利き手

・右手と左手のどちらが利き手かによって、男女とも脳の作りに明らかな違いが現れる。左利きの人の脳のつくりの違い方は3種類に分けることができる。
①右利きの脳とあまり変わらない。
②左右が反対になっている。
③言語能力や空間能力が左右両方にある。
 
・右利きは、典型的な大脳構成になっている人が全体の90%前後を占めているが、左利きだとその割合が66%に下がる。
 
・言語を司るところが左右に分散しているので、脳の左右どちらかを損傷しても、失語症になる可能性がある。(右利きの人が失語症になるのは左脳を損傷したときに限られる)
 
・妊娠中や出産時のストレスが左利きを作りやすいという説がある。
→男性ホルモンのテストステロンの分泌が多すぎると左脳は成長が遅くなる。そして、生まれてくるときは、胎児の通常の頭の位置からして、一時的に左脳に血液が流れ込みにくくなる。こうして左脳に障害が起こると、右脳への役割切り替えが起こって左利きになる。
 
・利き手に関しては、男女差がはっきり現れ、出産時の障害に影響を受けやすいのは男。
 
・出産時のこうした障害のため、左利きの人は健康全般に問題を抱えることもある。
→左利きの人は睡眠障害や斜視になりやすいし、聴覚障害になる確率は右利きの2.5倍。なかでも高いリスクにさらされるのは免疫系で、母親の胎内にいるあいだ、大量のテストステロンを浴び続けると免疫系がダメージを受ける。テストステロンは左脳だけでなく、人体の防御に欠かせない胸腺も攻撃する。
 あらゆる動作を左を優先させる、強い左利きの人は、右利きと比べてアレルギー、喘息、花粉症などの免疫障害や自己免疫疾患などの病気になる可能性が高くなる。
 
・左利きの人の中には、生まれるときに脳に損傷を負った人もいるが、ほとんどの左利きの人はそうした障害とは無縁で、ただ脳の作りが右利きと異なっているだけ。幼いときの言葉の習得にいくらか遅れが出ることがある。
 
※参考資料『ロバート・オーンスタイン(2002)右脳は天才?それとも野獣? 朝日新聞社』

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください