がんの基礎知識

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. 悪性腫瘍
  2. 細胞ががん化する仕組み
  3. 発がん性物質
  4. がん発生までの時間、加齢の影響
  5. 転移
  6. 再発
  7. 二次がん
  8. 未分化がん
  9. がんにならない部位
  10. 浸潤、転移、再発しやすいがん

悪性腫瘍

●がん(悪性腫瘍)の特徴
 
①自律性増殖
・がん細胞はヒトの正常な新陳代謝の都合を考えず、自律的に勝手に増殖を続け、止まることがない。
 
②浸潤と転移
・周囲にしみ出るように広がる(浸潤)とともに、体のあちこちに飛び火(転移)し、次から次へと新しいがん組織をつくってしまう。
 
③悪液質
・がん組織は、他の正常組織が摂取しようとする栄養をどんどん奪ってしまい、体が衰弱する。
 
●がんと良性腫瘍の違い
 
・良性の腫瘍は、上記①の”自律性増殖”をするが、②”浸潤と転移”、③”悪液質”を起こすことはない。
・増殖のスピードは、悪性腫瘍に比べるとゆっくりしている。
・腫瘍の大きさや発生した場所によっては、症状が起こることもあるが、外科的に完全に切除すれば再発することはない。
・代表的な良性腫瘍として、子宮筋腫、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)、皮様嚢腫(ひようのうしゅ)等がある。
・良性腫瘍の中でも脳腫瘍のように発生部位によっては重篤な臨床経過を来すものもある。
 

・腫瘍が非常にすばやく成長し、周囲の組織に広がったり、遠くの臓器に転移して、そこで再び成長する性質を持つ。
・がん細胞の遺伝子は変異しやすく、分裂するたびにますます悪質になっていく。抗がん剤に対して抵抗力を持つがん細胞が生まれ、今度はそれが増殖してしまう。
・がん細胞は自分が生き、かつ増殖するために正常な細胞よりも大量の栄養や酸素を必要とする。
→近くの血管から自分の内部に新しい毛細血管を引き込み、そこから栄養と酸素を吸い取る。
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

がん発生までの時間、加齢の影響

※老化との関連については以下の記事参照。
がんと老化の関わり

・がんの90パーセントを占める散発性のがんは、複数の遺伝子の変化などによって生じる(多段階発がん説)。
 長生きすれば同時に細胞分裂の総回数も増えるので、それらが変異する機会も増える。さらに加齢によって遺伝子を修復する機能が衰え、変異をきたしやすくなる。
 がんに関わる遺伝子には加齢の遺伝子と共通なものもある。
 
・遺伝子は普段から傷つけられているが、傷ついたDNAを治したり、修復が不可能なまでにDNAが傷ついてしまった場合は、細胞自らが死ぬという仕組みを持っている。
 
・最初に遺伝子の変異した細胞が悪性の腫瘍細胞となって転移を起こすまでには20~30年の時間がかかる。
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

転移

・がんが成長してその固まりが大きくなると、固まりからがん細胞がはがれ落ち、近くの血管やリンパ管に流れ込む。その後体内を循環し、途中で他の臓器に付着して、そこで増殖して新しいがんをつくる。
 
・血管やリンパ管に入り込んだがん細胞のうち、長時間生き延びて別の場所で増殖できるようになるがん細胞は0.1%程度(①それらの細胞の構造が移動に適していないこともある。②血管壁に付着し、壁を通り抜けてその背後にある器官や臓器に入り込む必要)。とはいえ、血液中に入り込むがん細胞の数は膨大なので無視できない数。
 
・ある種のがん細胞が特定の臓器に転移する傾向を持つ。タネと土壌仮説
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

再発

①治療後にもわずかな数のかん細胞が残っていた
②ひとたびがんを発症した患者は、がんになりやすい状態。(二次がん)
③抗がん剤や放射線治療によるがん化。正常な細胞の遺伝子も傷つける。
 
・再発したがんは、治療時に除去できなかった浸潤や転移で生じたがん細胞から成長していて、このようながん細胞は様々な能力(新しい血管を作り出す、細胞の周囲の膜を溶かす、抗がん剤に対する耐性など)を備えているので治療が困難。
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

二次がん

・がん細胞が死滅した後に新しいがんが発生。
 
・たとえすべてのがん細胞を取り除いても、患者の体の一部の細胞が長年の喫煙などによってがん化しやすい状態になっていることが要因。
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

未分化がん

①まだ分化していない幹細胞ががん化
②ひとたびがん化した細胞が、何度も分裂を繰り返すたびに遺伝子の変異を重ねて、逆に未分化の状態に戻ってしまったがん。
 
・増殖のスピードが非常に速く、浸潤や転移による成長も速い。
 
・放射線や多くの抗がん剤は細胞が分裂する過程のどこかに作用するので、分裂をたびたび繰り返す未分化のがん細胞に対しては治療効果が高い。
 ただし、がん幹細胞は抗がん剤や放射線に強いと見られている。
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

がんにならない部位

・分裂しない細胞はがん細胞になれない。
 
・脳や脊髄をつくっている中枢神経細胞、心筋細胞はほとんど分裂しない。(最近の研究では、心臓や脳にも幹細胞が存在し、わずかずつ継続的に置き換えらていることがわかった)
→心筋梗塞などで心筋細胞が壊死しても、その部位は再生しなく患者の死に直結。
→脳腫瘍は、脳神経細胞ではなく、グリア細胞(ニューロンに栄養を供給したり脳細胞全体の形を整えたりする)ががん化。
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

浸潤、転移、再発しやすいがん

①浸潤
・卵巣がん、スキルス(分化度の低い腺がんの一種)
 
②転移
・乳がん、骨肉腫、悪性黒色腫
 
③再発、二次がん
・食道がん(継続的な飲酒、喫煙)、肝臓がん(肝炎ウィルス)
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

発がん性物質

・がんは、がん抑制遺伝子の変異の蓄積や、環境因子などの複合的な要因によって発生すると考えられている。
 したがっておのおのの発がん性物質と発がんを単純に結び付けることは困難。
 
ある物質の発がん性の評価については、種々の因子を比較してがんになる危険率(リスク)の違いを示せるだけである。

・発がん性物質を食べたり触れたりしても、それによって正常な細胞ががん細胞になることはほとんどない。
→がん細胞が生まれるには、遺伝子のレベルでいくつもの変異を重ねる必要がある。
 
・生活環境に存在する物質の中で最強の発がん物質はアフラトキシン。
 
・食物中の発がん物質の影響を抑える方法のひとつとして、体内で消化吸収されない発がん性物質をすみやかに体外に出すために排泄を早める。食物繊維の多い食事。発がん物質が体と接触する時間を短くする。
 
※参考資料『矢沢サイエンスオフィス(2012)がんのすべてがわかる本 学研パブリッシング』

細胞ががん化する仕組み

●がん細胞と正常細胞の違い
 
・正常な細胞は、体や周囲の状態に応じて、殖えたり、殖えることをやめたりする。
例えば皮膚の細胞は、けがをすれば増殖して傷口を塞ぐが、傷が治れば増殖を停止する。
 
・がん細胞は、体からの命令を無視して殖え続ける。勝手に殖えるので、周囲の大切な組織が壊れたり、本来がんのかたまりがあるはずがない組織で増殖したりする。
 
●多段階発がん
 
・がん細胞は、正常な細胞の遺伝子に2個から10個程度の傷がつくことにより、発生する。これらの遺伝子の傷は一度に誘発されるわけではなく、長い間に徐々に誘発される(多段階発がんと呼ばれる)
 
・傷がつく遺伝子の種類として、”がん遺伝子”の活性化と”がん抑制遺伝子”の不活化がある。
 
・傷の種類として、DNAの暗号に異常が生じる”突然変異”と、暗号自体は変わらなくても使われ方が変わってしまう、”エピジェネティック変異”とがある。
 
・正常な細胞に決まった異常が起こると、その細胞は増殖する。そこに第二の異常が起こると、さらに早く増殖するようになる。この異常の積み重ねにより、がん細胞が完成すると考えられる。
 
●がん遺伝子
 
ある遺伝子に傷がついたときに、細胞増殖のアクセルが踏まれたままの状態になる場合がある。このような遺伝子が、がん遺伝子。
 多くの場合、がん遺伝子によってつくられるタンパク質は、その働きが異常に強くなることにより、細胞増殖のアクセルが踏まれたままの状態になる。
 このタンパク質の作用をうまく抑えるような薬を見つければ、細胞ががん化することを防いだり、すでにできているがんの増殖を抑えたりすることができる。
 
●がん抑制遺伝子
 
がん抑制遺伝子は細胞の増殖を抑制したり、細胞のDNAに生じた傷を修復したり、細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導したりする働きをする。
 DNAの傷が蓄積するとがん化に結びつくので、その修復が必要で、異常細胞が無限に増殖すると大変なので、異常を感知してその細胞に細胞死を誘導することも必要。
 この修復や細胞死の誘導の役割をがん抑制遺伝子が果たしている。
 
●遺伝子突然変異
 
遺伝子の傷はDNAの傷を意味する。ヒトの細胞の中にはDNAが存在し、そこに遺伝子が暗号として記録されている。
 遺伝子突然変異とは、この遺伝子の暗号に間違いが生じることを意味している。タバコ、食物の焦げ、紫外線等、さまざまな外的要因(発がん要因)が遺伝子突然変異を引き起こすことがわかっている。
 がん遺伝子やがん抑制遺伝子を記録したDNAに間違いが生じた場合、がん遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の不活性化が起こる。
 
●遺伝子のエピジェネティックな変異
 
遺伝子突然変異以外にも、細胞が分裂しても薄まることなく、新しくできた細胞に伝達される異常があることがわかってきて、それがエピジェネティックな変異で、具体的には、”DNAメチル化”と”ヒストン修飾”の変化がある。
 
特に、DNAメチル化の変化はヒトがんの多くで認められ、多段階発がんのステップとして関与している場合もあることが知られている。

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