※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
- 動脈硬化
- 免疫が過剰になる病気
- 心臓病
- 糖尿病、アルツハイマー病
- ストレスとがん
- 腸内細菌への影響
- うつ病
- 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
- ネットニュースによる関連情報
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
ストレス →交感神経緊張 →胃や十二指腸の血管が収縮して血流量が減少(虚血) →ストレスが緩和すると血流量増大(再還流)、大量の酸素が供給、大量の活性酸素 ※参考資料『室伏きみ子(2005)ストレスの生物学 オーム社』
動脈硬化
・交感神経が過剰に緊張 →血液凝固や血管の収縮 →組織の循環悪化 ・緊張した交感神経の末端からはノルアドレナリンが放出され、細動脈の収縮を引き起こす。 ・交感神経の刺激 →副腎からはアドレナリン →血小板を凝集 →血小板からは血小板由来増殖因子(PDGF)が放出 →血管壁の平滑細胞の増殖 →平滑筋細胞が過剰に増殖すると動脈硬化が促進 ・ストレス →血中コレステロール増加 →血液の粘度増大 →血流の停滞と動脈硬化 ※参考資料『室伏きみ子(2005)ストレスの生物学 オーム社』
免疫が過剰になる病気
・ストレスが状態を悪化。原因の一つがストレス。 ・HPA軸の機能不全やコルチゾールの生成不足によって、ストレス反応と免疫反応が乱れてしまう。 ※参考資料『ブルース・マキューアン(2004)ストレスに負けない脳 早川書房』
心臓病
●イギリスの公務員1万人に対する調査、ストレス ・組織の最下層の人は、組織のトップの人と比べて心臓病になるリスクが3倍高かった。 →ストレスが影響? ・自分には状況をコントロールする力が無い、という認識を持つ事によって生じるストレスで、お金のあるなしには影響されない? ・ストレスが健康に影響する過程は、エピジェネティクスで説明できる? 免疫遺伝子がエピジェネティックな作用、つまりメチル化によって、不活性化? ※参考資料『ティム・スペクター(2014)双子の遺伝子 ダイヤモンド社』
●精神的重圧と心臓への影響 ・精神的重圧によって、末端の血管の太さなどをコントロールしている自律神経が、興奮状態に陥ってしまう。 →本来ならば血液をたくさん流さなければいけない心臓の血管を、逆に締め上げてしまう、"微小血管機能障害"と呼ばれる現象が起こる。 ●コルチゾールと心臓病 ・継続的にストレスを浴びるとコルチゾールがとめどなく分泌され、減少しにくくなる。 ・血液中のコルチゾールの値が一日を通して横ばいの人は、値が徐々に減っていく人と比較すると、心筋梗塞などの病で死亡するリスクが二倍に上昇していた。 ・就寝時も変わらず値が高い人は、低い人と比べると、心血管病の死亡リスクが二倍も高かった。 ※参考資料『NHKスペシャル取材班(2016)キラーストレス NHK出版』
糖尿病、アルツハイマー病
アルツハイマー病については以下の記事参照。
アルツハイマー病と生活習慣病、糖尿病、コレステロール、高血圧、ストレス、食事の”ストレスとアルツハイマー病”
アルツハイマー病と生活習慣病、糖尿病、コレステロール、高血圧、ストレス、食事の”ストレスとアルツハイマー病”
●慢性的なストレスは糖尿病の発症リスクを高める要素 ・コルチゾールというホルモンの分泌を刺激し、腰周りの肥満や血糖値の上昇、高血圧、免疫システムの混乱を引き起こしやすい。 ・健全なレベルのコルチゾールを維持することは健康にとって必要だが、過不足すると有害になる。 ・コルチゾールのバランスを取るには、十分な睡眠、適度な運動、リラックスする時間を持つことなどが重要。 ※参考資料『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』
ストレスとがん
○オハイオ州立大学のソンフィン・ハイ教授の研究 ・ストレスホルモンによって働き始めるATF3遺伝子は、ガン細胞を攻撃し、増殖をくい止める働きを持つ免疫細胞の中に存在し、普段はその中でスイッチが切れた状態で眠っている。 ・ストレスホルモンが増え、免疫細胞を刺激すると、30分以内にATF3遺伝子のスイッチが入る。すると、免疫細胞はガン細胞を攻撃することを止めてしまう。ストレスホルモンが減れば、遺伝子のスイッチは切れて、免疫細胞は再びガン細胞を攻撃するようになる。 ・ATF3遺伝子のスイッチがオンの状態にあるときの免疫細胞は、ガン細胞を攻撃しないばかりでなく、転移を促すことがネズミの実験で確認された。免疫細胞が細胞と細胞の間に隙間をつくり、ガン細胞が転移するスペースを確保して移動が容易になるように助けている。 ※参考資料『NHKスペシャル取材班(2016)キラーストレス NHK出版』
多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
●精神的要因、コーヒーと糖尿病との関連について ・精神的要因(ストレスとタイプA行動パターン)やコーヒー摂取と糖尿病発症との関連を調べた。 ○日常的なストレスとの関連 ・日常のストレスが"少ない"グループと比べて、"普通"あるいは"多い"グループでは糖尿病発症のリスクが高くなる傾向があった。 ・男性ではストレスが"多い"グループでは"少ない"グループと比べて統計学的に有意に高くなっていた。 ・女性でもストレスが多いほどリスクが高くなっていたが統計学的に有意ではなかった。 女性では、日常ストレスの多い生活をする傾向を表すとされているタイプA行動パターン(せっかち、怒りっぽい、競争心が強い、積極的などの行動パターン)のグループで、対極的なタイプB行動パターンのグループと比べて糖尿病発症のリスクが統計学的に有意に高くなっていた。男性ではこのような傾向は見られなかった。 ○コーヒーとの関連 ・コーヒーには、ストレスに反応して分泌されるコルチゾールの活性化を妨げたり、ストレスによる血圧上昇を鈍らせたりする作用があるとの報告があり、ストレスの影響を緩和する作用があるのかもしれない。そこでコーヒーを1日3杯以上飲むグループとそうでないグループに分けて分析してみた。 ・男性では、コーヒーを1日3杯以上飲む場合には、ストレスが多いグループでも少ないグループに比べて糖尿病発症のリスク上昇は見られなかった。統計学的には有意ではなかったが女性でも同様の傾向が見られた。 ・ストレスの影響を除いた場合にも、やはりコーヒーをよく飲む人たちでは糖尿病発症のリスクが低くなる傾向が見られたので、コーヒーにはストレス緩和以外にも、糖尿病リスクを下げるような独自の効果があると考えられる。
●自覚的ストレスとがん罹患との関連について ・調査開始時のアンケートの回答から、日常的に自覚するストレスの程度について3つのグループ(低、中、高)に分けて、その後の全がん罹患を比較した。 ○結果 ・自覚的ストレスレベルが「低」のグループを基準とし、それ以外のグループのがんリスクを比較したところ、調査開始時の自覚的ストレスレベルと全がん罹患との間に統計学的有意な関連は見られなかった。 ・しかし、調査開始時と5年後調査時のアンケートにおける、自覚的ストレスに関する回答の組み合わせから、その変化を6つのグループ(常に低、常に低・中、常に中、高が低・中に変化、低・中が高に変化、常に高)に分け、がん罹患リスクとの関連を検討した結果、常に自覚的ストレスレベルが高いグループは、常に自覚的ストレスレベルが低いグループに比べ、全がん罹患リスクが11%上昇していた。 臓器別でみると、特に、肝がん・前立腺がんで自覚的ストレスが高いとリスクの上昇がみられた。 ○推察 ・本研究では、男性でこの関連が強くみられ、全体の結果に影響を与えたと考えられる。 この理由として、本研究の対象者のうち、常に高いストレスを受けていたのは主に男性であったこと、また、女性よりも男性の方がストレスに対する生理的影響が大きい可能性が考えられる。 また、ストレスレベルが高い男性は、喫煙や飲酒など、がんのリスク要因となる生活習慣をもつ傾向が強く、統計学的にこれらの影響は考慮したものの、完全に取り除くことはできなかった可能性がある。
ネットニュースによる関連情報
●心理的要因で脳卒中のリスクが増加? ・抑うつ症状が高い人は脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)となる確率が86%高かった。 ・慢性ストレスが高い人は、脳卒中またはTIAとなる確率が59%高かった。 ・敵意スコアが高い人は、脳卒中またはTIAとなる確率が倍以上であった。 ・怒りには疾病リスクの増加と有意な関係は見られなかった。
●ストレスによって不妊のリスクが増加? ・ストレスの生物学的指標であるα-アミラーゼのレベルが高い女性は、この酵素レベルの低い女性に比べて、妊娠する可能性が毎月あたり29%低く、避妊していない性交を12ヶ月行ったにも拘らず、妊娠していないという不妊の臨床定義を満たす可能性が倍以上高かったことを明らかにした。