タバコと心疾患

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. タバコと動脈硬化
  2. タバコと血液ドロドロ
  3. タバコと高血圧
  4. タバコと狭心症
  5. タバコと依存症

タバコと動脈硬化

○(参考)血管内皮と一酸化窒素
血管内皮機能 | 循環器領域 | 臨床試験事業 | 総合医科学研究所

・成分中のニコチン、一酸化炭素、水酸基ラジカルが主な原因。
 
〇ニコチン
・ニコチンは、交感神経を興奮させる強力な血管収縮物質。
→ニコチンで全身の動脈が収縮し、血圧が上がって手足の温度が下がる。
・煙草を吸うと肺からニコチンが血中に入り、このニコチンが血管の内皮細胞の機能を損ない、一酸化窒素の産生が減り、血管が狭くなる。
 
〇一酸化炭素
・一酸化炭素は、ヘモグロビンへの親和性が酸素より高いので、タバコを吸うと赤血球に結合する酸素が減って体中の臓器が酸欠に。
  ↓
 ・血管の内皮細胞は、血栓形成を防止するトロンボモジュリンや血管を拡げる一酸化窒素を作るなどの働きをするが、内皮細胞が酸欠になるとこの働きが著しく低下し、血管内に血栓ができやすくなる。
 ・酸欠になると、これを補うために赤血球数とヘモグロビンが増加し、血液が濃くなる。濃くなると粘度が高くなり、血管が詰まりやすくなる。
 
〇水酸化ラジカル
・水酸基ラジカルは、血管壁に入り込んだLDLを酸化させ、酸化したLDLはマクロファージによって貪食されて血管に溜まり、動脈硬化を進行させる。
 
※粥腫(アテロームプラーク)の形成、アテローム血栓症
 
・血管内皮細胞が傷つく
→傷ついた内皮細胞の中をLDLが通過
→血管の中膜と内膜の間に溜まったLDLが酸化
→酸化されたLDLが単球を引き寄せる
→単球はマクロファージに変化し、酸化コレステロールをを飲み込んで泡沫細胞となって死滅
→これが集まって脂質の核になる
 
・安定した粥腫は表面が厚いので問題ないが、不安定な粥腫の表面は薄いので、感染症、高血圧、高血糖、高中性脂肪症、喫煙などの酸化ストレスで容易に亀裂が入る。
 この亀裂に血小板が粘着・凝集し、フィブリンや赤血球が加わって血栓ができて血管が詰まる。
 
※参考情報『小坂眞一(2008)心臓病の9割は防げる  講談社』

タバコと血液ドロドロ

・一酸化炭素がヘモグロビンと結合
→酸欠
→これを補うために赤血球数とヘモグロビンが増加し、血液が濃くなる。濃くなると粘度が高くなり、血管が詰まりやすくなる。
 
・ニコチンは血小板凝集機能を亢進させるので、血が固まりやすくなる。
 
※参考情報『小坂眞一(2008)心臓病の9割は防げる  講談社』

タバコと高血圧

・ニコチンが交感神経系を刺激
  ↓
アドレナリンとノルアドレナリンを分泌。両者はカテコールアミンの一種で、強い強心作用と昇圧作用がある
  ↓
血圧が上昇し、脈拍が増える。
 
※参考情報『小坂眞一(2008)心臓病の9割は防げる  講談社』

タバコと狭心症

・ニコチンによって冠動脈の中膜の筋肉が収縮すると、血管の内側が狭くなって血液量が低下
→心筋が酸欠
→狭心症発作
 
・通常の動脈硬化によって起こるものと比べて、起こり方も心電図の変化も異なるので異型狭心症と呼ばれる。
 ニコチンによって血管が収縮して痙攣状態なるので攣縮性狭心症とも呼ばれる。
 
・タバコによる血管収縮が脳の小さな動脈で起こると脳梗塞が起こる。"隠れ脳梗塞症"もこのタバコによる血管収縮が原因の一つ。
 
※参考情報『小坂眞一(2008)心臓病の9割は防げる  講談社』

タバコと依存症

※ニコチンの作用については以下の記事も参照。
精神疾患と薬物療法、非薬物療法の”薬物の種類と作用”

・ニコチンは神経伝達物質であるアセチルコリンの代わりをし、ドーパミンの分泌を増加させて快楽神経を高揚させる。
 
・喫煙を長く続けているとニコチンがアセチルコリンの代わりをするようになり、アセチルコリンの受容体が変調を来たす。
  ↓
アセチルコリンがあってもニコチンが切れると正常に働かなくなる。落ち着きがなくなり、正常な思考や判断ができなくなる。
 
※アセチルコリンを伝達物質とする脳神経細胞は、おもに大脳皮質や海馬などに分布して、比較的高度な知的作業をつかさどるのが特徴。
 
・ニコチンは、吸ってから10秒で脳に到達するので、吸う深さと回数で脳が好む最適のニコチン濃度を維持することが可能になる。
 
※参考情報『小坂眞一(2008)心臓病の9割は防げる  講談社』

 

●禁煙と運動
 
・運動をすると、タバコを吸いたいという衝動を抑えることができる。
それは、ドーパミンがスムーズに増えるのに加えて、タバコをやめようとする人が悩まされがちな不安や緊張、ストレスが抑えられるため。
 
・運動をすると、タバコへの渇望が50分間抑えられ、次に一服するまでの間隔が2~3倍に伸びる。
 
・ニコチンを断つと集中力が低下するが、運動には思考を鋭敏にする効果があるので、この面でも有効。
 
※参考資料『ジョン J.レイティ(2009)脳を鍛えるには運動しかない 日本放送出版協会』

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください