細胞老化、酸化老化、ストレス老化、テロメアとの関わり

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  1. 酸化、炎症と老化
  2. テロメアと細胞の老化との関わり
  3. 細胞のストレス回復
  4. テロメアーゼの濃度増加
  5. テロメアと炎症、老化
  6. 細胞老化と細胞周期、がん抑制遺伝子
  7. ネットニュースによる関連情報


※テロメアとがんとの関連については以下の記事参照。
テロメアとがんとの関連

酸化、炎症と老化

・テロメアと関係なく、酸化ストレスなどの環境因子により細胞が老化する。
 
※参考資料『近藤祥司(2009)老化はなぜ進むのか 講談社』

 

●老化と加齢炎症
 
・細胞が分裂できる回数には50~60回という上限があり、過度の増殖を防いでいる。この限度に達し分裂不能になった状態を"細胞老化"と呼ぶ。
 
・細胞の分裂回数が限界に達していなくても、酸化ストレス、DNA障害、がん抑制遺伝子の発現などが起こると、細胞分裂を停止させる機能(細胞周期チェックポイント)が働く。
→これらの細胞分裂を不可逆的に停止した細胞は、細胞老化と同じような状態になる。
→この老化状態にある細胞では、炎症性サイトカインの産生や細胞外マトリクス分解酵素の分泌などが見られる。
→これらは老化関連分泌表現型(SASP)と呼ばれ、発ガンを促進する方法にも作用している。
 
・加齢の原因となる慢性炎症を加齢炎症と名づけている。
 
※参考資料『金子義保(2012)炎症は万病の元 中央公論新社』

 

●炎症性ストレスと老化
 
・細胞間での情報のやり取りに、サイトカイン・ケモカインという分泌物質が関わっている。
・2つの炎症関連分泌物質(PAI-1、CXCR2ケモカイン)が細胞老化を促進している。
 炎症は、感染除去、傷害修復に必要なプロセスだが、炎症が長引くと局所的な臓器傷害や血管傷害が引き起こされるほか、酸化ストレスが励起される。
・PAI-1は、p53遺伝子が活性化されると産生される。
・実際のガン細胞のサンプルでCXCR2ケモカインを作る遺伝子の突然変異が確認された。
 CXCR2遺伝子が突然変異によりCXCR2ケモカインを作ることができなくなり、その老化促進効果も消失し、ガン形成を助けている原因となる。
 
●毛細血管拡張性運動失調症(アタクシア・テランジエクターシア)、早老病
 
・ATM遺伝子(原因遺伝子)が作るタンパク質は、シグナル伝達物質として異常をp53タンパク質に伝え、p53タンパク質を活性化させてチェックポイントを機能させる。
 
・ATM遺伝子の機能が異常だとチェックポイント機能が異常となって、異常な細胞が蓄積。酸化ストレスが蓄積しやすくなる。
 
※参考資料『近藤祥司(2009)老化はなぜ進むのか 講談社』

テロメアと細胞の老化との関わり

●DNAの2重らせん構造の逆平行構造
 
・DNA複製は一方向で行われるため、細胞分裂のたびに片側のDNA末端が複製できなくなる、つまり細胞分裂のたびにDNAが短くなってしまう。
・染色体の末端構造、テロメア
 
●テロメアとテロメレース
 
・細胞が老化するとテロメア配列が短くなる。
・テロメアに特異的にDNA配列を付加できる酵素がテロメレース。
・ガンは、テロメレースが過剰に機能し、テロメアが短くならない事で引き起こされる?
・ヒトのテロメレース遺伝子を強制発現すれば、細胞は老化しなくなる?
・テロメアの長さが老化とともに徐々に短くなり、最終的にその長さにより寿命が決定される?
 
※参考資料『近藤祥司(2009)老化はなぜ進むのか 講談社』

 

●テロメア長と老化
 
・細胞分裂をするたびに、テロメアは一部が脱落して次第に短くなる。そして、テロメアが一定以下の長さになると、その細胞はそれ以上分裂ができなくなる。
・細胞分裂の回数には上限がある。老化のプログラミング?
・成人すると分裂しない細胞(脳、筋肉、骨)などにはあてはまらない?
 
○テロメアとがん
 
・テロメアの短縮ががん細胞の際限ない増殖を防いでいる可能性がある。
→腫瘍が一定の大きさに達した頃にはがん細胞のテロメア長も短縮しているため、腫瘍の成長がストップする。
 
・老化とはがん死を防ぐ体内メカニズムが生み出した、逆説的な副産物と言えるかもしれない。
 
※参考資料『デイヴィッド・ベインブリッジ(2014)中年の新たなる物語 筑摩書房』

 

●体性幹細胞とテロメア長
 
体性幹細胞にもテロメラーゼ活性(テロメラーゼ:テロメアの特異的反復配列を伸長させる酵素)があり、テロメアの短縮をある程度防ぐが、最終的には短縮が起きて細胞老化が起きる。
 
※参考資料『杉本正信(2012)ヒトは一二〇歳まで生きられる 筑摩書房』

細胞のストレス回復

①酸化ストレス
・グルコースがニューロンに吸収され、ミトコンドリアがそれをATPに変える。その時に廃棄物(フリーラジカル)が生じる。
・通常、細胞は酵素も生成し、フリーラジカルを掃除して防御する。
 
②代謝性ストレス
・グルコースが細胞に入り込めなかったり、周辺に十分なグルコースが無かったりして、細胞がうまくATPを作り出せないときに起きる。
 
③興奮毒性ストレス
・グルタミン酸の活動が活発すぎて、増加した情報の流れを支えるエネルギーをATPがまかないきれないときに起こる。
・上記状態が長く続くと樹状突起は縮みニューロンは死に至る。
 
○細胞のストレス回復
・食事制限によってマウスやラットに軽度の細胞ストレス(グルコースが足りず、十分なATPを生成できない状態)を起こさせると長生きした。
・有酸素運動を含め、いろいろなストレスのさなかに、BDNF、IGF-1、FGF-2、VEGFなどの成長因子が放出される。
 特にBDNFは細胞のなかで抗酸化剤と保護タンパク質の生成量を増やす。
・野菜や果物といった植物に含まれる、体に良い化学物質の多くは、昆虫などに食べられないようにするための毒として進化。こうした植物を食べると細胞に適度なストレス反応が引き起こされる。植物内の抗酸化物質の直接的な作用よりストレス回復の効果のほうが大きい。
・細胞の回復力は、廃棄物を処理する酵素、神経保護因子、アポトーシスを阻止するタンパク質によってもたらされる。
 
※参考資料『ジョン J.レイティ(2009)脳を鍛えるには運動しかない 日本放送出版協会』

テロメアーゼの濃度増加

・染色体は変化しないが、遺伝子のスイッチのオンオフの状態に、数十年にわたるその人独自の人生経験の特徴が反映されるので、老化には個人差がある。たとえ、一卵性双生児でも。
 
・2010年、カリフォルニア大学デービス校と同大学サンフランシスコ校との合同研究で、瞑想するとテロメアーゼという重要な酵素が増える事が明らかになった。
 テロメアーゼの濃度は、運動や健康的な食事によっても高められるらしい。
 
・テロメアーゼ濃度の高まりは、その人の幸福感やストレスに対処する能力を生む自己制御回路の一環として、驚くほど十分に働く。
 
※テロメラーゼは、真核生物の染色体末端(テロメア)の特異的反復配列を伸長させる酵素。
 
※参考資料『ディーパック・チョプラ(2014)スーパーブレイン 保育社』

テロメアと炎症、老化

●テロメアと炎症
 
・細胞分裂が盛んに行われるとテロメアが短くなっていき、老化が進み、テロメアがなくなると細胞分裂できなくなり寿命が尽きる。
→身体に炎症を持っている人は細胞分裂が盛んになって長生きできない。
 
●2015年8月、スペイン、パンプローナ・ナバラ研究所
 
・61~73歳の520人を5年間追跡調査。
・身体の炎症を抑えることのない食材を食べている人はテロメアが早く短くなるばかりか、心臓病をより多く発症させた。
 
●2015年4月、韓国国民大学校の研究グループ
 
・中高年者1958人を10年にわたって追跡調査。
・韓国の家庭料理(全粒粉、魚介類、海藻類、野菜、豆類が多い)中心のグループは、アメリカ食(精製した穀類、赤身肉、加工肉、甘みを加えた炭酸飲料などが多い)中心のグループと比べテロメアが短くなるのが遅かった。
 
●地中海食
 
・抗炎症作用のある食事。
・地中海食の定義のポイント
①植物性食品(果物、野菜、パン、その他の穀物製品、豆類、種実類)豊富
②加工度を最小限にとどめた季節折々のその土地で育てられた新鮮な食品。(旬の食材は栄養が豊富)
③デザートとしての新鮮な果物。
④油脂類はオリーブオイルを使う
⑤少し、もしくは適量の乳製品(チーズ、ヨーグルト)
⑥卵は週4個未満。
⑦赤身肉は、まれに少量
⑧少し、もしくは適量のワインを食事とともに飲む。
・寿命に関する心臓病リスクの他、がん、糖尿病、高血圧、アルツハイマー病、パーキンソン病などのリスクが6~13%低下する、との研究報告がある。
 
●オリーブオイル
 
・チロソール、ヒドロキシチロソール、フラボン、ルテオリン、オレオカンタールなど多くの抗酸化物質が含まれている。
・抗酸化物質が活性酸素の害、炎症を防ぎ、テロメアを短くするのを抑え、若さを保つ。
・オリーブオイルの油脂成分はオレイン酸で、活性酸素によって酸化されにくいこと、LDLを下げる働きもある。
・オリーブオイル特有の緑色は葉緑素を含んでいて、葉緑素は細胞の成長、血液細胞の生成を助ける重要な役割を果たしている。
 
※参考資料『松井宏夫(2016)長生きできる人とできない人の習慣 日刊スポーツ連載』

ネットニュースによる関連情報

●α-リポ酸がテロメラーゼを刺激?
 
・マウスにα-リポ酸を注射するPGC1-αとテロメラーゼの両方が刺激された。
・PGC1-αは、運動に骨格筋が反応する際の関与が知られている。研究チームは運動の効果を直接調べてはいないが、今回の結果は、運動が加齢を遅らせる分子メカニズムに手掛かりを与えるものだ、と考えている。

 

●テロメア長と肥満、喫煙、がんとの関係
 
・測定した白血球中のテロメア長の短縮は年齢とBMIや喫煙などの因子に関連し、また、がんを含めた全死因による死亡とも関連していた。対照的にテロメア長の短縮に関する遺伝子スコアが高いとがんの死亡率だけは低下した。
 
これはがん患者のテロメア長が遺伝子変異のためにわずかに短くなることは、がん細胞の生存率を低下させるという有益な変化をもたらし、そのため死亡リスクが低下したと考えられる。逆に言えば、長いテロメア長は細胞分裂の回数を増やすことができるため、がん細胞の生存に有利に働き、がん死亡率高くなると考えている。

 

●ストレス、健康的な睡眠・食生活とテロメア長の関係
 
・地中海型食生活のスコアが高いほど、テロメア長も長い傾向にあることが明らかになった。

 

●地中海型食生活とテロメア長の関係
 
・身体活動や健康的な食生活、睡眠の質といった健康行動がテロメアに及ぼす影響を、239名の喫煙しない閉経後女性を対象に調査した結果、健康行動の少ない女性においては、極めてストレスフルな出来事に遭遇した場合、テロメア長が1年の間に有意に短縮することがわかったという。しかし、健康行動を実践している女性の場合には、ストレスフルな出来事によって有意にテロメア長が短縮することはなかった。
・ストレスフルな出来事は免疫細胞の加齢を促進する可能性が成人では高くなり、免疫細胞の老化を抑えるためには、活発できちんと食べ、そしてよく眠ることがきわめて重要であることが示唆された。

細胞老化と細胞周期、がん抑制遺伝子

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