パーキンソン病

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  1. パーキンソン病の特徴
  2. パーキンソン病とドーパミン
  3. 薬物治療
  4. パーキンソン病と運動

パーキンソン病の特徴

※認知症との関連は以下の記事参照。
アルツハイマー病、認知症の概要

○運動障害
・通常上肢か下肢の片側に始まるが、たいていのケースではやがて両側に拡大する。
・投薬を受けている人は、およそ5年後には薬の効果が低下するのを感じ始める。
 
○認知障害も招き得る
・人間は動けなくなると、視覚や聴覚をあまり使わなくなり、処理する情報の量も減る。すると脳は刺激の欠如のため機能が衰え始める。
・パーキンソン病患者が認知症になる可能性は、健常者の6倍にのぼる。
 
※参考資料『ノーマン・ドイジ(2016)脳はいかに治癒をもたらすか 紀伊國屋書店』

 

●線条体とパーキンソン病
 
○線条体
・基底核の一部。
・脳の中心部の深いところ。
・ある行動から別の行動へスムーズに移行させる働きをする。何かの運動をしようと決めると、邪魔になる運動や場違いの感覚は自動的に排除されて、意図する運動が速やかに効果的に実行される。
 
○パーキンソン病患者
・線条体の"自動スイッチング"機能が壊れているので、動作がぎくしゃくし、行動を起こしたり中止したりする機能に問題が生じる。
 
※参考資料『ジェフリー・M・シュウォーツ(1998)不安でたまらない人たちへ 草思社』

 

・高齢になってから発病することが多い。
・最初に体の動きが不自由になり、それに続いて精神的な障害、例えばうつや注意欠陥症状などに陥り、最終的に認知症になる。
 
※参考資料『ジョン J.レイティ(2009)脳を鍛えるには運動しかない 日本放送出版協会』

パーキンソン病とドーパミン

●ドーパミンの概要
 
・ニューロン間の信号の交換に用いられる脳内化学物質。
・80%が大脳基底核と呼ばれる、黒質を含む脳の組織に集中している。
・神経可塑的変化を強化する。
・レボドパ(動物、植物の体内で生成される化学物質)は身体が普通に生成する物質であり、脳内ではニューロンがそれをドーパミンに変換して、失われた分を補う。
 
●パーキンソン病の原因
 
・黒質と呼ばれる脳の部位が、正常な動作に必要な脳の化学物質を生産する能力を次第に失うことによって引き起こされると考えられていた。
・ドーパミンレベルの低下がパーキンソン病の症状を引き起こす。レボドパ(身体内で簡単にドーパミンに転換される化学物質)などのドーパミンを補充する製剤の投与によって症状を緩和できる。
・原因の一つとして殺虫剤等の特定の毒素が言われているがはっきりとは分かっていない。
・何が原因で黒質がドーパミンを失うかなどの究極の原因は分かっていない。
 
●パーキンソン病とドーパミン
 
・最近の研究によって、パーキンソン病に罹患すると動こうとする動機が支障をきたすこと、そして動機付けられれば動けるパーキンソン病患者は多いことが示されている。
 
○ドーパミンのパーキンソン病に関連する特徴
①動こうとする動機を高める。
②その動作を促進して、迅速に行えるようにする。
③その動作に関与する神経回路を神経可塑的に強化し、次回はそれより楽に行えるようにする。
・ドーパミンは、"動作の開始に値すると感じる"ためにも必須。人は動きたいと感じるのにドーパミンが必要。
・ドーパミンは、"報酬系神経伝達物質"と呼ばれる。いかなる目標であれ、その成就に向けて進展が見られたときに、良い結果が得られる期待のもと、脳内の報酬系で分泌される。
・期待される結果の価値が高ければ高いほど、その人は良い結果がえられるようそれだけ活発に行動し、より多量のドーパミンが分泌される。
・報酬が得られる活動の実行を支援する、まさにそのネットワークに属するニューロン同士の結合を強化する。
・これから動こうとするとき、脳は、その動作によって得られる期待される報酬の程度と比較して、努力がどの程度必要とされるのかをまず評価する。通常、この"見積もり"機能を実行するにはドーパミン系が必要になる。
→ドーパミンレベルが低いときに動くと、その人は報酬による快を感じない。
・パーキンソン病患者が動作を実行する速度は、期待される報酬の程度と動作に必要なエネルギーの比較評価に部分的に基づく。
→ドーパミンレベルの低さは、動きの遅さをもたらす。
多大な努力を要する困難な動作課題では、パーキンソン病患者は求められるエネルギーが大きいほど、健常者より動作が遅くなる。
 
・パーキンソン病は、動作を起こそうとする心の中の動機が大幅に損なわれる。怠惰な正確や無関心、意思の弱さに起因するものではない。
→運動をしなくなると、運動をつかさどる神経回路や筋肉の衰弱が早まる。
→さらにパーキンソン病が悪化する。
 ↓
意識的な心的努力が必要で、それを重ねれば、障害をかなりの程度克服できる。
 
※参考資料『ノーマン・ドイジ(2016)脳はいかに治癒をもたらすか 紀伊國屋書店』

 

●パーキンソン病の原因
 
・中脳の黒質のドーパミンニューロンが激減し、脳の自動変速機である大脳基底核(頭や体の動きのスムーズな切り替えや、運動系のON/OFFを司っている)にドーパミンが送れなくなる。
→そこにドーパミンが送られなくなると、自動変速機のオイルが切れた状態になり、パーキンソン病特有の体の震えが起きる。
 
※参考資料『ジョン J.レイティ(2009)脳を鍛えるには運動しかない 日本放送出版協会』

薬物治療

・罹患して間もない頃なら運動能力を劇的に改善できるが、疾病の進行を食い止めることはできない。
・疾病はますます身体に悪影響を及ぼすようになり、薬物の効力を徐々に凌駕していく。
・すべての患者ではないが、副作用が生じる場合がある。
 ドーパミン投薬を受けた患者の30~50%は、ジスキネジアと呼ばれる運動障害を新たに発症する。
 レボドパを服用している患者には、幻覚などの精神医学的な問題を引き起こす可能性がある。
 
※参考資料『ノーマン・ドイジ(2016)脳はいかに治癒をもたらすか 紀伊國屋書店』

 

●パーキンソン病の薬
 
・パーキンソン病では、大脳基底核の黒質という部分の神経細胞の脱落・消失が起きている。
・パーキンソン病では、脳の線条体という部位のドーパミンが著しく減少している。
・ドーパミンを産生する神経細胞は黒質にあり、その軸索を線条体に伸ばしている。線条体は身体の動きに関わり、特に無意識の動作に関与している部位。
→黒質の神経細胞が働くと線条体でドーパミンが放出され、それが線条体の神経細胞を活動させ、身体がスムーズに動く。
→黒質の神経細胞が脱落するとドーパミンの産生が減少し、線条体での放出が不足して身体の動きに影響し、パーキンソン病の症状が出現する。
 
※参考資料『西道隆臣(2016)アルツハイマー病は治せる、予防できる 集英社』

パーキンソン病と運動

●不使用の学習、運動
 
・歩行が困難になって歩かなくなると、残されている歩行に必要な神経回路も不使用のために衰えていく。いったん衰えてしまうと、再度使おうとしてもうまく使えなくなる。
→パターン検知器としての脳は、"不使用の学習"を通じて、歩けないということを学習してしまう。
・パーキンソン病の初期の兆候を示す人は運動することが推奨される。
・20%のドーパミンを失った動物個体は、動作が制限されると、すぐに60%を失う結果になる、という研究事例がある。
→身体活動の減少がパーキンソン病の一症状であるばかりでなく、変性を促進するよう作用することを示している。
 
●パーキンソン病の症状緩和のテクニック
 
○無意識コントロール→意識的コントロール
・パーキンソン患者は、あらゆる動作を結びつけて自動化する、無意識の能力を失っている。
・通常は無意識に制御されている動作をコントロールするために、脳の別の領域を用いて意識的に実行することで、症状を緩和している事例がある。
・大脳基底核のドーパミン系が機能しなくなると、その人は複雑な動作を実行したり、無意識的行動パターンを新たに習得したりすることが困難になる。
→パーキンソン病患者は大脳基底核が正常に機能していないため、前頭前野や皮質下を意識的に活性化することで、大脳基底核を迂回するかのようにして各動作の指令を出している。
 
●パーキンソン病と運動
 
・パーキンソン病の"マウスモデル"を使った実験で、走行輪を使った適度の運動を毎日行えば、大脳基底核のドーパミン系の機能低下を防ぐことができた。動く能力を維持し、症状からの回復を得ることができた。
・パーキンソン病に似た症状を抱えた動物が運動すると、GDNFおよびBDNFと呼ばれる脳細胞間の新たな結合の形成を可能にする二種類の成長因子が生産される。
・マイケル・ジグモンド(ピッツバーグ神経変性疾患研究所)は、ラット、マウス、サルに走行輪を使わせる実験で、運動が神経成長因子による神経生成を引き起こし、それによってパーキンソン病を持つ動物の脳が保護されることを実証した。
 
○2011年、J・E・アルスコグ(メイヨークリニック)のメタ分析の調査
・数百人の患者を対象に行われた調査に基づき、"集まった証拠は全体として、パーキンソン病の治療においては活発な運動(継続して繰り返し行われる酸素の需要と心拍数を増大させる身体活動。歩行や水泳も含まれる)が中心的な役割を果たすべきであることを示す"と結論している。
 
○2014年、アーガン・ウク(アイオワ大学)、ランダム化比較試験
・45分間の歩行を週に3回、6ヶ月間続けることで、パーキンソン病の運動障害の症状と気分に改善が見られ、疲労が低下した。
 
※参考資料『ノーマン・ドイジ(2016)脳はいかに治癒をもたらすか 紀伊國屋書店』

 

○マーク・マットソンの研究
・ドーパミンニューロンを取り去り、パーキンソン病の状態を再現したラットを使用。
・回し車を使ったラットの脳では、大脳基底核の神経回路の可塑性が高まり、数が増えた。
 
○運動による効果
・運動が治療法として定着してきた。
・特に初期段階への効果が注目されている。
→パーキンソン病によって衰える運動野が、運動によって活性化されるため。
 運動により大脳基底核が刺激されると、ニューロンの結びつきが増え、BDNFやそのほかのニューロンを保護する因子が増える。
 
※参考資料『ジョン J.レイティ(2009)脳を鍛えるには運動しかない 日本放送出版協会』

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