ミネラル ナトリウムの概要

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  1. ナトリウムの概要
  2. 体液(細胞外液)量の調節とナトリウム
  3. ナトリウムの吸収
  4. ナトリウムを多く含む食品
  5. ナトリウム不足の問題
  6. ナトリウム過剰摂取のリスク
  7. ナトリウムと高血圧との関連
  8. ナトリウムとがんとの関連
  9. ネットニュースによる関連情報

ナトリウムの概要

・ナトリウムは、細胞外液の主要な陽イオンであり、細胞外液量を維持している。
・浸透圧、酸・塩基平衡の調節にも重要な役割を果たしている。
・ナトリウムは、胆汁、膵液、腸液などの材料である。

ナトリウムの吸収

・摂取されたナトリウムはその大部分が小腸で吸収され、損失は皮膚、便、尿を通して起こる。
 便を通しての損失は少なく、摂取量に依存しない。
 ナトリウム損失の90%以上は腎臓経由による尿中排泄である。
 
・ナトリウムは糸球体でろ過された後、尿細管と集合管で再吸収され、最終的には糸球体ろ過量の約1%が尿中に排泄される。
 ナトリウム再吸収の調節は、遠位部ネフロンに作用するアルドステロンによる。
 
・糸球体でのろ過作用と尿細管での再吸収が体内のナトリウムの平衡を保持しているので、ナトリウム摂取量が増加すれば尿中排泄量も増加し、摂取量が減少すれば尿中排泄量も減少する。

ナトリウムを多く含む食品

・通常の食事による主なナトリウムの摂取源は食塩(塩化ナトリウム)及び食塩を含有する調味料である。
 
・食塩相当量は次の式から求められる。
食塩相当量(g)=ナトリウム(g)×58.5/23=ナトリウム(g)×2.54
 
・ナトリウムは食塩(塩化ナトリウム)の形以外では、各種のナトリウム化合物の形で様々な食品に存在している。
 特に加工食品には食塩の形はもちろん、他の塩の形のナトリウムが多く含まれている。
 
・ナトリウムは、食品中ではナトリウム塩又はナトリウムイオンの形で存在するが、ヒトはその多くを塩化ナトリウム(NaCl)として摂取している。

●ナトリウムと添加物
 
・ナトリウムは、食塩以外に添加物にも含まれている。クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウムなど
 
※参考資料『マイケル・モス(2014)フードトラップ 日経BP社』

ナトリウム不足の問題

・通常の食事をしていれば、ナトリウムが不足することはない。
 
・腎臓の機能が正常であれば、腎臓におけるナトリウムの再吸収機能によりナトリウム平衡は維持され、ナトリウム欠乏となることはない。
 
・ただし、高温環境での労働や運動時の高度発汗では相当量のナトリウムが喪失されることがある。多量発汗の対処法としての水分補給では、少量の食塩添加が必要とされる。

ナトリウム過剰摂取のリスク

・欧米の大規模臨床試験の結果から見ると、事実として少なくとも6g/日前半まで食塩摂取量を落とさなければ有意の降圧は達成できていない。これが世界の主要な高血圧治療ガイドラインの減塩目標レベルが全て6g/日未満を下回っている根拠となっている。
 日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン(JSH2009)25)でも減塩目標は食塩6g/日未満である。
 
・近年欧米においては一層厳しい減塩を求める動きもある。
 アメリカ心臓協会(AHA)では2010年に勧告を出しているが、ナトリウム摂取量の目標値を一般成人では2,300mg(食塩相当量5.8g)/日未満、ハイリスク者(高血圧、黒人、中高年)では1,500mg(食塩相当量3.8g)/日未満とした。
 2013年のWHOの一般向けのガイドラインでは、成人には食塩5g/日未満の目標値が強く推奨されている。
 
●目標量
 
・日本人の食事摂取基準(2010年版)では、食塩摂取量の現状と日本を含め各国の食塩摂取量の目標値から、今後5年間の摂取量の目標値として、成人男性で9g/日未満、成人女性で7.5g/日未満と設定している。
 
・国民健康・栄養調査による成人の食塩摂取量は、2010年版策定時に比べて男性で約0.5g、女性で約1g減少している(平成17年、18年中央値:男性10.9~12.2g、女性9.3~10.8g、平成22年、23 年中央値:男性10.5~11.8g、女性8.8~10.0g)。

ナトリウムとがんとの関連

以下の記事参照。
がんの予防の”食塩”
がんに関わる要因の”塩と塩蔵食品”、”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”

ネットニュースによる関連情報

●減塩目標で言われている食塩摂取量は低すぎるかもしれない
 
・分析の結果、他のすべての必須栄養素と同様に、ナトリウム摂取と健康アウトカムにはU字型の相関関係があったことが明らかとなった。
・ナトリウムの消費量が2,645-4,945mg(食塩相当量6.7-12.6g)の範囲から逸脱すると死亡率は増加していて、ナトリウム消費が過度に高くても低くても、生存率は減少していた。
・ナトリウム摂取量が理想的な範囲内(2,645-4,945 mg/日)に留まっている限り、個人間の健康アウトカムには殆ど違いがないことも明らかとなった。

体液(細胞外液)量の調節とナトリウム

●体液、細胞外液、血液(血漿)
 
・体重の約40%:細胞内液
・体内の約20%:細胞外液
  体重の約15%:間質液(細胞を浸す液体)
  体重の約5%:血漿(血液に含まれる液体成分)
 
●体液量の調節
 
・細胞内液は細胞自身が調節しているので、体液量の変化は主として細胞外液量の変化として捉えられる。
 
・間質液は血液の水分量に影響を受けるので、体液量の調節には血液の水分量が重要な役割を担っている。
 
●細胞外液量の調節
 
・Na+は、細胞外液の主要な陽イオンであり、細胞外液量、浸透圧はNa+量によって決定される。
・Na+の過剰摂取によって細胞外液量が増加するが、細胞外液量の増加を血管壁にある各種センサーが感知し、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系、心房性ナトリウム利尿ペプチド、抗利尿ホルモンなどの調節因子の作用によって細胞外液量を減少させて調節している。
 
○Na+増加
→細胞外液量増加
→心房性ナトリウム利尿ペプチド増加
→腎髄質集合管でのNa分泌増加
→尿中Na排泄増加
→細胞外液量減少
 
○Na+減少
→細胞外液量減少
→①レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が活性化
 →アルドステロンの作用でNa再吸収増加
 →尿中Na排泄減少
 ②抗利尿ホルモン(バソプレッシン)増加
 →腎の集合管で水分の再吸収を促進、尿量低下
→細胞外液量増加

ナトリウムと高血圧との関連

高血圧と食塩、食事、肥満との関連の”ナトリウム(食塩)との関連”参照。

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