高血糖の記憶とエピジェネティックス

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  1. エピジェネティックスと糖尿病
  2. 高血糖の記憶
  3. 糖尿病の遺産効果(レガシー効果)

エピジェネティックスと糖尿病

●エピジェネティックスとは?
 
・エピジェネティックスは、遺伝子そのものではなく、それ以外のやり方で遺伝子の機能を調節する仕組み。
 
・DNAやDNAが巻きついているヒストンというタンパク質が環境の影響で"化学修飾"を受けることで、糸巻きの締りや糸の巻き具合が変わる。
→その結果、遺伝子の機能が変化する。
→こうして生み出された遺伝子機能の変化が後々まで残る。
 
●エピジェネティックスと糖尿病
 
・肥満になって糖尿病になると血液の中の脂肪酸やインスリンの働きを抑制するTNFと呼ばれる物質が増える。
→こうした物質の作用によって、PGC1遺伝子が化学修飾され、この化学修飾によってPGC1遺伝子の作用が弱まり、ミトコンドリアができにくくなってしまう。
 血糖が高いというメモリーが残って遺伝子の機能が後々まで狂い続ける可能性がある。
 
※参考資料『伊藤裕(2010)臓器は若返る  朝日新聞出版』

高血糖の記憶

●高血糖の記憶(Metabolic Memory)
 
・ある一定の期間高血糖に曝露されると、その後に血糖コントロールを行っても必ずしも血管合併症の進行が抑えられない。これを高血糖の記憶という。
 
・高血糖が持続している状況下では、生体内のタンパク質が糖化されやすい状態にある。
 AGEsは還元糖から形成されるが、シッフ塩基やアマドリ化合物が形成される初期反応は可逆的であるが、高血糖状態が持続すると、アマドリ化合物の一部がAGEsを形成する経路へと進む。この反応は不可的なため、AGEsが一度形成されると極めてゆっくりにしか代謝されず減少しない。

・若いときに高血糖状態を続けAGEsが蓄積していた人は、血糖値を下げた後も合併症を引き起こす危険性をはらんでいる。血糖値を下げるだけでなく、AGEsを蓄積させないような生活習慣にする必要がある。
 
※参考情報『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』

 

・ブドウ糖とヘモグロビンが結びついて変質したヘモグロビンA1cは、治療によって血糖値を下げるとヘモグロビンA1cの数は減っていく。
 しかし、高血糖の状態がある程度の期間続くと、その後に血糖値を下げてヘモグロビンA1cを正常に戻しても、老化や様々な病気の進行を思ったほど抑えることができない。高血糖の記憶。
 
・ヘモグロビンA1cが長い間、高い血糖値の状態に置かれると、最終的にAGEsという物質に変質してしまい、こうなるともう元のヘモグロビンには戻ることができない。
→このAGEsという糖化物質はなかなか代謝されずに、長期間体内にとどまる。赤血球が4ヶ月で入れ替わっても、AGEsだけは残ってどんどん蓄積されていく。
→高血糖の記憶と関係?血糖値を元に戻しても合併症の進行が進むのは、AGEsがそのまま体内にとどまっているから?
 
ヘモグロビンA1cのうち約10%はAGEsに移行する。
 
※参考資料『山岸昌一(2012)老けたくなければファーストフードを食べるな PHP研究所』

糖尿病の遺産効果(レガシー効果)

●ブドウ糖メモリー、糖尿病治療の遺産効果
 
・20年間血糖が低かったというメモリー、遺産が少なくともその後10年間残って血管合併症に影響する。
 
※参考資料『伊藤裕(2010)臓器は若返る  朝日新聞出版』

 
●UKPDS イギリスで2型糖尿病の人を対象に行われた調査研究
 
・糖尿病と診断された時点で最初から薬物療法により血糖コントロールする”強化療法群”と、食事療法のみから始めてコントロールが不良になった時点で薬物療法を始める”従来療法群”に分けて、合併症の起きやすさや死亡率の差を調べた。
 
・結果は、強化療法群のほうがヘモグロビンA1cが低くなり、細小血管障害による合併症が抑えられていた。
 
・UKPDSは研究終了後も患者の追跡調査が続けられ、UKPDS終了10年後の報告によると、研究期間終了とともに強化療法群と従来療法群の間に生じていた血糖コントロール状態の差はなくなったが、合併症の起きやすさは10年後においても旧強化療法群で抑制されていた。
 また、研究期間終了時点では差がなかった大血管障害(動脈硬化性疾患)も、旧強化療法群のほうが少なくなっていた。
 この現象を”遺産効果”といい、糖尿病の治療は”より厳格な血糖コントロール”を”より早期に”始めることが重要であることが示された。

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