必要な睡眠時間、睡眠の改善方法

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  1. 睡眠時間と寿命
  2. 必要な睡眠時間
  3. こま切れの睡眠
  4. 眠れないときの対応、睡眠の改善方法

睡眠時間と寿命

・100万人以上を対象としたアメリカのデータでは、一般的に睡眠時間が7時間台の人がいちばん長生きであることが分かっている。
 
・睡眠不足が影響する糖尿病や高血圧、うつ病などの有病率に関する多くの疫学調査でも、7、8時間前後の睡眠で最低になる。
 上記は、特定の睡眠時間の人を長期に追跡調査したものではなく、あくまで調査時点での睡眠時間と有病率の関係を見た集団の平均値。
個人がどれぐらい眠ったらよいかというデータではないことに注意。
 
※参考資料『三島和夫,川端裕人(2014)8時間睡眠のウソ。 日経BPマーケティング』

 

・2002年に発表された研究結果では、8時間睡眠の人は、研究期間6年のうちに死亡する確率が12%高く、6~7時間睡眠の人のほうが長生きした。
・2002年に発表された別の研究でも、毎晩8時間以上の睡眠をとっていた人のうち脳卒中または一過性脳虚血性発作をきたしたのは14%であったが、一方、毎晩6時間の睡眠をとった人の中で脳卒中をきたしたのは6%以下であった。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

必要な睡眠時間

●年齢ごとの平均睡眠時間
 
・実験室で脳波を測りつつ睡眠時間を観察したデータでは、平均睡眠時間は年齢とともに短くなっていて、15歳で平均睡眠時間は8時間を切り、70歳を超えると6時間を下回る。
 
○高齢者の睡眠の特徴
 
・深い睡眠が少ない(短い)。
・入眠後3時間たたずに中途覚醒し、中途覚醒を繰り返すという傾向がある。
・加齢とともに基礎代謝が落ち、エネルギー消費量が減少するので若い人より睡眠の必要性が減る?
・年齢とともに徐波睡眠の必要性も減る。
・睡眠効率(寝床にいる時間のうち、実際に眠っているか)も加齢とともに落ちる。中途覚醒などで床にいても眠っていない時間が増える。
 
※参考資料『三島和夫,川端裕人(2014)8時間睡眠のウソ。 日経BPマーケティング』

 

・多くの場合6~8時間。高齢者は5~6時間。
 
※参考資料『大塚邦明(2014)眠りと体内時計を科学する 春秋社』

 

・思春期はもう少し下の年齢のときより長い睡眠時間が必要で、8.5~9.25時間は眠る。
 睡眠サイクルは成人や子供より少し遅い時間に移り、夜になると最も頭が冴えるため、起床時間も就寝時間も平均より数時間遅くなりがち。
 この概日リズムの変化は、朝早い時間に登校する必要がある学生の成績にも影響があると言われている。実際に登校時間を遅らせたところ成績が大幅に向上したという実例もある。
 
・加齢に伴い少しずつ睡眠時間が短くなり、60歳では6時間になる。そして徐波睡眠が減少していき、74歳までに徐波睡眠が全くなくなってしまうことも多い。
 日中に肉体的活動と学習の機会が減少した事によってこの種の睡眠の必要性がなくなったのか、あるいはこのように大規模な脳の協調活動を維持する力がなくなったためなのかは、はっきりしていない。
 後者の場合、徐波睡眠の減少が原因で疲労がたまるうえ、記憶が固定されなくなって記憶力が低下する、と考えることもできる。
 徐波睡眠の割合が減るために、やがて神経に何らかの損傷が生じ、それが加齢に伴う神経変異につながるのかもしれない。
 
※参考資料『ペネロペ・ルイス(2015)眠っているとき、脳では凄いことが起きている インターシフト』

こま切れの睡眠

●こま切れの睡眠はよくない
 
・健康な睡眠では、90分おきにレム睡眠が表れて、それ以外のノンレム睡眠でははじめの方に"徐波睡眠"という深い睡眠が出て後半は浅くなる。
 日中に30分以上眠ると、かなりの確率で深い睡眠が出てしまい、夜の深い睡眠が激減してしまう。
 30分以内の昼寝であれば、血圧も下がり、午後の集中力が増し、メンタル面でも向上し、夜の深い睡眠への影響も少ない。
 
・脳は深い睡眠の間によく冷えるため、こま切れにとると冷却の効率が悪くなって脳がしっかり休めない。深い睡眠の間に出る成長ホルモンも減ってしまう。
 成長ホルモンは大人になってからも細胞の修復やタンパク同化に関わっている。
 
※参考資料『三島和夫,川端裕人(2014)8時間睡眠のウソ。 日経BPマーケティング』

眠れないときの対応、睡眠の改善方法

●必要な睡眠時間には個人差。日中、体調や気分が爽快なら十分と考える
 
・年をとってくると必要な睡眠時間は短くなる。
・季節でも変化する。日照時間が短くなってくるとともに睡眠時間は長くなる。
冬に意欲が低下し、不安感や抑うつ気分が強くなるのは、メラトニンが減り、昼夜の気温差が変化する事に起因している。これが睡眠時間が長くなる事につながっている。
 
●環境を整える
 
・寝つきをよくするためには、短時間に脳に行く血流を少なくして温度を下げればよい。
風呂で温まると、からだの表面の血流がよくなり、手足が温かくなる。手足などの抹消の血管が開くと体から熱が抜けていき、脳の温度が下がる。
 
●眠りが浅いときは、むしろ遅寝早起きを
 
・長い間不眠に悩んでいる人は、"また眠れないのでは"という不安で、床につくとかえって目がさえてしまうことがある。条件不眠とよばれる不眠症。
・遅寝早起きにしてみると必要な時間だけ床についていることになるので、熟睡感が高まってくる。
・遅寝早起きにして熟睡感が高まってきたら、少しずつ床についている時間を増やす。
 
●就寝4~5時間前からコーヒー・お茶、胃にもたれる食事は避ける
 
・カフェインは覚醒作用があり、飲んでから20~30分後にあらわれ、長いときは5時間も持続する。
・カフェインは、コーヒー、お茶、紅茶、ココア、栄養ドリンク、コーラ、チョコレートなどに含まれている。
 
・夜食を食べ過ぎると、寝つきが悪くなるばかりでなく、睡眠の質が低下し、夜中にたびたび目が覚めてしまう。
 消化が十分でないまま就寝すると、眠るはずの時間帯に胃腸が活発に動きすぎてしまうことになり、これが不眠を招く。
 たんぱく質や脂肪の多い食事ほど眠りを妨げる。
 
●眠気を感じてから床に入る
 
・習慣的に床に入る時間の2~4時間前の時間帯は、一日の中で最も眠りにくい時間帯。
 
●適度な運動を習慣づける
 
・メラトニンは、脳の松果体だけではなく、小腸や胃、そして卵巣や精巣、脊髄や骨や皮膚などでも作られている。そしてメラトニンの信号を受ける受容体は心臓、血管、肺、肝臓、腎臓など全身にある。
 昼間に運動すると、これら松果体以外の部位で、メラトニンが多く作られ、これが快眠につながる。
 
※参考資料『大塚邦明(2014)眠りと体内時計を科学する 春秋社』

 

●睡眠の改善方法
 
・眠くなった時だけ寝床に就く。
・10分経っても入眠できなかったら寝床を離れる。寝床で眠れない状態が続くと、寝床にいると覚醒してしまうという条件付けが出来てしまう。
 眠れないのに我慢して無理に寝床にいると不眠が悪化することが分かっている。
・平日も休日も必ず同じ時刻に起床する。眠れない場合は遅寝早起きにする。
・日中は眠くなっても昼寝をしない。コーヒーを飲んでから昼寝するとカフェインが効き始める頃(20~30分)に昼寝を終えられる。
・8時間睡眠にこだわらない。
睡眠時間は個人差がある。加齢とともに睡眠時間は短くなる。日中に眠気で困らなければ8時間未満でも充分と考える。
・規則正しい食事時間、規則的な運動習慣
食事の刺激や運動が、消化管や肝臓、骨の細胞にある時計遺伝子に影響する。
 
※参考資料『三島和夫,川端裕人(2014)8時間睡眠のウソ。 日経BPマーケティング』

 

●体温
 
・眠りに落ちるときには必ず体温が少し下がるので、先回りして温度を下げてやると体は知らず知らずのうちに睡眠に適した状態になり、眠りにつきやすくなる。
 就寝時間のおよそ1時間半前からお風呂の湯につかると効果的。お風呂で温まると上がった後の体温の下がり幅が大きくなって効果が出る。
 
●食事
 
・就寝前3時間以内にあまり重い食事をとると目が冴えてしまう。消化活動のせいで苦しいほどお腹がふくれ、胸やけすることさえある。脂っこい食品や辛い食品は特に問題を引き起こしやすい。
 
●アルコールによる睡眠導入の問題点
 
・強い常習性があって、一般的にほとんどの身体システムに悪影響を及ぼす。
 
・アルコールで引き起こされた睡眠は、はじめのうちは比較的良好だが、そのうち何度も目が覚めるようになり、普通より多く夢を見て、とくに悪い夢を見る割合が高くなることが多い。常習者では、これに頭痛と口の渇きが加わることがある。
 
※参考資料『ペネロペ・ルイス(2015)眠っているとき、脳では凄いことが起きている インターシフト』

 

●入浴と睡眠
 
・入浴するとお湯の温度で体温は一時的に上がるが、血行が促進されて熱が放出されやすくなるためその後は下がる。
 
・眠る1~2時間前に入浴すると、寝床に入るころには体温が下がり始めて眠気が強くなる。
 
・熱いお湯に全身浴すると刺激が強くて交感神経が優位になり、体温調節を行う自律神経の疲れを誘発してしまう。
→38~40℃程度のぬるま湯に半身浴するのが適切。ぬるま湯なら副交感神経が優位になる。ぬるま湯でも8分程度で体温が上がる。
 
※参考資料『梶本修身(2016)すべての疲労は脳が原因 集英社』

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