炭水化物の概要

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. 炭水化物の定義と分類
  2. 炭水化物の機能
  3. 炭水化物の消化、吸収、代謝
  4. オリゴ糖の種類と特徴
  5. 炭水化物の必要量
  6. 炭水化物の目標量
  7. 炭水化物摂取と発症予防
  8. ネットニュースによる関連情報

炭水化物の定義と分類

・炭水化物は、組成式Cm(H2O)nからなる化合物。
・炭水化物は単糖あるいはそれを最小構成単位とする重合体。
・化学的特徴である重合度によって分類する以下のようになる。
 
糖類(重合度が1又は2)
 単糖類
  ブドウ糖、果糖、ガラクトース
 二糖類
  はしょ糖、乳糖、麦芽糖等
少糖類(重合度3~9)
 マルトオリゴ糖(α─グルカン)
 ブドウ糖以外の単糖類を含むオリゴ糖
多糖類(重合度10以上)
 でんぷん
  アミロース、アミロぺクチン
 非でんぷん性多糖類
  セルロース、ヘミセルロース、ぺクチン等
 
・生理学的分類では、ヒトの消化酵素で消化できる易消化性炭水化物と消化できない難消化性炭水化物に分類できる
 
食物繊維という名称は生理学的な特性を重視した分類法によるものであるが、食物繊維の定義は国内外の組織間で少しずつ異なっている。通常の食品だけを摂取している状態では、摂取される食物繊維のほとんどが非でんぷん性多糖類である。

炭水化物の機能

・炭水化物の最も重要な役割は、エネルギー源としての機能。
・易消化性炭水化物(いわゆる糖質)は、約4kcal/gのエネルギーを産生する。
・炭水化物の栄養学的な主な役割は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋等、通常はブドウ糖しかエネルギー源として利用できない組織にブドウ糖を供給することである。
 
・難消化性炭水化物は、腸内細菌による発酵分解によってエネルギーを産生するが、その値は一定でなく、有効エネルギーは0~2kcal/gと考えられている。
 また、難消化性炭水化物の一部である食物繊維はエネルギー源としてではなく、それ以外の生理的機能による生活習慣病との関連が注目されている。

・同様にエネルギー源となる脂質に比べて分解・吸収が早く、即効性があるのが特徴。
・糖タンパク質、糖脂質、核酸などの成分としても重要。
・体内でブドウ糖がエネルギーに変わるときには、ビタミンB1が必要。夏バテに関係。
・果糖は体内で脂肪に変わりやすい性質がある。同じ糖質をとるなら、ブドウ糖だけを含む穀類やいも類の方が太りにくい。
 
※参考資料『中村丁(2015)栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』

炭水化物の消化、吸収、代謝

・易消化性炭水化物は、消化管腔内で唾液及び膵液中のアミラーゼにより消化されて少糖類になる。
 
・少糖類は小腸上皮細胞の微絨毛膜のグルコアミラーゼとスクラーゼ・イソマルターゼ複合体による膜消化を受け単糖類となり吸収される。
 
・グルコースとガラクトース等はNa+/グルコース共輸送担体(SGLT1)を、フルクトースはフルクトース輸送担体(GLUT5)により細胞内に取り込まれ、基底膜に存在するグルコース輸送担体(GLUT2)により血管側に移行する。
 
・吸収された単糖類は、門脈を経て肝臓に取り込まれ、代謝されると共に一部はそのまま血糖として体内各組織に送られる。

●炭水化物の代謝
 
デンプン
→ブドウ糖に分解
→小腸から吸収されて肝臓へ
→一部は肝臓を素通りして血液中に入り(血糖)、組織のエネルギー源になったり、筋肉グリコーゲンとして蓄えられる。
→肝臓での貯蔵量を上回る余分なブドウ糖は、内臓脂肪や皮下脂肪として蓄えられる。
 
※参考資料『中村丁(2015)栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』

オリゴ糖の種類と特徴

※オリゴ糖と腸内細菌との関連については以下の記事参照。
腸内細菌と食事の関係の”オリゴ糖、プレバイオティクス”

○フラクトオリゴ糖
・酵素を作用させて砂糖にフラクトースを結合させて作られた難消化性のオリゴ糖。
 
○ガラクトオリゴ糖
・乳糖を原料として酵素反応を利用して作られる難消化性のオリゴ糖。
・自然界では母乳等に含まれる。
・たんぱく質の消化吸収を助ける機能や腸内有用菌の活性化などの作用がある。
 
○キシロオリゴ糖
・食物繊維の一種のキシランを原料として、キシラーゼなどによる酵素反応を用いて製造される難消化性のオリゴ糖。
・腸内有用菌の活性化や虫歯になりにくいなどの特徴がある。
 
○大豆オリゴ糖
・豆乳から分離精製して製造されるオリゴ糖。
・腸内有用菌の活性化や虫歯になりにくいなどの特徴がある。
 
○イソマルトオリゴ糖
・デンプンから生産されるマルトース液を原料として、α-グルコシダーゼなどによる酵素反応の転移という技術によって作られる、やや難消化性のオリゴ糖。
・天然では、蜂蜜や味噌、醤油、清酒などに含まれている。
 
○ラフィノース
・砂糖大根(ビート)から分離精製して作られる天然のオリゴ糖。
・ビートやユーカリ樹液、大豆、キャベツ、ブロッコリー、アスパラガスなどに比較的多く含まれる。
・大腸まで届いてビフィズス菌を増殖させる作用がある。
 
○トレハロース
・自然界の多くの動物、昆虫類などに含まれている糖分。
 
○サイクロデキストリン
・ブドウ糖が6~8個環状につながったオリゴ糖。
 
※参考資料『近藤和雄,佐竹元吉(2014)サプリメント・機能性食品の科学 日刊工業新聞社』

炭水化物の必要量

・脳は体重の2%程度の重量だが、基礎代謝量の約20%を消費すると考えられている。仮に基礎代謝量を1,500kcal/日とすれば、脳のエネルギー消費量は300kcal/日になり、ブドウ糖75g/日に相当する。脳以外の組織もブドウ糖をエネルギー源として利用することから、ブドウ糖の必要量は少なくとも100g/日と推定され、消化性炭水化物の最低必要量はおよそ100g/日と推定される。
 しかし、肝臓は必要に応じて筋肉から放出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生を行い、血中にブドウ糖を供給するので上記値がそのまま最低量を意味するわけではない。
 また、通常、乳児以外の人はこれよりも相当に多い炭水化物を摂取しているので、この量を根拠として推定必要量を算定する意味も価値も乏しい。
 
・炭水化物が直接ある特定の健康障害の原因となるとの報告は、生活習慣病の一種としての糖尿病を除けば、理論的にも疫学的にも乏しい。
 
そのため、炭水化物については推定平均必要量も耐容上限量も設定されていない。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

炭水化物の目標量

※%E(エネルギー比率) 総エネルギー摂取量に占める割合

・炭水化物はアルコールを含む合計量とし、たんぱく質並びに脂質の残余として設定している。
 
・炭水化物の多い食事は、その質への配慮を欠くと、精製度の高い穀類や甘味料や甘味飲料、酒類に過度に頼る食事になりかねない。これは好ましいことではない。
 
・たんぱく質の目標量の下の値(13%E)と脂質の目標量の下の値(20%E)に対応する炭水化物の目標量は67%Eとなるが、上記の理由のために、それよりもやや少ない65%Eを目標量の範囲の上の値としている。
 
・一方、目標量の下の値は、たんぱく質の目標量の上の値(20%E)と脂質の目標量の上の値(30%E)に対応させている。ただし、この場合には、食物繊維の摂取量が少なくならないように、炭水化物の質に注意すべきである。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

炭水化物摂取と発症予防

●炭水化物摂取と発症予防
 
・例えば、四つのコホート研究をまとめたメタ・アナリシスでは、総死亡率の有意な上昇が認められている。なお、同時に検討された循環器疾患の死亡率並びに発症率とは有意な関連は認められなかった。
 
・生活習慣病の発症は、炭水化物全体としてよりも、食物繊維やグリセミック・インデックス、糖類の細分類(単糖類、二糖類、多糖類の別)などの影響を大きく受ける。
 例えば、糖尿病の発症への穀類由来食物繊維や食事性グリセミック・インデックス(及びグリセミック・ロード)の予防効果や甘味飲料の多量摂取と肥満の関連を挙げることができる。
 一方、炭水化物摂取量や食事性グリセミック・インデックスと糖尿病の発症の間には有意な関連はないとした研究もある。
 
・個々の生活習慣病の発症予防に当たっては、炭水化物の質に注目しなくてはならない。
 
●炭水化物摂取と重症化予防
 
・低炭水化物食が体重低下や糖尿病の管理に有効であるとした報告がある。しかし、対照群の食事が高脂質であったのか高たんぱく質であったのかは結果の解釈に不可欠であると考えられるが、多くのメタ・アナリシスで対照群の食事が報告されていない(又は十分に統一されていない)といった問題を有していた。
 
・糖尿病患者を対象として食物繊維のサプリメントの効果を検討した介入試験をまとめたメタ・アナリシスによると、空腹時血糖とHbA1cの有意な低下を認めたと報告されている。
 
●炭水化物、脂肪酸摂取と中性脂肪値
※%E(エネルギー比率) 総エネルギー摂取量に占める割合
 
・炭水化物から、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸に食べ替えると、血清トリグリセライド濃度が有意に減少することがメタ・アナリシスで示されている。
 そして、その影響は互いにほぼ等しく、5%Eの炭水化物をそれぞれの脂肪酸に食べ替えると、血清トリグリセライド濃度が10~12mg/dL程度減少するとされている。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

 

●低炭水化物食
 
○2014年、アメリカ国立衛生研究所の研究
・150人の成人男女を1年間調査した低炭水化物と低脂肪食による減量の比較研究
・低脂肪食では脂肪以上に筋肉が減る一方、低炭水化物では除脂肪筋肉量が増えるとして、従来のカロリー神話や低脂肪神話とは逆の結果を示した。
 
○2014年、オハイオ州立大学のジェフ・ボレックの研究
・飽和脂肪酸を摂取しても体内には蓄積されない一方で、炭水化物が糖尿病と心臓病のリスク増加に関連がある脂肪酸の血中濃度上昇に関係するとして、従来の"糖質制限=心臓疾患のリスク"という主張を反証している。
 
※参考資料『ジョン・J.レイティ(2014)GO WILD野生の体を取り戻せ! NHK出版』

ネットニュースによる関連情報

●全粒穀物を摂取で死亡率が低下
 
・年齢・喫煙・BMIなどの交絡因子を調整後、全粒穀物をより多く食べているほど、総死亡率が低く、心血管疾患(CVD)による死亡率も低かったが、がんによる死亡とは関連していないことが明らかとなった。
・研究チームは更に1日に28グラムの全粒穀物を摂取するごとに、総脂肪率が5%、CVDによる死亡率が9%低下すると推定した。

 

●全粒穀物の摂取で各種病気にかかるリスクが低下
 
・1日あたり90gの全粒穀物製品を摂取すると、病気にかかるリスクの低下率は虚血性心疾患で19%、心血管疾患22%となった。
・また、全死因による死亡率は17%低下し、各病気による死亡率の低下は脳卒中14%、がん15%、呼吸器疾患22%、感染症26%、糖尿病51%という結果になった。
・ふだん全粒穀物をまったく食べない人が、1日2サービング食べるようになると、利益の伸びは最大になった。(2サービングとは全粒小麦32gまたは全粒小麦製品60gに相当)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください