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緑茶の健康効果の概要
○緑茶の成分 ・基本的な成分としてカフェイン、カテキン類、テアニン、精油成分などがある。 ○緑茶の健康効果 ・抗酸化作用、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、抗菌作用、抗アレルギー作用などが報告されている。 ※参考資料『近藤和雄,佐竹元吉(2014)サプリメント・機能性食品の科学 日刊工業新聞社』
●緑茶の成分 ・抗酸化フラボノイド、カテキンを含む数多くの抗がんポリフェノール化合物が含まれている。 ・緑茶の基本的なカテキンはエピガロカテキンガレート(EGCG)。 ●緑茶の健康効果 ・緑茶化合物が直接的にフリーラジカルを消去するのみならず、生体の天然抗酸化システムの作用を増強することが研究によって明らかになった。 ・緑茶ポリフェノールは、抗菌作用をもっているのと同様に、いくつかの免疫系細胞の産生を刺激していることで知られている。 研究では、緑茶の飲用がウィルスの免疫を増強するγ-δT細胞を刺激するという。 さらに、L-テアニンと呼ばれる緑茶成分はT細胞に働いてウィルス対抗インターフェロンの分泌を正常の10倍に高める。 ※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』
●カテキンの概要 ・緑茶の渋みの主成分であるとともに緑茶のポリフェノールの主成分。 ・カテキンには、エピカテキン、エピガロカテキン、ガレート基のついたエピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートがあることが知られている。 ※参考資料『近藤和雄,佐竹元吉(2014)サプリメント・機能性食品の科学 日刊工業新聞社』
コレステロール値との関連
・コレステロール値を低下させること、LDLの酸化を抑制すること、血小板凝集傾向を減弱させること、体重減少を促進すること、血圧を下げることによって、心血管疾患を予防すると考えられている。 ※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』
●カテキンの健康効果 ・10人に緑茶5gを飲ませた研究では、飲用後1~2時間のLDLの抗酸化能が増加し、4週間後に元に戻っているが、同時間で測定された血中のカテキン濃度では、同様に1~2時間後のエピガロタテキンガレート、エピカテキンガレート濃度が有意に増加していて、お茶を飲んだ後1~2時間は血中の抗酸化能が高まることが報告されている。 ・食後の血液中の中性脂肪の増加を抑制する作用や血液中のコレステロール濃度を減少させる作用、体脂肪減少作用が、ヒトを対象とした研究で認められている。 ・上記作用は1~2杯程度で認められるものではなく、ある程度以上飲んだ場合に認められる。 ※参考資料『近藤和雄,佐竹元吉(2014)サプリメント・機能性食品の科学 日刊工業新聞社』
●緑茶のカテキンの健康効果 ・カテキンはポリフェノールの一種で、摂取した脂肪を吸収せず排出させる"スルー効果"がある。 ※参考情報『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』
循環器疾患との関連
・コレステロール値を低下させること、LDLの酸化を抑制すること、血小板凝集傾向を減弱させること、体重減少を促進すること、血圧を下げることによって、心血管疾患を予防すると考えられている。 ヘルナンデス・フィグエロアらによれば、"この陽性効果は緑茶を毎日7杯(3.5gのカテキン)を飲むことで心血管疾患の予防がうまくかなえられる"という。 ・カリフォルニア大学で行われた研究は、ガロタンニン、ノボタンニンBと呼ばれる化学物質が脳卒中や脳外傷後に生じる脳損傷を防ぐことを明らかにした。 この研究では、上記2つの化合物が酵素PARG(ポリ-ADP-リボース・グリコヒドロラーゼ)の働きを阻害することによって神経細胞死を防ぐことを示している。このPARGは脳卒中後に生じる脳細胞の破壊の主な原因となっている。 ※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』
●日本の多目的コホート研究(JPHC Study)の結果
※・多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
緑茶摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について ・緑茶の習慣的摂取と全死亡・主要死因死亡との関連を調べた。 ○全体の結果 ・緑茶を1日1杯未満飲む群を基準として比較した場合、1日1~2杯、1日3~4杯、1日5杯以上の群の危険度は、それぞれ男性の全死亡で0.96、0.88、0.87、女性の全死亡で0.90、0.87、0.83となっていた。 ○死因別の結果 ・がん死亡の危険度には有意な関連がみられなかった。 ・心疾患死亡、脳血管疾患死亡、呼吸器疾患死亡については、緑茶摂取による危険度の有意な低下がみられた。 ・1日3~4杯、1日5杯以上摂取する群の心疾患死亡の危険度は、1日1杯未満摂取する群に比べ男性でそれぞれ0.74、0.87、女性で0.74、0.63だった。 ・男性で1日3~4杯、1日5杯以上摂取する群の脳血管疾患死亡の危険度は、それぞれ0.71、0.76となっていた。 ・男性の呼吸器疾患死亡では、1日1杯未満の人に比べ、1日3~4杯、1日5杯以上緑茶を摂取する群の危険度は、それぞれ0.72、0.55だった。 ・男性では脳血管疾患と呼吸器疾患、女性では心疾患と外因死において、緑茶摂取量が増えるにつれ死亡リスクが低下する傾向がみられた。 ○カフェイン摂取量との関連 ・カフェイン摂取と死亡について検討したところ、全死亡、心疾患、呼吸器疾患および外因死について男女ともに摂取量が増すと死亡リスクが下がるという傾向を認めた。 また男性では脳血管疾患についても同じ傾向がみられた。 ○なぜ緑茶摂取で死亡リスクの低下が見られるのか? ・カテキンには血圧や体脂肪、脂質を調節する効果があるといわれている上、血糖値改善効果があるとされている。 ・カフェインが血管内皮の修復を促し、血管を健康に保つとされている。 ・カフェインには気管支拡張作用があり、呼吸器機能の改善効果があるのではないかと言われている。 ・本研究では、緑茶摂取と女性の外因死リスク低下との関連も限定的ながら示唆された。これについては、緑茶に含まれるテアニンやカフェインが認知能力や注意力の改善に効果があるのではないかとされているが、はっきりとした因果関係は分かっていない。
緑茶・コーヒー摂取と脳卒中発症との関連について ・緑茶を飲む頻度に関する質問への回答から、飲まない、週に1~2回、週に3~6回、毎日1杯、毎日2~3杯、毎日4杯以上飲むという6つの群に分けて、その後の脳卒中および虚血性心疾患発症との関連を分析した。 ○結果 ・緑茶を飲まない群を基準とした場合、毎日2~3杯、4杯以上の群の危険度は、それぞれ循環器疾患発症で0.85、0.84、脳卒中発症で0.86、0.80となっていた。 ・同様に毎日4杯以上の群の脳梗塞発症の危険度は、0.86であり、毎日1杯、2~3杯、4杯以上の群の脳出血の危険度は、それぞれ0.78、0.77、0.65となっている。 ・緑茶と虚血性心疾患との関連は見られなかった。 ○推察 ・緑茶の先行研究では、日に1杯未満の緑茶を基準にして、日に5杯以上緑茶を摂取する群において全死亡と循環器疾患死亡のリスクがそれぞれ15%と26%低いことが報告されている。 また、緑茶をよく摂取する群で脳卒中、脳梗塞、脳出血発症のリスクが低いこという報告もある。 緑茶と虚血性心疾患発症については、これまでの研究でも関連を認めなかった。 ・緑茶にはカテキンなどの抗酸化作用、抗炎症作用、抗血栓作用、血漿酸化防止と抗血栓形成効果などによる複数の血管保護効果がみられる。
●他の研究事例
○血管内皮細胞増殖因子(VEGF) ・体内で、VEGFは血管新生の主要な駆動力である。 血管新生はがんの進行や動脈硬化プラークの形成に重要な役割を果たしている。 ○英国食品研究所からの報告 ・ヒト血管壁由来の細胞を用いて、緑茶に含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)とリンゴに含まれるプロシアニジンという2つのポリフェノールが低濃度でVEGFの重要な信号機能を阻害することを発見した。 ・動脈硬化やがんを抑える可能性がある。 ※参考文献 Potent inhibition of VEGFR-2 activation by tight binding of green tea epigallocatechin gallate and apple procyanidins to VEGF: relevance to angiogenesis.
血糖値との関連
・緑茶は脂質代謝を高め、血糖・インスリンレベルを調節することが知られているので、減量薬として役立つ可能性がある。 ※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』
●緑茶のカテキンの健康効果 ・カテキンには脂質の吸収を防いだり、血糖値の急上昇を抑える働きがある。 ※参考情報『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』
がんとの関連
・喫煙などほかのリスク要因を持たない女性の胃がんリスクを大きくはないが減らす効果がある可能性が示されている。
・研究によれば、緑茶は肺がん、皮膚がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がんを防ぐ助けになるという。 ・数多くの研究は、緑茶カテキンがアポトーシスを誘導し、多くのタイプのがん細胞の成長を阻止することを明らかにした。 ・リンらは、EGCGが成熟脂肪細胞のアポトーシスを増やし、前脂肪細胞における脂質の蓄積を用量依存性に抑制することを見出した。 ・ルーらの研究結果で、茶に存在するポリフェノールのテアフラビン-3'-モノガレート(TF-2)が正常細胞には何の障害も起こさないのに、がん細胞では細胞死を引き起こすことが見出された。 ※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』
●日本の多目的コホート研究(JPHC Study)の結果
※・多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
緑茶飲用と胃がんとの関連について ・緑茶を1日1杯未満飲む人を基準として、緑茶を1日1-2杯、3-4杯、および5杯以上飲むと答えた人の胃がんのリスクを計算した。 ○胃がん全体 ・女性で緑茶を1日当たり5杯以上飲む人で胃がんのリスクは3割ほど抑えられた。 ・男性では緑茶によるリスクの低下ははっきりとしなかった。 ○女性、胃の部位ごと ・女性において、胃の上部3分の1と、下部3分の2とで分けて分析。 ・胃の上部では緑茶の予防効果はみられなかったが、胃の下部では5杯以上飲むことでがんのリスクが1杯未満の人の半分になることが分かった。 ○なぜ胃の上部と下部で緑茶の効果が違うのか。 ・熱い飲料が食道のがんや炎症を引き起こすことは多くの研究で明らかにされているので、胃でも、食道に隣接する上部では緑茶を熱いまま飲むとむしろ好ましくない影響があるのかもしれない。 ○男性で効果が認められなかったのは? ・緑茶をよく飲む人にたばこを吸う人や伝統型食生活を送る人が多かったため、その影響を除ききれなかったのかもしれない。
血中の緑茶ポリフェノールと胃がん罹患との関係について ・保存血液を用いて、血漿中の主な4種類の緑茶ポリフェノール(エピガロカテキン3ガレート(EGCG)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキン3ガレート(ECG)、エピカテキン(EC))を測定し、男女別にそれぞれのカテキンの値によって3つのグループに分け胃がんリスクを比較し、さらに喫煙習慣の影響を調べた。 ○緑茶ポリフェノールと胃がんリスク ・女性でエピカテキン3ガレート(ECG)濃度が高いと胃がんリスクが低いことがわかった。 ・男性ではそのような関連は見られなかった。逆に、エピガロカテキン(EGC)では濃度が高いグループで、胃がんリスクが高いことがわかった。 ○喫煙の影響 ・非喫煙者では濃度が高いグループでリスクが低いのに対し、喫煙者では逆にリスクが高という傾向が見られた。 特にECGについては、濃度が高いグループでは、非喫煙者では胃がんリスクが抑えられたのに対し、喫煙者では逆にリスクが上昇した。 ○喫煙の影響、男女の結果の相違の理由 ・非喫煙者では濃度が高いグループでリスクが低いのに対し、喫煙者では逆にリスクが高いという、喫煙状態によって異なる傾向が見られた。 日本人の中高年男性の喫煙率は高く、緑茶と胃がんの関連に影響を与えるために、喫煙率の低い女性とは結果が一致しなかったのかもしれない。
緑茶飲用と前立腺がんとの関連について ・緑茶を1日1杯未満飲む人を基準として、緑茶を1日1-2杯、3-4杯、および5杯以上飲むグループで、前立腺がんのリスクが何倍になるかを調べた。 ○結果 ・緑茶飲用と全ての前立腺がんには関連はなかったが、緑茶飲用が多ければ多いほど、進行前立腺がんのリスクが低下するという結果がみられた。 緑茶を1日5杯以上飲むグループでは、1日1杯未満飲むグループと比べると、リスクが約50%低下した。 一方、限局前立腺がんでは、緑茶飲用との関連はみられなかった。 ○緑茶と前立腺がんとの関係 ・実験研究によると、カテキンはアポトーシスを誘導し、細胞の増殖をおさえることで、発がんを抑制することが報告されている。 また、カテキンは、前立腺がんの危険因子の候補の一つである男性ホルモンのテストステロンレベルを下げたり、アンドロゲンレセプターの転写をおさえたりすることで、前立腺がんのリスクを下げることが予想されている。 ・今回の研究では、進行がんで特にリスクの低下が見られた。これは、緑茶中のカテキンが、腫瘍がひろがること(浸潤)を阻害し、転移のときに多く発現するmatrix metalloprotease 2 (MMP-2)という物質の発現(細胞で遺伝情報をもとにタンパク質が合成されること)を抑制することが、実験研究で報告されていることからも説明ができる。 また、進行がんの方がアンドロゲンレセプターの発現が多いので、カテキンのテストステロンやアンドロゲンレセプターを抑制する効果が、進行がんでより強い、とも考えられる。 ・緑茶の発がん抑制作用を考えると、限局がんでも緑茶の予防効果が期待されるが、今回の研究では関連はみられなかった。 緑茶の効果が、限局がんと進行がんで異なることも考えられるが、健康意識が高く緑茶をたくさん飲む人が検診を受け、限局前立腺がんが発見されたため、緑茶による前立腺がんリスク低下の効果が見かけ上消えてしまった、という可能性も考えられる。
喫煙、コーヒー、緑茶、カフェイン摂取と膀胱がん発生率との関係について ・喫煙と膀胱がんとの関連、コーヒー、緑茶、その中に含まれているカフェイン摂取量と膀胱がんとの関連を調べた。 ○結果 ・男性では、緑茶、カフェイン摂取量とは関連が見られなかった。 ・女性では、コーヒーとの関連は見られなかったが、1日5杯以上の緑茶を摂取する人で、膀胱がんのリスクが2.3倍になった。 女性の症例数が少なかったために、結果が偶然に得られた可能性も考えられるが、女性のカフェインは、コーヒーよりも緑茶からの摂取量が多かったからかもしれない(コーヒー43%、緑茶46%)。緑茶・コーヒー摂取と甲状腺がん発生との関連について ・甲状腺では、甲状腺ホルモンを合成する段階で、反応性酸素生成物である過酸化水素(H2O2)を必要とする。この過酸化水素の代謝システムの障害による酸化ストレスの増大が、甲状腺の発がんに関与しているのではないかという指摘がある。 そこで、ポリフェノールなどの抗酸化物質を含む緑茶とコーヒーには、甲状腺がんを予防する作用があるのではないかと考え、緑茶・コーヒー摂取と甲状腺がん発生との関係について調べた。 ○結果 ・緑茶摂取と甲状腺がん発生との関連を分析した結果、男性、女性ともに、関連が認められなかった。 ○閉経前と閉経後の女性に対する影響 ・甲状腺がんは、男性よりも女性に多く発生することから、女性ホルモン(エストロゲン)が、甲状腺がん発生に関与しているのではないかと言われている。 緑茶に含まれるポリフェノール類(主にカテキン類)は、血中エストロゲン濃度に影響するという報告がある。 ・閉経前の女性では、緑茶をよく飲む人ほど甲状腺がんになりやすい傾向を認めた一方、閉経後の女性では、緑茶をよく飲む人ほど甲状腺がんになりにくい傾向がみられた。 ・閉経前甲状腺がんでは、甲状腺がんの増殖に関与するとされるエストロゲン受容体αの発現が多いことが報告されているので、閉経前の女性では、緑茶カテキンがエストロゲン受容体αを介して甲状腺がん発生に影響している可能性がある。 一方で閉経後甲状腺がんでは、上皮成長因子受容体の発現が確認されている。閉経後の女性において緑茶が甲状腺がんに予防的に働くメカニズムは、緑茶カテキンの上皮成長因子受容体を介したがん細胞増殖を抑制する作用によるものかもしれない。
緑茶・コーヒー摂取と胆道がん罹患との関連について ・胆道がんに対しては、動物実験でカテキンの予防的効果が示唆されているが、胆道がんは世界的に希少ながんであるため、ヒトにおける疫学研究は十分に行われていない。 過去に行われた疫学研究のうちのいくつかにおいては、お茶(緑茶以外のお茶も含む)及びコーヒーの予防効果が示唆されているものの、全体として一貫した結果が得られていなかった。 本研究で、緑茶・コーヒーの胆道がんに対する予防効果を評価した。 ○結果 ・7杯以上飲むグループで、統計学的に有意なリスクの低下が認められた。 ・緑茶の種類別(煎茶と番茶・玄米茶)に分けて解析を行ったところ、煎茶と番茶・玄米茶のいずれにおいても統計学的に有意なリスクの低下は認められなかったが、煎茶を飲む量が多くなるとリスクが下がる可能性が示唆された。 ○推察 ・カテキンは、胆道がんの主要なリスク因子である胆石の生成を抑制する可能性が示唆されているので、カテキンの抗酸化作用に加えて、胆石予防の効果によるものかもしれない。 また、緑茶にはビタミンCや葉酸などのがん予防効果の可能性がある栄養素が豊富に含まれており、特に番茶と比較して煎茶に多く含まれていることから、これらの栄養素が予防効果の一部に貢献している可能性もある。
緑茶・コーヒー摂取と膵がんとの関連について ・40~69歳の男女約13万人の方々を平成15年(2003年)まで追跡した調査結果にもとづいて、緑茶・コーヒー摂取と膵がんとの関連を調べた。 ○結果 ・今回の研究では、男性でも女性でも、緑茶の摂取量によって膵がんにかかる危険性(リスク)には差がなかった。 ○推察 ・緑茶などのお茶には抗酸化作用があり、実験研究から膵がんを含む様々ながんを予防する可能性が確認されているが、本研究では緑茶による膵がんリスクの低下は確認されなかった。 その理由には、動物とヒトの膵がんの違いや、緑茶の用量など、実験と生活での条件の違い等が考えられる。 また、集団による結果の違いは、お茶の種類や計測方法など研究の条件の他に、いわゆる体質(遺伝子的な違い)を考慮する必要があるのかもしれない。
●他の研究事例
○ペンシルベニア州立大学による研究 ・初期の研究では、緑茶に含まれるエピガロカテキン-3-ガレート(EGCG)が、正常細胞を傷つけることなく口腔がん細胞を殺すことが示されたが、そのメカニズムについては明らかになっていなかった。 ・研究チームは、ペトリ皿で正常な細胞とがん細胞を成長させ、その後EGCGに曝露させ、酸化ストレスと抗酸化反応を測定した。 ・ミトコンドリア機能と酸化ストレスを測定する蛍光染料を用いた写真による画像処理により何が起こっているかを確認した。 EGCGは、がん細胞内でミトコンドリアに損傷を与える活性酸素種の形成を引き起こし、ミトコンドリアがさらに活性酸素種を作り反応し、細胞死を引き起こしていると考えられる。 ・サーチュイン3(SIRT3)と呼ばれるたんぱく質がこのプロセスで不可欠であることを発見した。 ・SIRT3はミトコンドリア機能と体内の組織の多くにおける抗酸化応答に重要な役割を果たしているため、EGCGはがん細胞ではオフにし、正常細胞ではそれをオンにするというように、がん細胞内にあるSIRT3の活性に選択的に影響を与えている可能性がある。 ※参考文献 Differential prooxidative effects of the green tea polyphenol, (-)-epigallocatechin-3-gallate, in normal and oral cancer cells are related to differences in sirtuin 3 signaling.
認知症との関連
●緑茶のカテキンの健康効果 ・カテキンなどのポリフェノールには、抗酸化作用があり、アルツハイマー病の神経原線維変化を抑制する働きが報告されている。また、βアミロイドの毒性を防ぎ、脳に悪影響を及ぼす鉄を排出してくれる。 ・カテキンなどの成分は、多くの物質を遮る血液脳関門を通過することができるのも特徴。 ※参考情報『森下竜一,桐山秀樹(2015)アルツハイマーは脳の糖尿病だった 青春出版社』