飽和脂肪酸、肉の摂取と健康への影響

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  1. 飽和脂肪酸の概要
  2. 飽和脂肪酸とコレステロール値
  3. 飽和脂肪酸と循環器病(動脈硬化、心疾患、脳卒中、糖尿病)
  4. 飽和脂肪酸の目標量
  5. 肉の摂取とがんのリスク
  6. 肉製品の選び方
  7. 必須脂肪酸のバランスとプロスタグランジン
  8. 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
  9. ネットニュースによる関連情報

飽和脂肪酸の概要

・飽和脂肪酸とは、炭素鎖に二重結合あるいは三重結合を有しない(水素で飽和されている)脂肪酸のこと。
 
・飽和脂肪酸には、
カプリル酸(8:0)   CH3-(CH2)6-CO2H
カプリン酸(10:0)  CH3-(CH2)8-CO2H
ラウリン酸(12:0)  CH3-(CH2)10-CO2H
ミリスチン酸(14:0) CH3-(CH2)12-CO2H
パルミチン酸(16:0) CH3-(CH2)14-CO2H
ステアリン酸(18:0) CH3-(CH2)16-CO2H
などがある。
 
・飽和脂肪酸は食品から摂取されると共に、炭水化物やたんぱく質の中間代謝産物であるアセチルCoAからも合成することができる。
 
・重要なエネルギー源であり、適切なエネルギー比を維持し、摂取する脂肪酸の比率を良好なものとする必要がある。

飽和脂肪酸とコレステロール値

・飽和脂肪酸の摂取量が多いと血液中のコレステロールが高くなる関係がある。
 
○なぜ、飽和脂肪酸を多く摂取すると血液中のコレステロールが増えるのか?
・飽和脂肪酸は主に動物性食品に含まれているが、動物性食品はコレステロールも含んでいるので、飽和脂肪酸の摂取が多い人はコレステロールの摂取も多くなっている。
 それ以外に、飽和脂肪酸は肝臓でのコレステロール合成を活発にする作用があり、食事から飽和脂肪酸を摂取すると肝臓で合成されるコレステロールが増え、たくさんのVLDLを作って血液の中に出て行く。結果としてLDLも増えてしまう。
 
食事の中のコレステロール含量が多くなくても飽和脂肪酸の摂取量が多いと、食べた後に肝臓でのコレステロール合成が増えてしまってLDLが増えてしまう。
 
※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール  日本経済新聞出版社』

 

・高脂肪食は飽和脂肪酸量を増加させ、飽和脂肪酸は血漿LDL濃度を上昇させる。
 
※農林水産省/脂質による健康影響

 

●飽和脂肪酸摂取量と総コレステロール濃度
 
・飽和脂肪酸摂取量と血清(又は血漿)総コレステロール濃度が正の関連を有する。
Keysの式
⊿血清総コレステロール(mg/dL)=2.7×⊿S-1.35×⊿P+1.5×⊿ √C
Hegstedの式
⊿血清総コレステロール(mg/dL)=2.16×⊿S-1.65×⊿P+0.068×⊿C
 
 ⊿S:飽和脂肪酸摂取量の変化量(% エネルギー)
 ⊿P:多価不飽和脂肪酸摂取量の変化量(% エネルギー)
 ⊿ √C:コレステロール摂取量(mg/1,000 kcal)の変化量
 ⊿C:コレステロール摂取量(mg/1,000 kcal)の変化量
 
・Keysの式は、日本人成人でもほぼ成立することが報告されている。
 
・国民栄養調査のデータを用いた横断的解析でも、飽和脂肪酸摂取量と血清総コレステロール濃度との間には正の相関が観察されている。
 
・27の介入試験(詳細は報告されていないが全て欧米諸国で行われた研究と思われる。総対象者数は682人、介入期間は14~91日間)をまとめたメタ・アナリシスによれば、総エネルギー摂取量の5%を炭水化物から飽和脂肪酸に変えると平均して6.4mg/dLの血清LDL濃度の上昇が観察されている。
 研究数を増やした別のメタ・アナリシスでもほぼ同様の結果が得られている。
 
・血清総コレステロール並びにLDL濃度への影響を飽和脂肪酸の炭素数別に検討したメタ・アナリシスによると、ラウリン酸(炭素数が12)、ミリスチン酸(同じく14)並びにパルミチン酸(同じく16)では有意な上昇が観察されたが、ステアリン酸(同じく18)では有意な変化は観察されなかった。
 このように、飽和脂肪酸の中でも炭素数の違いによって血清コレステロール濃度への影響が異なることが指摘されている。
 
●飽和脂肪酸摂取量とLDL
 
・欧米での多くの介入研究では、飽和脂肪酸摂取量を減少させると、冠動脈疾患罹患率、動脈硬化度、LDL値がの減少することが示されている。
 
●高脂質食とHDL
 
・高脂質食/低炭水化物食によってHDLを増加させることができるが、飽和脂肪酸の摂取量が増加すると、LDLを増加させ、総死亡率を増加させるため、長期間の摂取は好ましくない。
 
●炭水化物、脂肪酸摂取と中性脂肪値
※%E(エネルギー比率) 総エネルギー摂取量に占める割合
 
・炭水化物から、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸に食べ替えると、血清トリグリセライド濃度が有意に減少することがメタ・アナリシスで示されている。
 そして、その影響は互いにほぼ等しく、5%Eの炭水化物をそれぞれの脂肪酸に食べ替えると、血清トリグリセライド濃度が10~12mg/dL程度減少するとされている。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

飽和脂肪酸と循環器病(動脈硬化、心疾患、脳卒中、糖尿病)

※糖尿病、血糖値との関連については以下の記事参照。
糖質制限、糖尿病と炭水化物、たんぱく質、脂質、食物繊維摂取との関連の”脂質摂取と糖尿病との関連”
※高血圧との関連については以下の記事参照。
高血圧と食塩、食事、肥満との関連の”脂質、n-3系脂肪酸との関連”

・高脂肪食は飽和脂肪酸量を増加させ、飽和脂肪酸は血漿LDL濃度を上昇させ、冠動脈疾患のリスクを高くする。
 
・取りすぎると血液中のLDLが増加し、動脈硬化が促進されることが予想されている。
 
・飽和脂肪酸の摂取量が少ない場合には、脳出血、生活習慣病のリスクを増加させる可能性がある。
 
※農林水産省/脂質による健康影響

 

●心疾患との関連
 
・飽和脂肪酸摂取量と心筋梗塞罹患との間に強い関連が認められない理由として、飽和脂肪酸の種類により効果が異なる可能性や飽和脂肪酸を含む食品により冠動脈疾患罹患リスクが異なることが指摘されている。
 
・乳製品由来の飽和脂肪酸摂取は心血管疾患を予防するが、肉由来の飽和脂肪酸摂取は心血管疾患のリスクとなっている。
 
・日本人45~74歳を対象としたコホート研究、JPHC研究では、飽和脂肪酸摂取量と心筋梗塞罹患に正の関連が認められた。
 最小五分位群(飽和脂肪酸摂取量9.6g/日、4.4%E)に比べ、中間五分位群(飽和脂肪酸摂取量16.3g/日、7.2%E)で心筋梗塞罹患ハザード比が1.24に、最大五分位群(飽和脂肪酸摂取量24.9g/日、10.9%E)は1.39に増加した。
 
・欧米での多くの介入研究では、飽和脂肪酸摂取量を減少させると、冠動脈疾患罹患率、動脈硬化度、LDL値の減少することが示されている。
 
●脳卒中との関連
 
・日本人を対象にした多くのコホート研究で、飽和脂肪酸摂取量が少ない人では脳卒中、特に脳出血死亡又は罹患の増加が認められている。
 
・最近発表されたJPHC研究では、飽和脂肪酸摂取量と脳出血やラクナ梗塞罹患との間には直線的な負の関連が認められ、飽和脂肪酸摂取量が多いほど脳出血やラクナ梗塞罹患は減少した。
 コホート研究では、動物性たんぱく質摂取量の調整は十分されておらず、脳出血等の罹患増加の原因は飽和脂肪酸摂取量の減少に伴う動物性たんぱく質摂取量減少による可能性もある。実際、乳製品摂取量と脳卒中との関連を調べたメタ・アナリシスでは、乳製品最大摂取群は最小摂取群に比較し、脳出血の相対危険は0.75に減少していた。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

飽和脂肪酸の目標量

・飽和脂肪酸摂取量と血清(又は血漿)総コレステロール濃度、LDL濃度は正の関連を有する。
 飽和脂肪酸の過剰摂取は動脈硬化性疾患、特に心筋梗塞のリスクであると想像される。
 動脈硬化性疾患、特に心筋梗塞罹患に対しては、その発症予防、重症化予防共に、飽和脂肪酸の摂取量を制限するだけでなく、多価不飽和脂肪酸の摂取量を同時に増加させることが重要であると考えられる。
 
・これらの報告、さらにはそれぞれの国民の摂取量や摂取改善の実現可能性を考慮し、各国において、成人における望ましい摂取量を10%E未満としている。
※%E(エネルギー比率) 総エネルギー摂取量に占める割合
 
・多くの国では、それぞれの国民の摂取量や摂取改善の実現可能性を考慮し、成人における望ましい摂取量を10%E未満としていて、アメリカ心臓協会とアメリカ糖尿病学会が7%E未満としている。
 日本人の飽和脂肪酸摂取量は欧米諸国に比べれば比較的に少なく、20歳以上に限ると6.9%Eである。この値よりも飽和脂肪酸を多く摂取することによる健康利益は、脳卒中のリスク低減の可能性を除けば考えにくい。
 なお、飽和脂肪酸は脂質の一種であり、飽和脂肪酸摂取量を制限すれば、総脂質の制限につながり、それが必須脂肪酸の摂取不足につながる恐れがあることに留意する必要がある。
 
以上を考慮し、飽和脂肪酸の目標量を7%E以下としている。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

肉の摂取とがんのリスク

※以下の記事も参照。
・がんの予防の”加工肉・赤肉”。
・がんに関わる要因の”貯蔵肉、赤身肉”
・大腸がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
・前立腺がんとの関連については以下の記事参照。
前立腺がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”、”原因、リスク要因”

・赤身肉や加工肉では大腸がんのリスクが高まる。
 
・加工肉はがんのリスクが特に高く、食べた量に比例する。ここまでなら食べても安全という水準は見出せなかった。
 
・赤身肉は、週500gまでならさほど心配しなくてもよい。
 
・肉に含まれるヘム鉄という物質が発がん物質の生成を促す可能性がある。
 
・肉を高温で調理したときにできる、複素環式アミンや多環式芳香族炭化水素といった100以上の物質も、その人の遺伝的特性によってはがんを引き起こす可能性がある。
 
※参考資料『マイケル・モス(2014)フードトラップ 日経BP社』

肉製品の選び方

放牧、工場式畜産の食品の品質、牧草地の管理の”放牧の家畜の食品の品質”も参照。

・牛脂肪は飽和脂肪の含有量が多い。飽和脂肪は、冠動脈性心疾患のリスクを高める。
 
※参考資料『エリック・シュローサー(2010)フード・インク 武田ランダムハウスジャパン』

必須脂肪酸のバランスとプロスタグランジン

●必須脂肪酸のバランス
 
・必須脂肪酸の摂取バランスが崩れるとプロスタグランジンという物質の生成がアンバランスになり、体の調整機能に様々な不具合が生じてしまう。
 
○プロスタグランジン
・ホルモンによく似た働きをする生理活性物質。
・血管の拡張・収縮、血小板の凝集・阻害、血液の凝固・溶解、炎症・アレルギー反応の抑制・促進など体の様々な調整機能に関与。
・n-3系とn-6系の2つの脂肪酸を原料にして作られている。
 
※参考資料『近藤和雄(2015)人のアブラはなぜ嫌われるのか 技術評論社』

多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス

※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?

●飽和脂肪酸摂取と循環器疾患発症の関連について
 
・飽和脂肪酸摂取量と脳卒中、虚血性心疾患発症との関連を調べた。
 
○結果
・1日に食べる飽和脂肪酸が多いほど、脳出血や脳梗塞による発症リスクは低い結果となった。
・飽和脂肪酸の摂取量が多くなるにつれ、心筋梗塞の発症率は高い結果となった。
 
○飽和脂肪酸摂取は、多すぎても、少なすぎても良くない
・従来、飽和脂肪酸は血清のコレステロール値を高くし、将来的に粥状動脈硬化になりやすくなることから、摂取を控えるような指導がなされることがあったが、最近の結果から、飽和脂肪酸は無害であり、制限する必要はないという説もある。
・本研究と過去の日本や欧米で実施されたいくつかの研究を総合的にみると、脳卒中並びに心筋梗塞の発症リスクが低いのは、飽和脂肪酸の摂取量が1日に20g前後の集団と考えられる。(牛乳を毎日コップ1杯(200g)、肉を2日に1回(2回につき150g程度)の摂取)

 

●アジア人における肉摂取と循環器死亡との関連
 
・バングラデシュ、中国、日本、韓国、台湾の8集団(計296,721人)を対象にして、肉摂取と循環器死亡の関連を調べた。
 
○肉類摂取と死亡との関連
・全肉摂取と全死因死亡、がん、循環器死亡との関連は男女ともに認められなかった。
・赤肉摂取により男女ともに全死因死亡のリスクが低下することが分かった。
 さらに赤肉摂取は男性の循環器死亡、女性のがん死亡低下とも関連することが分かった。
・男女両方において鶏肉摂取と全死因死亡のリスク低下、女性におけるがん死亡のリスク低下もみられた。
・女性において、魚介類摂取により全死因死亡と循環器死亡のリスクが低くなった。
 
○西欧諸国と異なる傾向の理由の推測
・近年アジア諸国ではがんと循環器死亡が増加し、幾つかのがんによる死亡率は西欧諸国に近づきつつある。
 アジアでの肉類摂取増加傾向を踏まえ、動物性脂肪の多い西欧型食生活ががんや循環器死亡増加の原因ではないかと議論されてきた。
 しかし今回の結果では肉類摂取と死亡率増加との関連は見られなかった。
 アジア人集団では関連が見られなかった理由として以下が考えられる。
 ・ほかの社会経済要因、ライフスタイルの変化や肥満が大きく関係している可能性がある。
 ・食生活の変化がアジアの多くの地域では進行中である。
 ・アジアでは肥満、高血圧、喫煙など他の危険因子が、がんや循環器死亡増加の主要リスクである。

ネットニュースによる関連情報

●高脂肪食はドーパミンシステムを損なう?
 
・飽和脂肪酸の高脂肪食を食べたラットのドーパミン機能が有意に低下していることを発見した。一価不飽和脂肪酸の高脂肪食に対してはそのような現象は見られなかった。
・ヒトにおいても飽和脂肪酸をたくさん食べ過ぎると、報酬反応が減少するのでそれを埋め合わせるためにより多くの高脂肪高糖分食を、今までと同じ報酬を得るために食べるのではないか?と考えている。
・研究チームは脂肪が脳に直接作用してドーパミンシステムに影響しているのだろうと考えている。このプロセスには脳内の炎症反応が関与しているということを別の実験結果から得ている。
・体重増加や肥満とは独立に、高脂肪食の摂取は脳の気分障害、薬物中毒、過食などに関わる脳の機能の不具合を起こし、動機づけと快楽を求める気持ちの病的状態につながる。

 

●有機の肉、牛乳の栄養素と非有機との違い
 
・有機の肉は、およそ50%多めに有益なオメガ-3脂肪酸を含み、脂肪プロファイルが望ましかった。
・有機肉は、心血管疾患リスクの増加に関わる2つの飽和脂肪(ミリスチン酸、パルミチン酸)濃度がわずかに低めであった。

 

●赤肉と加工肉の摂取で死亡率上昇
 
・肉食と菜食が死亡率に与える影響を評価した6件の研究を解析したところ、赤肉摂取量の最小の増加でも急激な死亡率の上昇を示した。
・2014年の研究は、100万人以上を5.5年から28年間追跡調査したもので、加工肉(ベーコン、ソーセージ、サラミ、ホットドッグ、ハム)の摂取は未加工の赤肉(牛肉、豚肉、ラム、ジビエ)同様の関係がみられるとした。
・別の2014年のメタ分析では、心血管系疾患および虚血性心疾患と肉摂取の関係が示された。この150万人以上を含む研究では、加工肉だけが全死因による死亡率を有意に上昇させた。
・これらの統計的に有意な結果と合せて、2003年の50万人以上を含むレビューでは、肉の摂取量が極めて少ない人々は、死亡リスクが25-50%低いことが報告されている。

 

●乳製品の摂取と心血管疾患、がんとの関連
 
・乳製品の消費の増加が心血管疾患、特に脳卒中による死亡リスクを低くすることが観察されたが、がんのリスクとの有意な関連は認められなかった。
・乳製品を全く食べない人は、そうでない人よりも一般的に血圧やBMIが高く、体脂肪も多かった。また週に3-7回乳製品を取り入れている台湾人は、何も食べていない人より生き残る可能性が高かった。
・乳製品の1日の消費量は、週に5サービング程度が最適だと言う。1サービングはコップ1杯の牛乳・チーズ45g・タンパク質8gに相当する。

 

●飽和脂肪酸の摂取で死亡率が増加、不飽和脂肪酸に置き換えると低下
 
・トランス脂肪酸の健康に対する影響が最も大きく、摂取量が2%高まるごとに早死のリスクは16%ずつ高まった。
・飽和脂肪酸の健康影響も同様に高く、死亡リスクに影響を与えた。同じカロリーの炭水化物を摂取した場合に比べて、飽和脂肪酸の摂取量が5%高まるごとに総死亡リスクは8%高まった。
・不飽和脂肪酸の場合は、多価不飽和脂肪酸も一価不飽和脂肪酸も、同じ量の炭水化物と比較して、総死亡リスクを11%から19%低下させた。多価不飽和脂肪酸の中では、植物に多いオメガ-6系脂肪酸も魚油や大豆、キャノーラ油などに多いオメガ-3系脂肪酸も早死リスクの低下と関連していた。
・飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸、特に多価不飽和脂肪酸に置き換えると、有意に総死亡リスクが低下した。また心血管疾患、がん、神経変性性疾患、呼吸器疾患による死亡リスクも低下した。
・飽和脂肪酸を炭水化物に置き換えた人々では、死亡リスクの低下はわずかであった。総脂肪を炭水化物に置き換えると死亡リスクはわずかに上昇した。

 

●飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と筋肉・内臓脂肪の付き方
 
・7週間に渡り、対象者を2群に分けて毎日750kcal分を余分に摂ってもらい、体重をスタート時より3%増やすことを目標とした。
・結果、両群の体重増加量は同程度だったにもかかわらず、飽和脂肪群は多価不飽和脂肪群に比べ、肝脂肪と腹部内臓脂肪が大幅に増加していた。また、体脂肪自体も飽和脂肪群の方が増えていた。一方で、筋肉の増加量は飽和脂肪群は多価不飽和脂肪群の1/3以下にとどまっていた。
・飽和脂肪の過剰摂取によって、内臓脂肪の蓄積をもたらし、同時にインスリン制御を妨げる遺伝子のスイッチを"オン"にすることを発見した。

 

●飽和脂肪酸の摂取で冠動脈性心疾患の増加?
 
・米国の2つの大規模な縦断コホート研究のデータを分析した結果、最も一般的に摂取された主な飽和脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸であり、対象者の総エネルギーのおよそ9から10%を占めた。これらの飽和脂肪酸それぞれは、冠動脈性心疾患のリスク増加と関係していた。
・飽和脂肪酸の複合群(毎日のエネルギー摂取の1パーセント分)を、多価不飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、全粒炭水化物、植物性たんぱく質(同等のエネルギー量)で置き換えることは、冠動脈性心疾患リスクを6から8パーセント低下させると推定された。

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