脳の各部位と睡眠の関係

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  1. 神経伝達物質と睡眠
  2. 視床下部と睡眠
  3. 睡眠と脳幹
  4. モノアミン作動性ニューロン
  5. コリン作動性ニューロン

神経伝達物質と睡眠

●アセチルコリン
 
・人が目覚めているために必要不可欠。活動時には絶え間なく脳を刺激し続け覚醒を保つ。
・覚醒系の中心的な神経伝達物質として脳幹から脳のほとんどの場所まで信号を運ぶ。
・レム睡眠時のアセチルコリンの濃度は目覚めているときの2倍になっている。深い徐波睡眠のあいだはゼロまで落ちている。
 
●GABA
 
・抑制系の神経伝達物質で、反応のスイッチを切ったり、弱める傾向がある。
・覚醒系が出す警戒信号の影響を弱めるので、睡眠には欠かすことができない。
・アルコールはGABAの阻害信号を強め、覚醒系の上行性網様体賦活系(ARAS)のスイッチを切るのを助けて、ノンレム睡眠に落ちられるようにする。
 
●セロトニン
 
・アセチルコリンの影響の一部を抑制する事によって、睡眠に導くことができる。
・ある一定の条件下では覚醒を促すこともでき、セロトニンの濃度は覚醒時に最も高くなる。
・セロトニンはアセチルコリンの活動を妨げる働きがあり、セロトニンのバランスが崩れると睡眠のパターンも混乱してしまう。逆にセロトニンが少なすぎるとレム睡眠が長すぎることになる。セロトニンの不足は不眠症の原因となる。
 
●神経伝達物質の濃度の変化
 
・カフェインはアデノシンの受容体をふさぐ事によって、睡眠をコントロールする神経伝達物質の正常な活動を邪魔する。アデノシンはエネルギー消費の副産物で、日常の活動によって蓄積していく。アデノシンの蓄積は疲労を感じさせるが、カフェインがその受容体をふさいでしまうとその効果を発揮できなくなる。
 
※参考資料『ペネロペ・ルイス(2015)眠っているとき、脳では凄いことが起きている インターシフト』

視床下部と睡眠

※オレキシンについては以下の記事参照。
オレキシン、レプチン、グレリンと睡眠

●視床下部と睡眠
 
・視床下部は恒常性を制御する部位であるが、睡眠と覚醒のコントロールにおいても重要な働きをしている。
・睡眠に関わる部分と覚醒に関わる部分が存在する。
・脳幹に存在する覚醒を制御するニューロン群に働きかけ、睡眠と覚醒のスイッチが切り替えられる。
 
○覚醒に関わる部分
・視床下部の後部に、オレキシンとヒスタミンという脳内物質を作るニューロンが存在。
 
○睡眠に関わる部分
・視床下部の前部の視索前野には、睡眠をつくり出すシステム(睡眠中枢)が存在している。
 
●視索前野、睡眠中枢
 
・睡眠を作り出すニューロン(睡眠時にのみ活性化されるニューロン)が存在。
→このニューロンは、GABA作動性ニューロンであり、脳幹のモノアミン/コリン作動性ニューロンを抑制する。
 
○GABA作動性ニューロン
・抑制性の神経伝達物質であるGABAをもつ。
・覚醒を導き出す脳幹のモノアミン/コリン作動性ニューロンを強力に抑制する。
・オレキシン作動性ニューロンも抑制する。
 
※参考資料『櫻井武(2010)睡眠の科学 講談社』

 

・視床下部を健全に保つには十分な睡眠が必要とされる。
睡眠不足になると視床下部が過活動気味となり、そのせいで生理機能がうまく働かなくなり、睡眠不足がさらに悪化する。
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

睡眠と脳幹

●脳幹と睡眠
 
・睡眠と覚醒は脳全体に及ぶ"モード"変換で、視床下部によるモード切り替えの働きかけを脳全体に伝える役割を果たす部位が脳幹の中になる。
・覚醒(とレム睡眠時の脳の活動)は"脳幹によって上向性に駆動される大脳皮質の賦活"(上行性網様体賦活系)によって起こる。
※上向性:下位の中枢である脳幹から上位の中枢に向かう信号
・脳幹に存在する"モノアミン作動性ニューロン"と"コリン作動性ニューロン"の働きによって大脳皮質全体が活性化される。
 "モノアミン作動性ニューロン"と"コリン作動性ニューロン"は、情報を脳の広範な部分に送ることが出来る"広範投射系"の特徴を持ち、大脳全体を活性化させて覚醒させている。
 
※参考資料『櫻井武(2010)睡眠の科学 講談社』

 

●眠る脳と眠らせる脳
 
・大脳(意識をつかさどる)が眠る脳、脳幹(意識を制御し、生命を維持する)が眠らせる脳。
 
●脳幹と睡眠物質
 
・脳幹から睡眠物質が分泌され、脳脊髄液を介して脳全域に伝えられる。
・ウリジンと酸化型グルタチオンが睡眠促進にかかわっている。液性機構。
 
※参考資料『星作男(2010)睡眠という摩訶不思議な世界の謎を解く シーアンドアール研究所』

モノアミン作動性ニューロン

○モノアミン
・アミノ酸からカルボキシル基が外れた形を基本形とする化学物質の総称で、脳内では神経伝達物質として働く。
・ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、ドーパミンなど
 
○モノアミン作動性ニューロン
・モノアミンと総称される物質をつくるニューロンが主役のシステム。
・ノルアドレナリンは脳幹の青班核、セロトニンは縫線核、ヒスタミンは結節乳頭体という神経核に存在するニューロンがつくる。
 上記神経核は、大脳皮質の広範な部分にまで根を張るようにおびただしく枝分かれした軸索を伸ばしていて、"広範投射系"と呼ばれている。脳全体に伝えることができる。
・モノアミン系の神経伝達物質は、グルタミン酸やGABA(アミノ酸系神経伝達物質)と比べて、はるかに作用時間が遅く、しかも持続的。
・オレキシン作動性ニューロンを抑制する。
 
○覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠時の活動
・覚醒時に活発に活動している。
・ノンレム睡眠時には、活動が低下している。
・レム睡眠時には、活動が停止している。
 
※参考資料『櫻井武(2010)睡眠の科学 講談社』

コリン作動性ニューロン

・アセチルコリンという脳内物質を持つニューロンが主役のシステム。
・脳幹の橋にある外背側被蓋核と脚橋被蓋核と呼ばれる神経核に存在。
・モノアミン系と同様に"広範投射系"の構造を持つ。
・視床にも多く投射し、ここを介しても脳全体に伝える。
 
○覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠時の活動
・覚醒時に活発に活動している。
・ノンレム睡眠時には、活動が低下している。
・レム睡眠時に活発に活動している。
 
※参考資料『櫻井武(2010)睡眠の科学 講談社』

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