腸内細菌とアレルギー、免疫、抗生物質との関係

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  1. 免疫関連の患者増加
  2. 衛生仮説
  3. ホロゲノム選択
  4. 旧友仮説、制御性T細胞との関わり
  5. LPS(リポ多糖類)と腸の透過性、炎症
  6. 抗生物質と腸内細菌、免疫系
  7. 過敏性腸症候群、炎症性腸疾患
  8. 乳酸菌とアレルギー
  9. 善玉菌、悪玉菌と免疫
  10. ネットニュースによる関連情報

免疫関連の患者増加

○東西ドイツで比較
・1990年の東西ドイツ再統一後に、人種や気候環境が同じで経済環境等が異なる東西ドイツの子どもを対照評価。
・豊かな西ドイツの子どもはそうでない東ドイツの子どもに比べ、アレルギー患者が2倍、花粉症患者が3倍も多かった。
 
○豊かになると増える?
・アメリカでは以前から、貧しい家庭より裕福な家庭に食物アレルギーや喘息の子どもが多かった。
・ドイツでは、両親の学歴や職業などから"恵まれている"とされる家庭の子どもは、そうでない子どもに比べてアトピー性皮膚炎になりやすい。
・北アイルランドの貧困家庭に1型糖尿病を発症する子どもはほとんどいない。
・カナダでは、炎症性腸疾患は多くの場合、高所得者層と相関関係がある。
 
※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』

衛生仮説

・幼いときに多くの感染症にさらされることで花粉症その他のアレルギーが発症しにくくなる。
・衛生水準の向上とともにアレルギーが増加しているということを説明できる。
→欧米の人々は身辺を清潔にしすぎて免疫系の出番を減らしたため、免疫系が花粉のような無害のものまで攻撃するようになった?
・感染症の脅威が高い途上国ではアレルギーはまだ少ない。
・衛生仮説は当初は画期的な考え方に思えたが、現在は全面的な見直しに入っている。
→証拠がその考え方に適合せず、仕組みをうまく説明できない。
 
○1989年、イギリスのデイヴィッド・ストラカンの調査
・イギリスの1958年3月の特定の一週間に生まれたイギリスの小児17,000人の13歳になるまでの健康状態などの情報のデータベースを調査。
・アレルギーは感染症になる体験が少なすぎることに起因する。
・花粉症になりやすいのは圧倒的に一人っ子で、兄弟の数が多くなるほど花粉症になりにくかった。
・弟や妹がいる子よりも、兄や姉がいる子の方が花粉症になりにくかった。
 
※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』

ホロゲノム選択

・宿主とその微生物の組合せは、"ホロバイオント"と呼ばれている。
・繁殖の有利さのために個体や集団が自然選択で選ばれるだけでなく、ホロバイオントも選ばれる、という概念。
・自然選択は、宿主と共生微生物の両方に働き、個体を選ぶのと同じように両者の組合せを選ぶ。
・最終的に選択されるのは遺伝子だが、宿主動物の遺伝子だけでなく、微生物の遺伝子も同時に選ばれている。
・ヒトの免疫系も単独で進化したのではなく、あらゆる微生物といっしょに育ってきたシステム。
・数千年にわたる提携関係を通じて、免疫系は微生物が共生するのを当然のこととみなしてきたので、微生物が不在だとバランスが崩れる。
 
●無菌マウスの免疫系
 
・盲腸が巨大で、小腸壁にひだがないマウスがよく見られる。
・免疫系が脆弱で、無菌室から外に出すと感染症にやられて死んでしまう。
→腸内細菌が免疫系の発達を後押ししている。
 
※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』

旧友仮説、制御性T細胞との関わり

●アグネス・ウォルドの研究、旧友仮説
 
・スウェーデン、イギリス、イタリアで、時間の経過とともに乳児の腸内細菌がどう変化するかを追跡する大規模研究を行った。
・先進国の超衛生的な乳児の腸内にコロニーをつくっている微生物は種類が少なかった。そして、エンテロバクター属の細菌が少なかった。代わりに多かったのが、基本的に腸内より皮膚に棲むブドウ球菌グループの細菌だった。
・特定の単一種、または単一グループの微生物がアレルギーの発症と相関関係を示すことはなかったが、全体的な微生物の多様性とは関係がありそうだった。
・のちにアレルギーを発症することになった乳児の腸内では、そうでない乳児の腸内より微生物の種類がずっと少なかった。
・免疫系の発達に必要なのは、衛生的な環境のおかげて消えてしまった感染症というより、古くから友好関係を築いてきた微生物たちによる正常なコロニー形成。
 その"旧友"たちはヒトと一段階ずつ共に進化してきており、ヒトの免疫系とも深く影響しあっている。
 
●制御性T細胞と共生微生物
 
・共生微生物は、免疫系によって自己として認識される。
・制御性T細胞は、免疫系の炎症反応を抑制する役目を担っている。
・最近の研究で、共生微生物が制御性T細胞に指令を出しているということが分かった。
→共生微生物は、抑制系の免疫細胞の数を操作することにより、微生物自身の生存を有利にしている。
・無菌マウスの制御性T細胞の効力を通常マウスと比較すると、無菌マウスが過剰な免疫反応を抑えるには、通常マウスと比べて膨大な数の制御性T細胞が必要になることが分かった。
→共生微生物不在で育ったマウスの体内で産生される制御性T細胞の効力は、極めて低い。
・無菌マウスに通常マウスの共生微生物を加えてやると、制御性T細胞の数が増え、免疫系の過剰攻撃をなだめることができた。
 
○クローン病、潰瘍性大腸炎
・マイクロバイオータの通常の組成比が変わると、制御性T細胞がいつもなら自己と認識している腸内コロニーに対して非自己として認識され、攻撃されてしまうのかもしれない。
 
※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』

 

●常在細菌による"免疫"
 
・常在細菌は、外来微生物と競合し、外来微生物を排除しようとする。
・腸内にすでに存在する細菌は、外来微生物に対して、自前の抗生物質を含む有害な物質を分泌したりさえする。
・侵入してきた外来細菌が、数日間、なんとかそこに居続けることはあるかもしれないが、いずれ排除される。常在細菌は、状況を一定に保ち続ける働きをする。
※病原体に関しては例外もある。
 
※参考資料『マーティン・J.ブレイザー(2015)失われてゆく、我々の内なる細菌 みすず書房』

 

●制御性T細胞と腸内細菌
 
・制御性T細胞は、他の免疫細胞の暴走を抑える"なだめ役"をしている特殊な免疫細胞で、アレルギーや自己免疫疾患の治療に使えるのではと期待されている。
 
○理化学研究所の大野博司の研究
・制御性T細胞が生まれる仕組みを明らかにした。
・マウスに食物繊維が多い食事を与えると、制御性T細胞の数が増加することがある。
・短鎖脂肪酸の酪酸が未熟なT細胞に働きかけ、DNAのスイッチを切り替えることで、制御性T細胞が大きく増える。
・腸内細菌は人体にとっては"部外者"で免疫細胞から攻撃を受ける立場。
→腸内で生きながらえるためには、攻撃を抑える側の制御性T細胞が増えた方が都合が良い。
 
※参考資料『NHKスペシャル取材班(2015)腸内フローラ10の真実 主婦と生活社』

LPS(リポ多糖類)と腸の透過性、炎症

●LPS(リポ多糖)とは
 
・脂質と糖質の合成物で、ある種の細菌の外壁になる主要な構成要素。
・腸内細菌を健全に構成させることに加え、LPSはこうした腸内細菌が胆嚢から分泌される胆汁酸塩によって消化されてしまわないように守っている。
・通常、腸内に豊富に見られ、腸内フローラの50~70%を占める。
 
●腸の透過性、血液への侵入
 
・LPSが動物の血流に入ると、激しい炎症を起こすことが以前から知られている。その炎症は非常に激しいので、細菌の細胞から発生する毒素を意味する"エンドトキシン"とも呼ばれる。
・健康な体内では腸壁から血液への侵入が防がれているが、腸壁が漏れやすい状態になっているとLPSは血流に侵入し、ダメージを与え、炎症の燃料となる。
→そのため、血液中のLPS値は、体内の全体的な炎症だけでなく、腸の透過性も示している。
・アルツハイマー病、多発性硬化症、炎症性腸疾患、糖尿病、パーキンソン病、ALS、関節リウマチ、うつ病、自閉症などでLPSの値との関連性が指摘されている。
 
※参考資料『デイビッド・パールマター(2016)「腸の力」であなたは変わる 三笠書房』

 

●腸の透過性
 
・腸壁の細胞と細胞の間は、鎖状のタンパク質でつなぎ合わされているが、腸壁はやや柔軟性があり、ときおりこの鎖がゆるくなり、血液から腸へ、またはその逆方向への物質の移動が可能となる。
→下痢の際は、血液から腸へ水分が押し出されている。
・腸の細胞を互いに結び付けている鎖は、ゾヌリンと呼ばれるタンパク質によって透過性をコントロールされている。
→ゾヌリンが多ければ鎖がゆるんで細胞と細胞の間隔が広くなり、そこを大きな分子が通過して血液中に入る。
・腸内細菌のバランスが乱れると、免疫系が刺激されて免疫系が反応し、ゾヌリンで鎖をゆるめて隙間から水を放出する。このとき隙間から逆方向に血液への流入も発生する。(リーキーガット)
・腸の透過性による血液への侵入は、グルテンやラクトースのような食物分子の場合もあればLPSのような細菌由来の物質の場合もある。
 
●セリアック病、1型糖尿病、肥満、うつ病と腸の透過性
 
・セリアック病はグルテンが自己免疫反応を生じさせるが、グルテンを食べただけでは免疫系に作用しない。グルテンが腸壁を通過して、免疫細胞と接触しなければならないが、グルテンはサイズが大きすぎて腸壁を通過することは通常不可能。
・セリアック病の腸組織にはゾヌリンが高濃度で存在しており、腸壁に隙間が出来てグルテンを血液中に通していた。
・1型糖尿病患者でも腸壁に隙間が出来て高濃度のゾヌリンが存在していた。
・肥満に関係しているLPSも大きな分子で通常は腸壁を通過できないが、腸の透過性が上がると隙間を通って血液中に入る。
・うつ病や自閉症、統合失調症の患者には、腸の透過性の高まりと慢性的な炎症が見られるケースが多かった。
・乳児のときに母親と引き離されたり愛する人を失ったりするようなトラウマ的な出来事があると、腸に隙間ができることがあるようだ。
・うつ病には肥満や過敏性腸症候群やニキビをともなうことが多いが、リーキーガットが慢性的な炎症を引き起こし、体と心の健康問題を共に発症させているのかもしれない。
・肥満、アレルギー、自己免疫疾患、心の病気はどれも、腸の透過性の高まりと慢性的な炎症を併発している。
 
※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』

 

●腸のバリア機能が低下する原因は?
 
・腸壁の細胞は、腸内細菌が出す短鎖脂肪酸をエネルギー源にしている。
腸内フローラのバランスが乱れて、短鎖脂肪酸の生産量が減ると、腸の細胞が活力を失ってバリア機能が低下してしまう。
・腸のバリア機能を回復するには、短鎖脂肪酸を増やす食物繊維が多めの食事をすれば良い。逆に、高脂肪食に偏った食生活をしている人は、血液中のLPS濃度が高いことも分かっている。
 
※参考資料『NHKスペシャル取材班(2015)腸内フローラ10の真実 主婦と生活社』

抗生物質と腸内細菌、免疫系

・抗生物質によって腸内細菌が乱されると感染症にかかりやすくなる。
→抗生物質によって、微生物の組成比が変わり、この組成比によって免疫系の振る舞いが変わるらしい。
→腸の粘液層の表面に抗生物質がやってくると、そこにいるある種の腸内細菌が殺され、組成比が変わり、免疫系の振る舞いが変わる。
 この変化はヒト遺伝子に直接作用し、保護用の粘液層の材料となるタンパク質の製造を止めさせる。
 粘液層が薄くなると、あらゆる種類の微生物が腸壁に侵入しやすくなる。微生物または微生物がつくる化学物質が腸壁を通過して血液中に入ったら、免疫系は過剰攻撃態勢をとる。
 
○イギリスのブリストル大学の研究グループの調査
・1990年初期に妊娠していた14,000人の女性から生まれた子どもの健康と日常生活全般を集めたデータを使って調査。
・2歳になる前に抗生物質を与えられた小児は、8歳になるまでに喘息を発症する率が2倍近くも高かった。
・抗生物質の治療回数が多い子どもほど、喘息や皮膚炎、花粉症を発症しやすかった。
 
○ニキビ
・抗生物質の投与はごく一般的なニキビ治療法で、多くの人は何ヶ月もその治療法を続ける。
 しかし、抗生物質は皮膚の細菌だけに作用するのではなく、腸の細菌にも作用する。
・近年では、アクネ菌はニキビの発症を左右する要素ではないことが明らかになりつつある。
・ニキビ患者の皮膚には免疫細胞が過剰に存在する(発疹のない場所でも)。
→ニキビも慢性的な炎症の一形態なのかもしれない。免疫系が、アクネ菌その他の皮膚常在菌を味方ではなく敵とみなすようになって過剰反応しているのではないか、という考え方も出てきている。
 
※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』

過敏性腸症候群、炎症性腸疾患

●過敏性腸症候群
 
・欧米人の約5分の1(多くは女性)が苦しんでいる。
・生活の質を下げる病気のランキングでは常に上位で、人工透析を要する腎不全やインスリン注射を要する糖尿病より上位。
・過敏性腸症候群のはじまりが、感染したときではなく抗生物質による治療中だったという人もいる。
・抗生物質や感染症によってディスバイオシス(腸内細菌のバランスの乱れ)が生じる。
・不健康なダイエットをしたり、危険な薬を服用したりしたときも同じように、微生物のバランスが乱れてその多様性を減少させる。
 
・過敏性腸症候群の人と健康な人の腸内の微生物種を比べると、腸内細菌にはっきりと違いが見られた。
→一部の人は健康な人と変わらないが、そうした患者は気分が憂鬱だと訴えることが多く、心の病気がもとと思われるが、それ以外の人は、ディスバイオシスが主な原因であり、ストレスはそれを悪化させる付加要素でしかない。
・過敏性腸症候群の腸内細菌は健康な人と比べて単に違うというだけでなく不安定。細菌グループ間の存在量比率が高くなったり低くなったりと移り変わりが激しい。
 しかし、過敏性腸症候群の患者の微生物集団に明白な病原体が見つからない場合、腸の機能を混乱させている原因をディスバイオシスだと決め付けることはできない。
 
・過敏性腸症候群は、炎症性腸疾患と違って腸の表面に潰瘍こそできないが、正常なときにはない炎症が別のところに生じている。
→このとき体は、腸壁を覆う細胞間に隙間をつくってそこから水分を出し、トラブルのもとを腸の外に洗い流そうとしているように見える。
 
○症状のタイプと微生物種
・膨満感や食欲不振の患者
シアノバクテリアが多い。
・腹痛に苦しむ患者
プロテオバクテリアが多い。
・便秘の患者
17種類の細菌グループすべてにおいて腸内での存在量が増えていた。
 
●炎症性腸疾患
 
・炎症性腸疾患の患者は健康な人と比べて結腸直腸癌になりやすい。
・炎症成長疾患と同時に生じるディスバイオシスによって炎症が引き起こされ、腸壁のヒト細胞のDNAをなんらかの形で傷つけて癌を誘発してしまうのかもしれない。
・ディスバイオシスがリーキーガットと炎症を促進するなら、他の臓器でも癌が発生しやすくなる。
 
※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』

乳酸菌とアレルギー

●抗体の種類
 
・IgG(免疫グロブリンG)
体内で最も多く製造。血液中で働く。
・IgA
腸内の粘膜。
・IgE
アレルギー
 
●腸内細菌とアレルギー
 
・IgE抗体が、目、鼻、皮膚、腸などの粘膜にある肥満細胞と結合することでアレルゲンに過剰反応し、ヒスタミンが分泌され、アレルギー反応が引き起こされる。
 一度かかった人は抗体ができてしまうため、改善が困難。
 
・健常な子供とアレルギーにかかった子供の便における腸内フローラを観察すると、健常な子供の方が乳酸菌の割合が非常に多いことがわかっている。
 腸内に乳酸菌が多いと、Toll様受容体(TLR)のセンサーが作動し、自然免疫が活性化されることで、アレルギーが起こりにくい状態に誘導されることが考えられる。
 
※参考資料『光岡知足(2015)腸を鍛える 祥伝社』

善玉菌、悪玉菌と免疫

・子どもの頃に大腸に棲みついた外来の腸内細菌が、大腸の免疫細胞の力を上げるための訓練相手になっている。
 ビフィズス菌や乳酸かん菌などの善玉菌は免疫力を上げてくれ、ウェルシュ菌などの悪玉菌は免疫力を低下させてしまう。
 
・からだ全体の免疫力を上げるには、善玉菌を増やすことが必要。
 
※参考資料『澤田幸男,神矢丈児(2015)腸が寿命を決める 集英社』

 

●乳酸菌と自然免疫
 
・食べ物に含まれる乳酸菌が小腸に到達
→パイエル板を構成している"M細胞"という上皮細胞の一つに取り込まれ、ここに待機していた樹状細胞に捕らえられることで免疫活性が促される。
→樹状細胞表面のTLR(Toll Like Receptor)が反応することで、細胞からサイトカインや抗菌ペプチドが分泌され、有害な菌の繁殖が抑えられるほか、抗体を製造する獲得免疫の働きも活発になる。他にもNK細胞の活性化やアレルギーの抑制作用なども期待される。
 
・TLRが反応するのは菌体成分なので、乳酸菌の腸管免疫による効果は、"生きた菌"でなくてもよい。加熱殺菌したヨーグルトでも効果がある。
 大事なのは菌の数で、なるべく多くの乳酸菌を送り込むと、腸管免疫を刺激し、健康効果を高めることができる。
 
※参考資料『光岡知足(2015)腸を鍛える 祥伝社』

ネットニュースによる関連情報

●乳幼児期の抗生物質が腸内細菌、健康に与える影響
 
・抗生物質と腸内細菌叢の変化、そして成人期の疾患の間には強い相関がみられるというエビデンスを発見した。
・アレルギーの場合、抗生物質の使用は、免疫細胞の成熟を助けるときに鍵となる腸内細菌を除去すると推測している。除去された細菌が再び戻ってきても免疫系に一度ついた不具合はそのまま残ってしまう。
・肥満についていえば、抗生物質によって腸内細菌が変化する結果、短鎖脂肪酸の量が増加し、それが代謝に影響を与えると推測している。

 

●抗生物質の副作用は、予想以上に複雑で広範囲
 
・抗生物質は微生物叢を枯渇させ、腸内の重要な免疫機能を低下させる以外にも影響を与えていた。
・腸上皮は栄養を吸収する部位であり免疫系の一部であり、人の健康に重要な役割を果たす他の生物学的機能でもあるため、その破壊は重大な影響を与える。
・抗生物質や抗生物質耐性菌がミトコンドリア機能に大きな変化を引き起こし、それが上皮細胞死をまた引き起こすことが明らかとなった。
・グルコース代謝、肥満、食物吸収、うつ病、ストレス、免疫機能、敗血症、アレルギー・喘息にも関連していることを示唆している。

 

●食物繊維と免疫、アレルギーとの関連
 
・ピーナッツ・アレルギーを持つように人工的に造られたマウスと無菌マウスを使って実験。
・高食物繊維食を食べて育ったマウスはアレルギー症状が抑えられること、また、そのマウスの腸内細菌が移植されたり、腸内細菌が作った物質を投与されたマウスも症状が抑えられることなどがわかった。
・腸内細菌は食物繊維の摂取量に応じて特有の脂肪酸を作り出すこと、そしてそれは免疫系を変化させ、最終的にはアレルギー反応に影響を与えることが示された。
 腸内細菌が食物繊維を分解して生成した副産物(主に短鎖脂肪酸)が制御性T細胞(過剰な免疫反応を抑制するためのブレーキとなる免疫細胞)にある特定の受容体へ結合することによって、免疫系をサポートすることを示した。この結合は、食物に対するアレルギーが起こったときに、それを緩和して腸の炎症を調整する流れを促進する。

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