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免疫、腸の透過性と心の病
※腸の透過性については以下の記事参照。
腸内細菌とアレルギー、免疫、抗生物質との関係の”LPS(リポ多糖類)と腸の透過性、炎症”
腸内細菌とアレルギー、免疫、抗生物質との関係の”LPS(リポ多糖類)と腸の透過性、炎症”
・心の病気に苦しむ人には、免疫系の過剰活動、すなわち炎症が観察される。 ・注意欠陥多動性障害、強迫性障害、双極性障害、統合失調症、パーキンソン病、認知症はどれも免疫系の過剰反応が関係している。 ・免疫系が過剰に働き、サイトカインを好戦的なレベルにまで押し上げている。 ・うつ病や自閉症、統合失調症の患者には、腸の透過性の高まりと慢性的な炎症が見られるケースが多かった。 ・乳児のときに母親と引き離されたり愛する人を失ったりするようなトラウマ的な出来事があると、腸に隙間ができることがあるようだ。 ・うつ病や自閉症、統合失調症の患者には、腸の透過性の高まりと慢性的な炎症が見られるケースが多かった。 ・乳児のときに母親と引き離されたり愛する人を失ったりするようなトラウマ的な出来事があると、腸に隙間ができることがあるようだ。 ・うつ病には肥満や過敏性腸症候群やニキビをともなうことが多いが、リーキーガットが慢性的な炎症を引き起こし、体と心の健康問題を共に発症させているのかもしれない。 ・肥満、アレルギー、自己免疫疾患、心の病気はどれも、腸の透過性の高まりと慢性的な炎症を併発している。 ※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』
ストレスの影響
●腸と脳のストレス反応、2004年、須藤信行と千田要一の研究 ・一方は腸内に微生物がいない無菌マウスでもう一方は腸内微生物一式を抱えた通常マウス。 ・狭い管に閉じ込めてストレスを与えると、両グループともマウスはストレスホルモンを出したが、無菌マウスのホルモン濃度は2倍高かった。 ・ストレスに過剰反応する無菌マウスに通常マウスの腸内細菌を入植させると、成体の場合は変わらなかったが、幼いうちに入植させれば、ストレスに過剰にならないマウスに育った。 ※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』
・九州大学の須藤信行教授の研究グループは、"狭いチューブに1時間ほど閉じ込められた無菌マウスは、普通のマウスに比べ、ストレスホルモンを多く生成すること、さらに、ビフィズス菌の一種を無菌マウスにあらかじめ投与しておくと、ホルモン量が正常に保たれる"事を観察した。 ※参考資料『杉山政則(2015)現代乳酸菌科学 共立出版』
※腸の透過性については以下の記事参照。 腸内細菌とアレルギー、免疫、抗生物質との関係の"LPS(リポ多糖類)と腸の透過性、炎症" ●ストレスと腸と炎症 ・コルチゾールの増加は、腸内細菌の構成を変えてしまう。 次に、細胞から化学物質を放出して腸壁の透過性を増加させる。 ・コルチゾールは免疫細胞からの炎症性化学物質の分泌を促進する →これらの化学物質は腸内の炎症を増やし、ますます透過性を高める。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2016)「腸の力」であなたは変わる 三笠書房』
腸内細菌と性格
○カナダ、マクマスター大学の研究 ・2種類の性格の異なる系統のマウスを、互いの腸内微生物を移してから箱の中の台の上に置いた。そして、台の上から降りて周囲を探索し始めるまでの時間を測定した。 ・いつもなら勇敢タイプのマウスは、心配性のマウスの微生物を移されると、台の上から降りるまでに3倍もの時間をかけるようになった。同じく、神経質なタイプのマウスは、勇敢なタイプのマウスの微生物を移されると、台の上から早く降りるようになった。 ※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』
うつ病との関連
●セロトニンと腸内細菌 ・抗うつ薬は神経伝達物質のセロトニンの有効性を高めることで効果がでると言われているが、セロトニンの前身であるトリプトファンは腸内細菌によって厳密にコントロールされている。 ・ビフィドバクテリウム・インファンティスと呼ばれる細菌がトリプトファンを有効にすることが分かっている。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2016)「腸の力」であなたは変わる 三笠書房』
●セロトニン、トリプトファン ・神経伝達物質のセロトニンは主に腸内にあり、腸の働きを円滑にしているが、全体の10%ほどは脳にあり、気分や記憶を調節している。 ・トリプトファンの血中濃度が上がると、セロトニンに直接変換される。 ・うつ病患者ではトリプトファンの血中濃度が低いことが多く、トリプトファンを含むたんぱく質をあまり食べない国では自殺率が高いという。 ・トリプトファン含有食品の摂取をやめると一時的に重症のうつ病になる。 ・トリプトファン不足はセロトニン不足を意味し、セロトニン不足は幸福感不足を意味する。 ・免疫系の過剰反応でトリプトファンが破壊される? ※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』
自閉症との関連
●遅発性自閉症 ・正常に成長した後、1~3歳になって発症する。 →この時期は、大人とほぼ同じ安定した腸内細菌が確立する時期でもある。 この時期に抗生物質の治療を受け、腸内細菌が乱され、クロストリジウム属の細菌が多くなると、脳にダメージを与えることもある? クロストリジウム属の細菌が脳にダメージを与えるような毒素を出す? ●リチャード・サンドラー、シドニー・ファインゴールドの研究 ・遅発性自閉症と下痢を併発している子ども11名を対象に抗生物質試験。 ・抗生物質の投与によって、みな単一の事物や行動に固執することがなくなり、家族の言うことも聞くようになり、効果が見られた。 ・しかし、試験中に改善した健康状態とふるまいを持続させることができなかった。抗生物質をやめると一週間で以前のような退行状態に戻ってしまった。 ●2001年、シドニー・ファインゴールドの研究 ・自閉症児13名と健康児8名で、大腸内にいる微生物を比較する対照試験を実施。 ・自閉症児は健康児と比べて、平均すると腸内にクロストリジウム属の細菌が10倍も多くいた。 ●プロピオン酸と腸内細菌 ・代表的な短鎖脂肪酸は、酢酸、酪酸、プロピオン酸 ・プロピオン酸は、消化されなかった食べ物を腸内細菌が分解する時できる物質。 ・プロピオン酸を産生するのはクロストリジウム族の細菌だということが知られている。 ・デリック・マクフェイブというカナダの研究者は、ラットの脳脊髄液に微量のプロピオン酸を注入した。数分後、ラットはその場でぐるぐる回ったり、単一の物体に固着したり、突発的に走ったりするようになった。二匹のラットを同じケージに入れてプロピオン酸を注入すると、立ち止まって互いの匂いを嗅ぎ合うことをせず、相手を無視してケージの中をぐるぐる回り続けた。 →ラットの振る舞いが変化し、その振る舞いは自閉症患者と似ている? ※参考資料『アランナ・コリン(2016)あなたの体は9割が細菌 河出書房新社』
●自閉症と腸の状態 ・腹痛、便秘、下痢、腹部の膨満感が、多くの自閉症の子ども達の親から報告されている。 ・2012年に、アメリカ国立衛生研究所が自閉症の子ども達を調べたところ、85%に便秘が見られ、92%に消化器官の不調が見られた。 ・アメリカ疾病管理予防センターの推定では、自閉症の子どもはそうでない子どもに比べて慢性的な下痢や便秘の症状が3.5倍も多い。 ・2010年の研究によると、重度の自閉症の患者には、より高濃度のLPSのパターンが見られた。 ・自閉症患者の93%にリンパ組織の増加が見られた、という研究報告がある。 ・自閉症の人はクロストリジウム属菌を多く持つ傾向があり、他の腸内細菌のバランスを乱し、ビフィズス菌などの有益な微生物を減少させてしまう。 ●プロピオン酸の脳への影響 ・短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維を分解するときにつくられる代謝産物。腸内細菌がつくる主要な短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸の三つ。 ・これら三つの脂肪酸の割合は腸内細菌の多様性や食事のあり方に左右される。 ・クロストリジウム属菌はプロピオン酸を豊富につくる。 →プロピオン酸が腸壁の細胞をつないでいる結合を弱めることにより、腸の透過性を高める。 →プロピオン酸は血流に入り、炎症を起こす。 →細胞が次の細胞へと信号を送る経路を使用不能にしてしまう。 →プロピオン酸はミトコンドリアの機能も弱め、それが脳のエネルギーを使う能力を変える。加えて酸化ストレスも高めるため、タンパク質や細胞膜、重要な脂肪とDNAさえも傷つける。そして、たとえば抗酸化物質、神経伝達物質、オメガ3脂肪など、脳が正常に機能するのに必要な様々な分子を浪費する。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2016)「腸の力」であなたは変わる 三笠書房』
・無菌環境下で生育させて、腸内細菌叢をもたないように育てたマウスは、ほかのマウスを認識する能力に欠けていた。 有害菌を増やして有益菌を減らすように腸内細菌叢を変化させると、不安症や鬱病のほか、自閉症に似た行動を取ることが観察された。 上記結果は、腸内細菌のつくる代謝産物が、脳神経細胞に対しプラスに作用するためと推測されている。 ・自閉症の子マウスの40~90%が胃腸障害をとなっており、腸内細菌叢にも異常があった。ところが、その子マウスにバクテロイデスとクロストリジウムを接種すると、腸内細菌叢が正常になったほか、反復行動とコミュニケーション能力の低下が抑えられ自閉症が改善された。 ※参考資料『杉山政則(2015)現代乳酸菌科学 共立出版』
ADHDとの関連
※腸内細菌と脳内化学物質との関連については以下の記事参照。
腸内細菌の作用の概要の”腸内細菌と脳内化学物質”
腸内細菌の作用の概要の”腸内細菌と脳内化学物質”
●抗生物質、腸内細菌との関連 ・抗生物質は腸内細菌の構成を変え、それによって腸壁が弱くなり、腸内で起きていることに対する脳の反応が変わってしまう。 →重要な神経伝達物質の濃度を変え、脳を刺激する炎症性化学物質の発生を促して、脳の機能を弱めてしまう。 ・脳の機能に不可欠なビタミン群の生成も阻害される。 ・パデュー大学のローラ・J・スティーブンス博士の研究結果によると、母乳で育った子ども達がADHDと診断される割合は低く、また、母乳で育った期間と子どもがADHDを発症するリスクには関係があるという。また、耳感染症が頻発し、抗生物質との接触が多いと、ADHDを発症するリスクが高くなるという。 ・別の研究によると、帝王切開で生まれた子どもはADHDを発症するリスクが3倍に増加した。 ●ADHDと便秘 ・"ペディアトリックス"に最近掲載された研究結果によると、便秘を訴える率はADHDの子どもの方が3倍近くも高かった。 →ADHDの子ども達の消化管に何かが起こっていて、それが脳の機能に影響していることを示唆している。 ●GABAとの関連 ・ジョンズ・ポプキンス大学のリチャード・エデン博士の研究結果によるとADHDの子ども達のGABAの濃度はそうでない子ども達と比べてかなり低かった。 ・"ジャーナル・オブ・アプライド・マイクロバイオロジー"に掲載された報告によると、ラクトバシラス属(乳酸桿菌)とビフィドバクテリウム属(ビフィズス菌)がGABAを豊富に生成することが分かっている。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2016)「腸の力」であなたは変わる 三笠書房』