膵臓がんの概要、リスク要因、予防

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  1. 膵臓がんの概要
  2. 症状
  3. 疫学・統計
  4. 原因、リスク要因
  5. BMI
  6. 魚介類、n-3多価不飽和脂肪酸

膵臓がんの概要

・膵臓は、食物の消化を助ける膵液の産生(外分泌)とインスリンやグルカゴンなど血糖値の調節に必要なホルモンの産生(内分泌)という2つの役割を持つ。
・膵臓にできるがんのうち90%以上は、膵管の細胞にできる。これを膵管がんといい、膵臓がんは、通常この膵管がんのことを指す。
・膵臓は体の深部に位置し、胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆のう・脾臓などに囲まれているため、がんが発生しても見つけるのが非常に難しい。
 その上、どんな人が膵臓がんになりやすいのかもよくわかっていない。
 また、早い段階では特徴的な症状もないため、膵臓がんとわかったときにはすでに進行していることが多い。

症状

・早期の膵臓がんに特徴的な症状はない。
・膵臓がんの患者が訴える症状としては、胃のあたりや背中が重苦しい、何となくおなかの調子がよくない、食欲がない、体重の減少など。
 ただ、このような症状は膵臓がんでなくてもいろいろな理由で起こるものでもある。
・比較的膵臓がんに関連のある症状として、体や白目が黄色くなる黄疸がある。黄疸が出ると、体がかゆくなったり、尿の色が濃くなったりする。
・糖尿病を発症したり血糖のコントロールが急に悪くなったりすることがある。

疫学・統計

・予測がん罹患数(2014年)では、がん全体に占める割合が、男性は4%、女性が5%となっている。
・年齢別にみた膵臓がんの罹患率は60歳ごろから増加して、高齢になるほど高くなる。

原因、リスク要因

・膵臓がんは、発生率が低かったことなどの理由で研究が限られており、はっきり原因がわかっていない。
・膵臓がんのリスク要因として現在確立されているのは、喫煙および肥満だけ。
・成人期における高身長、20歳までの体格指数(BMI)など、若年期の高成長に関わる因子はおそらく確実なリスク要因。
・糖尿病の罹患や大量飲酒に伴う慢性膵炎によってリスクが上がるという報告がある。

BMI

・肥満は、膵臓がんのリスク要因として確立されている。
・成人期における高身長、20歳までの体格指数(BMI)など、若年期の高成長に関わる因子はおそらく確実なリスク要因。
 
 
●日本の多目的コホート研究(JPHC Study)の結果
・多目的コホート研究(JPHC Study)とは?

アジア人におけるBMIと膵がん死亡との関連
 
・バングラデシュ、中国、インド、日本、韓国、シンガポール、台湾の16集団(計883,529人)のアジア人を対象にして、体型の指標であるBMIと膵がん死亡の関連を調べた。
 
○体型と膵がん死亡との関連
・アジア人全体としては、体型と膵がん死亡との関連は見られず、肥満は東アジア人、南アジア人ともに膵がんと関連は見られなかった。
・年齢、喫煙状況、糖尿病歴によって関連に差が出ることはなかった。
・東アジア人において、BMI18.5未満でかつ糖尿病既往群でリスクが2.01倍高くなった。
・これらの結果から、これまで示唆されてきた高BMIと膵がんリスクとの正の関連は、この大規模アジア人集団には当てはまらないことが示唆された。
 
○推察
今回の研究の結果、アジア人集団では関連が見られない理由として以下が考えられる。
・アジア人では肥満割合が2.5%と欧米の統合解析などで報告されている16-20%と比較して低い。
・同じ肥満度における体脂肪の蓄積特性や生活習慣要因が白人集団とアジア人集団とで異なる。

魚介類、n-3多価不飽和脂肪酸

●日本の多目的コホート研究(JPHC Study)の結果
・多目的コホート研究(JPHC Study)とは?

魚介類、n-3多価不飽和脂肪酸摂取と膵がん罹患との関連について
 
・対象者をアンケート調査結果から算出した魚介類(さけ・ます、かつお・まぐろ、あじ・いわし、しらす、タラコといった魚卵、ウナギ、イカ、タコ、エビ、アサリ・シジミといった貝類、かまぼこといった加工食品、干物、など19質問項目を使用)、n-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)摂取量で4つのグループに分け、最も摂取量が少ないグループに比べ、その他のグループで膵がんのリスクが何倍になるのかを調べた。
 α-リノレン酸(ALA)はn-3 PUFAの成分の一つだが主に野菜などの種に多く含まれるため、魚介類に多く含まれるn-3 PUFAとして、EPA、DPA、DHAの総量(以下、魚介類由来n-3 PUFA)を用いた検討も行った。
 
○結果
・魚介類由来n-3 PUFA(EPA+DPA+DHA)、DDHAそれぞれ摂取量最小グループに比べて最大グループで約30%統計学的有意に膵がん罹患リスクの低下を認めた。
 また、EPA、DPAについても、最小グループに比べ、最大グループで膵がん罹患リスクが低下する傾向が見られた。
 
○推察
・膵がん発生には慢性の炎症が関与していると報告されている。また、魚介類由来n-3 PUFAは抗炎症、免疫調節作用を有すると報告されている。
 メカニズムの点から考えると、魚介類由来n-3 PUFAを多く摂取することにより、膵がん発生に関与する慢性炎症の影響が軽減しているのかもしれない。

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