食後高血糖、血糖値スパイクによる悪影響

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. 高血糖と糖尿病
  2. 食後高血糖の悪影響
  3. 血糖の急変動、血糖値スパイク
  4. 高血糖と酸化ストレス、動脈硬化
  5. 血糖上昇が脳に与える悪影響
  6. 糖尿病の悪影響、合併症
  7. 血糖値スパイクに対する対策
  8. 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
  9. ネットニュースによる関連情報

高血糖と糖尿病

・高血糖が続くと糖尿病がさらに悪化する。
 インスリンはすい臓の中のランゲルハンス島のβ細胞で作られるが、高血糖が続くと糖の毒性によってβ細胞が次第に壊れていく。インスリンが作られなくなる。
 
※参考情報『小坂眞一(2008)心臓病の9割は防げる  講談社』

 

●糖毒
・2型糖尿病では、高血糖そのものがインスリン分泌を抑制し、インスリンに対する筋肉組織の応答が低下してインスリンが効きにくくなる"インスリン抵抗性"を増大させて、ますます高血糖になるという悪循環を招く。高血糖によるこの悪循環を糖毒と呼ぶ。
 
※参考資料『江部康二(2015)江部先生、「糖質制限は危ない」って本当ですか? 洋泉社』

食後高血糖の悪影響

●国際糖尿病連合
・世界の160を超える国と地域の200以上の糖尿病関連の団体が加盟する組織
 
○食後高血糖の管理に関するガイドライン、2007年、2011年
・食後高血糖が糖尿病合併症、がん、動脈硬化をはじめとする様々な疾患のリスクになる。
 
○2007年「食後血糖値の管理に関するガイドライン」からの抜粋
 
・食後および負荷後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子である。
・グリセミックロード(GL)の低い食事は食後血糖値のコントロールに有益である。
・食後血糖値をコントロールするためには、食事療法および薬物療法を考慮すべきである。
・食後高血糖は糖尿病網膜症と関係する。
・食後高血糖は、酸化ストレスを生じ、血管内皮を障害する。
・食後高血糖は認知障害にも関係する。
・食後高血糖はがん発症リスク上昇と関連する。
・食後血糖と空腹時血糖を共にターゲットにすることは、血糖コントロール達成の最善の戦略である。
・HbA1cは6.5%未満が目標。
・食後2時間血糖値は140mg/dLを超えないようにする。
 
○2011年改定の追加項目
 
・血糖自己測定を推奨。
・食後血糖値は、食後1~2時間で測定されるべきで、160mg/dl未満が目標。
・食後高血糖は心筋の血液量と血流を減らす。
・持続的に血糖値を測定するシステム(CGM)の普及により、薬、食事、ストレス、運動など様々な要素が血糖に影響を与えるのをチェックできる。
 
※参考資料『江部康二(2015)江部先生、「糖質制限は危ない」って本当ですか? 洋泉社』

血糖の急変動、血糖値スパイク

・一気食いをすると、あっという間に食べたものが腸を通過してしまい、インクレチンの分泌が間に合わないうちに糖が吸収されてしまい、高血糖になってしまう。
 空腹のときの血糖は正常なのに、食後に高血糖になる状態は"食後高血糖"と呼ばれ、メタボリックドミノの流れの中で初期に起こる血糖調節の異常。
 
一気食い
→血糖上昇
→腸はインクレチンを大量に分泌
→すい臓からインスリンが大量に分泌
→血糖が一気に下がり、低血糖に。"遅延性低血糖"
 
・低血糖になると体が危険を察知し、幾種類もの血糖を上げるホルモンが分泌されたり、交感神経が興奮したりする。その結果、血圧が上がり、脈が速くなる。このような緊張状態が続くことも体に悪影響となる。
 
・平均すると血糖は高くなくても、血糖の落差が大きいと体に悪いことが実証されている。
 
・血糖がじわじわ上がっていくより、一気に上がっていく方が、ミトコンドリアからの活性酸素の産生が大きくなる。特に血管の内皮細胞で多量の活性酸素が発生してしまい、血管障害が進んでしまう。
 
※参考資料『伊藤裕(2011)腸!いい話 朝日新聞出版』

 

・血糖の変動が大きければ大きいほど、認知機能が低下する。
 
※参考資料『山田悟(2015)糖質制限の真実 幻冬舎』

 

●血糖値スパイクの概要
 
・食後血糖値が140mg/dL以上に急上昇し、その後インスリンの大量分泌によって急降下して正常値に戻る。血糖値スパイク。
・通常の検診で測定する血糖値(空腹時血糖)では正常な人でも血糖値スパイクが起きている人がいる。
・若くて太っていない人でも血糖値スパイクの人がいる。
 
●血糖値スパイクの発生
 
・体の細胞が糖を取り込む能力が低い体質の人は起こり易い。
 
食事
→血液中の糖が上昇
→膵臓がインスリンを大量に分泌
→血糖値が急降下して正常に戻る。
 
●血糖値スパイクによる悪影響
 
・血糖値スパイクを放置していると、糖尿病になるばかりでなく、心筋梗塞、脳梗塞、がん、認知症のリスクを高めてしまう。
 
・糖尿病ではない人でも、血糖値スパイクによって上記リスクが増えてしまう。
→血糖値スパイクは糖尿病の前段階ではなく、一つの独立した病気と考えたほうがよい。
 
※参考資料『NHKスペシャル 血糖値スパイクが危ない(2016/10/8)』

高血糖と酸化ストレス、動脈硬化

高血糖と動脈硬化の”高血糖と酸化ストレス、動脈硬化”参照。

血糖上昇が脳に与える悪影響

血糖上昇
  ↓
・セロトニン、エピネフリン、GABAが減少。
・神経伝達物質を生成するのに必要となるビタミンB複合体が使い尽くされる。
・Mgが減少し、神経系と肝臓の機能に支障が出る。
・高血糖が引き金となって"糖化反応"が起こる。"糖化反応"は生物学的プロセスで、グルコース、タンパク質、特定の脂肪が結合し、脳にあるものを含めて組織や細胞は柔軟性がなくなり、硬くなっていく。
・糖分子と脳のタンパク質は結びついてまったく新しい構造を作り出す。
  ↓
脳はグルコースの糖化反応による破壊に極めて弱く、グルテンなどの強力な抗原がダメージを促進するとき、ますます悪化する。糖化反応は重要な脳組織の萎縮を招く。
 
※参考資料『デイビッド・パールマター(2015)「いつものパン」があなたを殺す  三笠書房』

 

●糖尿病患者の食欲亢進
 
・視床下部の食欲調節中枢の異常によると推測されている。
・栄養過剰、高脂肪食
→視床下部のある特定の神経細胞の小胞体にストレス
→NF-κBが活性化され、炎症が起こる。
→摂食行動が増加
 
※参考資料『金子義保(2012)炎症は万病の元 中央公論新社』

 

●高血糖と炎症
 
・高血糖は炎症を増やす。
・血糖が上昇すると、セロトニン、エピネフリン、ノルエピネフリン、GABA、ドーパミンが直ちに減少する。ビタミンB複合体など、これらの神経伝達物質をつくるのに必要な材料もすぐに使い果たされてしまう。
 
※参考資料『デイビッド・パールマター(2016)「腸の力」であなたは変わる 三笠書房』

糖尿病の悪影響、合併症

・認知症との関連
アルツハイマー病と生活習慣病、糖尿病、コレステロール、高血圧、ストレス、食事の”アルツハイマー病と糖尿病との関わり”、”終末糖化産物(AGE)とアルツハイマー病”参照。
・動脈硬化との関連を参照
高血糖と動脈硬化
・うつ病との関連
うつ病の”糖尿病とうつ病”参照

●老化
 
・糖尿病の患者は普通の人よりはるかに早く老化する。
・普通の人より皮膚がもろく、しみやしわになりやすい。
・骨がボロボロになったり、歯周病、白内障、認知症になるのも格段に早い。
・血管ももろいので、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが3倍も高くなる。
・老化が早い分、寿命も男性で10年、女性で15年短い。
 
●合併症
 
・糖尿病の患者は、いろんな病気にかかって死亡するリスクが1.8倍高い。
・心筋梗塞や脳梗塞などの血管系の病気による死亡リスクは2.3倍高い。
・血管系の病気以外で死亡する危険性は1.7倍。
・がんによる死亡も1.2倍高くなる。糖尿病になると、肝がん、膵臓がん、子宮体部がん、腎臓がん、結腸・直腸がん、膀胱がん、乳がんなどになりやすい。
・認知症になりやすかったり、骨粗しょう症になる危険性も高い。
 
●慢性の血管合併症
 
・血管がつまったり破けたりする病気で、心臓で起こると心筋梗塞、脳で起こると脳梗塞、足の血管がつまると足が壊疽を起こして切断しなければならないという閉塞性動脈硬化症になる。
 
・糖尿病の血管合併症には、小さな毛細血管がやられる"細小血管障害"と大きな血管がやられる"大血管障害"がある。
 "細小血管障害"では、腎臓、網膜、神経がやられる。
 
※参考資料『山岸昌一(2012)老けたくなければファーストフードを食べるな PHP研究所』

 

●高血糖とがん

・大腸がんや肝臓がん、膵臓がんは、糖尿病の人は発症率が1.8~1.9倍も高くなる。それ以外にも子宮体がんや乳がんのリスクも高まる。
 
・がん細胞はブドウ糖だけをエネルギー源とするので、高血糖状態はエネルギーを取り込みやすく、増殖しやすいと考えられている。
 
※参考資料『山田悟(2015)糖質制限の真実 幻冬舎』

多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス

※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?

●糖尿病とその後のがん罹患との関連について
 
・糖尿病の既往とその後のがん罹患との関連を調べた。
 
○結果
・糖尿病既往なしの人と比べ、糖尿病既往ありの人では何らかのがんにかかる危険性が男性で1.27倍、女性で1.21倍ほど高くなり、糖尿病と診断されたことのある人はない人に比べ20-30パーセントほど、後にがんになりやすくなる傾向のあることがわかった。
・糖尿病既往ありの人が特にかかりやすかったのは、男性では肝がん、腎がん、膵がん、結腸がん、胃がん、女性では胃がん、肝がん、卵巣がんだった。
 
○糖尿病の既往があるとがんにかかりやすくなる理由
・膵臓から分泌されるインスリンの作用が不足すると、それを補うために高インスリン血症やIGF-I(インスリン様成長因子1)の増加が生じ、これが肝臓、膵臓などの部位における腫瘍細胞の増殖を刺激して、がん化に関与すると推察されている。
・肝炎ウイルス感染やピロリ菌感染そのものもインスリン分泌に影響を与えるという報告もあると同時に、肝がんに先行して起こる慢性肝炎や肝硬変が糖尿病の状態をつくっていることも考えられる。

 

●ヘモグロビンA1c(HbA1c)とがん罹患との関連について
 
・HbA1cは1-2か月間の血糖値を反映する血液検査値として知られ、HbA1c(6.5%以上)は、糖尿病の診断基準の一つとしても採用されている。HbA1cとがん罹患リスクとの関係を調べた。
 
○結果
・HbA1c 5.0~5.4%を基準とすると、5%未満、5.5~5.9%、6.0~6.4%、6.5%以上、および既知の糖尿病の5群のがんリスクは、それぞれ1.27 、1.01、1.28、1.43、1.23であり、高HbA1c値の群で全がんリスクが上昇していた。
 また、低HbA1c値の群でも全がんリスクの上昇がみられた。
・がん種別に分析したところ、高HbA1c値の群で大腸がん(特に結腸がん)リスクが上昇しており、肝がんや膵がんでは、低HbA1c値群(5%未満)でもリスク上昇がみられた。
 
○推察
・高血糖はミトコンドリア代謝などを介して酸化ストレスを亢進させることでDNAを損傷し、発がんにつながる可能性が想定されている。
 また、がん細胞の増殖には、大量の糖を必要とするため,慢性的な高血糖状態はがん細胞の増殖を助長する可能性も考えられる。
・肝硬変などでは、実際の血糖値に比べてHbA1cが低値を示すことが多く、肝硬変は肝がんになりやすい状態。その結果として、低HbA1群で、肝がんリスクが上昇していた可能性が考えられる。
 また、低HbA1c値は不健康の指標とも考えられている。低HbA1c値群には、臨床的には診断されていない肝がんや膵がんを有する人が含まれていて、追跡期間中にがんと診断されたのかもしれない。

ネットニュースによる関連情報

●糖尿病患者が朝食を抜くと食後高血糖をもたらす
 
・朝食を抜いた方が、摂取するカロリーは少ないため減量につながるだろうと思われがちだが、2型糖尿病患者が朝食を抜くと、抜かなかった場合と比べて、同じ食事を摂取しても、その後の血糖上昇が急激で、血糖スパイク(食後高血糖)をもたらした。
・インスリンを産生する膵臓のβ細胞は、夕食と翌日の昼食の間、空腹の時間が長期間におよぶと"メモリ"を失う、すなわち、それらはインスリンを分泌するという重要な役割を"忘れる"ということ。それゆえ、昼食後に膵臓β細胞が回復するためのさらなる追加時間を要する。そして縮小し遅延したインスリン反応を引き起こし、終日の血糖レベルの著しい上昇が惹起される。

 

●精製した炭水化物の摂取はうつ病のリスク増加?
 
・より高いグリセミックインデックススコア、添加糖類の摂取、精製した穀類の摂取が、閉経後の女性においてうつ病の新規発症リスクの増加に関連していた。
 白パン、白米や加糖飲料のような精製された食品は、血糖値を減少させるためのホルモン反応を促すが、この反応がうつ病の気分の変化、疲労、他の症状を引き起こすか、悪化させる可能性がある。
・食物繊維、全粒穀物、野菜、果物(ジュースではない)のより多い摂取は、リスクの減少と関係していた。

 

●血糖値スパイク抑制には、たっぷり朝食、夕食控えめが効果的
 
・2型糖尿病の男性8名と女性10名(30-70歳)を対象に、ランダムに2群に分け、1週間ずつ2つのダイエット("Bダイエット(朝食たっぷり、夕食控えめ)"と"Dダイエット(朝食控えめ、夕食たっぷり")を実施したところ、BダイエットはDダイエットに比べて、食後血糖値が20%低下した。

 

●朝食、夕食のカロリーと食後血糖値上昇との関係
 
・朝食が高エネルギーで夕食が低エネルギーの食事パターンは、朝食が低エネルギー、夕食が高エネルギーの食事パターンと比べて、食後血糖値は20%低かった。
・食生活パターンを変えることが食後のインスリンやインクレチン分泌の日内リズムに影響を及ぼし、そのために食後血糖値の低下が観察されたと考えられる。
・体内時計の働きの影響?
午前中は膵ベータ細胞感受性とインスリン分泌が亢進
→肝臓でのインスリン分解が低下し、インスリン誘導による筋肉へのグルコース取り込みが増進する。
・糖尿病患者が朝食にエネルギー量の多い食事を摂ると、1日を通して食後血糖値を下げる効果が見られる。

 

●糖尿病予備軍でもがんのリスク増加?
 
・891,426名のデータを含む16件の先行研究のメタ分析を行った結果、境界型糖尿病(糖尿病予備軍、前糖尿病)は全がんリスクを15%高めることがわかった。
・臓器別では、胃がんと大腸がんで相対リスクは1.55、肝臓で2.01、すい臓で1.19、乳がんで1.19、内膜がんで1.60であり、全て有意であった。気管支/肺がん、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がん、膀胱がんではリスクの上昇は見られなかった。

 

●食後の運動が血糖値低減に有効?
 
・2型糖尿病患者41名に対し、2週間、1ヶ月間の休息期間をあけ、歩行を処方するという、クロスオーバー比較試験を行なった。対象者は、①時間を決めず1日30分歩くか、②それぞれメインの食事後10分間歩くか、どちらかで歩行した。
・その結果、①と比べ②では、食後血糖値は平均して12パーセント減少したことがわかった。

血糖値スパイクに対する対策

●食べる順番に注意する
 
・以下の記事参照。
グリセミックインデックス(GI、血糖値上昇指数)
・野菜等の食物繊維以外でも、脂質やたんぱく質が先でも有効。
脂質やたんぱく質を先に食べると、インクレチンの働きで胃や腸の動きが鈍くなる。
→後から食べる糖質の吸収が遅くなる。
 
●朝食を抜かない
 
・空腹の時間が長くなるとインスリンの分泌が落ちたり、肝臓等のインスリンの働きが落ちてしまう。
 定期的に食事を摂取すると、インスリンが出やすくなり、働きも良くなり、変動が少なくなる。
 
●食後すぐにちょこちょこ運動する
 
・食後15分ぐらいは、血液が胃や腸に集まるが、散歩程度の軽い運動でも体を動かすと、血液が手や足の筋肉に奪われる。
→胃腸の動きが鈍くなる。
→血糖値の上昇が抑えられる
 
※参考資料『NHKスペシャル 血糖値スパイクが危ない(2016/10/8)』

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください