コレステロールは体内で合成する事ができますが、食事からコレステロールを摂取した場合にどのような影響を与えるのかについてメモ書きしています。
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
- 食事性コレステロールの概要
- 食事性コレステロールの摂取状況
- 食事性コレステロールとコレステロール値
- 食事性コレステロールと循環器病(動脈硬化、心疾患、脳卒中、糖尿病)
- 食事性コレステロールとがん
- コレステロールの摂取制限
食事性コレステロールの概要
・コレステロールは体内で合成できる脂質であり、12~13mg/kg体重/日(体重50kgの人で600~650mg/日)生産されている。
・摂取されたコレステロールの40~60%が吸収されるが、個人間の差が大きく遺伝的背景や代謝状態に影響される。
このように経口摂取されるコレステロール(食事性コレステロール)は体内で作られるコレステロールの1/3~1/7を占めるのに過ぎない。
・コレステロールを多く摂取すると肝臓でのコレステロール合成は減少し、逆に少なく摂取するとコレステロール合成は増加し、末梢への補給が一定に保たれるようにフィードバック機構が働く。
このためコレステロール摂取量が直接血中総コレステロール値に反映されるわけではない。
・摂取されたコレステロールの40~60%が吸収されるが、個人間の差が大きく遺伝的背景や代謝状態に影響される。
このように経口摂取されるコレステロール(食事性コレステロール)は体内で作られるコレステロールの1/3~1/7を占めるのに過ぎない。
・コレステロールを多く摂取すると肝臓でのコレステロール合成は減少し、逆に少なく摂取するとコレステロール合成は増加し、末梢への補給が一定に保たれるようにフィードバック機構が働く。
このためコレステロール摂取量が直接血中総コレステロール値に反映されるわけではない。
食事性コレステロールの摂取状況
・平成22~23年国民健康・栄養調査の結果に基づく、日本人30~49歳の中央値は、297mg/日(男性)、263mg/日(女性)、アメリカ人31~50歳の中央値は、324mg/日(男性)、206mg/日(女性)で、日本人女性の摂取量はアメリカ人女性に比べやや多い。
食事性コレステロールとコレステロール値
●卵をたくさん食べてよいか ・コレステロールは食事で摂取する以外に体内でもつくられているので、食事との関連はあまりないという見解がある。 ・コレステロールが高くなりにくい体質の人は、卵をいくら食べても数値は高くならない。 →コレステロールの代謝が正常で、数値が高くなりにくい人についてはあてはまるが、コレステロールが高くなりやすい人は、コレステロールがたまりやすい体質なので注意が必要。 実際に、コレステロールが高い人がコレステロールや動物性脂肪を多く含む食品を控えると、数値が下がってくる。 ※参考資料『岡田正彦(2015)医者が絶対にすすめない「健康法」 PHP研究所』
●食事性コレステロールを減らすとLDLが下がる? ・肝臓にコレステロールがたくさん溜まってくると、肝臓はLDL受容体を介して血液中のLDLを取り込まなくなって、LDLの値が高くなってしまう。 ↓ 食事から摂取するコレステロールの量を減らすと、肝臓はLDL受容体をたくさん作って細胞表面に出し、血液中のLDLを取り込もうとする。 ↓ 血液中のLDLが低下する。 ○体質によって血液中コレステロール値の減り方が異なる ・肉や魚の動物性食品にはコレステロールが含まれていて、卵の卵黄には一個当たり約260mgのコレステロールが含まれている。 一般的には、食品からのコレステロール摂取量がおよそ100mgを超えると血液中のコレステロールが増え始め、摂取量が300ないし400mgを超えると、それ以上にコレステロールを摂取しても、もはや血液中のコレステロールは、それ以上には増えないとされているが、摂取量をどの程度減らすと、どれくらいコレステロールが下がるかは、個人差が大きく、その効果も個々人で異なる。 もともと体質的に食事からのコレステロールの吸収が悪い人はコレステロールをたくさん摂取しても血液中のコレステロールも増えないが、逆に吸収が良い人はわずかばかりコレステロールを摂取しただけでも血液のコレステロールが増えてしまう。 したがって、コレステロールの吸収が良い人は、食事療法によってコレステロール摂取を少なくすると、血液中のコレステロールを下げることが期待できる。 ○小腸コレステロールトランスポーター阻害剤(エゼチミブ、ゼチーア) ・腸粘膜の細胞膜に存在する小腸コレステロールトランスポータータンパクの働きを抑えることによって、腸からのコレステロールの吸収を阻害する。 ただし、小腸コレステロールトランスポータータンパクを作る遺伝子に異常がある人は、このタンパクが正常に作られず、コレステロールが吸収されにくくなる。このようなタイプの人の場合には、この薬が効かず、食事療法も効果が出にくいと言える。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
●食事性コレステロール摂取とコレステロール値 ・以下のKeysの式並びにHegstedの式によれば、食事性コレステロールの摂取によって血清総コレステロール濃度が上昇することが示されている。 ・飽和脂肪酸摂取量と血清(又は血漿)総コレステロール濃度が正の関連を有する。 Keysの式 ⊿血清総コレステロール(mg/dL)=2.7×⊿S-1.35×⊿P+1.5×⊿ √C Hegstedの式 ⊿血清総コレステロール(mg/dL)=2.16×⊿S-1.65×⊿P+0.068×⊿C ⊿S:飽和脂肪酸摂取量の変化量(% エネルギー) ⊿P:多価不飽和脂肪酸摂取量の変化量(% エネルギー) ⊿ √C:コレステロール摂取量(mg/1,000 kcal)の変化量 ⊿C:コレステロール摂取量(mg/1,000 kcal)の変化量 しかし、食事性コレステロールと血清総コレステロール濃度又はLDL濃度との間に強い関連が観察されるのは、コレステロール摂取量がある一定の範囲にある場合に限定されており、あまり明確ではないものの、およそ100~350mg/日の範囲で両者は強い関連を示しており、それ未満でもそれ以上でも両者の関連は明確でないとしている。 一方、別の報告では、コレステロール摂取量が400mg/1,000kcalまでの範囲では、コレステロール摂取量と血清総コレステロール濃度の関連はほぼ直線的であるとしている。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
食事性コレステロールと循環器病(動脈硬化、心疾患、脳卒中、糖尿病)
※糖尿病、血糖値との関連については以下の記事参照。
糖質制限、糖尿病と炭水化物、たんぱく質、脂質、食物繊維摂取との関連の”脂質摂取と糖尿病との関連”
※高血圧との関連については以下の記事参照。
高血圧と食塩、食事、肥満との関連の”脂質、n-3系脂肪酸との関連”
糖質制限、糖尿病と炭水化物、たんぱく質、脂質、食物繊維摂取との関連の”脂質摂取と糖尿病との関連”
※高血圧との関連については以下の記事参照。
高血圧と食塩、食事、肥満との関連の”脂質、n-3系脂肪酸との関連”
○卵(コレステロール含有率が高い)の摂取と生活習慣病 ・卵の摂取量と動脈硬化性疾患罹患との関連を調べた2013年のメタ・アナリシスでは、卵の摂取量と冠動脈疾患及び脳卒中罹患との関連は認められていない。 ・日本人を対象にしたコホート研究のNIPPON DATA80でも、卵の摂取量と虚血性心疾患や脳卒中による死亡率との関連はなく、1日に卵を2個以上摂取した群とほとんど摂取しない群との死亡率を比べても有意な差は認められていない。 ・卵の摂取量と冠動脈疾患罹患との関連を調べたJPHC研究でも、卵の摂取量と冠動脈罹患との関連は認められていない。 ・糖尿病患者においても、卵の摂取量と冠動脈疾患罹患との関連は認められておらず、横断的な卵の摂取量と糖尿病有病率との関連も認められていない。 ○総コレステロール摂取量と虚血性心疾患死亡率 ・ハワイ在住日系中年男性(45~68歳)を対象とした観察研究では、食事性コレステロール摂取量と虚血性心疾患死亡率との間に有意な正の相関を認め、325mg/1,000kcal以上の群で虚血性心疾患死亡率の増加を認めている。 ただし、飽和脂肪酸摂取量で調整されていないため、コレステロール摂取自体が原因ではなく、同時に摂取する飽和脂肪酸摂取量が影響している可能性がある。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
食事性コレステロールとがん
・NIPPON DATA 80で、女性において、卵を2個/日以上摂取する群(総対象者の上位1.3%)では卵を1個/日の群に比べ有意ではないが、がん死亡の相対危険が約2倍になっていた。 ・欧米で発表された症例対照研究でも、コレステロール摂取量と卵巣がんや子宮内膜がんに正の関連が認められている。 ・アメリカ人を対象とした観察研究で、コレステロール摂取量最大四分位の群(511mg/日以上)は、コレステロール摂取量最小四分位の群(156mg/日以下)と比較して、肝硬変又は肝がんになるハザード比は2.45で有意に高いことが示されている。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
コレステロールの摂取制限
・血中コレステロールの検査値の75~80%は体内で作られたものに由来していて、必ずしも食べたものが反映されているわけではない。 コレステロールの高い食べ物は、体が作るコレステロールを減らしている。 体内で作るのは複雑で、何段階にも及ぶ生物学的なプロセスを経なければならず、肝臓に負担がかかる。 ・コレステロールの摂取を制限 ↓ 体は危機(飢餓)を示す警告を発する ↓ 肝臓はこの信号を感じてHMG-CoA還元酵素を作り出す。 この酵素のおかげで、食事に含まれる炭水化物を使用して不足を補い、コレステロールを余分に作り出せる。 炭水化物を摂りすぎると、コレステロール摂取を減らしても体内ではコレステロールが絶え間なく過剰生産される。 ※参考情報『デイビッド・パールマター(2015)「いつものパン」があなたを殺す 三笠書房』
●コレステロール摂取制限の注意点 ・コレステロールは動物性たんぱく質が多く含まれる食品に含まれるため、コレステロール摂取量を制限するとたんぱく質不足を生じ、特に高齢者において低栄養を生じる可能性があるので注意が必要。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
●コレステロールを食べなくても問題ない? ・コレステロールは体の中で合成でき、腸肝循環で再利用しているため、体の中で足りなくなることは通常はないので、食事から取得できなかったからといってすぐに問題が発生するわけではない。 ・食事から取得したコレステロールは、その分、体内で合成する分が減ったり、再吸収する分が減ったりして調整される。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』