※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
- 一価不飽和脂肪酸の概要
- 一価不飽和脂肪酸とコレステロール値
- 一価不飽和脂肪酸と生活習慣病の関連
- n-6系脂肪酸の概要
- n-6系脂肪酸とコレステロール値
- n-6系脂肪酸と生活習慣病の関連
- n-3系脂肪酸の概要
- n-3系脂肪酸とコレステロール値
- n-3系脂肪酸と生活習慣病の関連
- 油の選び方
- 不飽和脂肪酸摂取の目安量
- 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
- ネットニュースによる関連情報
※糖尿病、血糖値との関連については以下の記事参照。
糖質制限、糖尿病と炭水化物、たんぱく質、脂質、食物繊維摂取との関連の”脂質摂取と糖尿病との関連”
※高血圧との関連については以下の記事参照。
高血圧と食塩、食事、肥満との関連の”脂質、n-3系脂肪酸との関連”
※老化、サルコペニアとの関連については以下の記事参照。
フレイル、サルコペニア、高齢者の栄養の”高齢者の健康とビタミン、脂肪酸との関係”
※認知症との関連については以下の記事参照。
アルツハイマー病に効果のある食事
不飽和脂肪酸の概要
・オレイン酸、オリーブ油
・一価不飽和脂肪酸には、ミリストオレイン酸(14:1n-7)、パルミトオレイン酸(16:1n-7)、オレイン酸(18:1n-9)、エルカ酸(22:1n-9)などがある。
・一価不飽和脂肪酸は食品から摂取されると共に、デサチュラーゼ(⊿9不飽和化酵素)と呼ばれる二重結合を作る酵素により、飽和脂肪酸から生体内でも合成ができる。
・一価不飽和脂肪酸には、ミリストオレイン酸(14:1n-7)、パルミトオレイン酸(16:1n-7)、オレイン酸(18:1n-9)、エルカ酸(22:1n-9)などがある。
・一価不飽和脂肪酸は食品から摂取されると共に、デサチュラーゼ(⊿9不飽和化酵素)と呼ばれる二重結合を作る酵素により、飽和脂肪酸から生体内でも合成ができる。
一価不飽和脂肪酸とコレステロール値
・肝臓でのコレステロール合成が減って血液中のLDLも減る。 ・HDLは減らさない。 ・多価不飽和脂肪酸より酸化されにくい。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
・血中脂質を比較した欧米での多くの介入研究から、高一価不飽和脂肪酸食は、LDL値は増加させず(高飽和脂肪酸食では増加)、HDL値を減少させず(高炭水化物食では減少)、空腹時中性脂肪値は増加させない(高炭水化物食では増加)ことが報告されている。 しかし、炭水化物を一価又は多価不飽和脂肪酸で置き換えると、血中LDL値の低下は、多価不飽和脂肪酸の方が一価よりも強い。 一価不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸や高炭水化物に対して優位性を示すが、多価不飽和脂肪酸との比較で優位性はない。 ・炭水化物を同量のエネルギーを有する一価不飽和脂肪酸に食べ替えた研究では、血清総コレステロール濃度並びにLDL濃度には有意な関連を示さなかった。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
一価不飽和脂肪酸と生活習慣病
・欧米の研究で、多量の摂取は冠動脈性心疾患のリスクになることが示されているため、過剰摂取に注意すべき。 ※農林水産省/脂質による健康影響
●肥満との関連 ・肥満との関連では、エネルギー制限を行わず自由摂食した場合、一価不飽和脂肪酸を多く摂取すると肥満者が増加する懸念がある。 ・最近の研究では、遺伝背景(ApoA1、ApoB、PPARs、WDTC1)の違いより、一価不飽和脂肪酸の肥満への影響が異なることが示されている。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
n-6系脂肪酸の概要
・n-6系脂肪酸には、リノール酸(18:2n-6)、γ-リノレン酸(18:3n-6)、アラキドン酸(20:4n-6)などがあり、γ-リノレン酸やアラキドン酸はリノール酸の代謝産物。
・生体内では、n-6系脂肪酸をアセチルCoAから合成することができないので経口摂取する必要がある。
・日本人で摂取されるn-6系脂肪酸の98%はリノール酸。
・生体内では、n-6系脂肪酸をアセチルCoAから合成することができないので経口摂取する必要がある。
・日本人で摂取されるn-6系脂肪酸の98%はリノール酸。
・多価不飽和脂肪酸のひとつで、大豆油やコーン油など一般的な植物油に多く含まれるリノール酸が代表的。 ・リノール酸は体内で合成できない脂肪酸で、体内でγ-リノレン酸、さらにアラキドン酸へと変化する。 ・細胞膜や体の仕組みに働きかける生理活性物質の材料となる物質。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
・不足すると皮膚炎等の欠乏症が見られるため目安量が定められている。とりすぎた場合の安全性も危惧されている。 ※農林水産省/脂質による健康影響
n-6系脂肪酸とコレステロール値
・肝臓でのコレステロール合成が減って血液中のLDLも減る。 ・摂りすぎるとHDLも減少させてしまう。 ・不飽和結合を多く持つのでLDLが酸化されやすくなる。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
n-6系脂肪酸と生活習慣病
※乳がんとの関連については以下の記事参照。
乳がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
乳がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
●心疾患との関連 ・多くの介入研究で、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えた場合、飽和脂肪酸に比べて冠動脈疾患罹患は減少するが、たんぱく質や炭水化物を多価不飽和脂肪酸に置き換えた介入研究が行われていないため、冠動脈疾患罹患の減少が飽和脂肪酸減少によるものか、多価不飽和脂肪酸増加によるものか明らかでない。 ・n-3系とn-6系脂肪酸の混合脂質摂取は心筋梗塞の罹患リスクを22%低下させたが、n-6系脂肪酸のみだと13%の増加が認められている。 ●脳卒中との関連 ・日本人の脳卒中を対象とした前向きコホート内症例対照研究では、血清脂質中のリノール酸比が34%の群は、22%の群と比較し、脳卒中の発症のオッズ比が0.43に低下していた。 しかし、n-6系脂肪酸摂取量と脳梗塞罹患率を調べたコホート研究では、関連は認められていない。 ●がんとの関連 ・最近のコホート研究や症例対照研究で、n-6系脂肪酸摂取量と乳がん罹患に正の関連が認められている。 ●過剰摂取のリスク ・リノール酸は、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸よりも酸化されやすく、多量に摂取した場合(10%E以上)のリスクは十分に解明されていない。 ※%E(エネルギー比率) 総エネルギー摂取量に占める割合 ・リノール酸は炎症を惹起するプロスタグランジンやロイコトリエンを生成するので、多量摂取時の安全性が危惧される。 リノール酸過剰摂取で認められた乳がん罹患や心筋梗塞罹患の増加は、リノール酸の酸化しやすさ、炎症作用が原因かもしれない。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
n-3系脂肪酸の概要
・n-3系脂肪酸には、食用調理油由来のα-リノレン酸(18:3n-3)と魚由来のEPA(20:5n-3)、DPA(22:5n-3)、DHA(22:6n-3)などがある。
体内に入ったα-リノレン酸は一部EPAやDHAに変換される。
・生体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する。
体内に入ったα-リノレン酸は一部EPAやDHAに変換される。
・生体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する。
・多価不飽和脂肪酸のひとつで、魚の油に多く含まれるIPA(イコサペンタエン酸、EPAともいう)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が代表的で、えごま油やなたね油などに含まれるα-リノレン酸もこの仲間。 ・α-リノレン酸は体内で合成できない脂肪酸で、体内でIPA、さらにDHAへと変化する。 ・細胞膜や体の仕組みに働きかける生理活性物質の材料となる物質。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
n-3系脂肪酸とコレステロール値
・肝臓でのLDL合成を抑え、HDLの合成を高める作用がある。 ・不飽和結合を多く持つのでLDLが酸化されやすくなる。 ※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール 日本経済新聞出版社』
●脂肪とHDL ・介入試験をまとめたメタ・アナリシスによれば、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸全てがHDLを有意に上昇させることが示されているが、その変化量は僅かである。 ●多価不飽和脂肪酸とLDL ・27の介入試験(総対象者数は682人、介入期間は14~91日間)をまとめたメタ・アナリシスによれば、総エネルギー摂取量の5%を炭水化物から多価不飽和脂肪酸に食べ替えると平均として2.8mg/dLの血清LDL濃度の減少が観察されている。 研究数を増やした別のメタ・アナリシスでもほぼ同様の結果が得られている。 ●α-リノレン酸(n-3系)とHDL、LDL ・n-3系のα-リノレン酸をサプリメントとして付加して血清脂質の変化を観察した17の介入試験をまとめたメタ・アナリシスでは、HDL濃度が有意に低下したが、LDL濃度には有意な変化は認められなかった。しかし、この研究では摂取量は報告されていない。 ●魚類由来長鎖n-3系脂肪酸(EPA 又はDHA)とLDL ・サプリメントとして付加して血清脂質の変化を観察した47の介入試験をまとめたメタ・アナリシス(インドで行われた二つの研究を除いて全て欧米諸国で行われた研究、脂質異常症で糖尿病、心筋梗塞の既往など心血管系疾患リスクを有する成人男女を対象)では、LDL濃度は有意な上昇を示している。 しかし、この研究における摂取量の平均値は3.25g/日と、通常の食品からの摂取量としてはかなり多く、一方で、LDL濃度の上昇は平均2.3mg/dLと小さく、現実的な意味は乏しいと考えられる。 糖尿病患者を対象とした類似の研究をまとめたメタ・アナリシスでもほぼ類似の結果が報告されている。 ●EPA、DHAとHDL ・EPAやDHAを含んだサプリメント投与研究のメタ・アナリシスで、DHAはHDLを増加させるが、EPAは増加させないことが示されている。 しかし、低HDLコレステロール血症患者にDHAを投与して、心筋梗塞罹患が減少するとの報告はない。その理由の一つに、DHA投与によりLDLが増加することが考えられる。 ●魚類由来長鎖n-3系脂肪酸と中性脂肪値 ・魚類由来長鎖n-3系脂肪酸をサプリメントとして負荷して血清脂質の変化を観察した47の介入試験をまとめたメタ・アナリシスでは、血清トリグリセライド濃度は有意な減少を示している。 この研究における摂取量の平均値は3.25g/日と、通常の食品からの摂取量としてはかなり多いものの、血清トリグリセライド濃度の低下は平均30mg/dLであり、現実的にある程度意味のある低下量であるかもしれない。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
n-3系脂肪酸と生活習慣病
※オメガ3サプリメントについては以下の記事参照。
サプリメントの効果の”オメガ3サプリメント”
※膵臓がんとの関連については以下の記事参照。
膵臓がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
※肝臓がんとの関連については以下の記事参照。
肝臓がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
※大腸がんとの関連については以下の記事参照。
大腸がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”、”ネットニュースによる関連情報”
サプリメントの効果の”オメガ3サプリメント”
※膵臓がんとの関連については以下の記事参照。
膵臓がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
※肝臓がんとの関連については以下の記事参照。
肝臓がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
※大腸がんとの関連については以下の記事参照。
大腸がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”、”ネットニュースによる関連情報”
●膵臓がんとn-3系脂肪酸 ○国立がん研究センター予防研究グループの研究 ・82,024人を15年間追跡調査。 ・n-3系脂肪酸の摂取量によって4つのグループに分けて比較。 ・最大摂取グループは最小摂取グループと比べて膵臓がんの発症リスクが31%低下した。 ●n-3系脂肪酸と死亡リスク ○2013年4月、米国医師会の"内科年報"に発表。ハーバード公衆衛生大学院 ・アメリカ在住の健康な65歳以上の約2700人を対象(平均74歳)。92年から16年に渡って追跡調査。 ・n-3系脂肪酸の血中濃度が高かった人は低い人に比べ、すべての死亡リスクが27%低く、平均2.2歳長生きしていた。 ・DHAの血中濃度が高い人は冠動脈に関連する死亡リスクが約40%低下。 ※参考資料『松井宏夫(2016)長生きできる人とできない人の習慣 日刊スポーツ連載』
・青魚などからのEPAやDHAの摂取は、日常の摂取量の範囲では多く摂取しても有害な作用があるとは考えられていないが、水銀やカドミウム、ダイオキシンなどの有害物質も含まれていることから、極端な摂取は好ましくないと考えられる。 ・子供の場合、n-3系脂肪酸が不足すると皮膚炎等の欠乏症が見られるため、目標量ではなく目安量が定められている。 ※農林水産省/脂質による健康影響
○心血管病リスク改善作用 ・n-3系脂肪酸には、脈波伝導速度(PWV)や動脈コンプライアンスの改善効果、血流依存性血管拡張反応改善効果についてメタ・アナリシスで報告されている。 また、脈拍数と赤血球中のEPAやDHA比率と負の関連が報告されていて、これらの機序により、血圧が低下すると考えられる。 これらの成績は、降圧メカニズムを示唆するのみでなく、心血管病リスク改善作用を期待させるものである。 実際、日本における一般集団を対象にしたJPHC研究で、魚の摂取量が多い人ほど心筋梗塞発症が少ないことが報告されている。 ・疫学研究で心不全リスクの低下効果(JACC研究)、脳卒中リスク改善効果も示されている。 ・しかし、欧米のn-3系脂肪酸の介入試験では心血管病リスク改善効果を証明できなかったものも少なくない(ORIGIN研究、Risk and Prevention研究)。いずれもn-3系脂肪酸1g/日をオリーブ油約1g/日を対象として比較している。 ・最近報告されたn-3系脂肪酸の心血管病二次予防に関するメタ・アナリシスでも、有効性を示すことはできなかった。 ・これに対して、スタチン製剤を投与中の高コレステロール血症患者に高純度EPA製剤(1,800mg/日)の効果を見た日本における介入試験であるJELIS研究では、EPA投与群は冠動脈疾患罹患率の減少、脳卒中再発の減少を認めた。 ・ORIGIN研究、Risk and Prevention研究とJELIS研究はn-3系脂肪酸の種類・量などに加えて、対象者の特徴、対照治療群の設定も異なるので、n-3系脂肪酸の心血管病リスクに対する作用については更なる検討が必要である。 ○α-リノレン酸 ・2012年に発表された観察研究のメタ・アナリシスでは、α-リノレン酸摂取量と心血管疾患罹患(脳卒中も含む)との間には弱い負の関連が認められた。 ・α-リノレン酸が多いと妊娠可能性が低下する可能性もある。 ○EPA、DHA ・あるメタ・アナリシスでは、EPA、DHA摂取群で平均18%の冠動脈疾患罹患の減少、平均9%の心臓死減少を認めたが、他のメタ・アナリシスでは、心血管イベント減少効果は認められなかった。 効果が見られなくなった原因の一つにスタチンを服用している人が増えて、EPA、DHAの効果が相対的に弱くなったことが考えられている。 ・2012年の観察研究のメタ・アナリシスでは、週2~4回魚を摂取する群は週1回以下の群に比べて脳卒中リスクは平均6%減少、魚摂取量が最大群で最小群に比べて脳出血罹患は平均19%減少した。 しかし、塩漬けの魚を食べると、脳出血罹患が2倍増加する報告があるので、魚の調理法には注意が必要。 一方、介入研究のメタ・アナリシスではEPA、DHA投与により、脳卒中罹患の減少は認められていない。 ・JPHC研究で、男性において、小型の魚(さば、さんま、いわし、うなぎ)を多く摂取する群で、糖尿病罹患リスクの低下が認められている。 ・乳がんコホート研究のメタ・アナリシスで、EPA、DHA摂取量との間に負の関連が認められている。 ・結腸直腸がんコホート研究のメタ・アナリシスでは男性において、n-3系脂肪酸(α-リノレン酸を含む)摂取量が多い群で平均13%のリスク減少が認められている。 ・JPHC研究で魚由来n-3系脂肪酸摂取量用量依存性に、肝がん罹患が減少することを認めている。 ・炎症に関しては、幾つかの介入研究のメタ・アナリシスで、n-3系脂肪酸投与により血中の炎症マーカーや内皮機能が改善されることが示されている。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
●ストレス、海馬、DHA ・ストレスが重なると脳の海馬が損傷するが、DHAは脳の神経細胞膜の重要な構成成分であると同時に、海馬などで、神経細胞に栄養を与える活動を高めることが分かってきた。 ※参考資料『NHKスペシャル取材班(2016)キラーストレス NHK出版』
●BDNFとDHA ・BDNFは脳の成長に重要なタンパク質であり、新しい神経細胞がつくられる過程に関わる。また既存の神経細胞を守り、生存を支え、神経同士の結合(シナプス)を促す。 ・BDNFの減少は、アルツハイマー病、癲癇、神経性食欲不振、うつ病、統合失調症と強迫性障害など一連の神経性の症状に見られる。 ・BDNFは有酸素運動を行ったり、オメガ3脂肪酸のDHAを摂取したりして増やすことができるが、腸内に棲む細菌のバランスに完全に依存していることがわかってきた。 ※参考資料『デイビッド・パールマター(2016)「腸の力」であなたは変わる 三笠書房』
油の選び方
●昔ながらの方法でつくられた油や穀粉を選ぶ ・化学物質を使って産出されたような油は、昔ながらの方法で作られたオリーブ油、ごま油、ヤシ油、ピーナッツ油なとと比べて好ましい脂肪酸に乏しく、添加物が多い。 ※参考情報『マイケル・ポーラン(2010)フード・ルール 東洋経済新報社』
不飽和脂肪酸摂取の目安量
※%E(エネルギー比率) 総エネルギー摂取量に占める割合 ●n-6系不飽和脂肪酸の目安量 ・平成22年、23年国民健康・栄養調査の結果に基づく、日本人30~49歳のn-6系脂肪酸摂取量の中央値は、10.0g/日(男性)、8.4g/日(女性)で、エネルギー比率では4.3%E(男性)、4.6%E(女性)となる。 上記値を参考にして、目安量として、4~5%Eとしている。 ●n-3系不飽和脂肪酸の目安量 ・魚によっては水銀、ダイオキシンなどの環境汚染物質が含まれていることや世界的な魚資源の不足により、将来、α-リノレン酸の摂取が重要になる可能性がある。 ・平成22年、23年国民健康・栄養調査の結果に基づく、n-3系脂肪酸の日本人30~49歳の中央値は、2.1g/日(男性)、1.6g/日(女性)で、エネルギー比率では0.89%E(男性)、0.86%E(女性)となる。 上記値を参考にして、目安量として約1%Eとしている。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
●魚・n-3脂肪酸摂取と虚血性心疾患発症との関連について ・魚・n-3脂肪酸摂取と虚血性心疾患発症との関連を調べた。 ○結果 ・魚の摂取量が最も少ない1日約20gのグループに比べ、その他のグループではいずれもリスクが下がり、最も多いグループでは40%低くなった。 ・虚血性心疾患リスクを、EPAとDHAの摂取量によって5つのグループに分けて比較した結果、摂取量が最も多いグループの虚血性心疾患のリスクは、最も摂取量が少ないグループよりも約40%低いことがわかった。 ○推察 ・これまでも、少し(週1~2回、または1日あたり30~60g)でも魚を食べることが虚血性心疾患の予防につながるという、海外の研究からの報告がいくつかあった。しかし、それ以上の魚の摂取がさらなるリスクの低下につながるかどうかはわかっていなかった。 今回の研究では、魚の摂取量が最も多いグループ(中央値180g、週に8回ペース)でも、虚血性心疾患のリスクが低下した。このことから、魚による虚血性心疾患予防効果は、週1~2回程度でも期待できるけれども、それ以上に食べるとさらに高くなることがわかった。 ○注意点 ・この研究では、結果に影響すると考えられる他の要因や質問票の測定誤差の影響をできる限り小さくするように努めてはいるが、魚を多く摂取したと答えた人たちが健康的な生活習慣を持っていたために、魚が予防的にみえてしまっている可能性が残る。 ・脂肪酸の働きについては、魚に含まれる他の予防因子が効いている可能性もあり、さらなる研究が必要。 ・EPAやDHAについては、魚の成分としての摂取量であり、サプリメントの摂取による予防効果は検討していない。
●血中n-3系多価不飽和脂肪酸と虚血性心疾患との関連について ・保存血液を用いて、血中n-3系多価不飽和脂肪酸と虚血性心疾患との関連を調べた。 ○結果 ・虚血性心疾患全体では、n-3系脂肪酸と発症リスクの関連は認められなかった。 ・非致死性の虚血性心疾患についても同様にn-3系脂肪酸との関連は認められなかった。 ・致死性の虚血性心疾患については、n-3系脂肪酸濃度が一番低い群に比べ、一番高い群において、88%の発症リスク低下が認められた。 ○推察 ・JPHC Studyの"魚摂取と虚血性心疾患における研究"では、食事調査アンケートから算出したn-3系脂肪酸摂取量と非致死性の虚血性心疾患で発症リスクの低下が認められ、致死性の虚血性心疾患との関連は認められかった。 この違いは、本研究では血液提供者のみを対象としており、女性が多く、また、喫煙者が少ないといった健康意識の高い人が多かった可能性などが理由として考えられる。 ・今回の研究では、致死性の虚血性心疾患の症例数が少ないため、結果が偶然に得られた可能性も否定できない。
ネットニュースによる関連情報
●オメガ-3系脂肪酸が前立腺がんとの関連 ・培養前立腺がん細胞を用いて、FFA4(遊離脂肪酸受容体4)と呼ばれる受容体にこの脂肪酸が結合することを発見した。がん細胞を刺激するというよりは、受容体を通じて信号を送り成長因子を阻害して細胞の増殖を抑制していると考えている。
●リノール酸の摂取で冠動脈疾患のリスク低下 ・食事からのリノール酸の摂取には、冠動脈疾患のリスクと負の相関関係が、用量依存的に認められた。最も摂取の低い人々に比べて、最も摂取の高かった人々では、食事からのリノール酸の摂取は、冠動脈疾患のリスクが15%低く、冠動脈疾患死のリスクは21%低かった。
●飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の摂取と冠状動脈性心臓病リスクとの関連 ・今回の研究結果から、食事からの飽和脂肪をただ減らすだけで心血管疾患リスクが低下するわけではなく、飽和脂肪を減らして何と変えるかが重要であることがわかった。 ・炭水化物に変えた場合はGIを考慮しても影響はなく、一価不飽和脂肪酸の場合は逆に高くなった。 ・一方、多価不飽和脂肪酸は独立して致命的な冠動脈疾患のリスクを低下させるようだ。
●n-3系脂肪酸の摂取で女性の難聴リスクが低下 ・魚を殆ど消費しない女性と比較し、週に魚を2サービング以上消費した女性は、聴力損失のリスクが20%低かった。 ・個別に検討したところ、ある種の魚の消費量が多い程、リスクが低くなっていた。オメガ3脂肪酸の摂取の高さも、難聴リスクと逆の相関を示していた。