※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
- カルシウムの概要
- カルシウムの吸収
- カルシウムを多く含む食品
- カルシウム不足の問題
- カルシウム過剰摂取のリスク
- カルシウムと骨との関連
- カルシウムと循環器病との関連
- カルシウムとがんとの関連
- サプリメントによるカルシウム摂取
- 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
- ネットニュースによる関連情報
カルシウムの概要
・カルシウムは、体重の1~2%を占め、そのうちの1%が血液や細胞外液などで血液凝固や心機能、筋収縮などに関与し、体内で重要な役割を担っている。
体内で必要なカルシウムを供給した後の残りの99%は、骨および歯に貯蔵され、その構造と機能を支える。
・日本人のカルシウム摂取量は目標を充たしていないため、積極的に摂取することが重要。
体内で必要なカルシウムを供給した後の残りの99%は、骨および歯に貯蔵され、その構造と機能を支える。
・日本人のカルシウム摂取量は目標を充たしていないため、積極的に摂取することが重要。
・神経伝達、筋の収縮・弛緩の調節、血液凝固や様々な代謝活動等、多くの生体機能の維持に不可欠。 ○アンチエイジングで期待されている効果 ・骨や歯の強化に摂取され、骨粗鬆症、くる病、骨軟化症の予防に役立つ。 ・高血圧を抑え、コレステロール値を下げ、冠動脈疾患を予防する働きもある。 ・ビタミンCの併用は腰痛や月経困難症に伴う腹痛を軽減し、健康な睡眠を促す。 ・がん、特に大腸・直腸がんの予防を助ける可能性がある。 ※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』
カルシウムの吸収
●血液中のカルシウム濃度の維持
・血液中のカルシウム濃度は極めて厳格に制御され、食事摂取の変化によって変動することはない。
・血液中のカルシウム濃度はビタミンD、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、エストロゲン、男性ホルモンなどによって、一定に保たれている。
・身体は血液、筋肉および細胞内液におけるカルシウム濃度を一定に維持するため、骨組織をカルシウムの貯蔵庫またはカルシウムの供給源として利用する。
○副甲状腺ホルモンとの関係
・血液中のカルシウム濃度は比較的狭い範囲に保たれており、濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンの分泌が増加し、主に骨からカルシウムが溶け出し、元の濃度に戻す。
したがって、副甲状腺ホルモンが高い状態が続くと、骨からのカルシウムの溶出が大きくなり、骨の粗鬆化を引き起こすこととなる。
○摂取量と尿中排泄量との関係
・カルシウムの摂取量が多ければ吸収量・尿中排泄量は増加し、逆にカルシウムの摂取量が少なければ吸収率は上昇し、尿中排泄量は低下する。
したがって、カルシウムは1食で集中的に摂取するよりも、何食かに分けて摂取するほうが効率よく摂取することが出来る。
・血液中のカルシウム濃度は極めて厳格に制御され、食事摂取の変化によって変動することはない。
・血液中のカルシウム濃度はビタミンD、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、エストロゲン、男性ホルモンなどによって、一定に保たれている。
・身体は血液、筋肉および細胞内液におけるカルシウム濃度を一定に維持するため、骨組織をカルシウムの貯蔵庫またはカルシウムの供給源として利用する。
○副甲状腺ホルモンとの関係
・血液中のカルシウム濃度は比較的狭い範囲に保たれており、濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンの分泌が増加し、主に骨からカルシウムが溶け出し、元の濃度に戻す。
したがって、副甲状腺ホルモンが高い状態が続くと、骨からのカルシウムの溶出が大きくなり、骨の粗鬆化を引き起こすこととなる。
○摂取量と尿中排泄量との関係
・カルシウムの摂取量が多ければ吸収量・尿中排泄量は増加し、逆にカルシウムの摂取量が少なければ吸収率は上昇し、尿中排泄量は低下する。
したがって、カルシウムは1食で集中的に摂取するよりも、何食かに分けて摂取するほうが効率よく摂取することが出来る。
●カルシウムの吸収率 ・カルシウム摂取量が増加すると、吸収の効率が低下する。 ・カルシウムの吸収率は、乳児期・思春期・妊娠後期で特に高くなる。 ・カルシウムの吸収率・吸収量は、摂取量や食品に含まれる成分によって影響を受ける。 カルシウムの吸収を阻害する物質として、野菜に含まれるシュウ酸や、穀物に含まれるフィチン酸が知られており、多量の脂質もカルシウムの吸収に悪影響を与えるといわれている。 ただし、さまざまな食品を食べている人はこれらの要因を気にする必要はない。 ・ビタミンDを食品から摂取したり、十分な強度の太陽に当たることで皮膚によって生成されたりすると、カルシウムの吸収が促進される。 ●カルシウムの排泄量に影響を与える要因 ・ナトリウム摂取量が多いと尿中カルシウム排泄量が増加する。 ・アルコールを摂取すると、カルシウムの吸収が低下し、ビタミンDを活性型に変換するのを促す肝酵素が阻害され、カルシウムの状態に影響が生じることがある。 ・リンの摂取はカルシウムの排泄にほとんど影響しない。 複数の観察的研究では、大量のリンを含有する炭酸清涼飲料を摂取すると骨密度が低下し骨折のリスクが増大することが示唆されている。しかし、その原因はリン自体よりミルクをソーダ―に替えたことによるものと考えられる。 ・たいていの人の場合、上記の要因はカルシウムの状態にほとんど影響を及ぼさない。 ※参考情報 カルシウム | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
●カルシウムの吸収率に影響を与える成分 ○吸収を阻害 ・シュウ酸(ほうれん草等に多いが、ゆでれば減少する) ・フィチン酸(豆、穀類に多い) ・過剰のリン(品質改良剤など添加物にも多い) ・過剰の食物繊維(サプリメントに注意) ○吸収を促進 ・CPP(牛乳中のタンパク質) ・ビタミンD ・クエン酸 ※参考資料『中村丁(2015)栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』
●乳製品とカルシウム ・マグネシウム、カリウム、ビタミンD、乳糖は、骨がカルシウムを保持するよう促しているが、タンパク質、リン、ナトリウムは、カルシウムの排泄を助けている。 ※参考資料『エリック・シュローサー(2010)フード・インク 武田ランダムハウスジャパン』
●カルシウムパラドックス ・カルシウムが体内で正常に働くには、カルシウムとマグネシウムが2:1の割合で存在するのが理想。 カルシウムばかりとりすぎて、相対的にマグネシウムが不足すると、骨からカルシウムが溶け出して、本来ならカルシウムが溜まらない動脈等に蓄積する。 ・骨粗鬆症や動脈硬化の誘引となる。 ※参考資料『梶本修身(2016)すべての疲労は脳が原因 2 集英社』
カルシウムを多く含む食品
乳・乳製品、魚介類、大豆製品、種実類、藻類など
カルシウム不足の問題
・カルシウム不足は、食事からの摂取不足や腸からの吸収不良によって起こる。
・カルシウムの吸収にはビタミンDを必要とするため、ビタミンD不足により、カルシウム不足が引き起こされることもある。
・カルシウムの欠乏により、骨粗鬆症、高血圧、動脈硬化などを招くことがある。
・カルシウムの吸収にはビタミンDを必要とするため、ビタミンD不足により、カルシウム不足が引き起こされることもある。
・カルシウムの欠乏により、骨粗鬆症、高血圧、動脈硬化などを招くことがある。
カルシウム過剰摂取のリスク
・カルシウムの過剰摂取によって、高カルシウム血症、高カルシウム尿症、軟組織の石灰化、泌尿器系結石、前立腺がん、鉄や亜鉛の吸収障害、便秘などが生じる可能性がある。
・サプリメントなどの利用による過剰摂取で、泌尿器系結石、ミルクアルカリ症候群、他のミネラルの吸収抑制などが起こることが知られている。
・カルシウムの摂取は他のミネラルとのバランスが重要だが、カルシウムの過剰摂取により、マグネシウムやリン酸などの吸収が妨げられることがある。
理想的な摂取量の比は、カルシウム:マグネシウムは2:1、カルシウム:リンは1:1と考えられている。
・サプリメントなどの利用による過剰摂取で、泌尿器系結石、ミルクアルカリ症候群、他のミネラルの吸収抑制などが起こることが知られている。
・カルシウムの摂取は他のミネラルとのバランスが重要だが、カルシウムの過剰摂取により、マグネシウムやリン酸などの吸収が妨げられることがある。
理想的な摂取量の比は、カルシウム:マグネシウムは2:1、カルシウム:リンは1:1と考えられている。
カルシウムと骨との関連
●カルシウム、ビタミンD ・カルシウム摂取量と骨量との関連を調べた疫学研究では、カルシウム摂取量が多いほど骨量が高いこと、カルシウム投与は骨量の減少予防に有効であること等が示されている。 ・ビタミンDは生体内のカルシウムとリン濃度の調節に関わっている。 現在までの疫学研究の成果から、適度なカルシウム、ビタミンDの摂取は骨粗鬆症や、骨粗鬆症に関連した骨折の予防に有用と考えられている。 ●カルシウム・パラドックス ・カルシウムの供給源としては乳製品や魚・豆類等の寄与が大きいが、これら食品の摂取量が多いと骨は大丈夫かというと必ずしもそうとは限らない。特に肉類の摂取量が多い欧米型のような食事習慣では問題となる場合がある。 →カルシウム・パラドックスと言われていて、骨の健康にはカルシウム以外の他の栄養摂取状況とも大きく関わっているため。 ※参考資料『平成21年9月発行 毎日くだもの200グラム運動指針(8訂版)』
●カルシウムと骨量 ・カルシウム摂取量が少ない場合または消化されたカルシウムの吸収が良好でない場合、正常な生物学的機能維持のために体内に貯蔵されているカルシウムが利用されて骨破壊が生じる。 ・正常な加齢の一過程として、特に閉経後の女性では、エストロゲン分泌量の低下によって骨量低下が生じる。 ・女性、痩身、非活動的、高齢、喫煙、アルコールの過剰摂取、骨粗鬆症の家族歴などのさまざまな要因によって骨粗鬆症の発現リスクが増大する。 ※参考情報 カルシウム | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
●骨折との関連 ・カルシウム摂取量と骨量、骨密度、骨折との関係を検討した疫学研究をまとめたメタ・アナリシスによると、摂取量と骨量、骨密度との間には多くの研究で有意な関連が認められている。 ・カルシウム摂取量と骨折発生率との関連を検討した日本で行われた疫学研究は有意な関連(摂取量が少ない集団での発生率の増加)を認めているが、世界各地の研究をまとめたメタ・アナリシスでは、摂取量と発生率の間に意味のある関連は認められなかった。 ・十分なカルシウム摂取量は、骨量の維持に必要。骨量の維持によって骨折の発症予防が期待される。しかしながら、カルシウムの摂取量と骨折との関連を検討した疫学研究は多数存在するものの、その結果は必ずしも一致していない。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
カルシウムと循環器病との関連
・高血圧との関連については以下の記事参照。
高血圧と食塩、食事、肥満との関連の”DASH食、カリウム、カルシウム、マグネシウムとの関連”
高血圧と食塩、食事、肥満との関連の”DASH食、カリウム、カルシウム、マグネシウムとの関連”
●脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病 ・脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病とは特に強い関連は認められていない。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
●カルシウムと心血管障害 ・カルシウムは、脂質の腸管吸収の低下、脂質排泄量の増加、血中コレステロールの低下および細胞へのカルシウム流入促進によって、心血管障害のリスクを低下させるのに役立つものと考えられている。 ・いくつかの研究では、十分な量のカルシウムを摂取すれば心疾患や脳卒中を予防できる可能性があることが示されているが、他の研究では、大量のカルシウムを特にサプリメントから摂取した場合、心疾患のリスクが増大する可能性があることが示されている。 心血管障害のリスクへのカルシウムの影響に関する前向き研究のデータには一貫性がなく、乳製品中のカルシウムがサプリメントに含有されるカルシウムと比べて心血管系に異なった影響を及ぼすのか否かは明らかになっていない。 ※参考情報 カルシウム | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
カルシウムとがんとの関連
・大腸がんとの関連については以下の記事参照。
大腸がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”、”予防方法”
・前立腺がんとの関連については以下の記事参照。
前立腺がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”、”原因、リスク要因”
大腸がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”、”予防方法”
・前立腺がんとの関連については以下の記事参照。
前立腺がんの概要と予防方法の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”、”原因、リスク要因”
サプリメントによるカルシウム摂取
・2008年、2010年にBolland MJらはカルシウムサプリメントの使用により、心血管疾患のリスクが上昇することを報告している。この報告に対しては様々な議論があるが、通常の食品ではなく、サプリメントやカルシウム剤の形での摂取には注意する必要がある。 ・サプリメントを用いた介入試験によると、サプリメントの補給は、単独では骨折抑制効果をあまり示さないとした報告が多いが、少なくともビタミンDとの併用時には骨折を抑制するという結果を得たメタ・アナリシスが存在する。しかし、これを否定した報告も存在する。 ※参考資料 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
●心血管障害に関連するカルシウムサプリメントの安全性 ・いくつかの研究で、カルシウムのサプリメントを摂取すると心筋梗塞や冠動脈疾患などの心血管系イベントのリスクが増加することが証明されている。 ・93,000人を超える閉経後女性を約8年間追跡調査したWHI臨床試験データとWHI観察的研究データを併合した解析を2013年に行った著者らは、"心筋梗塞、冠動脈疾患、全体的な心疾患、発作または全体的な心血管障害へのカルシウムおよびビタミンDのサプリメント摂取において、好ましくない影響を示すエビデンスはほとんどない"という結論に達した。 研究者らは、心血管系へのカルシウムサプリメントの好ましくない影響には過剰なカルシウム摂取によって血清中カルシウム濃度の正常な恒常性調節が機能しなくなったときに生じる高カルシウム血症が関与しているという仮説を立てている。 高カルシウム血症は血液凝固の亢進、血管の石灰化および動脈壁の硬化と関連があり、これによって心血管障害のリスクが増加する。 また、大量のカルシウムを摂取すると、心血管系イベントのリスク増加と関連のある線維芽細胞増殖因子23の循環レベルが上昇する。特にカルシウムサプリメントを摂取すると血清中カルシウム濃度が上昇する。 一部の研究者らはカルシウム総負荷というよりもこの急激な変化が観察された有害な影響に関与しているという仮説を立てている。 ・2012年に行われた前向き研究とランダム化臨床試験のレビューにおいて、Wang氏らは食事またはサプリメントからカルシウムを摂取しても心血管障害のリスクにほとんどまたはまったく影響がないとみられるが、現存のエビデンスから確定的な結論を出すことはできないと述べている。 ・カルシウムサプリメントが心血管系に有害な影響を及ぼす可能性があるということは、科学界で大きな議論となっており、さらなる研究が必要とされている。 ※参考情報 カルシウム | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
●カルシウムとビタミンDの摂取と骨折予防 ○"女性の健康イニシアチブ"研究で3万6282人閉経後の女性に対して行われた臨床試験 ・被験者を無作為に2グループに分け、一方にはカルシウムとビタミンDを毎日摂取し、もう一方にはプラセボを摂取した。 ・寛骨(骨盤の骨)の骨密度は多少高くなったが、股関節骨折の確率は摂取した人とプラセボで同じだった。むしろ、摂取した人の方が腎結石がかなり増加した。 ○2012年6月、米国予防医学作業部会 ・健康な閉経後の女性が、骨折予防の目的でビタミンDとカルシウムを摂取するのは望ましくない、と勧告した。 ・同部会は、がん予防のためのビタミンD摂取についても、現時点では利点もリスクも証明されていないと述べている。 ※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』
多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
●カルシウム摂取と循環器疾患の関連について ・食事調査を含む生活習慣についてのアンケート調査から、総カルシウム摂取量、牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品からのカルシウム摂取量、大豆製品・野菜などの乳製品以外からのカルシウム摂取量のデータを得て、脳卒中・虚血性心疾患との関連を調べた。 ○総カルシウム摂取量 ・総カルシウム摂取量の最も多いグループでは最も少ないグループに比べて脳卒中の発症リスクが0.70倍と低いことがわかった。 ・同様の弱い傾向が、脳梗塞の発症リスクとの間にも見られた。 ○乳製品からのカルシウム摂取量 ・乳製品からのカルシウム摂取量が最も多いグループでは最も少ないグループに比べて、脳卒中の発症リスクが0.69倍と低いことがわかった。 ・脳卒中の病型別に見ても、脳梗塞の発症リスクが0.69倍、脳出血の発症リスクが0.64倍といずれの病型でも低いことがわかった。 ○乳製品以外からのカルシウム ・摂取量が増えても脳卒中の発症リスクに統計学的に有意な低下は見られなかった。 ○カルシウム摂取でなぜ脳卒中のリスクが下がる? ・日本人では、総カルシウム摂取量や乳製品からのカルシウム摂取量が多い人は、少ない人に比べて血圧値が低いことがこれまでの研究により明らかとなっている。 また、血圧値だけでなく、カルシウム摂取は血小板の凝集やコレステロールの吸収を抑えることも報告されている。 上記影響が脳卒中に対する予防効果が示された理由と考えられる。 ・一方で、カルシウム摂取と虚血性心疾患との間には明らかな関係は認められなかった。 その理由として、乳製品を多く摂取するとカルシウムと同時に飽和脂肪酸という虚血性心疾患の発症リスクを上げる栄養素を体内に取り込むことになるため、カルシウムの効果を打ち消してしまっている可能性が考えられる。 ○カルシウムのサプリメントは? ・この研究結果からは、日本人はカルシウム摂取、特に乳製品からのカルシウムの摂取を増やすことによって、脳卒中を予防できる可能性が示されたが、カルシウムのサプリメントについては検討されていないため、その摂取については脳卒中を予防するかどうかはわからない。
●カルシウムとビタミンD摂取量と糖尿病との関連について ・食事調査を含む生活習慣についての詳しいアンケート調査の結果を用いて、カルシウム、ビタミンDおよび乳製品の1日当たりの摂取量を算出した。 それぞれの摂取量毎に2~4つのグループ分けを行い、その後の糖尿病発症リスクとの関連を調べた。 ○乳製品の摂取量との関連、カルシウムの摂取量との関連 ・女性において乳製品の摂取量がもっとも高いグループでは最も低いグループに比べて糖尿病発症のリスクが約30%低くなることがわかった。 また、カルシウムの摂取量が最も高いグループでは、最も低いグループと比べてリスクが約24%低くなる傾向が見られたが、統計学的に有意な関連ではなかった。 ・一方、男性では、カルシウム及び乳製品いずれの摂取量も糖尿病発症との間に関連を認められなかった。 ○ビタミンD摂取量との関連 ・ビタミンD摂取量と糖尿病発症のリスクには、男女ともに統計学的に有意な関連は見られなかった。 しかし、ビタミンDの摂取量が平均よりも多い群と少ない群に分けて、カルシウム摂取量と糖尿病発症のリスクとの関連を調べたところ、男女共にビタミンD摂取量が多い群においてのみ、カルシウム摂取量が高いと糖尿病のリスクが低くなるという関連が明らかになった ○ビタミンDとカルシウム摂取が糖尿病発症を予防するメカニズム ・ビタミンDは、すい臓のβ細胞に直接作用してインスリン分泌に関与していること、カルシウムは細胞内のインスリンのシグナル伝達に関与していることが報告されている。 これらが不足するとインスリン感受性が低下するという報告もあることから、両者が糖尿病の発症に関連している可能性が考えられる。 加えてビタミンDは、カルシウムの吸収に関与していることから、2つの栄養素が高い群で相乗効果となり、糖尿病のリスクが低くなったと考えられる。 ○男女で結果が異なった理由 ・本研究の結果では、女性のみにおいて、乳製品と糖尿病との間に関連が認められた。その理由の1つとして、女性では乳製品の摂取量が全体的に高かったのに対し、男性では低く、リスクを低減するのに充分な量ではなかった可能性が考えられる。 一方のビタミンDは、日光(紫外線)にあたることにより皮膚でつくられることから、男女共に食事からの摂取量のみでは体内の全てのビタミンD量を反映できなかったことが考えられる。
ネットニュースによる関連情報
●カルシウムサプリメントと心血管病のリスクとの関連 ・前向きコホート研究の74,245名の女性のデータ(追跡期間24年)を調査した結果、調査開始時にカルシウム・サプリメントを摂取していた女性は、摂取していなかった女性に比べて、身体活動量が高めであり、喫煙者は少なく、トランス脂肪酸の摂取も少なかった。 ・データ解析によって、一日1000ミリグラム以上のカルシウム・サプリメント摂取女性は、まったく摂取しなかった女性に比べて、心血管病の発症リスクが0.82と、むしろ低下していることが明らかになった。心筋梗塞のリスクと脳卒中のリスクは、各々0.71と1.03であった。
●カルシウムサプリメント摂取で心臓病のリスク増加? ・2700人以上を対象に食事アンケートと、CTスキャンを2回(各回の間隔は10年とした)受けてもらった。 ・被験者の46%はカルシウムサプリメントを利用していたが、解析の結果、彼らは冠動脈石灰化の度合いが10年間で22%高まったことがわかった。
●カルシウムサプリメント摂取で心臓病のリスク増加? ・27件のコホート研究においては、カルシウムの総摂取量、食品由来摂取量、サプリメント由来の摂取量のいずれも、心血管疾患や脳血管障害と死亡率、全ての死因による死亡率との関連性はみられなかった。 なお、食品のみによってカルシウムの摂取量が過剰になることはほとんどないが、サプリメントによる安全性は懸念されている。 ・レビューに含まれている、サプリメントに特化した3件の試験のうち、カルシウムサプリメントと心血管疾患について統計的に有意な影響があったとするものはなかった。 ・心血管イベントのリスクや死亡率については、カルシウムサプリメントを単独で摂取した群とカルシウム+ビタミンDサプリメントを摂った群は、対照群に比べて統計的に有意な差は見られなかった。
●果物や野菜に含まれるカリウム塩によって骨が強くなる? ・果物や野菜に豊富に含まれるカリウム塩(重炭酸カリウムとクエン酸カリウム)の摂取によって、尿中カルシウム排泄が有意に低下し、同様に酸の排泄も有意に低下した。そして骨吸収(破骨細胞により古くなった骨が分解され破壊されていく現象)を有意に低下させた。 ・本研究結果で骨吸収の減少が示されたため、こうした塩で骨粗しょう症を予防できると研究者は考えている。