※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
- ビタミンB12の概要
- ビタミンB12の吸収
- ビタミンB12の効果
- ビタミンB12を多く含む食品
- ビタミンB12不足の問題
- ビタミンB12過剰摂取のリスク
- ビタミンB12と循環器病との関連
- ビタミンB12とフレイル、認知機能との関連
- 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
- ネットニュースによる関連情報
ビタミンB12の概要
・ビタミンB12はコバルトを含むビタミンの総称で、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、シアノコバラミン、スルフィトコバラミンがある。
・微生物以外では合成されないため、植物性食品にはほとんど含まれない。
・体内では、メチルコバラミンとアデノシルコバラミンが、アミノ酸や脂質などの代謝の補酵素として働いており、不足すると悪性貧血や神経障害などが起こることが知られている。
・微生物以外では合成されないため、植物性食品にはほとんど含まれない。
・体内では、メチルコバラミンとアデノシルコバラミンが、アミノ酸や脂質などの代謝の補酵素として働いており、不足すると悪性貧血や神経障害などが起こることが知られている。
ビタミンB12の吸収
・食品中のビタミンB12はたんぱく質と結合しており、経口摂取されて胃に入ると胃酸やペプシンによって遊離状態となる。
遊離したビタミンB12は、胃壁細胞から分泌される糖タンパクの内因子と結合し、内因子-ビタミンB12複合体となって腸管を下降し、回腸で吸収される。
吸収されたビタミンB12は、血中の輸送タンパク(トランスコバラミン)と結合し、肝臓や末梢組織・器官へ運搬される。
・健康な成人における食品中ビタミンB12の吸収率はおよそ50%だが、これは内因子を含めた吸収機構が飽和するためで、それ以上のビタミンB12を摂取しても生理的に吸収されない。
・胆汁中には多量のビタミンB12化合物が排泄されるが、約半分は内因子と結合できないために吸収されず、腸肝循環によって再吸収されたり、糞便へ排泄されたりする。
遊離したビタミンB12は、胃壁細胞から分泌される糖タンパクの内因子と結合し、内因子-ビタミンB12複合体となって腸管を下降し、回腸で吸収される。
吸収されたビタミンB12は、血中の輸送タンパク(トランスコバラミン)と結合し、肝臓や末梢組織・器官へ運搬される。
・健康な成人における食品中ビタミンB12の吸収率はおよそ50%だが、これは内因子を含めた吸収機構が飽和するためで、それ以上のビタミンB12を摂取しても生理的に吸収されない。
・胆汁中には多量のビタミンB12化合物が排泄されるが、約半分は内因子と結合できないために吸収されず、腸肝循環によって再吸収されたり、糞便へ排泄されたりする。
・光や空気によって酸化が進むので、肉や魚を冷凍保存する場合はきちんと密閉するのがベスト。 ※参考資料『中村丁(2015)栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』
ビタミンB12の効果
・葉酸とともに骨髄で巨赤芽球から正常な赤血球を作り出す働きに関与している。 ・認知症患者は脳内のビタミンB12濃度が低いことから、脳が正常に機能するために重要な働きをしているのではないかと考えられている。 ※参考資料『中村丁(2015)栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』
・神経細胞に働きかけ末梢神経の修復を助けることから、腰痛、不眠症、時差ぼけなどの症状の緩和に効果が認められている。 ・不眠症の治療ではB12の大量投与(必要量の200倍近く)によって、脳内の入眠物質であるメラトニンの感受性が高まり改善されることが確認された。 ・精神の安定や記憶力の増進に貢献し、認知症を予防し、脂肪の代謝にも重要な機能を果たしている。 ※参考資料『阿部尚樹,上原万里子,中沢彰吾(2015)食をめぐるほんとうの話 講談社』
・正常な神経細胞の活動性、DNAの複製、赤血球・白血球・血小板の産生、正常な細胞機能に必要な物質の産生、細胞の成長に必要な栄養素の代謝、気分に影響する物質SAMeの産生に欠かせない。それは、血液、神経、その他の細胞の健康を維持する酵素の再利用に必要。 ・たんぱく質、脂質、炭水化物の代謝を補助する。 ・葉酸、ビタミンB6とともに働いてホモシステインレベルを調節する。ホモシステインの上昇は心疾患、脳卒中、おそらくはアルツハイマー病、骨粗鬆症のリスク増加に関わっている。 ・血漿中のホモシステイン濃度の高さが、脳卒中などの血管疾患の進展に関わるといわれてきた。葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12のサプリメントによって効果的に血漿ホモシステイン濃度が低下するとされている。 ・ロンコらは、ビタミンB12がLDLの酸化を抑えることを発見した。 ※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』
ビタミンB12を多く含む食品
・ビタミンB12は、貝類に多く含まれる。
ビタミンB12不足の問題
・ビタミンB12不足は、厳格な菜食主義者、高齢者など胃酸分泌の低い人、胃切除者、小腸における吸収不全の人などに見られる。
・ビタミンB12が不足の症状として、悪性貧血、メチルマロン酸尿症、ホモシステイン尿症、神経障害、感覚異常、記憶障害、うつ病、慢性疲労、運動時の動悸や息切れなどが知られている。
・ビタミンB12が不足の症状として、悪性貧血、メチルマロン酸尿症、ホモシステイン尿症、神経障害、感覚異常、記憶障害、うつ病、慢性疲労、運動時の動悸や息切れなどが知られている。
・造血作用がうまく働かず、悪性貧血になる。下肢のしびれ、進行すると運動失調などの神経障害を起こす。 ・ビタミンB12は、腸内細菌によっても合成されるので、極端な偏食をしない限り欠乏することはない。 ※参考資料『中村丁(2015)栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』
ビタミンB12過剰摂取のリスク
・小腸での吸収機構において、胃から分泌される内因子によって吸収量が調節されている。
・過剰に摂取しても吸収されないため、ビタミンB12の過剰摂取による障害は、ほとんどない。
・過剰に摂取しても吸収されないため、ビタミンB12の過剰摂取による障害は、ほとんどない。
ビタミンB12と循環器病との関連
●ホモシステイン値と心血管疾患、脳卒中 ・ホモシステイン値の上昇は、独立した心血管疾患のリスク因子として確認されている。 ・ホモシステインはメチオニン由来の含硫アミノ酸で、通常は血液中に存在している。 ・ホモシステイン値の上昇は血栓の形成を亢進し、血管内皮による血管運動調整機能を損ない、脂質の過酸化を促進させ、血管平滑筋の増殖を引き起こすと考えられている。 ・後ろ向きで横断的な研究ならびに前向き研究からのエビデンスは、冠動脈心疾患および脳卒中とホモシステイン値の上昇とを関連付けている。 ●ホモシステイン値とビタミンB12 ・ビタミンB12、葉酸、ビタミンB6は、ホモシステインの代謝に関与している。 ・ビタミンB12が不足した状態では、メチオニン合成酵素の機能が不十分となり、ホモシステイン値は上昇する可能性がある。 ・いくつかのランダム化比較試験の結果から、ビタミンB12サプリメントと葉酸サプリメントを併用すると、ビタミンB6の併用・非併用に関係なく血管疾患あるいは糖尿病の患者、および若年成人女性で、ホモシステイン値が減少することが示唆されている。 ・別の試験では、マルチビタミン/マルチミネラルのサプリメントを8週間摂取した高齢者に、ホモシステイン値の有意な低下がみられた。 ●ビタミンB12と心血管疾患、脳卒中 ・ある研究のエビデンスとして、葉酸およびビタミンB12サプリメントにホモシステイン値を低下させる役割があることが示されているが、いくつかの大規模前向き研究からのエビデンスでは、それらのサプリメントが心血管疾患のリスクを低下させるということは示されていない。 ・米国心臓協会は、現在のエビデンスでは、ビタミンB群に心血管リスクを減少させるという役割があることを裏付けるのは不十分だと結論づけている。 ○Women's Antioxidant and Folic Acid Cardiovascular試験 ・心血管疾患の発現リスクが高く、ビタミンB12 1mg、葉酸2.5mg、ビタミンB6 50mgを含有するサプリメントを7.3年間連日摂取している女性を対象。 ・ホモシステイン値が低下したにも関わらず、主要な心血管イベントのリスクの減少はみられなかった。 ○Heart Outcomes Prevention Evaluation(HOPE)2試験 ・54歳以上の血管疾患あるいは糖尿病の患者5,522人が対象。 ・葉酸2.5mg、ビタミンB6 50mg、ビタミンB12 1mgによる平均5年間の連日治療で、ホモシステイン値および脳卒中リスクが低下したことが判明したが、主要な心血管イベントのリスクは減少しなかった。 ○Western Norway B Vitamin Intervention試験 ・冠動脈造影を受けている3,096人が対象。 ・1年間にわたるビタミンB12 0.4mgと葉酸 0.8mgのサプリメントおよびビタミンB6 40mgとの併用あるいは非併用での連日摂取により、ホモシステイン値が30%低下したが、38カ月の追跡期間中の全死亡率あるいは主要な心血管疾患イベントリスクには影響を及ぼさなかった。 ※参考情報 ビタミンB12 | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業
ビタミンB12とフレイル、認知機能との関連
※フレイルとの関連については以下の記事参照。
フレイル、サルコペニア、高齢者の栄養の”高齢者の健康とビタミン、脂肪酸との関係”
※認知機能との関連については以下の記事参照。
アルツハイマー病に効果のある食事の”ホモシステイン、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12と認知症との関連”
フレイル、サルコペニア、高齢者の栄養の”高齢者の健康とビタミン、脂肪酸との関係”
※認知機能との関連については以下の記事参照。
アルツハイマー病に効果のある食事の”ホモシステイン、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12と認知症との関連”
多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス
※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?
●葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12摂取と虚血性心疾患発症との関連について ・食習慣についての詳しいアンケート調査の結果を用いて、葉酸、ビタミンB6、およびビタミンB12などの栄養素摂取と虚血性心疾患発症との関連を調べた。 ○葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の単独の摂取量で評価 ・ビタミンB6の摂取量が最も少ないグループに比べ、その他のグループでは30~50%リスクが下がった。 葉酸、ビタミンB12では傾向はあっても、統計学的に有意な関連が見られなかった。 しかし、この分析を心筋梗塞のみに限ると、ビタミンB6との関連はさらに強くなり、葉酸、ビタミンB12でも統計学的に有意な傾向がみられた。 ○葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の組合せの摂取量で評価 ・それぞれ摂取量で2群に分けて、3つの栄養素の高低の組み合わせを見てみると、3つの栄養素とも全てが高い人の群に比べて、全ての栄養素が低い人の群では、心筋梗塞のリスクが約2倍だった。 さらに、1つの栄養素摂取量が高くても、他の2つが低い人の群ではリスクが上昇する傾向があった。 このことから、これらの栄養素はひとつだけが高いだけでは、心筋梗塞には予防的に働かない可能性が示された。 ・さらに、ビタミンB6が低い人では、葉酸とビタミンB12摂取量は高くても、3つが低い人たちと同じくらい心筋梗塞のリスクが高いということがわかった。 ○ビタミンB6との関連が強かった理由、推奨の摂取法 ・今回、ビタミンB6と心筋梗塞の関連が特に強かった理由として、日本人では葉酸やビタミンB12摂取量が高い人が比較的多いのに対して、ビタミンB6摂取が低いことが挙げられる。 ・ビタミンB6の最大の摂取源である白米でも、茶碗1杯(約150g)に約0.03mgしか含まれていない。ビタミンB6を多く含む食品を積極的に摂取していくことが心筋梗塞の予防につながる可能性がある。 ・葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12は、生体内でのメチル代謝において、それぞれ異なる役割を担っている。ひとつでも欠乏することによりメチル代謝が滞ると、血中ホモシステインが上昇し、動脈硬化などにより心筋梗塞を引き起こすと考えられている。
ネットニュースによる関連情報
●高齢者のためのビタミンB12サプリメントのメリットは疑問 ○一般的な知見 ・ビタミンB12欠乏症は、うつや記憶障害やその他の重要な日常生活における認知機能と同様に筋力低下や歩行困難、疲労、手足のしびれなどを含む神経系の重要な問題を引き起こす。 ○75歳以上、中程度のビタミンB12欠乏症、201名に試験を実施 ・1年間毎日ビタミンB12あるはプラセボの錠剤を服用した。 ・解析の結果、研究者らは、ビタミンB12を服用した人が、プラセボ薬を服用した人に比べて、神経や認知の機能を改善したという証拠がないことを確認した。 ・参加者のうちのわずか数人だが、臨床的な効果がみられたと研究者らは報告している。安全な推奨量のビタミンB12サプリメントでは、神経や認知機能に影響するには服用量が少ないか、サプリメントの効果が出るには数年かかる可能性があるのかもしれない。