ビタミンCの概要、効果、病気予防効果

※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。

  1. ビタミンCの概要
  2. ビタミンCの吸収
  3. ビタミンCの効果
  4. ビタミンCを多く含む食品
  5. ビタミンC不足の問題
  6. ビタミンC過剰摂取のリスク
  7. ビタミンCと循環器病との関連
  8. ビタミンCとがんとの関連
  9. ビタミンCとフレイル、認知機能、白内症との関連


※ビタミンサプリメントの健康影響については以下の記事参照。
サプリメントの効果

ビタミンCの概要

・ビタミンC(L-アスコルビン酸)は、抗壊血病因子として発見された水溶性ビタミン。
 
・ヒトは生合成に必要なL-グロノ-γ-ラクトン酸化酵素が欠損しているため、体内でビタミンCを合成することができない。
 そのため、野菜や果物など食物からビタミンCを摂取しなくてはならず、不足すると壊血病を引き起こす恐れがある。

ビタミンCの吸収

・ビタミンCは、消化管で吸収された後、血中に送られる。
・消化過程は食品ごとに異なり、一緒に食べる他の食品によっても影響を受ける。
・食事から摂取したビタミンCもサプリメントから摂取したビタミンCも、その相対生体利用率に差異はなく、吸収率は200mg/日程度までは90%と高く、1g/日以上になると50%以下となる。
・アスコルビン酸が酸化されることでできるデヒドロアスコルビン酸も還元酵素により生体内ですみやかにアスコルビン酸へ変換されるため、生物学的な効力をもつ。
・血球中の好中球は酸化されたデヒドロアスコルビン酸を細胞内へ積極的に取り込みアスコルビン酸に再還元している。
・体内のビタミンCレベルは、消化管からの吸収率、体内における再利用、腎臓からの未変化体の排泄により調節されている。

●脳とビタミンC
 
・脳には血液脳関門があり、出入りする化学物質を選別している。ビタミンCは、別の形に変え、トランスポーター(輸送体)を介して吸収されている。
 脳の入り口は狭いので、アスコルビン酸(ビタミンC)はデヒドロアスコルビン酸になってそこを通過する。そして無事脳に入ると、アスコルビン酸に戻る。
 デスドロアスコルビン酸は不安定で、その形では摂取できない。
・ビタミンCは中枢神経系を正しく作用させるのに欠かせない。
・ビタミンCはどの細胞へもトランスポーターを介して入っていくが、脳はこのトランスポーターを多く持っており、他の部位の10倍ものビタミンCを溜め込んでいる。
 ビタミンCは、神経伝達物質ノルエピネフリンを生成するのに欠かせないため、脳は十分に備蓄しておく必要がある。
・サプリメントは、大半は尿と一緒に排出され、脳にはほとんど到達しない。
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

 

・壊れやすい特徴があり、水や熱、光で簡単に壊れる。店先に並べられて太陽光や熱にさらされている野菜はそれだけでビタミンCが減少し、体内では喫煙や睡眠不足で減少する。
 
※参考資料『阿部尚樹,上原万里子,中沢彰吾(2015)食をめぐるほんとうの話 講談社』

ビタミンCの効果

・ビタミンCは、皮膚や細胞のコラーゲンの合成ならびに重要な抗酸化物質として働いている。
・ビタミンCには抗酸化作用があり、生体内でビタミンEと協力して活性酸素を消去して細胞を保護している。

・強い抗酸化力によって過酸化脂質の生成を抑制し、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞などを予防する働きがある。
・発がん物質であるニトロソアミンの形成を抑制する働きもあり、抗がん作用も期待されている。
 
※参考資料『中村丁(2015)栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』

 

・神経伝達物質のノルエピネフリンの生成から、脂肪代謝、コラーゲン合成、鉄分吸収の促進まで、ビタミンCは体の中でいくつもの役割を担っている。
・ビタミンCが足りなくなると、細胞間をつなぐ物質を維持できなくなり、皮膚、特に脚に斑点が浮かび、歯茎がぐらぐらになり、粘膜から出血する。
 顔色も悪くなり、気分が沈み、体の一部が動かなくなる。悪化すると、古傷が開いて化膿し、歯が抜ける。
 
●ビタミンCが"酸化促進剤"として心血管の働きを助ける
 
・2009年、ウェールズのカーディフ大学による研究
・健康な血管はなめらかな筋肉の層に包まれているが、高血圧、高コレステロール、糖尿病、心不全の患者の血管は、その筋肉がうまく弛緩せず、そのために血管は収縮したままとなり、心臓の負担が増える。
→ビタミンCを注射
→血管を弛緩させるシグナル分子である一酸化窒素(フリーラジカル)の生成量が増える
→動脈の弛緩が促される
 
さらにビタミンCは、血中の酸素に反応して過酸化水素を作る。
→過酸化水素は不安定で有害な化学物質だが、血管の内側からの電気信号を強めて、周囲の筋肉を弛緩させることができる。
 
酸化分子は体にとって毒と思われがちだが、体が生理機能を果たすために有用な場合もあるのでは?
重要なのはバランスで、酸化分子があまりに多いと有害であり、逆に少なすぎても有害なのでは?
 
酸化促進剤が血管の病気の治療薬として利用されるかもしれない。ただし、酸化ストレスは動脈を収縮させる恐れもあるので、バランスを見つけるのが難しい。
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

 

・コラーゲンの合成に深く関与
・肌の真皮細胞線維芽細胞が活発に働く手助けをする。繊維芽細胞は、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを生成する。
・細胞の老化を予防するとともに、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞などの予防に効果を発揮したり、発がん物質の形成を抑制する働きもある。
 
※参考資料『近藤和雄,佐竹元吉(2014)サプリメント・機能性食品の科学 日刊工業新聞社』

 

・コラーゲンを作る酵素は酸素を必要とするが、副産物として活性酸素を生じさせる。
活性酸素は酵素の働きを阻害するので、そのままではコラーゲンを作れなくなってしまう。そこで、活性酸素を消すビタミンCが十分にあれば、コラーゲンの生成が続けられる。
 
※参考資料『阿部尚樹,上原万里子,中沢彰吾(2015)食をめぐるほんとうの話 講談社』

 

・ビタミンCが疲労を軽減するというエビデンスはない。
・コラーゲンを構成するタンパク質の合成・保持にあたって不可欠な物質。ビタミンCが欠乏するとたんぱく質をいくらとっても体内でコラーゲンが合成されにくくなる。
 
※参考資料『梶本修身(2016)すべての疲労は脳が原因 集英社』

 

・抗酸化作用があり、フリーラジカルによる細胞障害から守る。
・コラーゲン、健康な皮膚、骨・歯・毛細血管の構成成分の形成や維持に必要。
・産業汚染物質、ある種の眼疾患、歯肉出血から身を守り、免疫系の増強栄養素として最もよく知られている。
・植物性食品からの鉄分やカルシウムの吸収を促進し、感染に対する抵抗力を高める。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

ビタミンCを多く含む食品

・果物と野菜は最もすぐれたビタミンCの供給源。
・ビタミンCは穀類には天然に存在しないが、一部の朝食用強化シリアルに添加されている。
・アスコルビン酸は水溶性で熱によって破壊されるため、食品のビタミンC含有量は長期保存や調理によって減少することがある。
 蒸し加熱や電子レンジの使用によって、調理損失を減らせる可能性がある。
 
※参考情報
ビタミンC | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業

ビタミンC不足の問題

・アルコール中毒者、野菜やフルーツの摂取が少ない人などにビタミンC不足が見られる。
 
・喫煙者は非喫煙者よりもビタミンCの必要性が高く、同様のことは受動喫煙者でも認められている。
 
・ビタミンCが不足すると、コラーゲンの構造が弱くなるため毛細血管から出血し、歯肉炎(壊血病の初期症状)や貧血、全身倦怠感、脱力、食欲不振の症状が出てくる。
 

・寒冷ストレスや喫煙により体内でのビタミンCの消費量は高まる。
 
※参考資料『中村丁(2015)栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』

ビタミンC過剰摂取のリスク

・通常の食品で可食部100g当たりのビタミンC含量が100mgを超える食品が少し存在するが、通常の食品を摂取している人で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たらない。
 
・ビタミンCの過剰摂取によるもっとも一般的な症状は、吐き気、下痢、腹痛。

ビタミンCと循環器病との関連

●ビタミンCの心血管疾患予防の作用
 
・ビタミンCはその抗酸化作用に加え、単核球の血管内皮への付着性を低下させ、内皮依存的な一酸化窒素の産生および血管拡張を促し、血管平滑筋細胞のアポトーシスを減少させることで、アテローム性動脈硬化症におけるプラークの不安定化を防ぐことが示されている。
 
●前向き研究、食事からのビタミンC摂取
 
○Nurses' Health Study
・85,118人の女性看護師を対象とした16年間にわたる前向き研究。
・食事およびサプリメントの両方からのビタミンCの総摂取量は、冠動脈心疾患のリスクとの間に逆相関を示した。
・しかし、ビタミンCを食事のみから摂取した場合、有意な関連性はみとめられず、ビタミンCサプリメントの使用者では冠動脈心疾患のリスクが低い可能性があることが示唆された。
 
○2008年、前向きコホート研究(追跡期間の中央値10年間のビタミンC摂取に関する14件の研究を含む)のメタアナリシス
・サプリメントではなく食事によるビタミンC摂取が冠動脈心疾患リスクと逆の相関にあるという結論に達した。
 
●前向き研究、サプリメントからのビタミンC摂取
 
○閉経後女性を対象とした小規模の試験
・300mg/日以上のビタミンCサプリメントを摂取した糖尿病の閉経後女性で、心血管疾患による死亡率が増加した。
 
○英国の成人を対象とした前向き研究
・20,649人を対象。
・ベースラインの血漿中ビタミンC濃度の最大4分位群で、最小4分位群と比較して脳卒中のリスクが42%低下した。
 
○Physicians' Health Studyに参加した男性医師対象の研究
・ビタミンCサプリメントを平均5.5年間使用しても、心血管障害の全死亡率や冠動脈心疾患による全死亡率に有意な減少はみられなかった。
 
○9件の前向き研究の統合解析
・ベースライン時に冠動脈疾患がみられなかった293,172人の被験者を対象。
・700mg/日以上のビタミンCサプリメントを摂取した人では、摂取しなかった人と比べて冠動脈心疾患の発現リスクが25%低下した。
 
●臨床介入試験、サプリメントからのビタミンC摂取
 
○Women's Antioxidant Cardiovascular Study
・心血管疾患の既往を持つ40歳以上の女性8,171人を対象とした二次予防試験。
・500mg/日のビタミンCを平均9.4年間補給したところ、心血管イベントに対する全般的な効果はみとめられなかった。
 
○Physicians' Health Study IIに参加した男性医師に対する臨床試験
・500mg/日のビタミンCを補給し、平均8年間追跡調査したところ、主要心血管イベントに対する効果はみられなかった。
 
※参考情報
ビタミンC | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業

 

●ビタミンCと心臓病
 
・複数の大規模な臨床試験において、ビタミンCのサプリメントには心臓病を防ぐ効果はなかった。
 ビタミンCの血中濃度が高いと腎臓ですぐにろ過されてしまうから?
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

 

・ビタミンCの摂取量と血液中濃度、体外排泄を検討した研究から、1g/日以上を摂取する意味はないことが示されている。
 
・種々の疾病発症に対するビタミンCサプリメントの有益な効果はいまだ明確になっていない。
 
・腎機能障害を有する者が1日に数gのビタミンCを摂取した条件では腎シュウ酸結石のリスクが高まることが示されている。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

 

・HDLを上げ、LDLの酸化を防ぐが、その結果、血管壁における動脈硬化性粥腫の形成を予防することが研究で明らかにされてきた。
・一酸化窒素の活性を改善し、動脈硬化の進展に関連した内皮細胞の機能不全を回復させることも示されてきた。
・カールらの研究によると、脳卒中のリスク低減効果のある可能性が示唆されている。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

ビタミンCとがんとの関連

●ビタミンCと抗がん作用
 
・ビタミンCはin vivoでニトロソアミンなどの発がん物質の形成を制限し、免疫反応を調節することができる上、その抗酸化機能によってがんの原因となる酸化的損傷を減弱する。
 
●症例対象研究、食事からのビタミンC摂取
 
・食事によるビタミンC摂取と肺がん、乳がん、結腸直腸がん、胃がん、口腔がん、咽頭または喉頭がん、食道がんとの間に逆相関があることが判明している。
・ビタミンCの血漿中濃度は、がん患者の方が対照群に比べて低値となっている。
 
●前向きコホート研究、食事からのビタミンC摂取
 
○Nurses' Health Studyに参加した女性のコホート
・33~60歳の女性82,234人を対象。
・食品からのビタミンC摂取量が平均205mg/日の群(最大5分位摂取群)では、平均70mg/日の群(最小5分位摂取群)に比べて、乳がんの家族歴がある閉経前女性の乳がんリスクが63%低下した。
 
○Kushiらの研究
・食品からのビタミンC摂取量が198mg/日以上(最大5分位摂取群)の閉経前女性では、摂取量が87mg/日未満(最小5分位摂取群)の閉経前女性と比べて乳がんリスクの有意な低下はみられなかった。
 
○CarrおよびFreiによるレビュー
・がんリスクの有意な低下を報告していない前向きコホート研究の大多数において、ほとんどの参加者のビタミンC摂取量が比較的高く、最小5分位群でも86mg/日を上回るという結論に達した。
・有意ながんリスク低下を報告している研究では、ビタミンCの組織飽和量に近い範囲である80~110mg/日以上を摂取している人に、摂取量とリスク低下との間の有意な関連性がみられた
 
●多くの研究結果の傾向、注意点
 
・現時点では、食事によるビタミンC摂取量ががんリスクに影響を及ぼすかどうかのエビデンスは一致していない。
・ほとんどの臨床試験の結果は、ビタミンCを単独または他の栄養素と組み合わせて適度に補給しても、がんを予防する上での利点が得られないことを示唆している。
・これらの試験の多くを解釈する上での実質的な限界は、研究者が補給前後にビタミンC濃度を測定していないことにある。
 ヒトの血漿中および組織中ビタミンC濃度は厳密にコントロールされている。
 1日100mg以上を摂取すると細胞が飽和状態になり、200mg以上の摂取では、血漿中濃度はわずかに上昇するにすぎない。
 被験者のビタミンC濃度が試験への登録時点である飽和状態に近かった場合、ビタミンCを補給しても測定結果に違いがほとんどないか、または全くみられないと考えられる。
 
※参考情報
ビタミンC | 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業

 

●ビタミンCとがんとの関連
 
・ビタミンCは、がん予防には役立つが、がんを発症した人にとっては天敵となる。腫瘍はビタミンCが大好物なので、がんを抱えているときにビタミンCを過剰摂取すると、がんに餌を与える事になりかねない。
 
・ビタミンCは、がんの薬になるにせよ、餌になるにせよ、ブドウ糖が細胞内に入り込むのと同じ経路を通っていく。がん細胞は、急速に増殖するので大量のエネルギーを必要とし、ゆえに、正常の細胞より多くのブドウ糖とビタミンCを取り込む。
 
・がん細胞の周囲の組織は炎症を起こしている。がんの増殖スピードが速く、血液と酸素がそちらに奪われるため、周囲の細胞が死んでいく。この死んだ細胞が炎症を引き起こす。がん細胞の周辺では、この炎症のせいで、血液中のビタミンCは酸化し、デヒドロアスコルビン酸になり、がん細胞の内部に入り込む。その後、アスコルビン酸に戻って、がん細胞が増殖するために使われる。
 
・がん治療(放射線治療と化学療法)では一般に、酸化を促進してがん細胞を殺そうとするが、ビタミンCは抗酸化物質なので、それを妨害する。
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

 

・強力な抗酸化物質であり、変性や老化過程と関連する脂質過酸化を減らし、フリーラジカルによる損傷からDNAを保護する等、様々な方法でがんを予防する可能性があることを多くの研究は示している。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

ビタミンCとフレイル、認知機能、白内症との関連

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・ザーンディらの研究結果から、ビタミンEとビタミンCとの併用でアルツハイマー病のリスクを減らせる可能性が示唆された。片方のビタミンやマルチビタミンでは効果がみられなかった。
・ある研究は白内障を予防する可能性を示唆している。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

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