恋愛感情、性欲、愛着

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  1. 性欲、恋愛感情、愛着の概要
  2. 性欲、恋愛感情、愛着に関わる脳内化学物質
  3. 恋愛中の人の脳、恋愛感情
  4. 恋愛と快感
  5. 性欲、性的興奮
  6. 愛着
  7. ライフサイクルの影響
  8. 月経と性的ピーク
  9. 男女の違い、特徴

性欲、恋愛感情、愛着の概要

・性欲、恋愛感情、愛着の交配衝動は、それぞれ脳内の異なる経路をめぐり、それぞれが異なる行動、希望、夢を生み出し、それぞれが異なる神経化学物質と関連している。
・性欲は、適切と思われるパートナーなら、そのほとんどすべてと性的につながることができるよう、動機を与えるために進化してきた。
・恋愛感情が誕生したのは、男女の交配意欲を好みの個人に集中させるためだった。
・男女間の愛着は、子どもが幼児期を脱するまでは夫婦一緒に育てるために発達した。
・この3つの交配衝動を一時にひとりの人間だけに集中させない人もたくさんいる。
 
※参考資料『ヘレン・フィッシャー(2005)人はなぜ恋に落ちるのか? ソニー・マガジンズ』

 

●交配と生殖のための3つの脳のシステム
 
・3つのシステムが存在するのは、おびただしい数の性的パートナーを探し、その中から一人を選んで溺愛し、少なくとも一緒に子どもを育てる間はその相手との感情的な結びつきを維持するよう動機付けることにある。
 
○ラトガーズ大学、ヘレン・フィッシャー博士の説
①恋愛感情
・"恋する気持ち"と高揚感で、その時々で一人の相手にのみ求愛するために生まれたものをさす。
 
②性欲
・性的な喜びに対する欲望で、ほとんどどんな相手とでも性的に結合できるよう、その動機を与えるために誕生したもの。
・脳スキャンの実験結果で、"性欲"は"恋愛感情"とは違うパターンを示すという、複数の研究結果がある。性欲の場合、視床下部が活動している、という報告がある。
 
③愛着
・長い間付き合っている相手に抱く、落ち着いた、穏やかな感情。
 
※参考資料『NHKスペシャル取材班(2011)女と男 角川書店』

性欲、恋愛感情、愛着に関わる脳内化学物質

●テストステロン
 

・男女ともに、テストステロンは脳の性的エンジンを動かす化学燃料。
・燃料が充分なときにはテストステロンによって視床下部が元気に働き、エロティックな感情に火がついて性的な幻想や性感帯の感度が高まる。
・男性は思春期を通じてテストステロンレベルが着実に上昇し続けるのに対し、女性の性ホルモンは週によって波があり、女性の性的関心はほとんど毎日変化する。
・生理周期の後半に高まるプロゲステロンは性的衝動と行動を抑制し、女性のシステムのなかでテストステロンの働きの抑止力になる。
・テストステロンは生理周期の2週目、受胎力が一番高まる排卵直前に自然に増加する。
・エストロゲンはそれ自体では性的衝動を高めることはないが、テストステロンとともに生理周期の中頃に増加する。女性はエストロゲンによって、主として膣が潤ってセックスを受け入れやすくなる。
 
※参考資料『ローアン・ブリゼンディーン(2008)女は人生で三度、生まれ変わる 草思社』

 

・攻撃的な性衝動を担当する。セックスを求め、行動を開始し、優位な立場でことを進めるのがテストステロンの働き。
・テストステロンは欲望を直接刺激もする。
→テストステロンが、性衝動を高めるものとして知られている神経伝達物質、ドーパミンを増やすからと思われる。
・テストステロンはまた、攻撃性、競争意識、はてには暴力の引き金をひくこともある。
・男にも女にも媚薬のように作用する。そして、性交とオーガズムへの衝動を駆り立てる。
・ただ、同時にテストステロンは独りきりになりたいという気持ちも起こさせる。
→マスターベーションや一夜限りの情事をめざすことになる。
・他者との交流を寄せ付けない性衝動、あるいは征服や権力の獲得といったかたちの性衝動をあおる、とも言える。
・女性は男性に比べてテストステロンの値がかなり低いので、人と親密になりやすく、交流を嫌がる度合いが少ない。
・抗うつ薬としても働く。値が跳ね上がったりすると、怒りっぽくなったりいらいらしたりする。
 
○女性とテストステロン
・女性のクリトリス、乳房、乳首のエロティックな感覚を高める元。
・テストステロンのおかげで女性は男性を追い求める。そして、よりセクシャルに、より敏感に、より決然とした態度をとらせる。
・テストステロンは女性の関心をオーガズムへと広げ、生殖器の快感も楽しむように仕向ける。
・テストステロンの値が増えたからといって必ずしも性交の頻度に影響するわけではない。一方、マスターベーションの頻度は増すらしい。
 
○テストステロンレベルの調整機構
・体内のテストステロンの値は、生殖腺と脳の間のフィードバックシステムによって調節されている。
・テストステロン減少
→LHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)が刺激される
→睾丸に働きかけてテストステロンが増産
・テストステロン増加
→脳がLHRH-LHの分泌をストップするように指示を受ける
→テストステロン減少
・LHRHは90分ごとのサイクルで分泌される。フィードバックシステムの中で中心的な役割を果たしているLHRHはテストステロンの分泌に影響を与えるとともに、それに影響もされる。
→テストステロンの分泌が過剰であったり極端に少なかったり、またタイミングが狂っていたりするとLHRHの周期は混乱する。
 
○分泌パターン、周期
・テストステロンの値は、季節、環境、競争、ストレスなど様々なことに影響される。
・朝は分泌量が多い。値は一日中変動を続ける。季節的な周期もある。
・ストレスを受けている間減少する。
・思春期に男女ともピークを迎え、その後は次第に減少していく。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 
●オキシトシン
 

・母性愛、恋愛の場合、脳でドーパミンとオキシトシンが高まって絆をつくりあげ、批判的な思考と否定的な感情が働かなくなり、高揚感と愛着を生み出す快楽回路のスイッチが入る。
・乳児が乳首を吸うとき、母親の脳ではオキシトシン、ドーパミン、プロラクチンが爆発的に増加する。母乳があふれ出る。
 
※参考資料『ローアン・ブリゼンディーン(2008)女は人生で三度、生まれ変わる 草思社』

 

・出産のときやオーガズムの際に、子宮に収縮を起こす。
・ストレスを抑える働きもある。
・忘れっぽくなったり、きちんと論理的に考える力が弱まってしまう。
 
○分泌パターン、周期
・規則的なパターンを全く持たず、肉体や環境上の必要に応じて、あるいは自分とふれあっている相手に応じて値が高くなったり低くなったりする。
・オキシトシンはエストロゲンがあってこそ存在しているので、エストロゲンが無ければ消滅してしまう。
→女性がエストロゲンの補充療法を受ければ、それを受けない女性よりもオキシトシンの値を高いまま維持できる。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 
●エストロゲン
 

・女性の香り、嗅覚にもエストロゲンが働いている。
・女性の受容の性衝動を担当している。エストロゲンが満ちると、女性は男性を快く受け入れる。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 
●セロトニン
 

・値が高いか低いかによって、性的にとりすましたり、逆に見境がなくなるほど積極的になってしまうという二面性を持っている。
・値が高くなると性衝動は冷め、低くなると盛んになる。
・値が高いと、繊細で穏やかな性質があらわれる。
・値が高くなると、自分または他者に向けた攻撃性が抑制されるらしい。
・動物の場合、セロトニンの値が高ければしかるべき交尾相手をきちんと選ぶことができる。
・値が低くなると、性衝動が激しくなり感覚が鋭くなる。女性はより短時間でオーガズムを得られるようになり、男性は短時間で射精する。
・原因はどうであれ、男性のセロトニンの値が低くなると、不安定な行動や危険な行為につながる。
・男性にとって自然なのは"テストステロンが高くセロトニンが低い"で、女性は逆。
・プロザック、ゾロフトといったセロトニンを高める薬は早漏の治療にも使われている。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 

●恋愛とセロトニン

・恋する人間が、愛する人のことばかり考えてしまうのにセロトニンの分泌が少なくなることが関係しているのかもしれない。
・1999年のイタリアでの研究で、恋に落ちた被験者と強迫神経症障害(この患者に医者が出す薬は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬)患者、恋愛中ではない健康な人達を調査したところ、恋に落ちた被験者と強迫神経症患者の両方でセロトニンの分泌レベルが低いことが分かった。(ただし、脳内のセロトニンレベルではなく、血液中のレベル。脳の特定部位におけるセロトニンの活動が証明されない限り、恋愛との関係もはっきりさせることはできない。)
・セロトニンは、ドーパミンとノルエピネフリンと反比例的な関係にある。
→ドーパミンが増え、恋にともなう高揚感が高まると、セロトニンが減少し、相手のことばかり考えてしまうようになるのかもしれない。
 
※参考資料『ヘレン・フィッシャー(2005)人はなぜ恋に落ちるのか? ソニー・マガジンズ』

 
●ドーパミン
 

・セックスに限らず、あらゆる喜びの追求に関わっている。
・快感を与えてくれる神経伝達物質。
・ドーパミンの量が充分でないと、喜びを感じなくなり、楽しみ、熱中、興奮、充実感への期待を失ってしまう。
・たいていの場合、性衝動もドーパミンによって増す。
・ドーパミンは攻撃性や好ましくない行動を誘発することはない。むしろインスピレーションを与え、意欲を高め、期待感を助長する。
 
○分泌パターン
・オキシトシンとドーパミンは互いに補いながら量を調整する。ドーパミンが増加するとオキシトシンは減少し、ドーパミンが減少するとオキシトシンは増加する。
 この二つの物質が一緒に働くと、ドーパミンの働きで快感を、オキシトシンの働きで親密な気分、安らぎ、安心感を得ることが出来る。
 どちらの物質もオーガズムを高める。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 

●恋愛とドーパミン
 
・脳内のドーパミン分泌量が増加すると、確固たる動機と目的志向の行動が生み出される。と同時に、極端なほど集中力が高まるようになる。
→恋愛時の状況と重なる。
・ドーパミンは、新鮮な刺激を学ぶことと関係する化学物質とされてきた。
・ドーパミンの濃度が上昇すると、爽快な気分になる。
・愛する人とのセックスを切望する気持ちも、間接的ながらも、ドーパミン分泌量の上昇と関係している可能性がある。脳内ドーパミンが増えると、テストステロン(性的願望を引き起こす作用がある)のレベルが上昇することが多い。
 
※参考資料『ヘレン・フィッシャー(2005)人はなぜ恋に落ちるのか? ソニー・マガジンズ』

 
●DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)
 

・男女を問わず、体内に一番たくさんあるホルモン。
・性ホルモンの大部分の源で、様々な酵素がDHEAの分子に働きかけて性ホルモンが作り出される。
 
○分泌パターン、周期
・一日を通じて変動する。その値は環境にも感情にも反応する。
・ある瞬間には100倍に跳ね上がったりするが、一方、ストレスを感じれば急降下する。
・20代の時期に分泌量がピークとなり、その後どんどん減少する。
・更年期に入ってもさほど急激な減少は見られないので、エストロゲンの値が落ちたあと女性の性衝動を支えているのはDHEAだと考えられている。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 

●恋愛感情とDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)
 
・クレンショー・クリニックで行われた調査は、DHEAが性的な願望を高めることを示した。
・媚薬の強力な拮抗物質であるプロゲステロンが、ほとんどの代謝の面でDHEAとは対立する役割を果たしている。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 
●PEA(フェニルエチルアミン)
 

・アンフェタミンに似た物質で、体内で分泌されると高揚した気分になる。
・恋をしているときの血液中にこれが含まれていることが分かっている。
・PEAの値はオーガズムの間に跳ね上がるという特徴がある。
・PEAの値が異常に高まるという体験をすると、それがやみつきとなって恋に溺れたような状態になってしまう場合がある。そして、濃度の値が低くなったり、急激に減少したりすると恋わずらいの原因になると言われている。
・ある種のうつ病もPEAの値の変動から起きるが、PEAの値を通常に戻す抗うつ薬を使えば治療できる。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 

●恋愛感情とPEA(フェニルエチルアミン)
 
・ロマンスが生まれると脳の中の特定の領域でPEAが大量に分泌されると考えられている。ここは普通性的な刺激の間活性化し、性欲と快感を高める。
・恋をしているときには血液中のPEAの値は高い。
・ひと目惚れという現象で視覚的な要素として働いている。
・PEAは抗うつ薬としてはたらくことで知られている。
・恋を失った"PEA中毒者"は異常に食べ、異常に眠り、情緒面で異常なまでの高揚状態を示す。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 
●プロゲステロン(黄体ホルモン)
 

・男女のテストステロンを抑制して、性衝動を失わせる。
・女性を男性に対しては短気に、自分の子どもを守ることに関しては攻撃的になる。
・おだやかな鎮静作用、麻酔に似た効果、心を静める働きを発揮することも分かっている。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 
●プロラクチン
 

・脳の下垂体で生成される。
・授乳中の母親の体内ではプロラクチンという化学物質が大量に分泌され、母乳をつくりだすのに大きな役割を果たしている。
・乳房の組織の成長を促し、母乳の分泌を促す。
・乳児が乳を吸うと、このホルモンの値は通常のおよそ10倍にまで上昇する。授乳後、プロラクチンの値は徐々に少なくなり、2,3時間のうちに元に戻る。
・規則的に乳児に乳を与えているとプロラクチンの値は常に高い。このとき、性衝動がぐんと抑制される。
・授乳する回数が多ければ多いほど、つまりプロラクチンが多く分泌されればされるほど、女性のセックスへの関心は薄らいでしまう。
・プロラクチンは性欲を抑えるが、セックスの歓びまでは抑制しないので、セックスを楽しむことも可能。オーガズムには影響を与えないようだ。
・男性のプロラクチンの値が異常に上昇すると、性欲がなくなったり不能になったりする。
・ドーパミンはプロラクチンの分泌を抑えるので、結果として間接的に性衝動を押し上げる。
・エストロゲンは徐々にプロラクチンの分泌を促すというかたちで攻撃的な性衝動を抑制する。すると、女性の性衝動は受身のものとなる。
・胃の不調(とくに吐き気や嘔吐)など、ある種の内分泌系の異常、運動、心理的ストレス、睡眠などの影響でもプロラクチンの分泌は増える。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 
●バゾプレシン
 

・テストステロンと非常に緊密に連携しあって働く。男性の性衝動を調整して、過激になりすぎたりしないようにする。
・動物の場合、テストステロンの値が下がると、バゾプレシンのほうにもブレーキがかかる。テストステロンが補充されると、バゾプレシンの値も通常値に戻る。
・体温、気質、感情などを平常に保つように調節する機能がある。
・ほとんどあらゆる場面で、オキシトシンが与える影響のバランスをとったり対抗したりしている。
 
○分泌パターン、周期
・ストレスを受けている間上昇する。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 
●恋愛とノルエピネフリン
 

・ノルエピネフリンの効果は、脳のどの部分で活性化するかによって様々だが、概してこの物質の分泌量が増えると爽快な気分になり、エネルギーにあふれ、眠れなくなり、食欲が失われる、という恋愛時の状況と重なる作用がある。
 
※参考資料『ヘレン・フィッシャー(2005)人はなぜ恋に落ちるのか? ソニー・マガジンズ』

 

●抗うつ薬の副作用
 
○選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
・体重の増加。
・性欲が減退したり、なかなかその気にならなかったり、勃起、射精、オーガズムに達しなかったりするという。
 
○恋愛と抗うつ薬
・求愛活動するときに、抗うつ薬を服用している場合は注意する。
・抗うつ薬には、性欲減退や感情を鈍らせる副作用が生じる場合がある。
・恋愛に関連するドーパミン、ノルエピネフリンは、通常、セロトニンと反比例の関係にあるので、セロトニンの脳内レベルを人工的に引き上げてしまうと、ドーパミンとノルエピネフリンの生産、分配、表出を抑え込んでしまうかもしれない。
 
※参考資料『ヘレン・フィッシャー(2005)人はなぜ恋に落ちるのか? ソニー・マガジンズ』

恋愛中の人の脳、恋愛感情

●恋愛中の人の脳のfMRIによるスキャン画像
 
○尾状核
・被験者が愛する人の写真をながめているとき、尾状核の胴体部分の一部と先っぽの部分がとりわけ活性化されていることが分かった。
→尾状核は脳の"報酬システム"の一部。脳の報酬システムとは、報酬を手に入れるための、一般的な覚醒、認識、喜びの感覚、動機を司る心のネットワーク。尾状核はまた、何かに注目したり、何かを学んだりする活動とも関係している。
・被験者の情熱が激しければ激しいほど、尾状核の活動も激しくなることが分かった。
 
○腹側被蓋野(VTA)
・VTAは、脳の報酬回路の中心的な部分。
・VTAは、ドーパミンを製造する細胞の主脈。
 
○帯状回前皮質と島皮質
・恋愛期間が長い被験者の脳内では、帯状回前皮質と島皮質の活性化が見られた。
帯状回前皮質というのは、感情、注目、そして作業記憶が相互に作用している部位。幸福感と関係している部分もあれば、自分自身の感情に気づかせることや、社会的相互作用のなかで相手の感情を見積もる能力と関係している部分もある。そして勝敗に対する瞬時の感情的反応を生み出し、そこから報酬の価値を判断することに関連している部分もある。
・島皮質は、外的な接触と温度と同時に、胃腸といった体腔内諸器官の痛みや活動に関する肉体的な情報を集めている。
 
●吊り橋効果
 
・危険はアドレナリンの分泌を刺激する。アドレナリンは、ドーパミンとノルエピネフリンと密接に関係する。
・アドレナリンには気持ちを甘くする作用がある。
・危険はほとんどの人にとって新鮮なもの。
→新鮮さは恋愛と関係する化学物質ドーパミンの分泌量を高める。
 
●恋愛を長続きさせる方法
 
・ユーモアは新鮮で、思いがけないものなので、脳内のドーパミン分泌量を引き上げる働きがある。
・セックスはテストステロンのレベル上昇と関係している。そこからの連鎖反応で、ドーパミンのレベルも引き上げられる。
・共通の関心をいくつか見つけて、新鮮でエキサイティングなことを一緒にするよう心がける。変化は脳内の快楽中枢を刺激し、ロマンスのピーク期間を維持してくれる。
 
※参考資料『ヘレン・フィッシャー(2005)人はなぜ恋に落ちるのか? ソニー・マガジンズ』

 

●恋をしている人の脳
 
○ラトガーズ大学、ヘレン・フィッシャー博士の研究
・恋に落ちている人の脳の活動をfMRIで調査。
・男も女も激しく恋に落ちているとき、腹側被蓋野と尾状核の先端部分が活動していた。
・腹側被蓋野は、脳の中心に位置する脳幹にあり、脳幹は呼吸、心臓活動、体温調節などの基本的な生命現象を担っている。
・尾状核は、脳幹のすぐ外側に位置する大脳基底核と呼ばれる、動作や運動に関わる場所にある。
・脳幹と大脳基底核は、いずれも哺乳類よりも前の時代にすでに進化していた部分で、すべての脊椎動物が共通して持っているきわめて原子的な脳で、"爬虫類の脳"とも呼ばれている。
・恋は、嫉妬や喜びといった多くの感情がうずまく現象だが、感情に関係する脳の領域である大脳辺縁系が関わっている、というわけではなかった。
→恋は感情ではなく、動物的な衝動?。
・腹側被蓋野と尾状核は、原始的な衝動の一つ、"報酬系"と呼ばれる脳内の神経ネットワークを形成する重要な担い手でもある。
 報酬系は、喉の渇きや食欲といった動物が生き延びるために必要な生物学的な機能として、哺乳類が誕生する前から進化した、原始的できわめて重要な機能だと考えられている。
・報酬系では、快楽をもたらす神経伝達物質ドーパミンが重要な働きをしている。
・ドーパミンは腹側被蓋野でつくられ、そこから大脳基底核に向けて放出される。その経路の一つが尾状核に向かっている。尾状核は、ドーパミンによる報酬を感知、識別して、意思決定を行う役割を果たしていると言われている。
 
○ロンドン大学、ユニバーシティ・カレッジのセミール・ゼキ、アンドレアス・バーテルス博士の研究
・恋人の写真と、無関係な異性の写真を見比べてもらい、その様子をfMRIで測定した。
・データを比較したところ、恋人の写真を見ているときにだけ、扁桃核と頭頂・側頭結合部の領域の活動が低く抑えられていた。
・扁桃核は、脳幹と大脳基底核の外側にある大脳辺縁系に位置していて、本能的な快・不快を感じる働きを担っている。
・頭頂・側頭結合部は、判断力や物事を批判的にとらえる働きをしている。
→恋をしている人は、恋人に対して正常な判断ができない?恋人を批判的に見ることができなくなっている?
 
※参考資料『NHKスペシャル取材班(2011)女と男 角川書店』

恋愛と快感

●恋愛感情と快感回路
 
・恋愛とともに表れる強い幸福感を伴う快感は、ドーパミン作動性の快感回路、つまり腹側被蓋野(VTA)とその標的、たとえば尾状核の強い活動に対応している。
・恋人に対する判断の歪み(良い点を大きく、悪い点を小さく見る)は、判断の中枢である前頭前皮質と社会的認知に関わる側頭極と頭頂側頭接合部の非活性化の結果である可能性がある。
 
※参考資料『デイヴィッド・J.リンデン(2012)快感回路 河出書房新社』

 

●恋愛と中毒
 
・直接的であれ間接的であれ、ほとんどの"乱用ドラッグ"は、脳内のひとつの経路に影響を与えている。その経路は、ドーパミンによって活性化される大脳辺縁系中心部の報酬システム。
→恋愛の場合も同じ化学物質によって、同じ経路の一部に刺激が与えられている。
・神経科学者のアンドレアス・バーテルズとセマール・ゼキが、恋に夢中の被験者とコカインやオピオイドを注射した被験者の脳スキャン画像を比較したところ、脳内の同じ部位の多くが活性化されていることが分かった。たとえば、島皮質、帯状回前皮質、尾状核、被核など。
・恋に惑わされた人間には、耐性、離脱、再発という典型的な三つの中毒症状が見られる場合がある。
 
●愛と憎しみ
 
・怒りを生み出す基本的な脳内ネットワークは、報酬の評価と報酬の期待を処理する前頭前野皮質の中心部と密接につながっている。そして人間やその他の動物が、期待していた報酬が手に入らないと気づくと、前頭前野皮質の中心部が扁桃体にシグナルを発し、怒りを引き起こす。
→恋に破れた人は、どんどん怒りを募らせていく。
 
※参考資料『ヘレン・フィッシャー(2005)人はなぜ恋に落ちるのか? ソニー・マガジンズ』

性欲、性的興奮

●性欲と快感回路
 
・性的な画像を見たとき、男性も女性もVTAと側坐核、背側線条体など、快感回路の中心部が激しく活性化した。
・性的画像の場合は、恋人の顔と異なり、判断中枢や社会的認知中枢の活動低下は生じなかった。
 
※参考資料『デイヴィッド・J.リンデン(2012)快感回路 河出書房新社』

 

●性欲
 
・性的な満足感を切望する衝動。
・男女ともにテストステロンというホルモンが関わっている。
・男女とも、テストステロンの循環レベルが高い人ほど性的な活動が活発になる傾向がある。
・力とスタミナを高めるためにテストステロンを注射する男性アスリートは、性的な思考に陥りやすく、朝立ちも多く、性的接触も多く、オーガズムに達する回数も多い。
・中年期にテストステロンを摂取する女性は、性欲が増大する。
・男性の性的衝動が20代前半でピークを迎えるのは、その時期、テストステロンのレベルが一番高いから。
 多くの女性が排卵期のあたりにいつもより性的欲望を感じるのは、この時期、テストステロンのレベルが上昇するから。
・年齢とともに減少するテストステロンが性欲減退の原因となることが多い。
中年女性の3分の2ぐらいは、性的衝動の減退を感じない。
→閉経とともにエストロゲンが減少すると、テストステロンをはじめとする男性ホルモンが表面化しはじめるからかもしれない。
・性欲は人によってまちまち。
→テストステロンのレベルが遺伝性ということが原因の一つと思われる。
・テストステロンのレベルは、日、週、年によって、さらには人生サイクルによって変動する。
・恋に落ちると性的衝動を刺激されるが、それはドーパミンがテストステロンの分泌を刺激することがあるからと思われる。
 
●セックス
 
・肌をなでたり、マッサージしたりすることで、オキシトシンとエンドルフィンの分泌が促される。
・オーガズムに達すると、脳が、女性の場合はオキシトシン、男性の場合はバソプレシンを放出する。どちらも、愛着感と関係する化学物質。
・セックスは、テストステロンのレベルを上昇させることも多い。
→テストステロンは、恋愛の燃料となるドーパミンの分泌を促してくれる。
 
○精液
・心理学者のゴードン・ギャラップは、精液には、ドーパミンとノルエピネフリンだけでなく、チロシンも含まれていると報告している。
・チロシンはアミノ酸の一つで、脳がドーパミンを生産するときに必要とされる物質。
・精液には、性欲を増進させるテストステロンと、女性の性的興奮とオーガズムを助ける様々なエストロゲンも含まれている。そしてオキシトシンとバソプレシンも。さらには、膣管内に卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンを沈積させる働きもある。
・上記物質すべてが血流から脳内に到達できるわけではないが、なんらかの形で恋愛感情に貢献する可能性はある。
・精液にはβ-エンドルフィンが含まれいて、これは脳に直接到達できる物質で、心と体を落ち着かせる働きがあるので、女性の憂鬱症状を軽減するという主張もある。
 
※参考資料『ヘレン・フィッシャー(2005)人はなぜ恋に落ちるのか? ソニー・マガジンズ』

 

●女性の性的興奮
 
・オーガズムを引き起こす刺激は、恐怖と不安の中枢である扁桃が非活性化されていなければ、快楽中枢に届かない。扁桃が活動停止するまでは、仕事、子ども、家事などの心配がオーガズムへの亢進を妨げかねない。
・リラックス、円滑で安心できる人間関係、いいムードなども重要。
・脳画像撮影法を使って女性のオーガズムを調べた研究によると、女性がその気になるには脚が温かくて心地よくくつろいでいる必要があることが分かった。
・オーガズムに達するまで、女性は平均して男性の3倍~10倍時間がかかる。
・クリトリスの先端の神経は、女性の脳の性的快楽中枢に直接つながっている。この神経が刺激されると電気化学的活動が起こり、その活動が閾値を越えると爆発的な信号が伝えられてドーパミンやオキシトシン、エンドルフィンなど絆づくりと快感の神経化学物質が放出される。
・オーガズムがおさまっていくとオキシトシンが高まり、血管が拡張するので女性の胸と顔は紅潮する。満たされた満足感が女性を包む。不安やストレスは締め出される。
 
※参考資料『ローアン・ブリゼンディーン(2008)女は人生で三度、生まれ変わる 草思社』

 

●性的興奮と化学物質
 
・刺激を感じたり、興奮したり、オーガズムを感じたりするときには、オキシトシンの値が上昇する。
・脳の中はもちろん、おそらく体内の他の重要拠点でもDHEAが増加する。
・PEAの働きは活発になり、神経過敏になるとともに、うっとりした感じにもなってくる。
・テストステロンは増加することもあれば、しないこともある。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 

●視床下部
 
・視床下部は、腺とホルモンの綿密な連携を伴う分泌系と、たえず反応をする神経系との連結基地。
・すべての哺乳類の脳の前方中央に位置しており、体の内部状態を監視、統御している。その監視・統御の範囲には、飢えや渇き、体温、雌の排卵、両性の性衝動も含まれる。
・性衝動の場合、視床下部の送り出す信号が合図となってステロイドホルモンが興奮モードになる。
 
●性的興奮とホルモン
 
○1978年にニューイングランド医学ジャーナルに掲載された研究
・一方は経口避妊薬、他方はペッサリーや避妊リングなどの避妊具に頼っていたグループに分けた。
・ピルを服用していないグループは、排卵期に近づくと関心も性生活も旺盛になる、と報告した。ところがピルを服用しているグループは、性的関心にも積極性にも特に変化は見られなかった。
 
○ドイツで行われた研究
・経口避妊薬を服用している女性は他の避妊法を使っている女性より、世界をはるかにプラトニックに見ている。
 
※参考資料『デボラ・ブラム(2000)脳に組み込まれたセックス 白揚社』

愛着

※オキシトシン、バソプレシンと愛着の情報については以下の記事も参照。
オキシトシン、プロラクチンの”オキシトシン、バソプレシンと愛着”
 
※オキシトシンとニューロンの結合との関連については以下の記事を参照。
神経可塑性、脳回路の再配線、神経発生の”恋と大規模なニューロンの再編成”

●愛着
 
・穏やかで安定した、長期間にわたるパートナーとの一体感。
・主にオキシトシンとバソプレシンというホルモンが関わっている。
・生殖器、あるいは乳首を刺激されたときと、オーガズム感じたとき、これらのホルモンが分泌されている。
 オーガズムの瞬間、男性の場合バソプレシンの分泌量が急増し、女性の場合オキシトシンの分泌量が上昇する。
・セックスの後で感じる一体感、親近感、愛着といった感覚にこれらのホルモンが貢献していると考えられている。
・オキシトシンが増加することで、ドーパミンとノルエピネフリンの脳内経路が妨げられ、この刺激物質の影響力を低下させてしまうこともある。
→愛着を生み出す化学物質が恋愛を生み出す化学物質を低下させてしまう。
→結婚生活や恋人との関係がより安定した、居心地のいい、確固たるものになるにつれ、恋愛感情の高揚感が薄れていくと感じている人が多い。
 
○浮気性or家庭的
・テストステロンレベルの基準値が高い男性は、結婚率が低く、浮気の回数が多く、配偶者を虐待したり、離婚したりすることが多い。
 結婚生活が安定性を失い始めると、男性のテストステロンのレベルが上昇する。離婚となれば、そのレベルはさらに上昇する。
・独身男性のほうが、既婚男性よりもテストステロンのレベルが高い傾向にある。
・男性が家族にますます愛着を抱くようになると、テストステロンのレベルが下がることがある。
 実際子どもが誕生すると、その父親のテストステロンのレベルが驚くほど低くなる。乳児を抱いたときですら、男性のテストステロンのレベルは低下する。
 
※参考資料『ヘレン・フィッシャー(2005)人はなぜ恋に落ちるのか? ソニー・マガジンズ』

 

●愛着、オキシトシン、ヴァソプレシン
 
・熱狂的な激しい恋心からもっと静かで落ち着いた永続的なつながりや愛着を感じる状態に移っていく。
・この段階になるとドーパミンのような報酬システムの快感物質に加えて、愛着と絆のシステムがオキシトシンを定期的に放出し、共にいる喜びを感じるように仕向ける。
・社会的な絆づくりや親としての行動について、男性の脳はおもにヴァソプレシンを使い、女性の脳はおもにオキシトシンとエストロゲンを使う。
・スウェーデンの研究者ケルスティン・ウヴナス-モベルグによると、同じオキシトシンレベルを維持するのに、男性は女性よりも2倍から3倍触れ合う必要があるという。
 
○ストレスの影響
・男性の愛の回路はストレスレベルが高いときに特に活性化する。たとえば肉体的な厳しいチャレンジを経験すると、男性は最初に出会ってその気になってくれた女性と大至急で性的な絆をつくる。
・女性は、ストレスがかかっていると愛情や欲望の誘いや表現をはねつける。
→コルチゾールが女性の脳でオキシトシンの活動を妨げ、性的欲求や肉体的な触れあいへの要求が急になくなってしまうためと思われる。
 
※参考資料『ローアン・ブリゼンディーン(2008)女は人生で三度、生まれ変わる 草思社』

 

●ウォルター・フリーマンの説
 
○神経調整物質、オキシトシン
・オキシトシンは、絆の神経調整物質と呼ばれることもある。恋人同士でが結ばれて、愛を交わすときに分泌される(人間では、性行為でオーガズムを得ているときには男女に分泌される)
・女性の場合は、分娩時と母乳を与えるときに放出されている。
・哺乳類のオスが父親になると、オキシトシンと密接に関係する神経調整物質、バソプレシンが放出される。
・子どもが親に愛着を抱くのもオキシトシンの作用と思われる。養子となった子どもは、数年はオキシトシンの分泌が低いまま。
・ドーパミンは興奮を引き出し、人を意気揚々とした状態にし、性的興奮を引き起こす。一方、オキシトシンは、穏やかであたたかい気分を生じさせる。やさしい感情や一緒にいたいという気持ちを高め、信頼感を生じさせる。
 
※参考資料『ノーマン・ドイジ(2008)脳は奇跡を起こす 講談社インターナショナル』

ライフサイクルの影響

●閉経後の変化
 
・エストロゲンもオキシトシンも低下する。
→もう感情の細かなニュアンスも気にならない。
・エストロゲンレベルが急低下するとテストステロンも下がり、性的衝動も急激に変化する。セックスへの関心、あるいは関心の欠如も問題になり得る。
 
※参考資料『ローアン・ブリゼンディーン(2008)女は人生で三度、生まれ変わる 草思社』

 

●性的興奮と化学物質
 
○30代
・女性の体内でささやかながらホルモンバランスの変化が始まり、テストステロンの影響力が強まってくる。
→控えめな部分が引っ込み、自分の願望をかなえるために以前よりも意欲的に行動するようになる。
 
○40代
・女性のエストロゲンはしだいに減少するため、相対的にテストステロンの比率が高まり、前よりも影響力が強くなる。女性は以前よりも攻撃的になる。
・男性のテストステロンの値は徐々に低くなっていくので、攻撃的な部分が少なくなって性的な欲求も弱まる。
・男女のホルモンの特徴は近づいてくるので相性がよくなるかもしれない。更年期による影響がある場合は別。
 
●性的相性のライフサイクル
 
・たいていの女性は年齢を重ねるにつれて、潔さ、決断力、好色さ、独立心といった、いわゆる"男性的"な特徴を強める。
 男性側は、ふれあい、思いやり、洞察力、忍耐力、物分りのよさといった"女性的"な部分が拡大する。
→同年齢のカップルは、年とともに性的な面でも感情の面でも均衡がとれるようになり、相性がよくなっていく。
 
●更年期に女性の性的な面に現れる影響
 
・皮膚が乾燥して張りもなくなってくると、性的な魅力も触れあいの快感も衰える。
・エストロゲンが減少すればオキシトシンも減少し、触れたい、触れられたいという願望が弱まっていく。
・エストロゲンが少なければセックスには消極的になり、セックスそのものが出来なくなったりする。同時にテストステロンの値が低くなれば、積極的な性衝動も失われる。
・エストロゲンがなくなってしまうと膣の機能が弱まり、悦びも感じにくくなる。
・エストロゲンの値が低くなると膣は縮み、乾燥し、皮膚が薄くなり、傷つきやすくなる。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

月経と性的ピーク

○最初の2週間
・エストロゲンの分泌が増し、エストロゲンが支配権を持つ。
・女性は恋をし、誘い、交渉をもつ。
・気分は爽快で、社交的で、男性を求めて積極的に動く
 
○排卵期
・エストロゲン高い、テストステロンとLH(黄体形成ホルモン)はピーク、PEA(フェニルエチルアミン)も同様。
・LHは排卵を誘発し、性欲を高める。
・興奮薬としてはたらくPEAは、性欲を亢進させたりパートナーを強く求めるように促す可能性がある。
・テストステロンは攻撃的な性衝動を少し高め、女性の関心をあおる働きをする。
テストステロンの働きで穏やかな性的ピークはあるが、ほとんど意識下のものと考えてよい。
・エストロゲンの値が上昇すると女性の性的魅力が増して、性的な受容性も高まる。
 
○排卵後、PMSの前
・プロゲステロンが支配権、セロトニンとエストロゲンは低い、テストステロンが減少
・プロゲステロンの値が高い時期には慈しみ育みたいという気持ちが芽生え、触れ合ったり抱擁したりすることを望む。
・セックスには関心も無く、特に受容的というわけでもない。
・セックスに同意してもオーガズムははっきりと確認できず、とりたててそれを求めようともしない。
 
○PMS(月経前症候群)の時期
・多くの女性にもっとも激しい性的ピークが訪れるのは、月経の直前。
・月経前にはプロゲステロンの値が下がり、テストステロンとプロゲステロンの割合は逆転する。そして、その反動でテストステロンが誘発する攻撃的な性欲が高まる。
 テストステロンは増加しないのだが、プロゲステロンがテストステロンのレセプターを妨害しなくなるので、テストステロンに再び反応するようになる。
 マスターベーションへの衝動が高まるという例もよくある。
・この時期には生殖器の感覚がよみがえり、容易にオーガズムを得られるようになる。
・エストロゲンの減退は月経の偏頭痛と痙攣も引き起こす。
・月経前にはセロトニンが減少する。性衝動が増したり、短気になったりどうしようもなく気分がすぐれなかったりといった現象には、これが影響しているのかもしれない。プロゲステロンによる鎮静効果もなくなっているので、敵意を抱いたり怒りっぽくなったりする。
 
○月経中
・セックスへの関心が高まる人もいる。
おそらく子宮が充血し、膨れ上がり、過敏になり、感じやすくなるからと思われる。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

男女の違い、特徴

※以下の記事も参照。
男女の脳、心理の違いの”恋愛、性欲”

●若者の男女の性的興奮のずれ
 
・男はテストステロンの働きでセックスへと駆り立てられる。そして、オーガズムへも駆り立てられる。
 ところが、女は愛撫によって気持ちも身体も高まらないと、オキシトシンの値は変化しない。
・女性の関心が生殖器に向かうには充分に触れられる必要がある。髪を撫でられたり、背中をさすってもらったり、乳房を吸ってもらったり、腿にキスされたり、いちばん感じやすいところをなめられたりなど。
・女は相手との親密な感情の交流や、感情が通い合っているという実感を欲しがる。
 
※参考資料『テレサ・クレンショー(1998)愛は脳内物質が決める 講談社』

 

●女性の腰のくびれ
 
○テキサス大学、テファンドラ・シン博士の説
・"腰のくびれ"をつくっているのは、エストロゲンの働きなので、女性ホルモンの状態や妊娠のしやすさといったことをストレートに表している。
・"腰のくびれ"は一生あるものではなく、女性が閉経を迎えるとなくなる。エストロゲンの分泌が抑えられていくとともに、ウエストとヒップの比率は再び同じ比率に戻っていく。
 
※参考資料『NHKスペシャル取材班(2011)女と男 角川書店』

 

●メスのオーナメンテーション(装飾)
 
・どの種でも、メスのオーナメンテーションは、メスの健康状態や出産能力、子どもの生存可能性と関連性がある。
→オーナメンテーションが魅力的なほど、健康状態や出産能力、子どもの生存可能性も高い。
・男性が魅力と感じる乳房、ヒップ、お尻、足、顔のつくりなどは、エストロゲンの影響を受けている。
・エストロゲンは、女性の活力や健康状態に敏感に反応する。
 健康状態が悪く、栄養が不十分な女性は、エストロゲンをあまり作り出さない。そのため、子どもが産めなかったり、健康ではない子どもを産んだりする可能性がある。
 女性のエストロゲン値は、食事が足りているか、体内に寄生虫がいないか、どの程度のストレスを抱えているかといったことを判断する指標となる。
 
・女性のオーナメンテーションは、"ガイノイド脂肪"と呼ばれる、女性特有の特殊な脂肪でできている。ガイノイド脂肪は、妊娠や授乳に必要なエネルギーを供給する。
・女性は、男性にもある"アンドロイド脂肪"も持っている。
・ガイノイド脂肪が消費されるのは、子育て期間だけだが、アンドロイド脂肪は毎日のように消費され、日々のエネルギーを生み出している。
・アンドロイド脂肪は、体幹や腹部等、体の内部に蓄積され、ガイノイド脂肪は胸、ヒップ、お尻、太ももなどに蓄積される。
・女性の体のガイノイド脂肪率は、青年期に最大になる。
 エストロゲンによって支えられ、ガイノイド脂肪をベースとするオーナメンテーションは、女性の長期的な出産能力を測る最高の指標となるので、男性の目をもっとも惹きつけるキューへと進化した?
 
※参考資料『オギ・オーガス,サイ・ガダム(2012)性欲の科学 阪急コミュニケーションズ』

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