脂質の概要

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  1. 脂質の定義、機能
  2. 脂質の種類
  3. 中性脂肪の概要
  4. 中性脂肪の代謝、輸送
  5. 炭素数による脂肪酸の分類
  6. 炭素の二重結合による脂肪酸の分類
  7. 脂質の消化、代謝

脂質の定義、機能

●脂質の定義
 
・脂質は、水に不溶で、有機溶媒に溶解する化合物。
・栄養学的に重要な脂質は、脂肪酸、中性脂肪、リン脂質、糖脂質、ステロール類。
 
●脂質の機能
 
・脂質は細胞膜の主要な構成成分。
 
・脂質は、エネルギー産生の主要な基質。
脂肪酸は、炭水化物あるいはたんぱく質よりも、1g当たり2倍以上のエネルギー価を持つことから、ヒトはエネルギー蓄積物質として優先的に脂質を蓄積すると考えられる。
 
・脂質は、脂溶性のビタミン(A、D、E、K)やカロテノイド(βカロテンなど)など脂質に溶けやすい栄養成分を含む食品と一緒に調理し摂取することで、これらの栄養成分を体内に吸収されやすくする働きもある。
 
・コレステロールは細胞膜の構成成分。
肝臓において胆汁酸に変換される。また、性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモン、ビタミンDの前駆体となる。
 
※コレステロールについては以下の記事参照。
コレステロールの概要
 
・n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸は生命の維持に不可欠(必須脂肪酸)。体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する。

・細胞膜や核酸、神経組織などの構成成分として重要。
・脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きもある。
・中性脂肪は、熱伝導性が低いので体温保持に役立ったり、弾力性があるのでクッション役として臓器を保護する働きもある。
・複合脂質(リン脂質、糖脂質)は、タンパク質と結合して細胞膜を形成するなど体組織の構成成分として重要。エネルギー源にはならない。
 
※参考資料『中村丁(2015)次栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』

脂質の種類

●単純脂質
 
・アルコールと脂肪酸のみがエステル結合してできている脂質。
・生物中に多く見られる単純脂質は、グリセリンというアルコールに脂肪酸が結合したもの(グリセリド)。
 中でもグリセリンに3つの脂肪酸が結合した中性脂肪(トリグリセリド)が多くを占めている。
・主にエネルギー源として使われる。
 
〇中性脂肪
・グリセリン(グリセロール)に3つの脂肪酸がついたもの。
・お腹などにたまる脂肪は中性脂肪。
※詳細は、中性脂肪の概要中性脂肪の代謝、輸送参照。
 
●複合脂質
 
・分子中にリン酸や糖を含む脂質。
・細胞膜の構成成分などとして体内で使われている。
・リン脂質、糖脂質などがある。
 
〇リン脂質(リン酸+脂肪酸)
・脂肪酸とリン酸やグリセリンなどが結合した脂質。
・主に細胞膜の材料
 
〇糖脂質
・糖やグリセリンなどが結合した脂質。
 
●誘導脂質
 
・単純脂質や複合脂質から、加水分解によって誘導される疎水性化合物。
・脂肪酸、ステロイド(コレステロールを含む)など。
・身体の構成、エネルギー貯蔵の他、ホルモンをはじめとする生理活性物質としてはたらく。
 
〇脂肪酸
・脂肪酸は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)で構成され、炭素原子が鎖状につながった一方の端にカルボキシル基(-COOH)がついている。
・脂肪酸には、炭素の数や炭素と炭素のつながり方などの違いにより、様々な種類がある。
・主にエネルギー源として利用される
※詳細は、炭素数による脂肪酸の分類炭素の二重結合による脂肪酸の分類を参照。
 
〇コレステロール
・ステロイドに分類され、その中でもステロールと呼ばれるサブグループに属する有機化合物の一種。
・主に細胞膜、ホルモンの材料として利用される。
※コレステロールについては以下の記事参照。
コレステロールの概要
 
●動物性脂肪と植物性脂肪
 
〇動物性脂肪
・動物の体内に含まれている脂肪で、肉、バター、乳脂肪の含まれる牛乳や乳製品などがが主な供給源。
・健康への悪影響が考えられる飽和脂肪酸の主な供給源。
 
〇植物性脂肪(植物油)
・植物に含まれる脂質を抽出・精製した油脂・油。
・マーガリン・サラダ油・ごま油など。

中性脂肪の概要

・グリセロールに3つの脂肪酸がついたもの(トリグリセリド、トリアシルグリセロール)。トリグリセリドのほかに、脂肪酸が2つついたジグリセリド、1つついたモノグリセリドもあるが、体内の中性脂肪の9割以上はトリグリセリド。
 
・酸性の脂肪酸がグリセロールと結合して中性に変化するため、”中性脂肪”と名づけられた。
 
・皮下脂肪はほとんどが中性脂肪。
 
・中性脂肪はコレステロールとは異なり、体細胞の材料にならない。エネルギー貯蔵物質としての役割が大きい。

・乳製品には動物性脂肪が多く含まれているので、過剰に取ると中性脂肪を上げる要因となる。
・中性脂肪の検査値が高くても、ほかに異常がなければ将来病気を発症するリスクが高くないことが分かっている。
 
※参考資料『岡田正彦(2015)医者が絶対にすすめない「健康法」 PHP研究所』

中性脂肪の代謝、輸送

・食べ物に含まれる中性脂肪は、動物性であっても植物性であっても、最終的にはグリセロールや脂肪酸に分解され、小腸から吸収される。
 
①胆汁酸によって中性脂肪が乳化
水となじまない"あぶら"を取り込むには"乳化"というプロセスが必要。
 
②リパーゼによって分解、ミセルを形成
リパーゼという酵素によって、2つの脂肪酸とモノグリセリドに分解され、"ミセル"と呼ばれる球状の分子を形成。
 ミセルは外側が水に溶けやすい構造になっているので、水になじまない脂質が小腸から吸収されやすくなる。
 
③カイロミクロン合成
小腸で脂肪酸とモノグリセリドは中性脂肪に再合成され、リン脂質やコレステロール、タンパク質と結びつくことでカイロミクロンが合成される。
 
○カイロミクロン(キロミクロン)
・リポタンパク質粒子であり、トリグリセリド(85-92%)、リン脂質(6-12%)、コレステロール(1-3%)、タンパク質(1-2%)で構成される。
・食物中の脂質を腸から体内のその他の場所へ輸送する。
・脂肪およびコレステロールを血流の水性溶液中で移動できるようにするリポタンパク質の5つの主要なグループ(カイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDL)の1つ。

④カイロミクロンによって輸送
リンパ管から静脈に入り、全身へと運ばれていき、その過程で分離した遊離脂肪酸が脂肪組織や筋肉組織に取り込まれていく。
 
⑤カイロミクロンに残っていた脂肪酸の処理
肝臓に運ばれ、摂りすぎて余った糖質とともに中性脂肪に再合成され、血液をつたって脂肪組織に運ばれていく。
 
※参考資料『近藤和雄(2015)人のアブラはなぜ嫌われるのか 技術評論社』

 

○吸収
・リン脂質とコレステロールはそのまま小腸に吸収。
・中性脂肪は十二指腸から出る胆汁によって乳化されたのち、膵液の消化酵素リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに分解され、小腸に吸収
 
○運搬
①小腸壁でカイロミクロン形成→リンパ→静脈→心臓→動脈→肝臓
②肝臓でVLDLに再合成→血液で運搬
③VLDLから中性脂肪が細胞に取り込まれてLDLに
 
※参考資料『中村丁(2015)次栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』

炭素数による脂肪酸の分類

●短鎖脂肪酸:炭素数6個以下
 
・バターや牛乳などの動物性脂肪。
・炭素の数が少ないため、すぐに分解され、水に溶けてしまう性質を持つ。
・酸が水に混じりあうことで、強い臭いが発生する。
 
●中鎖脂肪酸:炭素数8~10個
 
・ココナッツ油など。
・長鎖と比べると水に溶けやすいため、水の中に混じりやすく、胆汁酸によるミセル化は不要。
 小腸に容易に吸収され、中性脂肪への再合成やカイロミクロン合成を行わずに遊離脂肪酸のまま門脈に入って肝臓へ運ばれ、速やかにエネルギーを生み出せる。
 
○ココナッツ油
・飽和脂肪酸を多く含むため、酸化のリスクが低い。中鎖脂肪酸でもあるのでエネルギーに変換されやすい。
 
○中鎖脂肪酸とエステル交換技術
・エステル交換技術とは、中性脂肪を構成している3つの脂肪酸の一部を別の脂肪酸に置き換える技術。
・ココナッツ油の中鎖脂肪酸のうちの一部をエステル交換技術によって長鎖脂肪酸に置き換えることで分子量が大きくなり、熱に強く、泡立たない汎用性のある油が開発されている。
 
●長鎖脂肪酸:炭素数12個以上
 
・一般的な植物油。
・炭素の数が多くなると分解に時間がかかるため、その分、水に溶けにくい。
 
※参考資料『近藤和雄(2015)人のアブラはなぜ嫌われるのか 技術評論社』

炭素の二重結合による脂肪酸の分類

●炭素数、二重結合の数と食品
 
オリーブ油コーン油、菜種油、ごま油など植物油全般
炭素数二重結合の数,位置名前備考
2(短鎖)酢酸
4(短鎖)酪酸バター、チーズなど
6(短鎖)カプロン酸バター、チーズなど
8(中鎖)カプリル酸牛乳、母乳、ココナッツ油など
10(中鎖)カプリン酸牛乳、母乳、ココナッツ油など
12(中鎖)ラウリン酸ココナッツ油、やし油など
14(長鎖)ミリスチン酸やし油、パーム油、バター
16(長鎖)パルミチン酸バター、動物の脂身
18(長鎖)ステアリン酸動物の脂身
18(長鎖)1,n-9オレイン酸
18(長鎖)2,n-6リノール酸
18(長鎖)3,n-3α-リノレン酸亜麻仁油、シソ油、エゴマ油
20(長鎖)4,n-6アラギドン酸レバー、卵白
22(長鎖)5,n-3EPA
22(長鎖)6,n-3DHA
  ●飽和脂肪酸   ・二重結合がない。 ・化学的に安定で酸化が起こりにくい。 ・常温で固まりやすい。主に動物の脂。  二重結合をもたない脂肪酸(飽和脂肪酸)は、二重結合をもつ脂肪酸(不飽和脂肪酸)に比べて融点(融ける温度)が高い。  動物の油脂は、一般に飽和脂肪酸の割合が高いために融点が高く、常温では固体(すなわち脂肪または脂)であることが多い。 ※飽和脂肪酸の詳細については以下の記事参照。 飽和脂肪酸、肉の摂取と健康への影響   ●不飽和脂肪酸   ・1つ以上の"不飽和の炭素結合"(炭素二重結合または三重結合)をもつ脂肪酸。 ・化学的に不安定で酸化し易い。 ・常温で固まりにくい。主に植物、魚の油。 植物では、不飽和脂肪酸を多く含むために融点が低く、常温では液体(すなわち油)のものが多い。 ※不飽和脂肪酸の詳細については以下の記事参照。 不飽和脂肪酸の摂取と健康への影響   ●一価不飽和脂肪酸   ・植物性の油であっても動物の脂に組成が近く、オレイン酸は飽和脂肪酸のステアリン酸からも合成できる。 ・動物の脂に近い分、酸化しにくいという利点もある。 ●n-3系不飽和脂肪酸   ・生体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する。(必須脂肪酸) ・EPAとDHAはどちらもn-3系のα-リノレン酸から作られる。  α-リノレン酸→EPA→DHA ・DHAは脳内で利用される割合が大きい。脳内のニューロンを覆っているリン脂質の多くはDHAが原料。   ●n-6系不飽和脂肪酸   ・生体内では、n-6系脂肪酸をアセチルCoAから合成することができないので経口摂取する必要がある。(必須脂肪酸) ・日本人で摂取されるn-6系脂肪酸の98%はリノール酸。   ※参考資料『近藤和雄(2015)人のアブラはなぜ嫌われるのか 技術評論社』

 

①1価不飽和脂肪酸
・オレイン酸、オリーブ油
 
②n-6系脂肪酸
・多価不飽和脂肪酸のひとつで、大豆油やコーン油など、一般的な植物油に多く含まれるリノール酸が代表的。
・リノール酸は体内で合成できない脂肪酸で、体内でγ-リノレン酸、さらにアラキドン酸へと変化する。
・細胞膜や、体の仕組みに働きかける生理活性物質の材料となる物質。
 
③n-3系脂肪酸
・多価不飽和脂肪酸のひとつで、魚の油に多く含まれるIPA(イコサペンタエン酸、EPAともいう)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が代表的で、えごま油やなたね油などに含まれるα-リノレン酸もこの仲間。
・α-リノレン酸は体内で合成できない脂肪酸で、体内でIPA、さらにDHAへと変化する。
・細胞膜や、体の仕組みに働きかける生理活性物質の材料となる物質。
 
※参考情報『林 洋(2010)嘘をつくコレステロール  日本経済新聞出版社』

脂質の消化、代謝

①小腸でリパーゼによって脂肪酸とモノグリセリドに分解され、体内に吸収
②脂肪酸が細胞へと運ばれる。
リンパ管から静脈、動脈と運搬経路が複雑なので3~4時間かかる。
③細胞内でアシルCoAに変化し、ミトコンドリアに取り込まれる。
④β酸化によってアセチルCoAに変化し、クエン酸回路に取り込まれる
⑤クエン酸回路、電子伝達系でエネルギー生成
 
※糖質の代謝
①解糖系
・酵素の働きでブドウ糖がピルビン酸へ。この際に少量のエネルギー発生。
・酸素を使わない代謝
②酵素の力でアセチルCoAに変化し、クエン酸回路に取り込まれる。
③クエン酸回路、電子伝達系でエネルギー生成
 
●ケトン体を生成して代謝
 
・糖質の摂取が少なかったり、糖質の代謝に何らかの不具合が生じたりすると、アセチルCoAはケトン体に変化し、これが代謝されてエネルギーとして用いられる。
 
①脂肪酸
②アセチルCoA
③ケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトン)が肝臓のミトコンドリアで生成
④アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸が身体の各臓器に運ばれて、アセチルCoAに変換
⑤クエン酸回路、電子伝達系でエネルギー生成
 
※参考資料『近藤和雄(2015)人のアブラはなぜ嫌われるのか 技術評論社』

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