カロテノイド、リコペンの概要、効果、健康影響

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  1. カロテノイドの概要
  2. カロテノイドの作用
  3. カロテノイドの健康影響
  4. リコペンの概要、健康影響
  5. β-カロテンの概要、健康影響
  6. サプリメントによる摂取
  7. 多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス


※カロテノイドを含む野菜、果物の健康影響については以下の記事参照。
・果物の効用
野菜、果物全般の健康効果の”多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス”
カロテノイド、リコペンの概要、効果、健康影響
根菜類の効用
茎菜類の効用
葉菜類の効用
果菜類の効用
花菜類、スプラウトの効用

カロテノイドの概要

・動植物に存在する脂溶性の色素。
・抗酸化作用がある。
 
○カロテン類
・アルコールに溶けない
・α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、リコペン
 
○キサントフィル類
・アルコールに溶ける
・ゼアキサンチン、カプサンチン、ルテイン、アスタキサンチン、フコキサンチン、クリプトキサンチン
 
※参考資料『中村丁(2015)栄養の基本がわかる図解事典 [2015] 成美堂出版』

 

・植物、海草、光合成細菌に含まれる天然の脂溶性物質の一群。
・ヒトや他の動物でカロテノイドは合成できないが、多くは食生活の中でカロテノイドを摂取している。β-カロテン、リコピン、ルチンなど。
・カロテノイドは強力な抗酸化物質。
 
○アンチエイジングで期待されている効果
・強力な抗酸化物質として働き、このような働きによって、病因が酸化による障害と考えられるがんやその他の疾患から、生体を防御する。
・閉経前の乳がん、肺がん、子宮頸がんのリスク低減と関連してきた。
・リコピンは、重要なフリーラジカル捕捉剤。
男性4万7000人を対象としたハーバード公衆衛生大学院の研究者らによる研究結果は、最大量のリコペンを摂取した男性では、最小量を摂取した男性と比較して、前立腺がんになる確率が23%低いことを明らかにした。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

カロテノイドの作用

・β-カロテン、α-カロテン、クリプトキサンチンなどのプロビタミンAカロテノイドからのビタミンAへの変換は厳密に調節されているので、ビタミンA過剰症は生じない。
 
・ビタミンAに変換されなかったプロビタミンAカロテノイドやリコペン及びルテイン、ゼアキサンチンなどのビタミンAにはならないカロテノイドの一部は体内にそのまま蓄積する。
 
・これらカロテノイドの作用としては、抗酸化作用、免疫賦活作用などが想定されている。

カロテノイドの健康影響

・世界の代表的なコホート研究のデータをまとめた解析によると、各種カロテノイドの摂取量と肺がん発症率との間に有意な負の関連が示唆されている。
 
・前立腺に蓄積しやすいリコペンは前立腺がんの予防に、網膜黄斑に特異的に集積するルテイン及びゼアキサンチンは加齢性網膜黄斑変性症の改善に寄与することが示唆されている。
 
・カロテノイドの抗酸化作用は皮膚の光保護に機能すると考えられている。
・ルテイン及びゼアキサンチンの摂取は、網膜の色素維持に必須であることが示唆されている。
 
・ただし、カロテノイド摂取の有効性と安全性については、今後の研究成果を待たねばならない。
 
・カロテノイドの欠乏症は確認されていない。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

リコペンの概要、健康影響

・果物や野菜に含まれるカロテノイドの一種。
・カロテノイドの中でも非常に強い抗酸化作用を持っている。
・抗アレルギー作用や皮膚におけるメラニン生成抑制作用等が期待されている。
・アメリカの研究で、体内のリコペンの約80%はトマトおよびその加工品(トマトジュース、ケチャップなど)由来であり、トマトがリコペンの摂取量で最も多いことがわかっている。
・リコペンの吸収性は、生のトマトよりも加熱調理されている加工品の方が高いといわれている。
・前立腺がん、膀胱がん、肝臓がんに対して予防的に働く可能性が報告されている。
・トマトの摂取量とがんのリスクに関して調べた疫学調査でも、特に前立腺がん、胃がん、肺がんについてリスクの低下が報告されている。
・心疾患についても、リコペンを多く摂取しているグループの心臓発作を起こす危険性は、最も少なかったグループに比べ約半分だったという報告がある。
 
※参考資料『近藤和雄,佐竹元吉(2014)サプリメント・機能性食品の科学 日刊工業新聞社』

 

●リコペンの機能と健康影響
 
・他のカロテノイドと比べシンプルな化学構造のため、生体膜中で自由に有効に働き高い抗酸化活性能を付与している。
・たばこなどに含まれる強力な発がん物質をラットに投与する試験で、大腸がんの発ガンに抑制傾向を示したという報告がある。
・脳血管疾患や虚血性心疾患などに関わる動脈硬化の予防でも効果があることが知られている。
 リコペンはLDL中に蓄積され、その強い抗酸化作用によりLDLの初期の酸化を抑制することで動脈硬化を防止する。
 
※参考資料『阿部尚樹,上原万里子,中沢彰吾(2015)食をめぐるほんとうの話 講談社』

 

●リコペン、トマトと前立腺がん
 
○ハーバード大学による研究(2007年)
・8ヶ国のおよそ2000人の男性を調査。
・言われているような抗がん作用は確認できなかった。
・リコペンなどのカロチノイドの血中濃度が高いと前立腺がんが進行するリスクが低くなる可能性はあるものの、前立腺がんを防ぐものではない。
 
○FDA(米国食品医薬品局)の研究者による調査
・リコペンに関する81の研究を調査し、リコペンの摂取と前立腺がんのリスクの関連を裏付ける証拠はない、とした。
・トマトの摂取に関する39の研究についても再調査し、トマトやトマトを原材料とする製品ががんのリスクを減らすという説を裏付ける証拠は、ごく限られていることを明らかにした。
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

β-カロテンの概要、健康影響

・発ガン抑制や動脈硬化の抑制、抗アレルギー作用などが報告されている。
・β-カロテンを過剰摂取しても必要以上は転換されないので、ビタミンA過剰症になることはない。
・フィンランドの男性喫煙者約3万人を対象にした疫学研究(1994年)で、5~8年にわたり、β-カロテン20mgとビタミンE50mを毎日摂取させたところ、血清中のβ-カロテン濃度は約10倍増加したにも関わらず、総死亡率と肺がん罹患率がかえって増加したという結果も得られている。
 
※参考資料『阿部尚樹,上原万里子,中沢彰吾(2015)食をめぐるほんとうの話 講談社』

 

○含まれている食品
・黄色果物、濃緑色・黄色・葉物野菜、にんじん、さつまいも、カボチャ、ほうれん草など。
 
○アンチエイジングで期待されている効果
・紫外線による障害から守り、免疫能を増強するというように、各種のがんに対する重要なフリーラジカルスカベンジャー。
・2001年に発表された研究によれば、β-カロテンを豊富に含む野菜を1日2.5サービング摂取している人は、1サービング足らずの人に比べて、明らかに冠動脈疾患にかかる割合が低かった。
 
○副作用
・喫煙者では合成型β-カロテンの摂取により、肺がんのリスクが高まることを、2つの別々の研究が示している。
 
※参考資料『ロナルド・クラッツ,ロバート・ゴールドマン(2010)革命アンチエイジング 西村書店』

サプリメントによる摂取

※ビタミンサプリメントの健康影響については以下の記事参照。
サプリメントの効果

●β-カロテンサプリメントとがん
 
・β-カロテンをサプリメントとして大量に摂取させた介入試験の結果を総合すると、β-カロテンの大量摂取はがん(特に肺がん)の予防に対して無効であるか、あるいは有害になる場合もあると考えられる。
 
※参考資料
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

 

●β-カロテンと心臓病、肺がん
 
○クリーブランド・クリニックの研究者が行ったメタ分析
・2003年にイギリスの医学誌"ランセット"に掲載。
・8件の大規模なランダム化試験の結果を分析。被験者数は約14万人。
・β-カロテンの投与量は15~50mg。
・わずかながら死亡率が上昇し、特に心臓病による死亡率が上昇した。
研究者らは、β-カロテンをサプリメントとして摂取することに懸念を示した。
 
○フィンランドでの無作万人の無作為割付二重盲検介入研究
・約3万人の喫煙男性を対象に5年から8年追跡。
・β-カロテン摂取群の肺がんの発生率が18%増加し、総死亡は非摂取群に比べて8パーセント高くなっていた。
 
※参考資料『デイビッド・B.エイガス(2013)ジエンド・オブ・イルネス 日経BP社』

 

●β-カロテンと肺がん、前立腺がん
 
○フィンランド、β-カロテン・サプリメントの摂取試験
・肺がんの発症リスクが高い喫煙者(2万9000人の男性)を対象。
・食品からの平均摂取量の10倍程度の濃度のβ-カロテンサプリメントを摂取。
・β-カロテンサプリメントを摂取したグループで、肺がんの発症率が高くなった。
・虚血性心疾患に対しても、β-カロテンサプリメント摂取は発症率を高めることが分かった。
 
○米国国立ガン研究所
・2万8000人を対象に、β-カロテン・サプリメントの摂取と前立腺がんとの関係を調査
・β-カロテンサプリメントの摂取は、前立腺がんの発症を促進した。
 
※参考資料『田中敬一,原田都夫,間苧谷徹(2016)科学的データでわかる果物の新常識 誠文堂新光社』

多目的コホート研究(JPHC Study)によるエビデンス

※多目的コホート研究(JPHC Study)とは?

●血中のカロテノイドと胃がん罹患との関係について
 
・保存血液を用いて、血漿中のカロテノイド(ベータ・クリプトキサンチン、アルファ・カロテン、ベータ・カロテン、ルテイン/ゼアキサンチン、リコペン)、レチノール、アルファ・トコフェロール、ガンマ・トコフェロールを測定し、それぞれの値によって、同じ人数になるように4つのグループに分けて胃がんリスクを比較した。
 
○結果
・男女合計ではベータ・カロテン濃度が高かったグループで胃がんリスクが低いことがわかった。濃度の最も低かったグループに比べ、他の3つのグループの胃がんリスクはほぼ半分に抑えられていた。
・男女別に調べると、各グループのベータ・カロテンの平均濃度は女性に比べて男性で低く、そのためか男性では濃度が高かったグループほどリスクが低いという傾向が認められたが、女性では濃度が高かったグループでもリスクの低下は見られなかった。
・同様の結果は、アルファ・カロテンについても見られた。やはり男性では女性に比べ血中濃度が低く、男性で濃度の高かったグループにおいてリスクが低い傾向があった。
・ルテイン/ゼアキサンチン、リコペン、アルファ・トコフェロール、ガンマ・トコフェロールについては、胃がんリスクとの関連は見られなかった。
・この研究から、ベータ・カロテンが不足している場合には胃がんリスクが高くなることと、今回の女性のように、十分な量を摂取している場合には、それ以上を取ったとしても胃がん予防の恩恵は期待できない可能性が示された。

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